アディティブマニュファクチャリング(AM:印刷による積層造形技術)を推進する、スタートアップ企業のエレファンテックは、今年4月に立ち上げた、アディティブマニュファクチャリングセンター(AMC)のセンター長に、三井化学の川本悟志氏を迎え入れたと発表した。
インクジェット印刷技術をベースにした電子回路製造法を確立し量産化を行うエレファンテックは昨年、三井化学と戦略的提携を締結。その提携に基づき、三井化学名古屋工場内で整備が進む、同製法で製造する片面フレキシブル基板(FPC)「P‐Flex」の大型量産実証施設(AMC名古屋)が、10月に稼働する。
それに先立ち、「P‐Flex」に使われている、必要な部分にのみインクジェットで金属ナノインクを印刷するAM技術を拡張させ、エレクトロニクス分野のみならずバイオ、テキスタイル、オプティクスなどの幅広い分野のものづくりに活用するため、エレファンテックはAMCを立ち上げた。
川本氏を含め13人体制となった同センターは、エレファンテック本社(東京・八丁堀)とAMC名古屋双方にまたがる統括組織。技術プロモーションやR&D支援サービス、応用技術開発といったAMの推進活動を行っている。同社によれば、AMC名古屋では今後、銅配線形成だけでなく、AMを活用したソルダーレジスト(絶縁膜)付与などの様々な量産実証や、量産機の開発支援も行っていく計画だ。
エレファンテックの清水信哉社長は「必要なところに、必要な分だけ印刷するAMの技術は、持続可能性の1つの解だ。AMCを世界最先端のAM技術拠点とし、世界を持続可能にするために三井化学と共に尽力していく」と決意を語った。
一方、三井化学の松尾英喜副社長は、「環境貢献価値の高いインクジェットによる革新的なプロセスは、これからのものづくりが目指す姿の1つであり、素材に求められる可能性の拡大でもある」と期待を寄せた。三井化学の加工技術が集約する名古屋という地の利を生かし、「エレファンテックと共にインクジェットによるAMの拡大と社会実装に向けて、素材から革新を起こしていく」考えだ。
連携をさらに深めた両社は、「新しいものづくりの力で、持続可能な世界を作る」というミッションの下に、環境負荷が少ない製法で製造可能なAMの新たな展開を目指す。