宇部興産はこのほど、豊田通商の連結子会社で、米国でコンパウンドの受託加工を行っているプレミアム・コンポジット・テクノロジー・ノースアメリカ(PCTNA社)の買収を決定したと発表した。4月1日をめどに宇部興産がPCTNA社の株式100%を豊田通商から譲り受け、新体制で事業を開始する予定だ。
PCTNA社は、豊田通商グループ企業として2009年に設立。米国で主にナイロン以外の樹脂を原料とするプラスチックコンパウンド受託加工事業を行っている。日系自動車メーカー向け品質管理体制を整備しており、設立以来、同業界向けに長年の供給実績を持ち、その品質は高い信頼を得ている。
宇部興産は、現中期経営計画の中でナイロン6事業を積極拡大事業と位置づけ、市場優位性を持つ押出用途のさらなる強化と、射出用途の事業領域の拡大を推進。昨年3月には、欧州子会社ウベコーポレーションヨーロッパ(スペイン・バレンシア州)がスペインのプラスチックコンパウンド製造・販売会社を買収し、射出・コンパウンド事業の海外拠点を拡充した。
今回の買収により、従来の日本・タイ・スペインの製造拠点に加え、新たに北米で自社コンパウンド製造拠点を獲得。日本・アジア・欧州・北米の4極体制の確立により、自動車メーカー(OEM)・自動車部品メーカー(ティア1)へのグローバルな供給が可能となる。
自動車分野で世界有数の市場でもある北米には、多くの日系OEM/ティア1が進出し、製造だけでなく開発業務も行うなど、現地化を加速化させている。宇部興産はPCTNA社を通じ、現地調達材提供を軸に、新たな価値を市場と顧客に提供する。
また、宇部興産は、PCTNA社の持つ樹脂コンパウンドに関する技術・ノウハウも獲得。市場のニーズに応じた最適な樹脂種の提案、組み合わせが可能となり、宇部興産グループの製品開発、市場開発に大きく寄与することが期待される。
宇部興産は、コンパウンド受託加工を新たな成長の機会と捉え、内製コンパウンドとのシナジーを通じ事業を展開することで、射出・コンパウンド市場での地位をより強固なものにしていく考えだ。