ランクセス 高性能プラスチックの開発スピード加速にAI導入

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2019年7月3日

 ドイツの特殊化学品メーカーのランクセスは、高性能プラスチックの開発スピードを加速するため、AI(人工知能)を導入する。顧客が求める高性能プラスチックの開発に一層の強化を図り、新素材の開発時間を大幅に短縮することを目指す。

 AI導入に当たっては、化学物質・素材AIプラットフォームを運営する、米国に拠点を置くAI企業のシトリン・インフォマティクス社と密接な協力体制を構築する。

 両社は、プラスチック製造でAI導入の可能性を評価する、パイロットプロジェクトに着手した。高性能プラスチックの強化材として、ランクセスが使用するガラス繊維の一層の最適化を図り、最終的には素材の性能を高める。

 今回のプロジェクトでは、ガラス繊維のサイジングが重要な役割を果たす。プラスチックの機械的性能を向上するために混入されるガラス繊維は、繊維と素材の隙間を埋めるサイジングに覆われている。これにより、ガラス繊維がプラスチック母材と一層強力に結合し、結果として高性能プラスチックに求められる性能を確保することができる。

 ガラス繊維のサイジングを最適化するプロセスは複雑で、時間と労力を要するが、AIを活用することで、素材開発の際に最適な配合を導き出す時間を、半分以下に短縮することを目指す。

 従来の製品開発では、ガラス繊維のサイジングの複雑な配合と多数の変数の解析には、広範囲にわたるテストが必要とされ、さらに、テスト結果を予想することも困難だった。

 AIアルゴリズムはテスト構成とパラメーターを改善するために予想モデルを計算する。個々のテストからの計測結果に基づき、これらのモデルを向上し、それによって最適化された配合を提案する。この手順により、従来の方法に比べ、製品開発スピードを大幅に加速させることになる。

 同社によると「高性能プラスチック開発のパイロットプロジェクトは、ランクセスのAIへの取り組みのスタートにすぎない」という。同社は2017年に「デジタル化」への取り組みに着手し、専門家からなる部門を設立した。この取り組みでは、デジタルビジネスモデルの開発、バリューチェーンにわたる新技術の導入、ビッグデータの開発と活用、従業員にデジタルの専門知識を広めることが重要な要素になる。

丸紅 冷凍・冷蔵トレーラーリースで天津に合弁会社設立

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2019年7月2日

 丸紅はこのほど、中国・G7社と中国国内での冷凍・冷蔵トレーラーのリース・レンタル事業に参入するため、合弁会社「天津吉紅融資租賃」(吉紅)を中国の天津市に設立した。

 中国では可処分所得の上昇に伴い、食への安全意識が著しく向上している。加えて、経済成長に伴う生鮮食料品などの長距離輸送需要の増加を背景に、中国の冷凍・冷蔵物流市場は今後、年率約18%の拡大が見込まれる。

 吉紅は成長著しい中国国内で、食品メーカー・小売業者・物流業者などに対して、冷凍・冷蔵トレーラーのオペレーティングリース・ファイナンスリース、レンタルサービスを提供していく。

 G7社は中国国内で、商用車向け物流IoTサービスを約6万社、計112万台超の商用車に提供している大手サービスプロバイダー。車両の運行情報(走行距離、加速度、急ブレーキ、エンジン温度などのデータ)を車載デバイスで収集・分析し、情報サービスとしてリアルタイムに顧客提供することを通じ、運行の効率改善や安全性向上など、貨物輸送全体の最適化を図っている。

 丸紅は、北米市場で培った冷凍・冷蔵トレーラーリース事業のノウハウと、G7社の顧客網と中国国内の物流IoT情報サービスを牽引するプラットフォームを掛け合わせることで、中国の冷凍・冷蔵物流市場の発展に貢献していく。

 

JXTGエネルギー 越社とLNG事業の共同検討に関する覚書を交換

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2019年7月2日

 JXTGエネルギーは1日、都内で同日開催された「ベトナム投資カンファレンス投資ライセンス授与及び協力覚書等交換式」で、日越両国政府立ち会いのもと、ベトナム・ナショナル・ペトロリアム・グループ(ペトロリメックス)との間で、ベトナム全土でのLNG事業の共同検討に関する覚書を交換したと発表した。

 JXTGエネルギーはペトロリメックスの戦略的パートナーとして、両社の協業機会の検討を重ねる中で、LNG事業について今年3月から実務レベルでの協議を行ってきた。

 同LNG事業は、経済成長に伴うエネルギー需要の大幅な増加が見込まれるベトナムで、環境に配慮したエネルギーの安定供給に貢献するもの。両社だけでなく日越両国にとっても意義のあるものとJXTGエネルギーは考えている。

 両社は今後、LNG事業の協業実現に向け、引き続き取り組みを行う。また、JXTGエネルギーはペトロリメックスとの関係をより強固にしていくとともに、あらゆるビジネス分野で、協業拡大の可能性を探っていく。

積水化学 MSアーデルの光硬化型接着剤事業を譲受

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2019年7月2日

 積水化学は1日、米・エイチ ビー フーラー(H.B.フーラー)との合弁会社である積水フーラーが、MSアーデル(東京都港区)から、光硬化型接着剤事業を6月30日に譲受したと発表した。

 MSアーデルは、独自技術により開発した光硬化型接着剤、仮固定材などを、光学・電子部品・サイネージ・建材・自動車などの各分野へ製造販売している。

 光硬化型接着剤事業は、積水フーラーと親会社である積水化学、H.B.フーラーの強みを生かすことで販路拡大を見込むことができ、積水ふーらーの企業価値向上につながるものと判断した。

 

住友化学 有機光ダイオード開発で仏イゾルグ社と提携

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2019年7月2日

 住友化学は1日、フランスのイゾルグ社と、有機光ダイオード(OPD)を用いたスマートフォン用の指紋センサー、有機CMOSイメージセンサーの開発で提携する契約を締結したと発表した。

 同契約は、有機半導体材料の開発で世界をリードする住友化学と、OPD技術を使ったデバイスや大面積イメージセンサーを世界に先駆けて開発したイゾルグ社が、2013年にスタートさせた協力関係をより深化させることが目的。

 住友化学は指紋センサーや有機CMOSセンサー用のOPD材料を製造し、イゾルグ社に供給するとともに、同社の生産技術とマーケティングを支援する。イゾルグ社はパネルメーカーの協力を得て、これらセンサーの量産化を目指す。

 今回の提携により生み出される指紋センサーは、軽量・薄膜で、塗布プロセスで製造できるため、大面積化が容易という特長がある。大面積の指紋センサーをスマートフォンの画面全体に組み込むことで、画面上のどの場所でも複数の指紋を検出・認証することが可能になり、利便性とセキュリティの向上が期待できる。

 また、有機CMOSセンサーは、住友化学のOPD材料が通常の可視光だけでなく、高感度に近赤外線の検出も可能なため、近赤外線用の高性能なカメラにも応用できる。両社はこれらのセンサーがセキュリティや自動車、診断、家電用途などでも幅広く使われると期待している。

 住友化学の上田博副社長は、「イゾルグ社とのパートナーシップにより、これまで困難であったスマートフォンの全画面指紋認証や、有機CMOSセンサーの実用化に大きく前進する」と話している。

三井物産など 中国市場向けヘルスケアファンドを設立

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2019年7月1日

 三井物産はこのほど、香港・華潤集団(華潤)、北京・厚樸投資(HOPU)とともに、各子会社を通じて合弁会社CMHヘルスケアホールディング(CMHヘルスケア)を設立。さらにCMHヘルスケアを通じて、ファンドスキームの共同投資会社CMHヘルスケアファンドを設立することで合意し関連契約を締結した。

 CMHヘルスケアファンドは、総額10億米ドル(約1080億円)の規模で、中国ヘルスケア市場が抱えるさまざまな課題に対し産業の視点から解決をもたらし、さらには伸び行く市場の成長を取り込むことを目的として、中国を中心とした病院事業(クリニック・専門病院運営、運営受託など)や中国内外のヘルスケア周辺事業を対象とした投資を行う。三井物産、華潤、HOPUも各子会社を通じ一部出資参画の上、今後参画する投資家を国内外から募る予定。

 中国のヘルスケア市場は、2030年に医療費200兆円とも言われる巨大市場である半面、高齢化や公的保険制度の充実に伴う急速な医療費の増加に伴い、医療の質と量、両面での需給ギャップが生じている。

 三井物産は、今回のファンド設立を、三井物産が目指すアジア最大の民間病院グループであるIHH社を核とした、アジアでのへルスケア・エコシステムの構築に向けた重要な地域戦略の一環として位置づけている。

 既存事業とのシナジー創出を梃子にしながら、今後もさらに伸び行く中国市場での事業基盤拡大を図り、人々が健康で、豊かな生活を営める社会創造の一助として、ヘルスケアのさらなる発展に貢献していく。

AGC 東工大と「マテリアル協働研究拠点」を設置

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2019年7月1日

 AGCはこのほど、東京工業大学と「AGCマテリアル協働研究拠点」を7月1日に開設すると発表した。東工大すずかけ台キャンパスに約66㎡の専用スペースを確保するとともに、AGCから共同研究員を派遣し、組織対組織の連携を進めていく。なお、設置期間は2022年6月30日まで。

 両者は、これまでガラス・セラミックス・有機材料など多くの領域で共同研究を進め、優れた成果を創出してきた。協働研究拠点とは、企業と東工大がこれまでの個別研究という枠組みを超え、組織同士で大型の連携を実現する新しい制度。

 今回開設する研究拠点では、東工大が物質・材料を含む幅広い領域で保有する学術的知見と、AGCが培ってきた技術力を連携させ、これまでの個別研究では難しかった組織対組織の総合的な研究開発を行う。

 また、新研究テーマや新事業分野の創出を行うべく、AGCと東工大双方の人材から構成される新研究テーマ企画チームを設置し、研究の企画機能を担う。

 同拠点開設に伴い、まずは「マルチマテリアル領域」として5つの研究室と共同研究を開始するとともに、次の領域設置も見据えた「NEXTテーマ候補」として2つの研究室(科学技術創成研究院菅野了次研究室、物質理工学院一杉太郎研究室)と共同研究を開始。

 「マルチマテリアル領域」では、AGCの保有するガラスやフッ素系材料など様々な材料を複合化・最適化することで、次世代モビリティや高速通信、エレクトロニクスなどの領域で必要となる高機能材料や革新技術・プロセスの開発を深化させ、ソリューションを創出する。

 一方、「NEXTテーマ候補」では、革新的・挑戦的な研究テーマについて、課題の抽出と解決、実現に向けたコンセプト検証を行う。

 AGCと東工大は、協働研究拠点の設置により研究者の密接な交流と研究開発ネットワークを構築し、新テーマ創出・開発・検証・社会実装のプロセスを効果的に進めるとともに、人材育成とイノベーション創出に寄与することを目指す。

 

東ソー 血中異常細胞の解析受託事業を開始 がん転移研究に貢献

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2019年7月1日

 東ソーは28日、血中に存在する異常細胞を検出し、がん関連遺伝子の変異を解析する技術を確立し、解析結果の研究活用を目的とする研究機関や製薬企業向けの細胞解析受託事業を、6月から東ソー分析センターで開始したと発表した。

 同社は、解析受託事業に関し、①血液検体を安定的に保存する技術(搬送中に血液検体が劣化することを防止)②血中細胞の大多数を占める赤血球と白血球を分離する技術③誘電泳動を利用して微細加工チップ上に細胞を整列・固定する技術④抗CD45抗体、抗CK(サイトケラチン)抗体とDAPI(核染色試薬)を用いて異常細胞を検出する技術⑤細胞の大きさなどを判定しCK陰性細胞からCK陰性異常細胞を検出する画像技術、といったバイオ関連技術を確立。

 これらの解析技術を用いた、ヒト肺腺がん細胞株を添加したモデル検体による解析試験では、添加がん細胞の80%以上を異常細胞として検出した。

 また、がん関連遺伝子の変異解析では、市販の遺伝子解析パネルを活用し、回収した異常細胞について50種類のがん関連遺伝子の変異の有無が解析できる。

 さらに今回の解析受託事業では、CK陽性異常細胞に加え、CK陰性異常細胞も検出可能であり、CK陽性/陰性異常細胞数とがん転移の関連といった研究の進展に貢献するものと見込んでいる。

 同社では、多様な細胞や分子を分離・検出する技術の確立を進めており、技術検証が終了でき次第、研究機関や製薬企業向けの細胞等解析受託事業を順次展開していく。

 また、特定疾患の検出に有用なマーカー分子の探索や非侵襲、低侵襲性の検出技術の研究開発を加速し、診断・ヘルスケア分野での応用展開を通して人々の健康的な生活の実現に貢献していく。

JXTGエネルギーなど 五井火力発電所の更新で工事請負契約を締結

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2019年7月1日

 JXTGエネルギーとJERAは28日、両社が共同出資する「五井ユナイテッドジェネレーション」と、東芝エネルギーシステムズ、東芝プラントシステムの3社間で、五井火力発電所の更新計画に関して発電設備建設工事請負契約を同日に締結したと発表した。2021年の建設工事の着工を目指し、環境負荷の低減に配慮した、競争力の高い最新鋭のLNG火力発電所の稼働に向けた準備を本格的に開始する。

 新設備はガスタービンコンバインドサイクル方式で、出力は78万kWが3基の234万kW。2024~25年の運転開始を目指す。

 五井ユナイテッドジェネレーションは、JERAとJXTGエネルギーが昨年9月6日付で締結した「五井火力発電所更新計画の共同開発検討に関する基本合意書」に基づき協議を行い、今年3月29日に設立した合弁会社。今回の計画の実施主体として、火力発電設備の建設と運転・保守、発電した電力の供給を行う。

 両社はそれぞれが所有するノウハウやリソースを共有することで計画の価値をさらに高め、国際競争力のあるエネルギーの安定供給と低炭素社会実現への貢献を目指す。

東ソー 塩化ビニルモノマー用の高性能触媒を実用化 コスト低減に寄与

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2019年7月1日

 東ソーは28日、塩化ビニルモノマー(VCM)製造プロセスの際に、エチレンと塩化水素、酸素から二塩化エチレン(EDC)を合成するオキシクロリネーション反応に使用する固定床の独自触媒=オキシ触媒=を新たに開発し、その実用化に成功したと発表した。

 同社は、1960年代に独自技術によってオキシクロリネーション法VCMプラントを操業して以来、オキシ触媒の改良を進め、触媒性能の向上に注力してきた。

 今回開発したオキシ触媒は、Cu(銅)系のシンプルな触媒組成にもかかわらず、円筒形状、さらに担体に特異な細孔構造をもたせることで、高活性・高EDC選択性・高耐久性といった高性能化を実現した。

 開発にあたり、触媒の経時劣化をXAFS解析などの最新の分析技術を用いて徹底的に解析し、経時的なCu成分の変化が触媒劣化に関係することを解明。これらの関係性から触媒寿命を正確に判定するシミュレーション技術を確立し、触媒使用期間の延長など、触媒コスト低減への効果を確認した。

 開発したオキシ触媒とシミュレーション技術は、2014年ごろからプラントへの導入を開始。現在までに、南陽事業所(年産85万t)と四日市事業所(同25万t)の一部設備で転換を行い、計年産50万t能力のVCM製造設備で実用化されており、想定通りの高い性能を確認しているという。

 今後は数年以内に、残るすべてのVCM製造設備で触媒転換を進め、さらなる競争力強化に向けて積極的に取り組んでいく考えだ。