石油化学工業協会はこのほど、第39回保安推進会議を開催した。今年もオンライン開催となったが、関係者約280人が参加した。
石化協の海寳益典保安・衛生委員会委員長(昭和電工執行役員)が挨拶に立ち、「当委員会では保安レベル向上のために、安全文化の醸成に関する活動を行っている。特に学習伝承においては重大事故の解析から得られた、リスク・アセスメント(RA)の充実、
2021年10月6日
2021年9月21日
2021年9月17日
旭硝子財団はこのほど、第30回「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」調査結果を発表した。
同財団は、1992年から毎年、世界の環境有識者を対象に環境アンケート調査を実施。今年は世界210カ国に調査票を送付し、134カ国以上、1893人から回答を得た。調査結果の要点として、人類存続の危機に対する認識では、環境危機時計が示す世界全体の平均環境危機時刻は9時42分となり、昨年より5分針が戻った。前年から4分以上針が戻るのは8年ぶり。もっとも針が戻った地域は北米で、10時3分と前年から30分も時刻が戻った。今年1月にパリ協定に再加盟した影響と見られる。
逆にもっとも針が進んだ地域は西欧で、10時7分と前年から8分も針が進んだ。危機意識が最も高い地域はオセアニアで10時20分(前年と同じ)だった。逆に最も低いのはアフリカで8時33分(前年から1分戻る)となっている。
環境危機時刻を世代別に見ると、今年は8年ぶりに全世代で戻っている。10年前には20代、30代は、40代以上の世代よりも危機意識が低かったが、近年その差は縮小傾向にある。また、40代以上が示した時刻は、昨年から2年連続で戻っている。
一方、脱炭素社会への転換については、どちらかといえば進んでいるが、「政策・法制度」や「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の面は、「一般の人々の意識」の面ほど進んでいない。しかし、2年連続で、どの項目も進む方向にシフトしている。
また、環境問題への取り組みに対する改善の兆しについて、最も多く選ばれたのは「気候変動」(28%)だった。回答者は政策、法制度や社会基盤よりも、一般の人々の意識について改善を見出だしている。2位「社会、経済と環境、政策、施策」(18%)、3位「ライフスタイル」(17%)が続く。
SDGsについては、世界で2030年に達成度が高いと思う目標として、「13.気候変動に具体的な対策を」が1位で多くの地域で選ばれている。「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」、「17.パートナーシップで目標を達成しよう」が同数で2位となっている。逆に達成度が低いと思う目標は、「1.貧困をなくそう」が圧倒的に多く選ばれ、これに「2.飢餓をゼロに」、「10.人や国の不平等をなくそう」が続く。これらの目標の実現は世界で多くの人が難しいと考えていることが伺える。
なお、詳細は財団ウェブサイト(https://www.af-info.or.jp)で閲覧できる。
2021年9月9日
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と科学技術振興機構(JST)はこのほど、「大学発ベンチャー表彰2021」の受賞者を決定した。
大学などの研究開発成果を活用した起業や起業後の挑戦的な取り組み、大学や企業による大学発ベンチャーへの支援の促進を目的として2014年度に開始した制度。今回、38件の応募の中から、大学発ベンチャー六社とその支援大学、支援企業が受賞した。
受賞名、受賞者と事業内容は、
▽文部科学大臣賞はHeartseed/慶應義塾大学/味の素による「iPS細胞による心筋再生医療の実用化研究」
▽経済産業大臣賞はリージョナルフィッシュ/京都大学/荏原製作所による「水産物の品種改良とスマート養殖を組み合わせた次世代養殖システムの構築」
▽JST理事長賞はオリシロジェノミクス/立教大学による「無細胞系による長鎖環状DNAの連結・増幅技術を用いた各種製品・サービスの提供」
▽NEDO理事長賞はRapyuta Robotics/チューリッヒ工科大学/モノフルによる「クラウドロボティクスプラットフォームの開発とロボティクスソリューションの提供」
▽日本ベンチャー学会会長賞はマトリクソーム/大阪大学/ニッピによる「細胞外マトリックスタンパク質を用いた細胞培養用基質の研究開発と販売」
▽大学発ベンチャー表彰特別賞はRTi‐cast/東北大学/国際航業による「地震時に即時的に津波浸水被害予測を行う世界初のシステムによる津波災害情報配信とシステムの構築・運用」だった。
2021年9月7日
業界の垣根を超える24社により「量子技術による新産業創出協議会」が9月1日に設立され、記念シンポジウムが開催された。発起人はJSR、第一生命ホールディングス、東京海上ホールディングス、東芝、トヨタ自動車、日本電気、日本電信電話、日立製作所、富士通、みずほフィナンシャルグループ、三菱ケミカル(順不同)の11社で、現在24社が参画している。
来るべき量子時代に向けて量子関連分野の新産業を創出することを目的とし、科学技術の発展への貢献を通じた産業の振興と国際競争力の強化により、国民の安全・安心な暮らしや社会の確立を目指す。
現在進行するDX(デジタルトランスフォーメーション)は、近い将来、量子(Quantum)技術に基づくQX(クオンタムトランスフォーメーション)に進化する。それに向け、情報通信技術(量子コンピューティング、量子暗号通信)、関連基盤技術(材料、デバイス)、重要応用領域(量子マテリアル、量子生命・医療、量子バイオ、量子センサ、量子AIなど)や人材、制度・ルールに関する課題を検討し、四つの部会でユースケースを創出する。
「量子波動・量子確率論応用部会」では、まず金融価格・リスク分析に向けたゲート型量子コンピュータの開発を進め、「量子重ね合わせ応用部会」では、システムの品質やセキュリティの検査、材料開発や創薬への有効性を検討する。
「最適化・組み合わせ問題に関する部会」では、イジングマシンで製造コスト削減や医薬探索、金融ポートフォリオの最適化などを進め、「量子記号・量子通信部会」では、銀行間決済や証券取引、金融・医療情報基盤、SCADA(産業情報の一元管理)ネットワーク、高セキュリティ通信などへの展開を検証していく。
シンポジウムでは、9月1日に発足したデジタル庁から赤石浩一デジタル審議官が演壇に立ち、「現実・仮想空間が高度に融合したシステムで新たな価値を創出する、人間中心の社会、Society5.0を目指す。そのために政策からルール、ツール、データ、インフラ、利活用環境までを包括したデータ戦略を前倒しで進める」と述べた。
また東京大学の五神真教授は、「リアルタイムデータを活用し、仮想・現実両方の地球規模の課題の解決を目指す」とし、急展開する量子技術に対し、オールジャパンの研究開発体制の確立と早期社会実装に向け、2台の量子コンピュータを導入した「量子イノベーションイニシアティブ協議会」にも触れた。
一方、今回発足した協議会の島田太郎実行委員会委員長(東芝執行役上席常務)は、「世界のあらゆる団体と様々なテーマで積極的につながり、量子産業を創出する」として、企業、アカデミアなどその規模を問わず、多くの参加を呼び掛けた。
2021年8月31日
産業技術総合研究所(産総研)と国立環境研究所、明星大学はこのほど、東海大学代々木キャンパス(東京都渋谷区)内の観測タワー上での大気組成の高精度観測に基づき、新型コロナウイルス感染拡大に伴う2020年4~5月の緊急事態宣言期間の代々木街区のCO2排出を排出源別に評価した。CO2排出総量は例年比で約20%低下。自動車などの石油消費が約40%減少した一方、外出自粛の影響で都市ガス消費は約20%増加していた。
産総研と防衛大学校は2012年から同観測タワーで大気中のCO2とO2の高精度濃度観測行っており、CO2排出とO2消費の交換比(OR)を利用したCO2排出量の排出源別評価手法を開発してきた。ORは排出源ごとに異なり、石油消費は1.44、天然ガス(都市ガス)消費1.95、石炭消費1.17、陸上植物活動1.1、人間呼吸は約1.2と推定される。
渦相関法(濃度と風速から解析)によるCO2排出総量と、傾度法(濃度の高度勾配と乱流拡散係数から算出)によるO2消費総量/CO2排出総量比(OR)、排出源ごとのORから、排出源の分離を行った。人間呼吸と植生の寄与は、人口統計や植生面積を考慮して別途評価し、石炭消費は考慮していない。
緊急事態宣言期間のCO2排出量は、例年に比べ日中に顕著な減少傾向を示し、夜間は同等であった。これは、代々木街区近郊の自動車交通量の統計データ、外出自粛による居住人口の変化を考慮した都市気候モデルによる都市ガス消費量の推定結果、とおおむね整合した。また、国立環境研究所が同時に観測しているCOとCO2の関係も、自動車由来のCO2排出量の減少を支持する結果であった。
今回の手法は、ゼロエミッションに向けたエネルギー消費構造の変化を評価する有効なツールになり得る一方、複数の高度な観測技術を組み合わせた解析であるため、他地域での評価には制約がある。今後は、観測手法の簡易化を目指し、局所大気輸送モデルを組み合わせた解析により他地点の限定的な観測データも活用し、より広域のCO2排出源評価への応用を進めていく考えだ。
2021年8月25日
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、再生可能エネルギーから製造した水素や海外産水素、副生水素などをコンビナートや港湾、工場などで大規模に利活用するモデルを創出していくため、今回14件の調査・技術開発テーマを採択した。
水素は化石燃料や水の電気分解、工業プロセスの副産物(副生水素)など様々な資源から製造できるほか、利用時にはCO2を発生しないことから、電力部門と非電力部門の両方を脱炭素化することができる。また、需要以上に発電し余剰となった再エネを水素に変換し貯蔵・利用できることや、化石燃料をクリーンな形で有効利用できることから将来のエネルギーキャリアとして期待されている。
こうした中、NEDOでは1980年代から燃料電池や水素ステーション、大規模水素サプライチェーン、P2G(再エネの電力を水素に転換し利用するシステム)などの技術開発に注力。しかし、現在も技術的課題やインフラ整備状況、経済性などの課題により、水素の大規模な普及拡大にはつながっていない。
そこでNEDOは、再エネから製造した水素や海外産水素、副生水素などをコンビナートや港湾、工場など特定の地域で大規模に利活用するエネルギーシステムのモデルを創出していくため、11件の調査テーマと3件の技術開発テーマを採択。この中で将来の経済性やGHG(温室効果ガス)削減効果などの可能性を探る調査や、日本国内での海外産水素の大規模受け入れ基地の検討、実環境を想定した水素製造・利活用技術の開発について支援に取り組み、水素を活用した統合的なエネルギーシステムモデルの構築を効率的に促進していくことを目指す。
NEDOは、同事業を通じて地域特性に応じた水素社会実装モデルを構築することで、各分野での普及を後押しし、水素利活用の拡大に貢献する。
2021年8月25日
文部科学省はこのほど、大会主催国を日本としリモートで開催された「第53回国際化学オリンピック」(7月25日~8月2日)で、参加した4人の高校生が銀メダルと銅メダルを獲得したと発表した。
銀メダルには、小池佑弥さん(名古屋市立向陽高校3年)、竹本隆弘さん(洛南高校3年)、西浦洸平さん(京都府立園部高校3年)が、銅メダルには一瀨陽日さん(東京都立小石川中等教育学校5年)が、それぞれ受賞している。
今回の日本大会は、コロナ影響によりリモートで開催され、85カ国・地域から312人の生徒が参加。生徒の派遣は、「夢・化学-21」委員会と日本化学会の主催、科学技術振興機構と高等学校文化連盟全国自然科学専門部の共催、文科省と経済産業省の後援により実施された。
国際化学オリンピックに、日本は2003年から参加を開始。毎年四人の生徒を派遣しており、今年は19回目の参加となった。昨年のトルコ大会には60カ国・地域から235人が参加し、日本の成績は銀メダル4人だった。なお、2022年の「第54回国際化学オリンピック」は中国・天津で開催される予定。
2021年8月25日
石油天然ガス・金属鉱物資源機構と丸紅、北陸電力、関西電力、豪ウッドサイドエナジー社はこのほど、豪州から日本へのクリーン燃料アンモニアサプライチェーン(SC)構築に関する事業化調査を共同で実施する共同研究契約を締結した。
アンモニアは燃焼時にCO2を排出しないため、大量のエネルギーを必要とする火力発電所や船舶用エンジン用の次世代ゼロエミッション燃料として有力視され、製造・貯蔵・輸送に係わる技術がすでに確立されていることから、比較的早期の社会実装が期待されている。
また、昨年策定され、今年6月に具体化されたグリーン成長戦略では、燃料アンモニア分野は2050年カーボンニュートラル(CN)実現のための重要分野の1つに位置づけられている。
さらに、6月の日豪首脳会談で「技術を通じた脱炭素化に関する日豪パートナーシップ」が発表され、7月の日豪経済閣僚対話の共同声明では、クリーン燃料アンモニアに関する取り組みを日豪間で協力して進めることが言及された。
今回、天然ガス由来のアンモニア製造の過程で排出されるCO2にCCS(回収・貯留)・CCU(回収・有効活用)や植林などのCO2排出削減対策を組み合わせたクリーン燃料アンモニアについて、豪州での生産、日本への海上輸送、発電用・船舶用燃料用途としての利活用と、ファイナンスの検討などを含めたSC全体の事業化調査を実施する。各々がもつ技術や知見を活用して豪州・日本間のクリーン燃料アンモニアSCの構築に努め、両国の脱炭素化に向けた取り組みを推進する。
2021年8月19日