積水化学 「ESGファイナンス・アワード銀賞」を受賞

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2020年3月10日

 積水化学工業はこのほど、ESG金融の普及・拡大に向け環境省により昨年10月に新設された「ESGファイナンス・アワード・ジャパン(環境サステナブル企業部門)」の銀賞(環境大臣賞)を受賞した。

表彰式の様子
表彰式の様子

 「環境サステナブル企業」とは、環境関連の重要な機会とリスクを、企業価値向上に向け経営戦略に取り込み、企業価値にもつなげつつ環境への正の効果を生み出している企業のこと。

 同アワードは、サステナブルファイナンスの普及のためには、金融機関と投資対象となる企業双方の活動を促進する必要があるとの考えから、「投資家部門」「融資部門」「金融サービス部門」「ボンド部門」に加え、金融環境アクションが先進的な企業を表彰する部門(環境サステナブル企業部門)も創設されている。

 同社グループは、グループビジョンに掲げる「世界のひとびとのくらしと地球環境の向上への貢献」を目指し、ESG視点で持続可能な経営基盤の構築を目指している。

 ESG視点の中でも「E(環境)」については、環境長期ビジョン「SEKISUI環境サステナブルビジョン2030」の下、気候変動や水リスク、資源循環、生態系劣化といった環境課題の解決に製品・事業を通じて貢献していくことで、〝生物多様性が保全された地球〟の実現を目指し活動を行っている。

 今回の表彰では、事業経営の中で長く環境貢献を価値創出のドライバーとしてきた歴史と環境課題解決を経営の根幹に据えている点、施策推進の明確な方針と着実な実践などが評価された。特に従業員が通常の事業活動に邁進することによって社会価値の増大につながるモデルが構築できている点も受賞理由となっている。

 同社グループは、今後も環境課題の解決に向けて取り組みを加速し、地球・社会のサステナビリテイ向上に貢献し、企業としてのサステナビリテイを向上させていく方針だ。

昭和電工 ケミカルリサイクルが地球環境大賞の会長賞を受賞

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2020年3月9日

 昭和電工はこのほど、フジサンケイグループ主催の「第29回地球環境大賞」で「日本経済団体連合会会長賞」を受賞した。

 同社グループが取り組んでいる、使用済みプラスチックのケミカルリサイクル(CR)による低炭素な化学品原料化・資源循環事業が環境負荷低減に資すると評価された。なお、表彰式は4月8日に、秋篠宮同妃両殿下ご臨席の下、明治記念館(東京・元赤坂)で行われる予定。

 同社は2003年より、リサイクル手法の1つであるCRによる使用済みプラのリサイクル事業を展開中。川崎事業所では、回収された使用済みプラを熱分解によりガス化し、水素や一酸化炭素を取り出し、化学品の原料として利用している。

 一酸化炭素は炭酸製品に、水素はアンモニアの原料として利用するほか燃料電池車やホテルに設置された燃料電池での発電用として供給するなど、低炭素社会実現に向けた取り組みにも貢献。

 このような使用済みプラを焼却処理しないことによるCO2排出削減だけでなく、陸上での資源循環を推進し、海洋流出するプラの削減に寄与する取り組みであることが高く評価され、今回の受賞となった。

 同社グループは、CRをはじめ、鉄のリサイクルに必ず使われる黒鉛電極の世界各地への供給や、日本で最初にアルミ缶リサイクル活動に取り組み、回収済みアルミ缶を新たなアルミ缶として製造する「can‐to‐can」など、環境に配慮した事業活動を積極的に推進している。引き続き、社会的課題の解決に貢献する製品・技術・サービスの提供に取り組み、地球環境負荷低減へ貢献していく方針だ。

 

産総研 ゴム複合材料を開発、金属並みの熱伝導性を実現

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2020年3月6日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、ゴムのように柔軟で、金属に匹敵する高い熱伝導性を示すゴム複合材料を、東京大学と開発したと発表した。

 産総研のタフコンポジット材料プロセスチームと、東大大学院新領域創成科学研究科の寺嶋和夫教授らは、カーボンナノファイバー(CNF)・カーボンナノチューブ(CNT)の2種類の繊維状カーボンと、環動高分子のポリロタキサンを複合化させることで、金属並みの熱伝導性を実現した。

 今回開発したゴム複合材料は、フレキシブル電子デバイスの熱層間材や放熱シート、放熱板などへの応用が期待される。実験ではポリロタキサン中にフィラーとして、サイズの異なる2種類の繊維状カーボン(CNFとCNT)を分散させた。

 CNFは太さ200㎚で長さ10~100㎚、CNTは太さ10~30㎚で長さ0.5~2㎚。ゴム材料への繊維状カーボンの分散性の改善と、複合材料中の熱伝導ネットワークの形成が、高い熱伝導性のカギと考えられていることから、分散性改善のため、CNFとCNTを重量比9対1の割合で塩化ナトリウム水溶液に分散し、独自に開発した流通式水中プラズマ改質装置を通して表面改質を行った。

 次に、このCNF/CNT混合物を溶媒のトルエン中で、ポリロタキサン・触媒・架橋剤と混合した後、交流電界をかけながら架橋反応させてゲルを作製。得られたゲルをオーブンで加熱して溶媒を取り除き、フィルム状の複合材料を得た。

 この複合材料内部の電子顕微鏡像では、表面改質により繭状の凝集体がほぐれ、加えた電界の方向にCNFが配列していた。さらに、配列した大きなCNFに小さなCNTが巻き付き、CNF間をつなぐように分散していた。少量のCNTがCNF同士をつなぐことで、複合材料全体にわたる熱伝導のネットワークが形成され、高い熱伝導性が実現したと考えられている。

 今後はCNFの配向条件や改質条件を最適化して、熱伝導性と柔軟性の向上を図るとともに、フィラーの3次元構造の観察や解析を通して、複合材料の構造と特性との数理的関係の解明を進める。さらに、企業との共同研究により、部材とデバイスへの展開・実用化を図る。

 

住友化学 室蘭工業大学とケミカルリサイクル技術を共同研究

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2020年3月6日

 住友化学はこのほど、室蘭工業大学と廃プラスチックを化学的に分解し、プラスチックなどの石油化学製品の原料として再利用するケミカルリサイクル(CR)技術に関する共同研究を推進すると発表した。

 プラスチックは、フードロスの削減や、自動車などの軽量化によるエネルギー効率の向上・環境負荷低減など、さまざまな社会課題の解決に貢献する有用な材料。

 一方、廃プラの環境への排出量や化石資源である石油利用による温室効果ガス(GHG)の増加が、世界的に喫緊の課題となっており、これらの課題解決手法の1つとして、石油資源の代わりに廃プラを原料として利用するCR技術の社会実装が強く求められている。

 こうした中、室蘭工業大学大学院工学研究科の上道芳夫名誉教授、神田康晴准教授が開発した、「ゼオライト触媒を用いた廃プラを任意のモノマーへ高選択率で分解する」技術は、CRを効率的に実現する手法として注目されている。

 室蘭工業大学は同技術をベースに、より性能を高めたプラ分解触媒の開発を行い、住友化学は、これまで培ってきた触媒設計や化学プロセス設計といったコア技術を生かして、同大学が行う研究開発をサポートするとともにプラ分解を最大限に促すためのプロセス技術の開発を担う。両者が相互に連携することで、廃プラを石油化学原料へ効率的に分解するCR技術の早期の確立を目指す。

 室蘭工業大学は、「創造的な科学技術で夢をかたちに」の基本理念の下、変革する時代と社会の要請に応え、イノベーションの創出につながる研究を推進。その1つとして、グリーンケミストリーの視点からプラスチックリサイクル技術を開発している。

 住友化学は、経営として取り組む最重要課題(マテリアリティ)の1つに「環境負荷低減への貢献」を掲げる。CRの推進に向けて、オープンイノベーションを積極的に推進するとともに、環境負荷低減技術に関する開発組織を今後新たに設置し、炭素循環技術やGHG排出削減技術など、社会課題を解決するソリューションの開発を加速させていく。

 両者は、共同研究を通じて、CR技術による化石資源使用量と廃プラ排出量、さらに廃プラ焼却時に発生するGHG排出量の削減を実現し、持続可能な社会の構築に貢献していく。

NEDO 世界最大級の再エネ水素製造拠点が浪江で稼働

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2020年3月5日

 NEDOと経済産業省はこのほど、両者の技術実証事業で整備を進めてきた、世界最大級の再生可能エネルギー由来の水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」(福島県浪江町)の稼働を3月に開始すると発表した。

 水素は、再生可能エネルギーから製造可能で、使用時にもCO2を排出しないことから、大幅な脱炭素化を実現するキーテクノロジーであり、世界各国で水素の製造から利用まで様々な取り組みが進められている。

 こうした中、両者は水素関連技術実証事業を展開し、福島県浪江町に世界最大級となる10MWの水素製造装置を備えたFH2Rを建設。FH2Rでは、再生可能エネルギーの導入拡大に伴って発生する余剰電力を水素に変え、貯蔵・利用する技術(Power‐to‐Gas)の実証を行う。

 製造した水素は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(東京2020大会)で燃料電池自動車などの燃料や、聖火台と一部の聖火リレートーチの燃料として活用され、日本の技術力を世界に発信する。

 一方、福島県内で幅広く活用することで、水素社会の実現に向けた取り組み強化を図る。2016年に策定した「福島新エネ社会構想」に基づき、再生可能エネルギーから水素を「作り」「貯め・運び」「使う」、未来の新エネルギー社会実現に向けたモデルを福島で創出することを目指していく。

 なお、FH2Rの稼働開始に先立ち、3月7日に、同施設の敷地内で開所式を開催する予定。

石化協 「APIC2020インド大会」の延期を発表

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2020年2月28日

 石油化学工業協会は27日、5月28日(木)~29日(金)に開催を予定していた「アジア石油化学工業会議2020・インド大会」(APIC2020)について、昨今の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い延期すると発表した。

 延期の詳細に関しては、当初予定のインド・ニューデリー「Hotel Pullman」で開催することを前提としているが、加盟7協会で協議中であり現時点では未定。会議の新日程、イベントプログラム、スケジュール、参加申し込み再募集の締め切りなどは、決まり次第、改めて同協会のホームページ(https://www.jpca.or.jp/)で案内する。

 なお、すでに申し込み済み参加者については、同協会でフォーマットを処分するため、特段の手続きは不要とのこと。

クレハ 原子状酸素照射による材料の抗菌活性発現を発見

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2020年2月17日

 クレハは14日、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)と原子状酸素をプラスチック材料表面に照射することで生じる微細な表面形状変化によって抗菌性能が発現することを発見したと発表した。

 原子状酸素は、国際宇宙ステーション(ISS)や地球観測衛星が飛行する高度数百㎞の軌道上に多く存在。ロケットや人工衛星などの宇宙機で使用しているプラスチック材料は、原子状酸素と衝突することで表面が削られてしまうため、材料の性能を低下させる原因として認識されている。JAXAでは長年原子状酸素による宇宙機材料への影響および対策について研究を進めてきた。

 一方、クレハは樹脂素材の開発から樹脂加工品などの川下技術まで含めた領域で事業を行っている。特に高機能フィルム分野では水蒸気や酸素などのガスが通りにくいバリア性などを持つ特徴ある製品を世に送り出し社会に貢献している。

 中期経営計画では、高付加価値付与が可能な製品の川下用途開発を強化していることに加え、2016年より新事業創出プロジェクトを立ち上げ、主に環境・エネルギー・ライフ分野で強みを生かした新たな展開を図っている。

 こうした中、クレハとJAXAは、2017年より、原子状酸素によって変化した材料表面の抗菌性能発現にかかる共同研究を行ってきた。共同研究では、原子状酸素を照射したプラスチック表面に対し、JIS Z 2801「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」に準拠した評価試験を実施。

 その結果、複数のサンプルで大腸菌、黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性が発現したことを確認した(原子状酸素によって削られた表面を電子顕微鏡で観察すると、1㎛程度の凹凸構造が形成されていることが分かる)。

 この方法によって、材料表面の微細形状を変化させることで抗菌性を付与できることから、抗菌持続性や耐性菌対策などの安全性の観点から利用範囲の拡大が期待される。

 また、共同研究では、多種の材料表面に対するシンプルな後加工(追加工)プロセスにより、微細な凹凸構造を形成できることも判明。これを応用することで、さまざまな形状の微細構造形成を実現する可能性がある。

 今後、両者は、引き続き共同研究を進め、実用化に向けた応用展開に取り組んでいく。なお、今回の共同研究は、2016年にJAXAと電通が立ち上げた「未来共創会議」を端緒としてスタートした。

JXTGエネルギー 国際パネルディスカッション開催

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2020年2月10日

国際シンポ JXTGエネルギーとJXリサーチ、日本エネルギー経済研究所による「第29回国際パネルディスカッション」が5日、都内で開催された=写真

 最初に同研究所の豊田正和理事長が挨拶を行い、世界の低炭素化・脱炭素化の動きの中で「化石燃料である石油・石炭、さらにはこれまで環境性が高いと言われていた天然ガスまで逆風にさらされ始めている」と指摘。しかし、現時点でも1次エネルギーの80%が化石燃料という中で、

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産総研 熱や衝撃に強いPEEK/CNT複合材料を開発

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2020年2月3日

 産業技術総合研究所(産総研)はサンアローと共同で、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)に多層カーボンナノチューブ(CNT)を効果的に分散・複合化する技術を開発した。これにより、衝撃に強いPEEK/CNT複合材料の作製が可能になった。

 PEEKは溶融成形できる熱可塑性スーパーエンジニアリングプラスチックとして、最高クラスの耐熱性を持ち、耐疲労性・耐環境性・耐薬品性・難燃性にも優れている。金属に比べて軽量なので、電気・電子部品分野、自動車分野、航空宇宙分野などで広く使われている。

 最近はさらに静電気対策としての導電性や強度、熱伝導性などを付与するため、炭素繊維(CF)をフィラーとした複合化などがなされているが、一般的にフィラーを添加すると、衝撃で割れやすくなるという問題がある。

 産総研はPEEKにCNTを添加して、耐熱性と機械強度を改善する研究開発に取り組んできた。これらの特性で世界最高水準を達成したが、実用的な製品へと展開させるには、CNTを添加すると衝撃強度が母材より低下するという課題を解決する必要があった。

 一方、サンアローはゴム・樹脂製品加工メーカーで、CNT複合材料研究拠点の参画企業として、樹脂成形のノウハウを生かして産総研と共同開発を進めてきた。

 今回開発した技術は、複合化の際の混練成形手法を改良したもので、樹脂母材と同等の衝撃強度(靭性)を維持したまま、高温でのより優れた機械的強度や高い形状保持性、均一な導電性を付与することが可能になった。

 導電性が同程度であるPEEK/CF(炭素繊維)複合材料に比べ大幅に靭性が向上し、導電性と靭性を両立する実用的なPEEK複合材料を作製することができる。

 同材料で自動車・航空機などの金属部材を代替することにより、軽量化による省エネへの貢献が期待される。

旭化成 他家iPS細胞由来軟骨のライセンス契約を拡大

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2020年2月3日

 旭化成は31日、iPSアカデミアジャパンとライセンス契約を締結しているiPS細胞技術に関する特許について、原許諾範囲を拡大する変更契約を締結したと発表した。なお、同特許はiPSアカデミアジャパンが京都大学より許諾されているもので、旭化成は2018年にライセンス契約を結んでいた。

 今回の変更契約により、原許諾範囲である外傷性関節軟骨損傷を適応とする治療用途に加え、全世界での変形性関節症と半月板損傷を適応疾患とする治療用途を対象とした、iPS細胞技術に関する特許の非独占的通常実施権と、軟骨分化誘導技術に関する特許の独占的通常実施権を取得。

 これにより、旭化成は、当該特許権が及ぶ全世界で、変形性関節症や半月板損傷などを適応とするiPS細胞由来の再生医療等製品を独占的に研究開発・製造販売する権利を保有し、iPSアカデミアジャパンに対して、契約一時金と開発段階に応じた開発マイルストーンを支払い、販売後は、販売額に応じたロイヤルティと販売額の目標達成に応じた販売マイルストーンを支払う。

 軟骨分化誘導技術とは、iPS細胞などの多能性幹細胞を、特殊な培養条件によって軟骨細胞に分化させるとともに、細胞外マトリクスを生成させ軟骨様組織を作製する技術。

 今回の変更契約では、適応範囲の拡大のみならず、iPS細胞から軟骨様組織(軟骨パーティクル)を製造する技術に加えて、板状の軟骨を製造する特許技術についても許諾対象に追加される。

 今後については、旭化成は引き続き、京都大学iPS細胞研究所の妻木範行教授との共同研究を推進し、外傷性に限らない関節軟骨損傷を適応とするiPS細胞由来の再生医療等製品の実用化に向けて、製造技術の確立を進めていく。

 同社は「軟骨の再生医療技術を研究開発プラットフォームに加えることにより、当社グループの整形領域における取り組みをさらに強化していくことができるものと期待している」とコメントしている。