BASFとシノペック 中国南京市の合弁生産拠点を拡大

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2021年8月31日

 BASFとシノペック(中国石油化工集団)はこのほど、合弁会社BASF-YPCの中国・南京市の統合生産拠点の生産能力をさらに拡大すると発表した。

 成長する中国市場に対応して、プロピオン酸、プロピオンアルデヒド、エチレンアミン、エタノールアミン、精製エチレンオキシドの生産能力を拡大する。また、ドイツ国外初となるアクリル酸tert-ブチル工場を建設し、2023年の始動を予定している。

 これらの製品は、農業、建設、エレクトロニクス、製薬、衛生、自動車、化学など様々な業界で需要が急速に拡大している。BASF-YPCは両社の出資比率50:50の合弁会社で、2000年に総投資額約55億米ドルで設立。中国市場向けに年間約300万tの化学品やポリマーを生産し、昨年の売上高は約157億人民元(約2600億円)だった。

 今回の投資は、両社が2018年に長期的なパートナーシップのさらなる強化のための覚書に調印して以来の大きな前進で、最先端の技術を導入し、同拠点の強みを最大限に生かす考えだ。製品と副産物、エネルギーを最も効率的に使用し、コストを節約し、環境への影響を最小限に抑えるための相互連携をとっている。

 

日本ゼオン 本田研究員が高分子学会のフェロー表彰者に決定

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2021年8月31日

 日本ゼオンはこのほど、基盤技術研究所に所属する本田隆研究員が、高分子学会から2021年度フェローの称号を授与されたと発表した。平均場法を中心とした計算手法の開発と高分子化学への貢献が評価された。なお同社の現職の研究員が高分子学会フェローの称号を授与されたのは、今回が初となる。

 高分子学会は、会員数1万を超える学術団体。高分子に関する科学および技術の基礎的研究、その実際的応用の進歩、学術文化の発展並びにそれらを担う人材の育成を図ることを目的として設立された。会員企業である同社は、高分子学会が発行する「Polymer Journal」において、優れた論文を発表した若手研究者を対象に「Polymer Journal 論文賞‐日本ゼオン賞」を創設するなど、研究奨励にも力を入れて取り組んでいる。同学会フェローは2007年に創設され、高分子科学・技術の発展に業績を挙げ、今後も貢献が期待できる高分子学会正会員に対し贈られる。

 本田研究員は、同社に所属しながら国家プロジェクトに参画し、高分子系のシミュレーション手法の1つである平均場法(高分子の密度汎関数理論)におけるSCF(セルフコンシステント フィールド)法のプログラム・SUSHI(Simulation Utilities for Soft and Hard Interfaces)を開発し、多くの研究成果を挙げた。また、各成果はソフトウェア機能として容易に使える形で公開されており、SUSHIおよび平均場法は国内外の研究機関や企業の研究者によって現在も広く使われている。

 また昨今では、機械学習などのデータサイエンスとシミュレーションの融合分野でも実績を残すなど、計算機を使った先駆的な研究を継続していることからその功績が認められた。

協和キリン 人事(10月1日)

2021年8月31日

[協和キリン・人事](10月1日)▽調達部長山本晃三▽研究開発本部研究ユニット創薬モダリティ第2研究所長兼分子解析センター長小野寺秀幸▽同本部同ユニット創薬モダリティ第1研究所長白石泰久▽営業本部北関東甲信越支店長寺島年彦。

 

DIC 統合報告書を発行、DXや社会貢献製品など紹介

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2021年8月30日

 DICはこのほど、同社グループの事業や財務、サステナビリティ活動についてまとめた「DICレポート2021」(ハイライト版・詳細版)を発行した。今年度の主なハイライトは、気候変動への対応とDXへの取り組み、サステナビリティ指標によるサステナブル製品、新たな社会価値創出に貢献する製品の特集など。

統合報告書「DICレポート2021」を発行
統合報告書「DICレポート2021」を発行

 同社は、世界で約170社のグループ企業とともにサステナブルな社会を実現するため、2050年カーボンニュートラルの実現と、2030年のCO2排出量50%削減(2013年比)という新しい目標を掲げた。加えて、社外取締役によるメッセージと、ESG部門長メッセージを新たに設けてマネジメント・メッセージの充実を図った。

 また、要点を簡潔にまとめたハイライト版と、より詳しい情報やデータを盛り込んだ詳細版を発行。同レポートは、より多くの人にわかりやすく伝える工夫として「カラーユニバーサルデザイン」を採用し、CUD認証を取得するとともに、SDGsの目標と同社グループの取り組みとの関連を、アイコンを使って紹介している。

 環境への配慮から、同レポートの冊子の印刷は、DICグラフィックス社の製品である100%植物油を使用した「環境調和型インキ」で行った。なお、レポートの作成に当たっては、ガイドラインとして「GRIスタンダード」を採用し、ステークホルダーが必要とする情報を提供していくことを心掛けている。

住友化学 PMMAのケミカルリサイクル、実証設備を新設

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2021年8月30日

 住友化学はこのほど、アクリル樹脂(PMMA、ポリメチルメタクリレート)のケミカルリサイクル(CR)実証設備を愛媛工場(愛媛県新居浜市)に建設すると発表した。2022年秋に実証試験に着手し、2023年にサンプル提供を開始する予定。この取り組みと並行して、使用済みアクリル樹脂の回収から、再生、製品化までの資源循環システムを確立し、早期の事業化を目指す。

再生MMAモノマーのアクリル樹脂

 アクリル樹脂は、合成樹脂の中でも極めて高い透明性をもつほか、耐候性や加工性にも優れ、自動車のテールランプカバーや家電、水槽、屋外看板、液晶ディスプレイ、建築材料、飛沫防止板などに幅広く使用されている。昨年の世界需要は130万tに上り、この先も堅調な伸びが予測されている。

 同社は、環境意識の高まりを受け、自社での研究のほか、他企業やアカデミアとの協業により、様々なCRの技術開発を推進。アクリル樹脂については、日本製鋼所がもつ二軸混練押し出し機を利用したプラスチックの連続分解技術と、住友化学が長年培ってきたMMA(メチルメタクリレート)モノマーおよびアクリル樹脂の知見をもとに、同社と共同開発を進めてきた。

日本製鋼所の二軸混練押出機

 今回、アクリル樹脂を熱分解し、原料となるMMAモノマーとして再生する独自の基本技術を確立したことにより、実証設備の建設を決定した。この基本技術により得られたMMAモノマーを再重合してできるアクリル樹脂は、化石資源から製造したバージン材料と比較して、透明性や強度などの基本物性は同水準を維持した上で、製品ライフサイクル全体のGHG(温室効果ガス)排出量を60%以上削減できる見込みだ。

 なお、今回の実証試験で原料とする使用済みアクリル樹脂は、水族館向け大型アクリルパネルで世界トップシェアを誇り、住友化学と約50年のパートナーである日プラから出る廃材を活用する予定。

 また、事業化に向けて、廃棄される自動車や家電、飛沫防止板などからの回収を含め、安定的な原料調達システムの構築も併せて検討を始める。再生MMAモノマー、およびそれを原料とするアクリル樹脂は、環境規制の強化が進む自動車のほか、公共施設である高速道路の遮音板など、リサイクル材料としての付加価値が認められる分野・製品での採用を想定している。

 

ハイケム C1と生分解を中核に東京研究所が稼働

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2021年8月27日

環境課題解決に向け、技術・製品開発の中心地に

 ハイケムが新たに整備した「ハイケム東京研究所」(千葉県柏市)が本格稼働している。5月末に竣工した新研究所は鉄骨造3階建て。東葛テクノプラザと東大柏ベンチャープラザで行ってきた研究開発機能を集約するとともに、延べ床面積を7倍に拡張し、施設面からも研究開発体制の強化を図った。

ハイケム東京研究所の外観。1階のシャッター部分奥(写真右下)が「セランダー」製造拠点
ハイケム東京研究所の外観。1階のシャッター部分奥(写真右下)が「セランダー」製造拠点

 蝉しぐれが降り注ぐ7月21日、記者向けの見学会を開催。サステナベーション本部の高裕一副本部長は「当社は今、環境問題やSDGsに精力的に取り組んでいる。カーボンニュートラルや海の豊かさの保全を考え、東京研究所ではそれをどう実現していくのかを大きなテーマとしている」と説明した。

 同研究所の主要テーマは2つ、COやCO2を出発原料とするC1ケミカルのプロセス・触媒の研究開発と、生分解性材料の研究開発になる。C1ケミカルの中核となるのは「SEG(シンガス・トゥー・エチレングリコール)技術」だ。合成ガスを原料に非石油由来でエチレングリコール(EG)を製造する技術であり、中国企業へのライセンスビジネスを展開。昨年8月には中国・山西省の沃能(よくのう)社で、製鉄所からの副生ガスを原料に年産30万tのEGを生産するプラントが立ち上がったが、同設備により年間56万tのCO2削減を見込む。

203研究室(各種機器導入前 )の様子。C1ケミカルのカギとなる貴金属触媒の開発を行う
203研究室(各種機器導入前 )の様子。C1ケミカルのカギとなる貴金属触媒の開発を行う

 東京研究所では高圧反応装置などを導入し、「SEG技術」に必要な貴金属触媒(パラジウム、金、プラチナなど)と非貴金属触媒(銅、亜鉛、マンガンなど)の性能向上や新規触媒の開発を担う。また、NEDOの共同委託事業で行うCO2を原料としたパラキシレン(PX)製造の実用化に向けた触媒開発などにも取り組んでいる。

 一方でハイケムは独自に、中国の南通研究所ではCO2からEGを生産するプロセス・触媒開発も進めており、両技術を組み合わせることでCO2を利活用したポリエステル生産の早期商業化を目指している。生分解性材料では、合成法と高機能化の2チーム体制で研究を推進していく。

 同社は昨年、中国最大のポリ乳酸(PLA)メーカーである、豊原(ほうげん)集団の傘下企業と事業戦略パートナーシップを結ぶなど、各種生分解性材料の取り扱いを強化。今後は耐熱性などの機能性課題に対し改質や応用研究を進め、生分解性材料の高機能化を図っていく。加えて、生分解性材料が石油由来のプラスチックを代替するためには、モノマー単体では不十分なことから、コンパウンドや共重合といった生分解性材料同士の組み合わせの研究開発についても大きなテーマと捉えている。こうした取り組みを通じ、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」に貢献していく考えだ。

 東京研究所のもう1つの役割は、セラミックスバインダー「セランダー」の製造と品質管理になる。今年1月にユケン工業から譲受した同事業の生産拠点を同研究所の1階部分に整備し、自動運転や5G通信に対応したバインダー事業を展開していく。今年中に設備の導入を終え、再び蝉の声を聞く来年8月からの稼働を予定する。

 「日本には応用化されていない多くの技術が眠っている。東京研究所ではそういった技術も掘り起こしていきたい」と高副本部長は語る。サステナビリティの視点に立ち、日本と中国の技術力・開発力を生かすことで、「新たな製品を世界市場に向け発信していく中心地になっていければいい」と新設の東京研究所への期待を寄せた。

JNC及び関連 人事(10月1日)

2021年8月27日

[JNC及び関連・人事](10月1日)▽研究開発本部主席伊丹節男▽知的財産部長松井秋一▽化学品事業部技術部主席企画員村友晃浩▽JNC石油化学市原製造所長付主席企画員武田芳人▽同社同製造所管理部長小原弘之▽同社市原研究所長、同社同研究所液晶技術開発センター長山口貴史▽同社同研究所未来技術研究センター長兼同社同研究所同センター先端技術探索3グループリーダー江頭友弘▽九州化学工業戸畑工場長兼JNCマテリアル戸畑工場長鈴木俊晴。

 

旭化成 水素製造システム活用、グリーンケミ工場を実証

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2021年8月27日

 旭化成と日揮ホールディングスは26日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「グリーンイノベーション基金事業」に対し、2021~2030年度を事業期間と想定した「大規模アルカリ水電解水素製造システムの開発およびグリーンケミカルプラントの実証」と題したプロジェクトを共同提案し、採択されたと発表した。カーボンニュートラル社会を実現していく上で、水素は重要な役割を果たすことが期待されている。

 旭化成は、NEDO事業の一環として福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)にて世界最大規模の10MW級アルカリ水電解システムを開発するなど、水素製造技術の実用化開発に取り組んできた。また、日揮HDは、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)事業」を通じて、CO2フリー水素を活用したアンモニア製造技術の開発に取り組んでいる。

 こうした中、両社は、これまで長期にわたり培ってきた水素関連技術をベースに、その社会実装をより早く確実なものとするため、今回のプロジェクトでは、100MW級を見通した大規模アルカリ水電解システム、および再生可能エネルギー由来の水素を原料としたグリーンケミカルプラントの実証に共同で挑戦する。

 大規模アルカリ水電解システム開発では、FH2Rでの開発成果を要素技術開発にフィードバックするとともに、アルカリ水電解槽を並列設置するモジュール化技術を導入することで、安全性・耐久性・性能・コストの面で市場ニーズに適合した数十MW級のアルカリ水電解システムの実証と実用化に取り組む。

 グリーンケミカルプラント開発では、変動する再エネ由来水素を原料としたプロセスについて、水素供給量を制御し運転最適化を実現する統合制御システムを共同開発する。さらに、統合制御システムを活用し、グリーンアンモニアなどの化学品の合成プラントのFSと技術実証に取り組む。

 一方、グリーン水素やグリーンケミカルのサプライチェーンを構成する企業にプロジェクトへの参加を募り、社会実装をする際の便益や課題を抽出することで、事業化と市場創出を加速していく。今年度中には、三菱商事とJERAが委託企業として参加する計画となっている。

水素製造を活用したグリーンケミカルプラント実証プロジェクト
水素製造を活用したグリーンケミカルプラント実証プロジェクト

BASF ポルシェと高性能LIB向け正極材開発で提携

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2021年8月26日

 BASFはこのほど、ポルシェと独カスタムセルズ社の合弁会社独セルフォース・グループの次世代リチウムイオン電池(LIB)の独占的なセル開発パートナーに選ばれたと発表した。

 BASFの高容量「HED」NCM正極材はサイクル安定性と急速充電に優れ、セルフォースが製造する急速充電・高エネルギー密度の高性能電池セルに使用される。セルフォースの電池生産工場は2024年の稼働予定で、初期の年間生産能力は100㎿h以上、1000台のモータースポーツ車両と高性能車用の電源を供給する。

 ポルシェは2030年までにバランスシート上でのカーボンニュートラルを目指しており、カーボンフットプリント削減とクローズドループリサイクル、サステナビリティが重要な要素だ。BASFの正極材はポルシェ独自のニーズに合わせて製造され、効率的な製造プロセス、高い再生可能エネルギー比率、主要原料確保の垂直統合、バリューチェーンでの効率的な輸送ルートによりCO2排出量を低減。電池をリサイクルして貴重な材料を生産ループに残すことで、正極材のカーボンフットプリントを最大60%削減できる予想だ。

 セルフォースの電池工場で排出される廃棄物は、BASFの電池リサイクルの試作工場の湿式製錬プロセスでリチウム、ニッケル、コバルト、マンガンに再生され、正極材の製造プロセスで再使用される。このクローズドループリサイクルは、コスト削減や資源、環境の保全につながる。併せて、正極材を次世代シリコン系負極の要件に適応させることにも注力している。

 3社は、将来に向けたEV用高性能電池の開発で連携し、持続可能なモビリティという共通目標に向けて協力していく考えだ。