AGC AIのQ&Aシステムで、ガラス製造の匠を共有

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2020年7月15日

 AGCはこのほど、FRONTEO(東京)との共同によりコンピューター上にガラス製造の知見を集約し、その知見をAIを用いて簡単に引き出すことができるAI Q&Aシステム「匠KIBIT(キビット)」を開発した。

  ガラス製造には、溶解・成形・加工など複数の技術を組み合わせる独自の高い技術力が必要で、それが他社との差別化に繋がっている。一方、各工場が持つノウハウの共有や、熟練から若手への技能の伝承が課題である。

 AGCは、AIやITでこれら課題を解決する「匠プロジェクト」を2017年より開始。FRONTEOの自然言語解析AIエンジン「KIBIT」を使ったガラス製造AI Q&Aシステム「匠KIBIT」を開発した。

 熟練技術者の知見を、グループ内の技術者が簡単に引き出せる。流れは①質問(聞きたい質問を入力)、②学習(質問の特徴を「KIBIT」が学習)、③評価(「KIBIT」によるスコアリング)、④回答(類似度の高い質問に紐付いた回答を質問者に提示)。自動回答できなかった質問は、「KIBIT」が推定した該当熟練技術者に回答を依頼し回収することで、自律的にデータベースを拡充できる仕組み。2017年に国内ガラス製造拠点でトライアルを開始後、月間300件以上の利用があり、技能の共有と伝承に着実な成果を上げている。

 今後は、欧州を含む世界中のガラス製造拠点にも展開する考えだ。

ハイケムなど CO2からPXを製造する技術開発に着手

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2020年7月15日

 C1化学を進展させ川上・川下の事業拡大図るハイケムは14日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「CO2を原料としたパラキシレン(PX)製造に関する技術開発」事業に参画し、共同開発に着手すると発表した。

 同事業では、CO2を原料としたPX製造に向けた画期的な触媒の改良や量産技術の開発、プロセス開発を実施するとともに、経済性やCO2削減効果を含めた事業性の検討を行う。PXはポリエステル繊維やペットボトルなどの生産に必要となる重要な化学品だが、これをCO2から工業的に製造する実用的な技術はまだ確立されていない。

 同事業にはハイケムをはじめ、富山大学、千代田化工建設、日鉄エンジニアリング、日本製鉄、三菱商事の6者が参画。カーボンリサイクル技術の世界最先端の取り組みを通じてCO2を原料としたPX製造の実用化を目指す。事業期間は今年度から2023年度まで。予算は19億9000万円。

 火力発電などから排出されるCO2の削減は気候変動対策として重要であり、またCO2を資源として捉えて回収し、有効利用する「カーボンリサイクル技術」の開発が求められている。経済産業省は昨年6月「カーボンリサイクル技術ロードマップ」を策定し、その中でCO2を素材や燃料へ利用することなどを通して、大気中へのCO2排出を抑制していく方針を示した。こうした中、NEDOは、既存の化石燃料由来化学品に代替することを目的とする化学品へのCO2利用技術の開発として、今回の取り組みを開始し、共同研究者6者を委託先として採択した。

 PXは、高純度テレフタル酸(PTA)を経由してポリエステル繊維やペットボトル用樹脂などに加工される化合物であり、工業上、極めて重要な基礎化学品。その組成から、化学品を製造するカーボンリサイクル技術の中では水素原料の使用量を抑えながらCO2を固定化できる特長があり、経済的観点と環境的観点、いずれの意味でも大いなる可能性を秘める。PXの世界需要は約4900万t/年あり、仮に現在の世界のPXの需要を全てCO2原料に切り替えた場合のCO2固定量は1.6億t/年に上る。

 ハイケムらは今回の共同事業を通じ、CO2からPXを製造するための画期的な触媒の改良、量産技術の開発やプロセス開発に加え、全体の経済性やCO2削減効果を含めた事業性検討を行い、実証段階への道筋をつける。

現在の工業的パラキシレンおよびポリエステルの製造の流れ(上)と、今回の新事業の狙い(下)
現在の工業的パラキシレンおよびポリエステルの製造の流れ(上)と、今回の新事業の狙い(下)

ポリプラスチックス ADAS部品向けエンプラ製品・技術を公開

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2020年7月15日

 ポリプラスチックスは14日、「ADAS(先進運転支援システム)部品向け材料・技術~アクチュエータ部品・通信機器編~」をWebサイト(https://www.polyplastics.com/jp/product/lines/pbt_adas/index.html)に公開した。

 自動車業界では100年に1度の大変革と言われるように、大きな変化を迎えており、「CASE」が重要なキーワードとなっている。中でも、Autonomous(自動運転)の実現に向けて、ADASの部品が増加傾向にあるとともに、5G通信の普及で、高速伝送部品、高周波伝送部品も増加することが予想されている。このような市場の要求に少しでも応えるため、同社は今回、アクチュエータ部品、通信機器向けの製品として「ジュラネックス PBT」をWebサイトで紹介している。 

 ADAS部品は、周辺を監視するセンサー、動作するアクチュエータ、車‐車間またはインフラとの通信機器、判断するECU(Electronic Control Unit)で構成されており、運転者の視認(センサー)、判断(ECU)、操作(アクチュエータ)を各部品が行っている。

 

産総研 機械学習の品質マネジメントガイドラインを公開

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2020年7月14日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、企業や大学などの有識者と共同で、機械学習を用いた人工知能(AI)システムの品質を客観評価する「機械学習品質マネジメントガイドライン第一版」を策定し、産総研のウェブサイトで公開したと発表した。AIシステムの品質の透明性を上げ、ビジネスでの活用を加速させる狙い。

 AIシステムを安全性が不可欠な自動運転やロボット制御分野、公平性が重要な個人融資などの信用管理分野など広く利用するには、品質マネジメントが不可欠である。しかし、AIシステムは実在データに基づくため大きな環境変化に対応できない可能性があること、訓練データの学習により機能発揮することから、従来のソフトウェアに比べて品質管理が難しい。これまで性能評価技術は開発・発表されているが、品質要件定義、要件充足のためのAIシステムの性質とその確認方法に関し、系統的・網羅的なガイドラインや規格はない。

 今回、AIシステムの品質要件定義、実証実験、開発、保守・運用までのライフサイクル全体を網羅し、品質要求充足のための取り組みや検査項目を体系化した。「品質」を利用時に必要な「利用時品質」、機械学習要素に要求される「外部品質」、機械学習要素が持つ「内部品質」に分類。「内部品質」の向上により「外部品質」を充足し、「利用時品質」を実現する。

 サービス提供者は、「外部品質」として①リスク回避性、②AIパフォーマンス、③公平性、を設定し要求度に応じてレベル分けする。次に「内部品質」における①要求分析の十分性、②データ設計の十分性、③データセットの被覆性、④同均一性、⑤機械学習モデルの正確性、⑥同安定性、⑦プログラムの健全性、⑧運用時品質の維持性、の8項目を確認し「外部品質」への充足度を判断し、「利用時品質」を実現する。これは品質マネジメント要求達成のための関係者間の役割分担のほか、開発作業の受発注・委託での合意形成や検収条件の設定などにも利用できる。

 今後は実ビジネスでの活用とそのフィードバックにより利便性・有用性の向上と評価方法の拡張などを推進し、国内でのデファクトスタンダード化、さらには国際標準化を目指す考えだ。なお、今回のガイドラインの策定は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からの受託事業として、2018年度から検討を始めていた。

北海道コカ・コーラ 自動販売機に抗ウイルス・抗菌施工を開始

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2020年7月14日

 北海道コカ・コーラボトリング(札幌市)はこのほど、同社の自動販売機・ディスペンサーへの訪問時のアルコール消毒に加え、ヤマモトホールディングス(千葉県松戸市)の抗ウイルス・抗菌ガラスコーティング「Dr.ハドラスコーティング」による抗ウイルス・抗菌施工を実施すると発表した。 

商品取り出し口 塗布施工イメージ
商品取り出し口 塗布施工イメージ

 消費者の安全・安心につながる取り組みとして、今月上旬より行う。対象は北海道全域の自動販売機(缶、PET機、カップ機)とディスペンサー2000台。公共性の高い施設(公共交通機関、病院、福祉施設など)から始め、順次拡大する予定。抗ウイルス・抗菌ガラスコーティングを商品選択ボタン、コイン・札投入口、おつり返却口、商品取り出し口などに塗布施工し、「SIAAマーク」(抗菌製品技術協議会)を貼り付ける。

 「Dr・ハドラスコーティング」は、対象物に塗布すると、空気中の水分と反応してナノレベルの超薄膜・緻密・高純度無機ガラス膜を作り、ウイルスや菌の増殖を抑制し接触感染を予防する。浸み込む物以外ほとんどの物にコーティング可能で、紫外線に強く、防汚・防キズ効果もあり、使用環境にもよるが5年間持続する。産学連携研究によるもので、今年3月に「SIAAマーク」を取得した。

実施済みステッカー
実施済みステッカー

 今回の施工は同社が行うが、建物内のドアノブやエレベーターの押しボタン、ベンチ、テーブルなどあらゆるものの除菌・抗菌に使用できるため、今後は取引先などへのサービス提供事業として拡大する予定。

 同社は「北の大地とともに」をスローガンに、どさんこ企業として北海道の魅力向上、地域課題の解決、子どもたちが将来の地球の姿を考える場の提供、安全で安心な地域づくりの応援など、事業活動を通じて継続的に推進する考えだ。

日本製紙 ストローレスの学校給食用牛乳パックを発売

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2020年7月14日

 日本製紙はこのほど、ストローレス対応学校給食用紙パック「NP‐PAK‐mini School POP」を開発、9月から発売すると発表した。

 市場ニーズの高いストローレス化に対応した紙製牛乳容器で、開けやすく飲みやすいよう、上部構造に工夫をこらしてある。脱プラスチックの潮流拡大の中、プラスチックストローは海洋プラゴミの象徴の1つ。同社は紙ストローも製造・販売するが、今回、市場ニーズの高い「ストローそのものの不要な紙パック」に視点を変えた。

 給食用ミニカートンは、通常のゲーブル(屋根型)容器と異なり、屋根部の隙間が狭く指を入れにくい。「School POP」(POP:Push、Open、Pull)は、屋根型の下部を押して開き引き出すと容易に開封でき、独自の罫線による注ぎ口の傾斜で液がスムーズに流れて飲みやすい構造。ストロー孔も、子供の成長段階やその他要因にあわせて残してある。また、従来型充填機にも対応する。

 全国の学校給食用紙製牛乳パックは年間約14億個で、樹脂使用料は約700t(ストロー1本0.5g換算)。例えば1000万本の学校給食牛乳用ストローは樹脂約5t、PETボトル約50万本に相当する。

 同社は、「紙でできることは紙で」を合言葉に、再生可能資源である「木」を原料とし、リサイクル可能な「紙」に新たな機能を付与した多彩な製品を提供している。今後も紙の利用シーン拡大に努める考えだ。

ENEOS 国内初、サービスステーション(SS)を活用したVPP実証を計画

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2020年7月14日

 ENEOSはこのほど、次世代型エネルギー供給・地域サービスの提供を目指して、国内初となるサービスステーション(SS)での実証を含む、同社のエネルギーリソースを活用したヴァーチャルパワープラント(VPP)の実証に取り組むと発表した。

 同社は、再生可能エネルギー(再エネ)の利用拡大および分散型エネルギー社会の到来を見据え、分散電源の活用を中心とした次世代型エネルギー供給・地域サービス事業を成長事業の1つと位置づけている。蓄電システムや自家発電設備などのエネルギーリソースを制御するVPPの実証に取り組むことにより、再エネ導入に伴う、電力需給バランス調整に関する知見を早期に取得し、電気事業の収益力向上を目指す。

 今年度、①SSでの太陽光発電の発電量を有効に活用するような蓄電池の充放電、制御最適化の実証、②製油所・製造所に保有する自家発電設備の稼働余力を活用する実証、③EVおよびEV充電器の最適な制御を目指す実証、④産業用蓄電システムを活用した実証、など4つのカテゴリでの実証を計画。また、今年6月には、蓄電池事業で先行している英国の蓄電池ファンドへ出資を行うなど、VPP事業に関わる知見・ノウハウの獲得を積極的に行っている。

 同社は今後も、低炭素・循環型社会の実現に向けて、エネルギーサービスプラットフォームの構築に積極的に取り組んでいく考えだ。

昭和電工 イソシアネートモノマーの応用が接着学会技術賞に

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2020年7月14日

 昭和電工は13日、日本接着学会より「2020年度第42回日本接着学会技術賞」を受賞したと発表した。同社の「イソシアネートモノマーと粘接着・塗料分野の応用」が、粘接着剤・塗料業界に対する樹脂のデザイン・機能の向上を実現し、業界に貢献したことが評価された。

 受賞対象であるイソシアネートモノマー「カレンズ」は、各種の物質と容易に結合するイソシアネート基と、共重合や光・熱硬化が可能なアクリル基を同一分子内に持つ同社独自の製品。ポリマーに添加・反応させると短時間かつ効率よく光硬化性を付与できる機能と、アクリル共重合体のモノマーに用いると低温でイソシアネート硬化を可能にする機能を備える。

 「カレンズ」は、粘接着用途では粘度上昇や副生物の生成なく簡便に合成でき、光硬化性も高いため近年のUV‐LED化に合致した製品開発が可能。また塗料分野では、簡便にイソシアネート基を樹脂構造中に挿入できるため、低温で硬化でき省エネルギー化に貢献できるほか、低温硬化型イソシアネートブロック体も合成できる。塗料の水系化・高機能化のトレンドにも合致し、機能性高分子分野のキーマテリアルとして幅広く採用されている。

 同社グループは、「個性派企業(収益性と安定性を高レベルで維持できる個性派事業の連合体)」を実現し、「世界トップレベルの機能性化学メーカー」となることを目標としている。今後も独特な化学構造と機能を持つ「カレンズ」シリーズの安定供給体制と提案力強化により、顧客の開発サポートを通じて事業を拡大し、個性派事業の確立を目指す考えだ。

 

高エネ研など 結晶構造の自動解析精度、熟練者超え

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2020年7月13日

 高エネルギー加速器研究機構(高エネ研)と総合研究大学院大学、産業技術総合研究所(産総研)は共同で、数理最適化の一手法であるブラックボックス最適化手法を用いて、物質・材料研究に必要不可欠な粉末X線回折(PXRD)パターンの解析を自動化・高効率化する手法を開発した。これにより、熟練者を超える解析精度と解析速度だけでなく、従来の手法では得られない結晶構造候補の発見も可能になった。

 物質・材料の機能と性質の多くは結晶構造で決まるため、その詳細な解析は、様々な物理現象研究や高機能材料開発の出発点となる。最も広く利用されている分析手法は、PXRD法だ。その測定結果には結晶構造情報以外のパラメータも多く含まれるため、結晶構造解析のためのパラメータ調整(リートベルト精密化法、仮定した結晶構造から計算した回折パターンと実測パターンが一致するようにパラメータを調整)には膨大は労力を要し、人的・時間的コストが問題となる。熟練者でも1日に1件であり、データ解析の自動化や効率化が求められている。

 今回、リートベルト精密化法が機械学習のハイパーパラメータ最適化問題(複数のパラメータ設定の最適化)と類似していることに着目。これに有効なブラックボックス最適化手法(アルゴリズム)をリートベルト精密化法に応用して、PXRDパターン解析を効率化する手法を開発した。これにより、熟練者を超えるフィッティング精度、つまり測定データとシミュレーション結果の高い一致精度がありながら、ノートPC使用で1時間程度にまで時間を短縮。また、従来からの熟練者の典型的な手順では到達できなかった結晶構造の候補を発見することにも成功した。

 この手法により、結晶構造解析のほか、電子顕微鏡、X線顕微鏡、X線吸収微細構造(XAFS)など様々な計測機器によるデータ解析の自動化が可能となり、計測と解析とを統合した計測機器開発に活用されると考えられる。そして、物質・材料の研究現場でのハイスループットで高精度な材料データを取得するという課題を解決し、世界最先端の研究開発プラットフォームが構築されることが期待される。

太陽インキ製造 高周波対応新シードフィルムで初受賞

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2020年7月13日

 太陽ホールディングスはこのほど、子会社の太陽インキ製造(埼玉県嵐山町)が「高周波対応配線形成用新シードフィルム」で「第16回JPCA賞」を受賞したと発表した。

高周波対応配線形成用新シードフィルムの外観
高周波対応配線形成用新シードフィルムの外観

 同賞は日本電子回路工業会が主催・運営する「第50回国際電子回路産業展」の出展者を対象とした、電子回路技術および産業の進歩・発展に貢献した製品・技術への表彰制度として2005年に創設されたもの。今回、太陽インキ製造にとって初の受賞となる。

 同開発品は次世代通信規格5Gの高周波帯域用の電子機器向けにDICと共同開発したもので、ナノメタルからなるシード層を両面にコートしたフィルム。5Gの普及に伴い、使用周波数帯域であるSub6やミリ波帯で高周波信号をロスなく伝送する銅配線技術が重要となる。高周波であるほど電流は銅配線表層しか流れず、表層が平滑でなければ伝送損失が増す。そのため、配線の表面や側面を平滑にする銅配線形成技術が求められている。

本開発品による銅配線形成例
本開発品による銅配線形成例
銅配線の厚み=8μm 斜め配線L/S=10/10 縦配線L/S=8/8(um)

 従来の銅シード・モディファイドセミアディティブプロセス(MSAP)では、シード層の銅のエッチングにより銅配線も溶解し、表面や側面の凹凸が大きくなる課題があった。今回シード層を銅以外の金属とすることで、エッチングによる銅配線の溶解をなくし、表面や側面が平滑なファインパターンが得られた。主な用途として、低損失の高周波伝送配線、高品質アンテナ、高精度配線・高密度配線などが期待できる。