BASFとシノペック ネオペンチルグリコールの能力倍増

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2020年10月28日

 BASFとシノペック(中国石油化工集団)はこのほど、両社の出資比率50%:50%の合弁会社BASF-YPCが中国・江蘇省南京市のフェアブントサイト(統合生産拠点)のネオペンチルグリコール(NPG)生産能力を拡大したと発表した。2015年設立の同工場の年産能力は、今回の拡張工事完了により4万tから8万tに倍増した。これは、現地生産を強化するというBASFのコミットメントを高め、環境に優しい粉体塗料に対する中国市場の高まるニーズに応えるもの。

 NPGは化学的・熱的安定性が高く、多くの最終用途、特に各種塗料やプラスチック用ポリエステル、アルキド樹脂の製造で優れた性能を発揮するポリアルコール。重要な応用分野は粉体塗料で、特に家電製品や建設業界の塗料で成功している。

 BASFはドイツ、米国、中国(南京、吉林)にNPG生産拠点をもつ世界有数のメーカーで、数十年にわたり幅広い業界に供給し、存在感、革新力、供給の信頼性で貢献する考えだ。

三井化学 温度依存性新素材がワコール社ブラに採用

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2020年10月28日

 三井化学は27日、同社が開発した、ヒトの体温を感知してカラダをやさしく包み込む新素材「HUMOFIT(ヒューモフィット)」が、ワコールから来月に発売されるマタニティ向け新商品「とろけてバストになじむブラ―産後―」に採用されたと発表した。 

ワコール製「とろけてバストになじむブラ―産後―」の上辺に『HUMOFIT』を採用
ワコール製「とろけてバストになじむブラ―産後―」の上辺に「HUMOFIT」を採用

 三井化学の「HUMOFI」は、常温ではゴムのようにしなやかで、曲げ・折り・ひねり・伸ばしのあとでも緩やかに元の形状に戻る「形状記憶性」をもち、加温すると柔らかく冷やすと硬くなる「温度依存性」を併せもつ。ヒトとモノとの接点をもっとやさしく、「ヒトに寄り添う」発想をベースに、同社グループの素材開発と加工技術開発で実現した新素材だ。そのユニークな特性は、医療・介護、スポーツ、アパレルなど様々な用途で高く評価されている。

 ワコールの「とろけてバストになじむブラ―産後―」は、授乳前後のバストボリュームの変化に対応し、授乳期から卒乳期、さらに卒乳後も長く使える産後用ブラジャーのコンセプトの下、カップ上辺に「HUMOFI」の特殊シートを搭載した。ヒトの体温に反応してカラダになじむ特殊機能により、バスト変化の大きい産後の胸にジャストフィットするマタニティブラジャーとなっている。

産総研と理研 バイオマスベースの機能性ポリマーを開発

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2020年10月27日

 産業技術総合研究所(産総研)と理化学研究所(理研)はこのほど、共同でバイオマスを原料とする新たな機能性ポリマーを開発した。

 性質の異なる2つのバイオマスベース原料の縮合体をモノマーとして重縮合させた、ヒドロキシ桂皮酸骨格とリシノール酸骨格が規則的に交互配列したコポリマーだ。ヒドロキシ桂皮酸骨格中のメトキシ基数で機械物性や熱物性が変化。ゴムやフィルムなどの透明材料としての応用が期待される。

 2030年の世界のバイオ市場は約200兆円と予測され、欧州は既存石油由来製品の3割をバイオ由来製品で代替する目標を掲げるが、実用化には強度面が課題だ。産総研がバイオマス由来の機能性モノマーの分子配列制御で高物性ポリマーを目指す中、共同事業「理研‐産総研チャレンジ研究」の「新・バイオマスニッポン総合戦略」の支援で実施。米ぬかやリグニンに含まれるヒドロキシ桂皮酸類(クマル酸、フェルラ酸、シナピン酸)とひまし油由来のリシノール酸という性質の異なる2分子の縮合体を重縮合し、2種の機能性分子が規則的に交互配列した純粋な共重合体(コポリマー)を合成した。

 リシノール酸だけの重合体(PRA)は室温で液状だがコポリマーは固体で、加熱プレスで圧縮成形加工したフィルムはいずれも無色透明で繰り返し屈曲が可能だ。クマル酸は引張応力が弱く引きちぎれ、フェルラ酸は応力は最小だが切れずによく伸び(800%以上)、シナピン酸は応力が最大で強靭(15.4M㎩、585%)、破断後にゆっくりと元に戻る形状記憶性を示した。

 ガラス転移温度はポリマー骨格中のメトキシ基数に関係し、0個のPRAがマイナス73℃、1個のクマル酸がマイナス15℃、2個のファルラ酸が4℃、3個のシナピン酸が24℃と分子設計上の重要な指針となる。加熱するといずれも350℃付近で約50%が分解したが、PRAがその後も急速に分解が進んだのに対し、コポリマーはその後の分解は緩やかで完全分解は500℃付近だった。安価で豊富な非可食性バイオマスを原料とする「100%バイオマスベースのポリエステル」として、ゴム材料や包装材料など様々な分野への応用が期待できる。

 今後は生分解性評価などを進める一方、試料提供などで連携を進め、実用化に向けて物性を向上させていく考えだ。

 

ユニ・チャーム 紙おむつのリサイクル実証事業を開始

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2020年10月27日

 ユニ・チャームはこのほど、東京都が公募した「使用済み紙おむつのリサイクル推進に向けた実証事業」に対し「効率的な収集・運搬手法」モデルの事業者に採用された。東京都の各自治体・企業・団体と協業し、「使用済み紙おむつのリサイクル」推進を通じて持続可能な社会への貢献を目指し、地球環境保全と経済的成長を両立する事業活動に取り組む。

 高齢社会の伸展で紙おむつの使用量は増加し、環境省の予測では2015年度の年間約200万t(一般廃棄物の約4.5%)が2030年度には約250万t(同約7%)に増加する見込み。しかも使用後の紙おむつは水分を吸って嵩が増し、廃棄処理に大きな負担となっている。

 同社は循環型社会を目指し、2015年より使用済み紙おむつの再資源化プロジェクトを開始。16年からは鹿児島県志布志市や大崎町との実証実験を通じて、パルプなどを衛生物品に利用可能なレベルまで再生する技術の確立、洗浄・分離時に使用する処理水まで再利用する「総循環型モデル」を推進している。

 ここで欠かせないのが、使用済み紙おむつの分別方法や分別回収に至る事業計画。都内自治体の協力で高齢者施設・保育園などで使用済み紙おむつの分別を行い、回収会社などとともに分別回収の実証実験を開始する。

 同実証事業を通じて、使用済み紙おむつのリサイクル事業を国内外で展開できる循環型モデルを構築し、新たな課題を明確にして対策を取っていく考えだ。

実証事業イメージ
実証事業イメージ

 

三菱マテリアル 構造体自動設計の東大発スタートアップに出資

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2020年10月27日

 三菱マテリアルはこのほど、あらゆる構造体を自動設計する独自技術を開発・提供する東京大学発のスタートアップ企業Nature Architects(ネイチャーアーキテクツ)へ出資を行ったと発表した。なお出資はMMCイノベーション投資事業有限責任組合を通じて行った。

 ネイチャーアーキテクツは、部品軽量化のために必要な部分のみ強度をもたせたり、硬い部材に振動吸収機能を付与するなど、求められるデザインや機能に応じた最適構造を自動で設計・製造する独自設計技術「ダイレクトファンクショナルモデリング(DFM)」を開発・提供する会社。

 三菱マテリアルは、両社の協業により同社の非鉄金属などの材料特性に関する知見とネイチャーアーキテクツのDFMを掛け合わせ、新たな付加価値をもつ独自の製品・サービスを開発・提供していくことを目指す。具体的には、高度な機能と軽量が求められる航空・宇宙用途向けの新材料などの開発に取り組む考えだ。

 三菱マテリアルグループは「人と社会と地球のために」の理念の下、「ユニークな技術により、人と社会と地球のために新たなマテリアルを創造し、持続可能な社会に貢献するリーディングカンパニー」となることをビジョンとし、非鉄金属素材と付加価値の高い製品の提供を通じて、豊かな社会の構築に貢献するとしている。

帝人フロンティア 高吸水・速乾素材を開発、珪藻土の構造に着想

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2020年10月27日

 帝人フロンティアはこのほど、バスマットなどに利用される珪藻土の微細な構造から着想を得た、新発想の高吸水・速乾素材「ラッカン」を開発した。2021年春夏シーズンからファッション衣料を中心に展開し、今年度に5万m、2022年度に50万mの販売を目指す。

高吸水・速乾素材『ラッカン』。ランダムな繊維構造からなる微細な凹凸層構造が特長
高吸水・速乾素材「ラッカン」。ランダムな繊維構造からなる微細な凹凸層構造が特長

 近年、共働き世帯や単身世帯の増加などに伴い、洗濯をはじめとする家事にかける時間を短縮したいとの要望が強くなっており、洗濯後に素早く乾くなど、取り扱いが容易なウェアへのニーズが高まっている。一方で、近年のトレンドでもある、ナチュラルな外観や風合いをもつウェアに対するニーズも高い。 こうした中、同社は独自の技術により、高い吸水性と拡散性をもつ珪藻土の凹凸構造と表面上の微多孔を特殊構造体として再現することで、高吸水・速乾素材「ラッカン」を開発した。

 『ラッカン』使用例
「ラッカン」使用例

 具体的には、加工によって膨らみを増す複合糸を経糸に、加工によって伸縮する糸を緯糸に使って設計した特殊な織物構造により、生地表面に微細な凹凸層構造を発現させた。併せて、異収縮複合糸が凸部を形成するような織り構造とすることで、糸間に空隙をつくり、珪藻土表面の微多孔構造を再現した。

 また、複合糸に繊度差や収縮差をもたせることでランダムな繊維構造とし、生地表面のナチュラルな天然繊維調と柔らかな風合いを再現した。この構造により、通常のポリエステル素材に比べ乾燥時間を約40%短縮。50回の洗濯を繰り返しても、吸汗・速乾性を維持することが可能になった。

リファインバース ナイロン製ロープのMR事業を開始

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2020年10月27日

 三菱ケミカルが出資しリサイクル事業を手掛けるリファインバースは26日、リサイクルナイロン樹脂「リアミド」事業のさらなる拡大のため、新たに船舶係留用ロープのマテリアルリサイクル(MR)を開始すると発表した。

 昨年の販売開始以降、リサイクルナイロン樹脂「リアミド」には、海洋プラスチック問題やサーキュラーエコノミーへの社会的関心の高まりを背景に、数多くの引き合いがあり、原料ソースの拡大が必要となっている。

 同社はこれまで、廃棄漁網とエアバッグ工程端材を主要な原料として「リアミド」を製造販売してきたが、今回、ナイロン製船舶係留用ロープについても同社が開発したプロセスによりリサイクル可能であることを確認した。今後、ナイロン製船舶係留用ロープを新たな原料として「リアミド」事業をさらに拡大していく。

 同社は、リサイクルナイロン樹脂「リアミド」の原料ソース拡大、および材料開発・用途開発による再生素材の付加価値向上を進め、サステナブルな社会の構築に具体的に貢献しながら、事業拡大を推進していく考えだ。

リファインバース ロープ 

東洋紡 タイで合弁会社、エアバッグ原糸生産工場を新設

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2020年10月27日

 東洋紡は26日、PET樹脂製造世界最大手であるインドラマ・ベンチャーズ傘下のインドラマ・ポリエステル・インダストリーズ(タイ・バンコク、IPI)と、自動車エアバッグ用原糸を生産する合弁会社(東洋紡50%、IPI50%)の設立で合意し、同国ラヨーン県にあるIPIの工場敷地内にエアバッグ原糸生産工場を新設すると発表した。生産能力は年間1万1000t(最大吐出量)、2022年春の稼働開始を予定する。

エアバッグ原糸生産工場建設地のIPIラヨーン工場
エアバッグ原糸生産工場建設地のIPIラヨーン工場

 エアバッグ市場は、自動車1台当たりの搭載点数の増加や新興国での装着率の伸長など、年率3~4%での需要拡大が見込まれている。東洋紡は2014年に、インドラマ・ベンチャーズと共同で、エアバッグ原糸メーカーで世界2位(当時)のシェアをもつドイツのPHPを買収。その後、インドラマグループとの関係を強化しながら、エアバッグ事業の拡大に注力してきた。

 モビリティ事業を最重要分野の1つに位置づける東洋紡とインドラマグループは、タイでの両社のリソースを効果的に活用できることなどから、このたび、共同でエアバッグ用ナイロン原糸の生産合弁会社を設立することで合意に至った。

 東洋紡は今後も、日本・タイ・中国・米国・欧州の世界5拠点で、原糸から基布まで一貫して生産・供給できる唯一のメーカーとして、顧客ニーズにグローバルに対応していく考えだ。

三菱ケミカル コークス事業を構造改革 コークス炉を縮小

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2020年10月27日

 三菱ケミカルは26日、鉄鋼業界の構造変化に伴い、香川事業所(香川県坂出市)の高炉向けコークス事業について、最適な生産および販売体制に向けて構造改革を実施すると発表した。競争力優位な生産体制への集約を図るため、コークス炉323門を250門に縮小し、最適な運転体制に移行する。

 一方、輸出販売を強化するため、現行1ラインの輸出出荷設備を2ラインへと増強、2022年3月末に稼働させる予定だ。同社のコークスは、その品質の均一性・安定性の高さから、「SAKAIDE COKE」として海外の顧客からも評価が高い。

 同社は今後とも、高品質なコークスの安定供給に努めるとともに、今回の構造改革により、事業のグローバル展開を推進することで競争力を強化していく考えだ。

産総研 人工光合成で海水から水素・酸素を高選択で製造

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2020年10月26日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、可視光に応答する酸化物半導体光電極への太陽光照射により、食塩水や海水など塩化物イオン含有の水溶液から低電解電圧で水素と酸素を選択的に製造する人工光合成技術を開発した。

 光電極表面に少量のマンガン酸化物を担持するだけで、次亜塩素酸(HClO)生成が抑制されることを発見。光電極による人工光合成技術で水素製造システムの実現に加え、天然光合成系の酸素発生中心がマンガンである理由を解くカギが示唆され、実用化・基礎研究双方への貢献が期待される。

 太陽光を利用し、光電極や光触媒での水分解で水素・酸素を製造する技術は低コスト・クリーンで、水素社会実現の基盤技術として研究が盛んだ。海水の使用は低コストだが、酸素とともに海水中の塩化物イオンからHClOを生成。殺菌・消毒機能は有用だがシステムの腐食劣化を促進するため、酸素だけを選択的に生成する光電極の開発が求められている。

 産総研が開発した酸化物半導体光電極BiVO4/WO3/FTOは太陽光を利用して低電圧で水を効率的に分解して水素と酸素を生成。この光電極表面に各種金属イオン含有前駆体溶液を塗布・焼成し、金属酸化物修飾を施した。

 イオン交換膜による二室型反応容器で塩化ナトリウム(NaCl)含有反応溶液を使った電気化学反応システムで、これら光電極の酸素とHClOの生成能力を評価。無修飾の光電極からは酸素とHClOが同時生成したが、マンガン修飾光電極のみHClOはほとんど生成せず酸素選択性は90%以上を示した。

 NaClの濃度やpH、マンガン前駆体やマンガン酸化物の結晶構造の違い、異種元素との複合などの影響は小さく、広範な条件下で選択的に酸素を発生。多種多様な共存イオンを含む人工海水でも再現した。マンガンのこの特異性は、酸素生成に比べてHClO生成の過電圧が相対的に著しく高い、マンガン固有の触媒作用によるものと示唆された。

 天然光合成の酸素発生中心はマンガンの酸化物集合体から成るが、今回「生物にとって有害なHClO生成を幅広い条件下で抑制する特異性が酸素発生中心の進化に関与している」という新たな仮説を提唱できた。今後、今回開発した光電極の長期安定性向上など、太陽光による水素製造の実用化を目指した研究開発を行うとともに天然光合成の進化仮説の立証も行っていく考えだ。