東ソー ハイブリッドリサイクル技術、NEDO事業に

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2020年9月10日

 東ソーは9日、東北大学、産業技術総合研究所(産総研)、宇部興産、恵和興業、東西化学産業、凸版印刷、三菱エンジニアリングプラスチックスと共同で提案した、「多層プラスチックフィルムの液相ハイブリッドリサイクル技術の開発」が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業に採択されたと発表した。

 同事業は、「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」で進める「廃プラスチックを効率的に化学品原料として活用するためのケミカルリサイクル技術の開発」に公募したもの。なお、同事業の委託期間は今年6月から来年3月までとなっている。

 採択された技術は、包装・容器に多く使用されている多層プラスチックを高温高圧水中で処理することで、特定のプラスチック成分のみを原料にまで分解し、得られた原料と単離されたプラスチックの双方を再利用する。食品などで汚染されたプラスチックごみをそのまま処理できる可能性があり、一般ごみのリサイクル率向上に寄与することが期待される。

 今回の委託事業では、産官学で連携してプラスチックの分解条件の探索と連続処理プロセスの開発を進めることでプロセスの高効率化を図るとともに、社会実装を見据え、対象となる廃棄物の調査と処理プロセス適用時のLCA(ライフサイクルアセスメント)評価を行っていく。

NEDO 地球環境ムーンショット目標に13テーマを採択

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2020年9月9日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、「ムーンショット型研究開発事業」の中の目標4「2050年までに地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」を目指す研究開発プロジェクト13件を採択したと発表した。

 日本発の破壊的イノベーション創出を目指した挑戦的な研究開発(ムーンショット)推進に向け、総合科学技術・イノベーション会議で「ムーンショット型研究開発制度」を創設し、今年1月に6つの目標を決定。今回、目標4の実施に向け、公募を経て採択した。

 開発は次の3分野からなる。①大気中CO2の回収と利用の「温室効果ガス(GHG)の回収・資源転換・無害化技術」8件。2050年までのGHG80%排出削減には、排出抑制だけでなく排出後のGHG回収技術が必要。大気中のCO2濃度は0.04%と希薄で、直接回収(DAC)には大量のエネルギー消費や高コストなど多くの課題がある。DACの課題解決と回収したCO2の資源化、さらに地球温暖化係数がCO2の数十倍、数百倍ある農地由来のメタンやN2Oの無害化も対象。2050年までにDACの世界的普及を目指す。

 ②農地や工場などから排出される低濃度窒素化合物の無害化と利用の「窒素化合物の回収・資源転換・無害化技術」2件。人間活動由来の窒素化合物は、プラネタリーバウンダリーの限界値を超えた状態にあると言わる。湖沼や海域の富栄養化、酸性雨や気候変動などへの影響に対応する。

 ③海洋中で適切に生分解するプラスチックの「生分解のタイミングやスピードをコントロールする海洋生分解性プラスチックの開発」3件。日本の「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」実現には、海洋流出しても環境影響の少ない海洋生分解性プラスチックが必要。海洋流出後に適切に分解するよう、生分解のタイミングやスピードをコントロールするスイッチ機能の開発を行う。

 これらを通じて、「地球温暖化問題の解決(クールアース)」と「環境汚染問題の解決(クリーンアース)」を目指していく考えだ。

BASF 高温耐性PPA使いGEHR社が押出成形品へ

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2020年9月9日

 BASFはこのほど、押出成形で半製品化できるポリフタルアミド(PPA)「Ultramid Advanced N 5H UN」を開発したと発表した。半製品の熱可塑性プラスチック押出成形の世界的リーダーGEHR社(ドイツ)は、同PPAを使って直径50mmの押出成形品の製造に世界で初めて成功した。従来のPPAに比べて扱いやすく、溶融安定性も高いため品質を損ねずに半製品の生産が可能。最終製品に仕上げるための切削加工も容易だ。

 「Ultramid Advanced N」は半芳香族の化学構造をもち、高温下の機械特性、厳しい使用環境下での耐薬品性と耐加水分解性、100℃以上の高温での耐摩擦、耐摩耗性に優れ、湿潤環境下での寸法安定性は全PA中で最高。半製品や小型組立部品の押出成形だけでなく自動車産業、機械工学、厨房設備など幅広い用途にも適する。 

 GEHR社の押出ロッドにより、高温環境で使用される部品や寸法安定性が必要なポンプ部品、歯車、サーモスタットハウジング、スライディングレールなど幅広い用途に使用可能。自動車用途ではモーターやトランスミッションオイル、冷却剤、酸、塩や凍結防止剤と接する部品に特に適する。高温環境でも優れた耐衝撃性と耐摩擦性、耐摩耗性を必要とする部品にも使用可能だ。

 これにより、ポリエーテルエーテルケトンやポリアリールスルホン半製品とエンジニアリングプラスチック半製品との市場ギャップを埋めることができた。

カネカ 生分解性ポリマーが資生堂の化粧品容器に採用

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2020年9月9日

 カネカはこのほど、「カネカ生分解性ポリマーPHBH」が「SHISEIDO」ブランドの新製品「アクアジェル リップパレット」の製品ケース(ボディ、蓋)に採用されたと発表した。今年11月より発売される。

アクアジェル リップパレットのイメージ。(提供:株式会社資生堂のブランド「SHISEIDO」)
アクアジェル リップパレットのイメージ。(提供:株式会社資生堂のブランド「SHISEIDO」)

 両社は昨年より化粧品容器の開発に共同で取り組み、資生堂の同製品のコンセプト「海を大事に想う」という考え方が「PHBH」の海洋分解性と合致することから採用。化粧品用途では初めての採用になる。

 「PHBH」はカネカが開発した100%植物由来の生分解性ポリマー(共重合ポリエステル)で、幅広い環境下で優れた生分解性を示し、海水中での生分解認証「OK Biodegradable MARINE」を取得。海洋汚染低減に貢献する。

 昨年末、同社高砂工業所(兵庫県)に従来の5倍にあたる年産5000tのプラントが竣工し、グローバル展開する多くのブランドホルダーとストロー、カトラリー、食品容器包装材など幅広い用途で検討が進んでいる。急拡大する需要にタイムリーに応えるため、本格的量産プラントの建設を早期に決定する見通し。

 同社は「カネカは世界を健康にする」という考えの下、今後もソリューションプロバイダーとしてブランドホルダーと共同してグローバルに価値を提供していく考えだ。

大陽日酸 Li電池市場参入目指し米国ベンチャーと提携

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2020年9月9日

 大陽日酸はこのほど、液化ガス電解液ベンチャーSouth8 Technologies(米国カリフォルニア州)と技術・業務提携を行ったと発表した。South8は次世代の2次電池やリチウム金属電池(1次電池)、キャパシタに使う新しい電解液「LiGas」を開発し、未来のクリーンエネルギーにつながる蓄電デバイス向けの革新的技術をもつ。

 「LiGas」は液化ガスを主成分とした電解液で、凍結することなくマイナス80℃からプラス60℃の広い温度範囲で安定に動作し、化学的に安定で、高反応性電極材料と組み合せて高エネルギー密度が得られるため、従来の電解液より蓄電デバイス性能が向上する。全天候型グリッドストレージ、電気自動車、ドローンなどの分野での使用が期待される。

 大陽日酸の高純度ガス製造・供給技術と液化ガス技術を生かして、液化ガス電解液製造に関わるガス関連技術を共同開発する。同社グループの販売チャネルを通じ、日本、アジア、欧州、米国の蓄電デバイス市場への革新的技術の提供を目指す。

 この取り組みは同社の中期経営計画「Ortus Stage 2」のオープンイノベーション戦略の一環で、最先端ベンチャー企業との技術・業務提携による新規成長市場向けの商材獲得と製品開発を積極的に実施している。

 

東北大学など 水と高圧氷の界面に「新しい水」を発見

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2020年9月8日

 東北大学と北海道大学、産業技術総合研究所(産総研)、東京大学はこのほど、高圧下で水が凍ってできる氷の表面に、通常の水とは混ざらない異構造・高密度の「新しい水」を発見したと発表した。水の異常物性を説明する「2種類の水」仮説の検証に新たな道を示した。

 水はありふれた存在だが、特異な物性をもつ奇妙な液体であり、多くの自然現象を支配している。たとえば雪だるまが作れるのは、0℃以下でも存在する氷表面の液体層のおかげだ。

 マイナス20℃、248M㎩の低温高圧条件で生成する氷Ⅲの、加減圧時の成長・融解過程を光学顕微鏡で観察。加圧成長時には界面に流動性の均質な液体膜が形成し、加圧を止めると不均質化して迷路のような模様になった。これは通常の水と新しい水が混ざり合わない異なる構造をもつことを示している。

 減圧融解時には活発に動く微小液滴が形成。この水は液滴の濡れ角から高密度であり、分子動力学シミュレーションからは氷Ⅲに近い構造であると考えられる。以上から、水/氷界面にはナノメートルオーダーの氷から水へ連続的に変化する液膜があるという通説に反し、マイクロメートルスケールの高密度水の液膜が存在することが明らかとなった。

 また25℃、954M㎩の常温高圧条件で結晶化する氷Ⅵ/水界面にも高密度の新しい水の生成がレーザー干渉顕微鏡で確認され、水/高圧氷界面の高密度水形成の普遍性が示された。なお、通常の氷は氷Ⅰhで六角柱状の格子構造、今回の低温高圧環境下の氷Ⅲは立方体構造、常温高圧環境下の氷Ⅵは底面が正方形の直方体構造である。

 今回の融液/結晶成長挙動の解明は、融液から機能性材料が生成する過程の解明に、さらには太陽系天体内部の高圧状態の氷から天体の形成過程の解明にも役立つと期待される。

日本製紙 抗ウイルス・抗菌・消臭性セルロースを開発

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2020年9月8日

 日本製紙はこのほど、「抗ウイルス」および「抗菌・消臭」性能をもつ変性セルロース(開発品)を開発したと発表した。

変性セルロース単体と金属イオンを担持させた変性セルロース
変性セルロース単体と金属イオンを担持させた変性セルロース

 セルロースナノファイバー(CNF)製造の中間体である変性セルロースを原料とし、表面に金属イオンを担持させることで高い抗ウイルス性能、抗菌・消臭効果が発現した。セルロースであるため不織布、紙などへの加工が容易で、不織布をベースとする衛生材料、フィルターなど日用雑貨・工業用途への採用が期待される。

金属イオン担持変性セルロースを不織布に加工したサンプル
金属イオン担持変性セルロースを不織布に加工したサンプル

 同変性セルロースを配合した不織布による性能試験の結果、2種のウイルスを用いた抗ウイルス性試験では2時間後にウイルス感染価は99.99%以上低減、3種の細菌による抗菌性試験では18時間後に菌数は99.9%以上低減、またアンモニア、酢酸、硫化水素の消臭試験では2時間後に臭気量は90%以上低減した。不織布用途以外では、「抗ウイルス」「抗菌・消臭」性能をもつ紙製品(印刷用紙ほか)の上市を9月上旬に予定している。

 同社グループは「紙でできることは紙で。」を合言葉に、再生可能な資源である「木」を原料とし、リサイクル可能な「紙」「パルプ」に新たな機能を付与した多彩な製品を提供。今後も、新たな機能をもつ製品を開発し、「紙」「パルプ」の利用シーン拡大に努めていく考えだ。

 

NEDO 廃プラリサイクルのプロセス技術開発に着手

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2020年9月7日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、廃プラスチックを適正に処理し資源として循環させるための「革新的プラッスチック資源循環プロセス技術開発」事業に着手すると発表した。今年度からの5カ年計画で事業予算は35億円、研究開発は4項目、委託先は24団体だ。 

 現在廃プラは年間約900万t、そのうち再生利用(マテリアルリサイクル)は約210万t(うち約90万tは輸出)、コークス炉やガス化原料(ケミカルリサイクル)は約40万t、固形燃料、発電、熱利用など熱エネルギー回収(エネルギーリカバリー)は約500万tである。

 しかし最近のアジア新興諸国の輸入規制の強化や、SDGs、ESG投資などによる再生プラの利用拡大に対し、廃プラの資源価値を高め、経済的に資源循環させることが必要。リサイクル技術を発展させ、資源効率性の向上、付加価値の創出、CO2の排出削減が求められる。

 資源循環は①再生方法に則した廃プラの選別、②同等性能材料への再生(マテリアルリサイクル)、③石油化学原料への転換(ケミカルリサイクル)、④再生困難な廃プラからのエネルギー回収・利用(エネルギーリカバリー)のプロセスから成り、各々に開発項目を設定した。

 ①は「高度選別システム」で、多種・混合、汚染廃プラを複合センシング・人工知能、ロボットを使って高速・高精度に自動選別する技術。②は「材料再生プロセス」で、劣化要因を解明しそれに応じた材料再生・成形加工する技術。③は「石油化学原料化プロセス」で、再生困難な廃プラを既存の石油精製・石油化学設備で分解・転換する技術。そして④の「高効率エネルギー回収・利用システム」は、再生困難な廃プラを、単純な焼却ではなく燃焼エネルギーを効率よく回収・利用する技術だ。

 これら技術を適用し、2030年度までにこれまで国内で再資源化されていなかった廃プラのうち約300万t/年の有効利用を目指す。

DSM 吉田カバンの記念モデルに強化レザーを提供

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2020年9月7日

 DSMはこのほど、ECCOレザー社と共同開発した「ダイニーマ ボンデッドレザー」が、日本の老舗メーカーの吉田カバンが販売する「PORTER フリースタイル」シリーズの新製品に採用されたと発表した。

「ダイニーマ ボンデッドレザー」は、DSMの、鉄の15倍の強度を誇り世界最強の繊維と言われる「ダイニーマ」繊維を、ECCOレザー社の高品位レザーにボンディング加工することで独特な質感を演出する。通常、レザーの薄さを極限まで追求すると、耐久性が低下する懸念があるが、「ダイニーマ」繊維の軽量高強度の特性を生かすことで、極めて薄く高強度のハイブリッドレザーが実現した。

 吉田カバンは、創業85周年の記念モデル「PORTER フリースタイル」シリーズに、このハイブリッドレザーを採用することで、「フリースタイル」シリーズのコンセプトを現代的にアップグレードすることに成功した。

 なお、「PRTER フリースタイル ダイニーマ レザー」はPORTE表参道で販売を開始しており、今後は他店舗でも展開を予定している。

東ソー CO2分離回収の技術開発がNEDO事業に採択

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2020年9月7日

 東ソーはこのほど、九州大学と共同提案した「革新的CO2分離膜による省エネルギーCO2分離回収技術の研究開発」が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業に採択されたと発表した。

 同事業は、「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」の中で行われる「産業部門のCCUS/カーボンリサイクルの抜本的な省エネ化に資するCO2分離・回収技術」に公募したもの。

 採択された技術では、アルカノールアミンを高分子マトリックスに担持した高分子膜からなるCO2分離中空糸膜モジュールを活用する。このアルカノールアミンを使ったCO2分離膜は、高いCO2選択性を示すため、高純度のCO2を分離回収することが可能になる。

 今回の委託事業では、産学連携を通じ、同中空糸膜モジュールを利用することで、省エネルギー型石炭火力発電の排ガス中から、CO2を分離回収する技術の確立を目指す。委託期間は今年6月から来年3月まで。

 東ソーは、気候変動問題に関わる課題として、温室効果ガス(GHG)排出量削減への取り組みが事業の中長期的な成長に繋がると考えている。今後も引き続き、エネルギー使用の効率化、GHG排出量の削減、CO2の分離回収・原料化による有効利用に向けた技術開発を推進し、持続可能な社会の実現に貢献していく。