ダイセル ポスト5Gシステムを開発、NEDO事業に採択

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2021年6月30日

 ダイセルはこのほど、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」について、2つの研究開発が採択されたと発表した。同社はこれを機に、エレクトロニクス実装材料の研究開発や事業化を加速し、経済産業省とNEDOが進める日本のポスト5G情報通信システムの開発・製造基盤強化に貢献する。

NEDOに採択された、「ミリ波・テラヘルツ帯向け高機能材料・測定の研究開発」概要
NEDOに採択された、「ミリ波・テラヘルツ帯向け高機能材料・測定の研究開発」概要

 「先導研究(委託)/基地局関連技術」では「ミリ波・テラヘルツ帯向け高機能材料・測定の研究開発」が採択。ポスト5Gの後半以降、ミリ波からテラヘルツ帯の高周波を利用することで通信帯域を確保し、さらなる高速大容量、超低遅延、および多数同時接続の実現が期待される。

 しかし、ミリ波(30~300G㎐)やテラヘルツ帯(300G㎐~3T㎐)では、伝送ロスによる信号品質の劣化や材料の測定技術が確立されていない。これらの課題解決に向け、同社は①次世代超ローロス低誘電材料、②平滑導体と低誘電材料の高信頼性接合、③テラヘルツ帯通信用材料の測定技術を開発する。この先導研究により、ポスト5Gの基地局向けリジッドプリント配線板の低誘電材料や接合の事業化、測定技術の標準化を目指す。

 一方、「先導研究(助成)/先端半導体製造技術(後工程技術)」では「ポスト5G半導体のための高速通信対応高密度3D実装技術の研究開発」が採択。ポスト5Gは、通信インフラからエッジデバイスまで、膨大な情報を低遅延で高速に伝達する半導体高度化技術への要求が急速に高まる。その実現には前工程の微細化加工だけではなく、複数の半導体を3次元で集積する先端後工程の重要度が増している。

NEDOに採択された、「ポスト5G半導体のための高速通信対応高密度3D実装技術の研究開発」概要
NEDOに採択された、「ポスト5G半導体のための高速通信対応高密度3D実装技術の研究開発」概要

 ポスト5G半導体に必要な高速通信対応高密度3次元実装を実現するために、①高周波対応高密度パッケージCu焼結接合技術、②高信頼・高性能ビルトアップ半導体サブストレイト技術、③高周波パッケージ導波路コネクタ技術を開発する。この先導研究により、先端後工程向けのCu焼結接合材料やバンプ形成絶縁接着材料の事業化、装置、周辺材料、プロセスなどのノウハウ組合せによるソリューションの提供、およびサブストレイト技術や導波路コネクタ技術の標準化、デファクト化を目指す。

 同社は、今後も長年培ってきた高機能材料や加工技術の強みを生かした様々な最先端の技術開発に取り組み、便利・快適な社会の実現に貢献していく考えだ。

NEDOなど カルボン酸合成技術開発、ギ酸を有効利用

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2021年6月29日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などはこのほど、計算・プロセス・計測の三位一体による技術開発スキームを活用し、高効率な触媒を使い、ギ酸とアルケンから様々な化学品の基幹原料となるカルボン酸を合成する技術を開発したと発表した。

 NEDOは超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクトに取り組み、革新的な機能性材料の創製・開発の加速化を目指している。今回、産業技術総合研究所(産総研)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)、日本触媒と共同で、安全で環境に優しいカルボン酸の合成技術を開発した。

 カルボン酸は、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、高吸水性樹脂などの高分子材料、医薬品、農薬などの有用化学品の基幹原料となるため工業的な応用も期待されている。しかし、これまでに報告されている例では、高圧条件や有毒で爆発性の高い一酸化炭素(CO)を使用することや、触媒以外にヨウ化メチル(CH3I)など環境負荷の高い複数の添加剤を大量に使用することが問題となっていた。

 今回開発した技術は、従来のような高圧条件を必要とせず、有毒で爆発性の高いCOガスや環境負荷の大きい添加剤を使用しない。さらに、ギ酸はCO2と水素から高効率に合成できるので、CO2を利用したクリーンな原料とみなすこともできる。この技術が実用化されれば、CO2を炭素資源として利用するカーボンリサイクル社会実現への貢献が期待できる。

 今後、触媒系の反応効率をさらに向上させるために、ロボティクスを活用したハイスループット実験により触媒のさらなる改良を迅速かつ効率的に実施し、最終的には化学品の連続生産技術であるフロー合成に使用できる固定化触媒の高速開発を目指す。

 なお日本触媒は、新化学技術推進協会(JACI)がオンラインで開催する「第10回JACI/GSCシンポジウム」(6月28~29日)で、研究成果の詳細を発表する予定。

 

BASF 洋上風力発電利用で380万tのCO2削減

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2021年6月29日

 BASFはこのほど、世界有数の再生可能エネルギー企業RWE(ドイツ・エッセン)とともに持続可能な工業生産のためのプロジェクト案を発表した。

 両社は再生可能電力の発電施設の増設と、気候保護に向けた革新的技術の利用について広範な協力を進める。発電容量2GWの洋上風力発電施設を追加建設し、グリーン電力をBASFの本社工場に供給し、CO2フリーの水素製造と基礎化学品生産の電化を目指す。電気加熱式スチームクラッカーなどのCO2フリー技術は、すでにパートナー企業と協力して開発を進めている。これにより年間のCO2排出削減量は約380万tとなり、そのうちの280万tは同工場で実現される見込みだ。

 BASFは、気候保護と競争力の維持を両立するための、明確なロードマップだとしている。なお、風力発電施設建造への公的補助金の利用は予定していない。この計画実現には適切な規制の枠組みが必要だとし、2030年以降の使用を想定した洋上発電プロジェクト用地の入札は、産業界のエネルギー転換のための重要な入札として特別指定し、さらにグリーン電力は再生可能エネルギー法の賦課金の対象とされるべきではないと主張している。なお現時点、CO2フリーの水素生産についての規制の枠組みは定められていない。

 将来に向けた変革には、再生可能エネルギー源からの安価で十分な量の電力が必須で、政策当局と業界の間で革新的な協力体制を敷き集中的に取り組み、バリューチェーン全体での協力が必要だとしている。電力業界と化学業界をリードする両社は、このパートナーシップにより変革に求められる各種条件をまとめ、各当事者の意思を結集する考えだ。また、気候中立的な工業生産はドイツでの付加価値と雇用を維持し、新技術の輸出機会を創出していくとしている。

東洋紡 新型コロナ検査薬が製販承認を取得、来月販売へ

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2021年6月29日

 東洋紡はこのほど、新型コロナウイルス遺伝子検査試薬「TRexGene(ティーレックスジーン)SARS-CoV-2検出キット」について、厚生労働省の製造販売承認を取得したと発表した。7月中にも医療機関と検査施設向けに販売を開始する予定。

新型コロナウイルス遺伝子検査試薬。7月から販売へ
新型コロナウイルス遺伝子検査試薬。7月から販売へ

 同検査キットは、鼻咽頭ぬぐい液や唾液などの生体試料から、リアルタイムPCR装置により新型コロナウイルスのRNAを検出する。検体に含まれる阻害物質の影響を受けにくい反応組成を採用したことで、RNA精製を行うことなく、最短約75分で検体の調製から検出までを行える。昨年8月に発売した新型コロナ検出用キットを基に、体外診断用医薬品として新たに開発した。

 同社は、今後もPCR技術を応用し、新型コロナ感染症をはじめ、様々な感染症の検査ニーズに対応する製品の開発に取り組んでいく考えだ。

昭和電工 フィルムタイプの接合技術を開発、異種材料を接合

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2021年6月29日

 昭和電工は28日、樹脂と金属など異種材料を簡便かつ強固に接合するフィルムタイプの接合技術「WelQuick」を開発したと発表した。今月からサンプル提供を開始している。

異種材料接合技術「WelQuick」
異種材料接合技術「WelQuick」

 近年、素材に対する軽量性や耐熱性、強度などのニーズは単一素材では解決できないほど高度化し、樹脂や金属などの異種材料を接合して複合化するマルチマテリアル化が進展。異種材料の接合には、液状接着剤やホットメルト接着剤による接着や、ボルトなどによる機械締結があり、接合強度とともに接着プロセスの簡便化や工程の短時間化が求められているが、その両立は困難だった。

 今回開発した接合技術は、接着成分をフィルム形状にすることで、従来の反応型接着剤の液体塗布の手間を削減し、取り扱いを簡便にした上、フィルム材料の固体と液体間の相変化を利用することで、これまで数十分必要であった接着時間を数秒にすることを可能にした。

:「WelQuick」接着例
「WelQuick」接着例

 ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロンなどの樹脂とアルミニウム、鉄、銅といった金属との接着に対応し、40通り以上の基材の組み合せで10MPa以上の高いせん断接着力を確認。また、接合スピードに優れた超音波溶着、金属に適用可能な高周波溶着、汎用性が高い加熱溶着など、顧客のニーズに合わせた溶着方法が利用できる。さらに、フィルム状態で常温での長期保管が可能なことに加え、溶着時にVOC(揮発性有機化合物)が発生せず環境への負荷を抑えられる。こうした特長から「WelQuick」は、顧客のコスト低減や製造プロセスの効率化によるCO2の排出量削減に貢献する。

 同社グループは、無機・有機・アルミニウムに関する幅広い技術・素材をもち、それらを融合することで、マルチマテリアル化が進む様々な事業分野に新たなソリューションを提供し、カスタマーエクスペリエンスの最大化を目指していく。

三井化学と日立製作所 材料開発を高速化するMIの実証開始

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2021年6月29日

 三井化学と日立製作所は28日、日立が開発した人工知能(Ai)を活用したマテリアルズ・インフォマティクス(MI)技術を、実際の新材料開発に適用する実証試験を開始すると発表した。同実証試験に先立ち、日立の開発技術を三井化学が提供した過去の有機材料の材料開発データで検証したところ、高性能な新材料の開発に必要な実験の試行回数が従来のMIと比較し約4分の1に短縮できることを確認。両社は今年度中をめどに、新製品・素材開発に向けた同技術の導入・成果を検証する技術実証を行い、来年度から実用化を目指す考えだ。

従来技術との比較。少量の実験データでも高性能材料の化学式を自動生成できる深層学習技術
従来技術との比較。少量の実験データでも高性能材料の化学式を自動生成できる深層学習技術

 新製品の開発は事業活動の要となるものの、開発までには課題抽出、基礎研究から、スケールアップといった実証実験など、多大な時間とコストを伴う。今回の実証を通じて、三井化学が過去から蓄積している膨大な開発に関する知見と日立が提供するデジタル技術とを融合することで、新製品開発に掛かる時間・コストの大幅な削減が期待されている。

 日立は、AIやシミュレーション技術などを活用して新材料を探索するMIの高度化に向け、これまで大量の実験データを必要としていた有機材料開発に、少量の実験データでも高性能な新材料の候補化合物(化学式)を発案することができる深層学習技術を新たに開発した。

 その特長は①「入れ子型」AIと、②高性能な化合物の生成を加速する成分調整方式。①では、大規模なオープンデータ(化学式を文字列で表現したデータ群)で学習したAIの内側に、実験データで学習したAIを埋め込む入れ子型構造により、少ない実験データでも新材料開発に活用できる。また②では、外側のAIで文字情報である化学式を一度数値情報に変換し、内側のAIでこの数値情報から性能に影響する成分を分離・調整することで、高性能な化合物を表現する数値情報を新たに作成。さらにそれを再び化学式に変換し直すことで高性能な化学式を高確率で生成し、実験回数を削減する。

 三井化学は今後、DXを通じた社会課題解決のため、革新的な製品やサービス、ビジネスモデルを迅速に創出し社会に提供していく。一方、日立はDXを加速させる同社の「Lumada(ルマーダ)」ソリューションである「材料開発ソリューション」に、今回実証する高速化技術のラインアップ化・水平展開を図る。両社は素材開発の協創を推進し、持続可能な社会の実現に貢献していく。

SABIC フレキシブルPIフィルム用高純度硬化剤

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2021年6月28日

 SABICはこのほど、フレキシブルエレクトロニクス用ポリイミド(PI)フィルム硬化用の高純度4,4’-ビスフェノールA型酸二無水物(BPADA)の粉末状製品「SD1100P BPADAパウダー」を発表した。

 PIフィルムは機械的強度、高耐熱性、寸法安定性、銅に近い熱膨張係数、低誘電率といった特性から、5Gフレキシブルプリント基板や透明ディスプレイなどのフレキシブルエレクトロニクスに適した基板材料である。

 BPADAはオキシジフタル酸無水物(ODPA)などの既存の酸二無水物と比べ、フレキシブル銅張積層板、カバーレイや接着剤に使用されるフィルムやワニスの製造時に、誘電率と誘電正接の低減、吸水率の低減、金属との接着性の改善など、各種性能を向上させる。金属への接着性向上により信頼性が高まる上、より薄く低粗度な銅箔の使用が可能となり、部品の小型化や信号伝達性能の向上が図れる。

 熱ラミネート工程での金属への接着性や加工性が向上すると、必要な熱、圧力、時間が低減でき、両面ラミネート構造といったより薄肉のフレキシブル回路構成もサポートできる。またPIフィルムの着色性が低減するため、透明ガラスディスプレイなどの代替も可能だ。

 5Gネットワークのインフラや接続端末の高速化・大容量化に対応して、フィルム特性が向上する。軽量で超薄型の折りたたみ可能なフレキシブルエレクトロニクスは、フレキシブルスマートフォン用の曲面ディスプレイやアンテナ用基板などの新たな用途への可能性が期待され、フレキシブルエレクトロニクス市場は2024年まで2桁成長すると予想されている。

 同社は、熱硬化性新規用途のパフォーマンスを最適化する新たな材料開発に取り組み、酸二無水物ポートフォリオをさらに拡大していく考えだ。

 

三井化学 3つの機能を併せもつドライバーズグラス上市

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2021年6月28日

 三井化学はこのほど、ビジョナリーホールディングスとの共同企画により、3つの機能を併せもつレンズを採用した新機能ドライバーズグラス「Ds’Assist(ディーズアシスト)」を開発し、今月25日から、ビジョナリーホールディングスが運営するメガネスーパーなど限定104店舗での販売を開始した。メガネの上からも装着可能なタイプで、利用者の矯正視力を保ったままクリアな視界が得られるもの。販売価格は3万4980円(税込)。 

「Ds'Assist(ディーズアシスト)」。3つの機能でドライバーの視界をアシスト
「Ds’Assist(ディーズアシスト)」。3つの機能でドライバーの視界をアシスト

 同製品には、三井化学の3つの光制御テクノロジーを結集。①まぶしさや見づらさの原因となる黄色光を選択的にカットする「NeoContrast(ネオコントラスト)」、②目に有害とされる紫外線やHEV(高エネルギー可視光線)をカットする「UV+420cut」、③白色LEDの特定波長を選択的にカットする「LEDライトカット」―の技術導入により、視機能の低下が顕著となるシニアドライバーをはじめ、あらゆる運転者のドライビングシーンで視覚サポートを実現する。

JARWA推奨品
JARWA推奨品

 夜間運転時のJIS規格に適合していることから、特に近年多く採用されているLEDヘッドライトに対する防眩効果により、夜間の運転時にも必要な光量を十分に確保した上で安全に使用できる。また、自動車業界の安全対策の中心的な役割を担う日本自動車車体補修協会(JARWA)の推奨も得ている。

 三井化学は、これからも「視界品質QOV(Quality of View)」をコンセプトに、視力矯正から目の健康と快適さまで、より良い視界を追求する製品開発に取り組んでいく。

NEDO 革新的マテリアル技術の研究開発8件に着手

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2021年6月25日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、将来の国家プロジェクトなどにつながる革新的なマテリアル技術の先導研究として、8件の研究開発に着手した。15~20年以上先の新産業創出に結びつく革新的マテリアル技術のシーズを育成し、データ駆動型ものづくりや、ポスト5G技術の中核マテリアル、サプライチェーンの安定化・国内化、迅速なウイルス対策といったイノベーションの実現を目指す。

 新型コロナウイルス感染症の拡大や世界規模の異常気象、各国企業・政府間での技術覇権争いの激化、持続可能な開発目標(SDGs)への意識の高まりなど、イノベーションを巡って大きな情勢変化が起きる中、「統合イノベーション戦略」が昨年閣議決定された。強みがあるものの競争力を失いつつあるマテリアル分野を、戦略的に推進するための重要技術基盤と位置づけ、4月には「マテリアル戦略」を策定。これを受け、「マテリアル革新技術先導研究プログラム」を開始した。

 今年度は「プロセスインフォマティクス技術」「スーパーファインセラミックス技術」「革新的な資源マテリアルプロセス技術」「ウイルス感染症対策向け新規マテリアル関連技術」の4つのテーマ区分を設定し、公募した研究開発の中から8件を採択した。

 今後は、これらテーマの推進に加え、マテリアル分野のイノベーション創出に向けて、取り組むべき研究開発内容の情報提供依頼(RFI)と、マテリアル分野の重要技術のシーズ発掘を目的とした調査事業を行っていく。

 

帝人ファーマ A型ボツリヌス毒素製剤、効能・効果を追加承認

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2021年6月25日

 帝人ファーマは23日、メルツ社(ドイツ)から日本での共同開発・独占販売権を取得し販売しているA型ボツリヌス毒素製剤「ゼオマイン筋注用50単位、100単位、200単位」について、厚生労働省から「下肢痙縮」の効能または効果の追加承認を取得したと発表した。

 帝人ファーマは、筋・骨格系疾患の患者のQOL向上に貢献するため、これまで様々な医薬品・医療機器によるソリューションを提供。また、脳卒中後遺症などによる運動機能障害の改善を支援するリハビリ用として、歩行神経筋電気刺激装置や上肢用ロボット型運動訓練装置などの製品も展開している。

 こうした中、帝人ファーマは、2017年に同剤の日本国内での共同開発・独占販売権をメルツ社から取得し、2020年に上肢痙縮の効能または効果で製造販売承認を得て上市した。そして、両社は下肢痙縮の効能または効果の追加承認を目指し、メルツ社が日本国内で第Ⅲ相試験を実施。帝人ファーマがその結果をもとに変更承認申請を行い、今回の承認取得に至った。

 下肢痙縮は、主に脳卒中の後遺症として起こる筋緊張の増加や、伸張反射の興奮性亢進によって生じる上位運動ニューロン症候群の1つ。下肢筋が過度に緊張することで正常歩行が難しくなることや、体幹が不安定になることで転倒の危険性が高まるなど、患者の日常生活の妨げとなっている。

 現在、下肢痙縮の治療としては、リハビリ、経口筋弛緩剤、神経ブロック療法などが行われている。A型ボツリヌス毒素注射剤である同剤は、末梢のコリン作動性神経終末に作用し、神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を阻害することで随意筋の筋力を弱め、筋緊張状態を緩和する。

 特徴としてA型ボツリヌス毒素から、メルツ社が開発した精製技術を使って複合タンパク質を取り除き、神経毒素のみを有効成分としていることが挙げられる。これにより、中和抗体が産生されることによる効果減弱の可能性の低下が期待されている。