日本ゼオン 合成香料リーフアルコールの生産能力を増強へ

,

2021年3月26日

 日本ゼオンは25日、合成香料の主力製品であるリーフアルコールについて、生産能力を増強することを決定したと発表した。同社はリーフアルコールで世界№1のシェアをもつが、今回の増設により年間生産能力は1600t(現在1200t)に拡大する見込み。今年の夏に起工し、2022年秋の竣工を予定している。

合成香料リーフアルコールを増強
合成香料リーフアルコールを増強

 リーフアルコール(cis-3-Hexenol)は「青葉アルコール」とも呼ばれ、新緑の若葉のような香りをもつ合成香料。フレッシュ感を演出するグリーン系香料として、香水やシャンプー、石鹸などのフレグランス、また、清涼飲料や菓子などのフレーバーに幅広く使用されている。汎用的に使用される香料として、今後も安定的な成長が見込まれていることから、同社は能力増強を決定した。ゼオングループはこれからも香料の〝化学〟を通じて、香り豊かなくらしの演出に貢献していく。

 

住友ゴム工業 タイヤ内発電でセンサーをバッテリーレス化

, ,

2021年3月25日

 住友ゴム工業はこのほど、関西大学と共同でタイヤ内発電技術を開発しタイヤ周辺に搭載するセンサーへの電源供給が可能となったと発表した。この発電デバイス(エナジーハーベスト、環境発電)は、タイヤの内側に取り付け、タイヤの回転による静電気を利用して電力を発生させる技術だ。

タイヤ内に取付けた発電デバイス
タイヤ内に取付けた発電デバイス

 今回、摩擦帯電に関係する構造と材料の最適化で発電電力を上げるとともに、電源制御回路へ充電し外部センサーへ給電・動作させるシステムを開発した。検証テストでは、タイヤ速度50km/hでの発電量は800μW以上で、外部センサーを起動しBLE(Bluetooth Low Energy)の連続通信を確認した。これにより、タイヤセンシングの一番の課題であるセンサーデバイスの電池寿命を解決し、タイヤセンシングの実用化に大きく前進した。

 同社は、CASE/MaaSなどの自動車業界の変革に対応するためのタイヤ技術開発と周辺サービスのコンセプト「スマートタイヤコンセプト」を掲げ、様々な技術開発を行っており、中でもタイヤをセンサーとしたソリューションサービスの提供を推進している。今後も「タイヤがクルマとつながる、人とつながる、社会とつながる」をキーワードに、安全・安心なモビリティ社会実現に向けて同社独自の価値を提供し続ける考えだ。

 

東洋紡 FO膜利用でRO海水淡水化システムの効率向上

, , ,

2021年3月25日

 東洋紡はこのほど、中空糸型正浸透膜(FO膜)搭載の環境配慮型水処理システムを海水淡水化分野のコンサルタント会社SWPC社(アラブ首長国連邦、アブダビ)と東洋紡連結子会社のアラビアンジャパニーズメンブレンカンパニー(AJMC)と共同で開発し米国へ特許を仮出願したと発表した。今後、実証実験を重ね早期の実用化を目指す。

中空糸型正浸透(FO)膜
中空糸型正浸透(FO)膜

 雨水や地下水に乏しい中東地域などでは、海水から淡水を作る海水淡水化プラントが多く稼働し、東洋紡グループ製の中空糸型逆浸透膜(RO膜)は1日あたり約160万t、約640万人分の使用量に相当する真水を作っている。しかしRO膜法の海水淡水化プラントからは高濃度の濃縮海水が排出されるため、濃縮海水の効率的な処理方法が求められている。

 今回、FO膜モジュールを併用して濃縮海水排水量を削減し、システム内で発生するエネルギーを利用する次世代の環境配慮型の水処理システムを開発した。

 まず、海水をRO膜で高圧処理して大部分の塩分を除去し濃縮海水と淡水に分け、さらに淡水をRO膜で低圧処理して真水と低濃度塩水に分ける。次に低濃度塩水と濃縮海水を同システム内でFO膜を隔てて接触させると、浸透圧差で低濃度塩水側から濃縮海水側に水流が発生し、濃縮海水は希釈されると同時に、この水流エネルギーをプラント内の圧力ポンプなどの動力として利用する。ここで希釈された濃縮海水は、通常の海水と濃度が変わらないため、RO膜での淡水化に循環利用できる。

 通常くみ上げた海水は、化学薬品を使って微粒子を除去するが、濃縮海水を再利用できるためこの工程を省略でき、薬品使用コストも削減できる。このシステムは、既存の海水淡水化プラントにも容易に追加設置でき、濃縮海水の排水量削減と、発生エネルギーでエネルギーの一部をまかなえるなど、大きな設備投資なしに環境に配慮した水処理システムを実現できる。

 今後両社と協働で実証実験を行い、安定運転のノウハウなどを確立して早期の実用化を目指す。同システムの普及により、環境負荷が低く、コストを抑えた海水淡水化プラントの運用を支援し、世界の水不足という課題の解決に貢献していく考えだ。

デンカ エボラウイルス診断キットの国内製販承認を取得

, ,

2021年3月25日

 デンカはこのほど、北海道大学と共同開発したエボラウイルス抗原迅速診断キット「クイックナビ-Ebola」について、医薬品医療機器総合機構(PMDA)から国内製造販売承認を取得したと発表した。同社は国内防疫の観点で、関係官庁や公的機関、研究機関などの協力を仰ぎながら、同キットの活用の可能性を検討していく考えだ。

 同キットは診断結果を約10分で判定し、特別な器具や装置を必要としないことから、医療施設が十分に整っていない地域でも有効に使用が可能。同社は、現在でもエボラウイルス病の発生が確認されているアフリカでの感染拡大予防対策にさらに貢献するために、アフリカ諸国の医療機関への同キットの情報提供を通じて、正式供給の可能性を探るとともに、世界保健機関(WHO)による緊急使用承認を2022年に取得することを目指していく。

 同社は経営計画の中で、ヘルスケア事業を重点分野の1つに位置づける。今後も感染症の予防と早期診断を通じて世界の医療の課題解決に取り組み、人々のQOL向上に貢献していく。

BASF 糖脂質バイオサーファクタントで2社と提携

, , , ,

2021年3月24日

 BASFはこのほど、アライド・カーボン・ソリューションズ(東京都新宿区、ACS社)との戦略的提携とHoliferm社(イギリス)との戦略的技術協力を締結したと発表した。

 持続可能性、生分解性の成分や活性物質に対する消費者のニーズが高まる中、バイオサーファクタント製品市場での世界的なリーディングポジションを拡大するために連携する。ACS社とは、BASFを単一の筆頭株主とする株式取得も含む戦略的提携だ。

 すでに発酵で作る界面活性糖脂質「ソホロ脂質」を共同開発し、昨年「BioToLife」としてアジア市場に投入した。有害な微生物の過剰増殖を抑制し、皮膚、頭皮、口腔ケア製品で常在菌のバランスを調整して優れた洗浄効果を発揮するユニークな特性をもつが、さらに目標の性能を持つソホロ脂質をベースに、幅広い製品の開発に焦点を当て、独占的技術協力と商業契約、製品開発で提携する。

 もう1つのHoliferm社とは、パーソナルケア、ホームケアと工業用製品に応用可能な新規糖脂質開発に向け、持続可能な非化石資源の発酵由来成分の開発・製造に特化した独占契約を締結した。Holiferm社のユニークな生産技術とプロセスのノウハウと、BASFの業界での主導的な地位と知識を組み合わせて、ソホロ脂質以外の新規糖脂質の開発を目指す。

 BASFはすでに界面活性剤の技術革新を行い、生産能力をもつが、バイオベースの製品を追加して製品ポートフォリオを拡大するために、同社の強みに加えて技術に根ざしたパートナーとの協業の機会を常に探っている。

JFEスチール 樹脂・スチール複合のエネルギー吸収構造を開発

,

2021年3月24日

 JFEスチールとイイダ産業は、自動車のエネルギー吸収部品用の超高強度鋼板/樹脂マルチマテリアル構造を開発した。

 自動車の車体には高い衝突安全性能と軽量化の両立が求められ、構造骨格部品への超高強度鋼板(引張強度980M㎩以上)の使用が増加しているが、センターピラーやルーフサイドレールなど衝突時の変形抑制が必要なキャビン構成部品に限られている。衝突エネルギーを部品変形によって吸収する必要のあるフロントサイドメンバーやリアサイドメンバーでは、超高強度鋼板は衝突時の部品座屈や曲げ変形で部品母材が破断し必要なエネルギー吸収が得られず、高強度薄肉化による軽量化は困難だった。

 今回、エネルギー吸収部品に適用するため、イイダ産業開発の高延性・高密着性樹脂を超高強度鋼板製の部品本体と薄肉鋼板製部品でサンドイッチした構造を開発。車両衝突時の座屈・曲げ変形のRが大幅に拡大し、超高強度鋼板部品は破断せずエネルギー吸収性能が大幅に向上した。同重量の場合、引張強度590M㎩・厚み2mmの部品に比べ、引張強度1470M㎩・厚み1.4mmのマルチマテリアル化部品のエネルギー吸収性能は53%高い。エネルギー吸収性能が同等の場合、25%の軽量化が可能だ。今後は電気自動車も視野に入れ、自動車メーカーとの共同開発を加速する。

 電気自動車はエンジンを搭載せず、衝突時に変形してエネルギーを吸収するフロントエンドやリアエンドが短くなるため、効果的にエネルギーを吸収する必要がある。またエンジンの振動が無くなり走行による振動が目立つが、樹脂が走行時の振動を吸収するため、高い衝突安全性能と軽量化の両立に加え快適な乗り心地を提供できる。同社は高強度鋼板の開発・製造だけでなく、工程の省力化や商品の性能向上のために、自動車の設計段階から技術的に協力し合うEVI活動を展開している。樹脂などの軽量素材を組み合わせたマルチマテリアル構造をはじめ、ニーズに合った様々な製品と利用技術を開発・提案し、自動車車体の軽量化によるCO2排出量削減と高性能化に寄与していくことで、持続可能な社会の実現に貢献していく考えだ。

帝人フロンティア 快適で安全な医療用ガウンの共同開発を開始

, ,

2021年3月24日

 帝人フロンティアはこのほど、東京医科歯科大学との協働により、コロナ医療に従事する人々の負担軽減に貢献するため、快適で安全な医療用ガウンを共同開発すると発表した。同大医学部附属病院(東京都文京区)の医療従事者の声を反映して試作品を企画・製作、着用試験の評価をもとにさらに改良を加え早期開発と販売を目指す。

着用試験に使用する医療用ガウン

 両者は先月15日から、同病院でコロナ感染症の診療にあたる医師や看護師などを対象に試作品の着用試験を実施。試作品は、同病院材料部の久保田英雄特任講師が設計を監修し、帝人フロンティアがナイロン不織布素材(生地裏側をラミネート加工)を使用した医療用ガウンの試作品5000着を企画・製作した。今月12日まで着用試験を実施し、着脱性や動きやすさ、蒸れ感など、着心地と安全性の評価を行った。

着用試験に使用する医療用ガウン
着用試験に使用する医療用ガウンの首紐部分

 試作品はラミネート加工の柔らかい素材を使い着心地をよくしたほか、米国医療機器振興協会(AAMI)が定める4段階のバリア性基準でレベル2以上のバリア性をもたせた。また、肌露出による感染リスクを低減させるため、袖口のめくれ防止として袖口に親指を通すフック穴を追加。背中側の首紐設計にも工夫を施し、汚染部位に触れることなく素早く脱衣できるよう、容易に引きちぎれる首紐を採用した。袖丈を従来品より長くし、動作時の突っ張り感も低減した。着用試験終了後に医療機関への販売開始を予定する。

 今後も医療従事者の意見を取り入れ、安全性、快適性を追求した医療用ガウンの開発・生産を継続していく考えだ。

 

産総研など 過度のリンによるサンゴ生育阻害を初公表

, , , ,

2021年3月23日

 産業技術総合研究所(産総研)、北里大学、琉球大学の研究グループはこのほど、砂から溶出した高濃度のリンが稚サンゴの骨格形成を阻害することを初めて明らかにした。

 市街地や農地から過度の栄養塩が海に流れ込むと、サンゴが減少することは知られていたが、科学的メカニズムが明らかになり、サンゴ保全に役立つことが期待される。海水温上昇や海洋酸性化など地球規模のストレスによるサンゴの減少が指摘されているが、沿岸域の土地利用の変化や開発にともなう陸域由来の物質によるサンゴ生育環境の悪化など、地域特有の影響も懸念されている。

 リン酸塩は代表的な栄養塩の1つで、ATPやDNAなどの主要構成生体分子で、生命活動には必須だ。しかし、サンゴ礁の生態系は微量のリン酸供給(表層海水で0.3μM以下)で成立しており、リン酸供給が過剰になると、藻類などの増加、生きたサンゴの被度が減少、白化したサンゴの回復の遅れが生じる。リン酸塩はサンゴ骨格の素材である炭酸カルシウムへの吸着性が高く、また熱帯・亜熱帯の石灰質(炭酸カルシウム)の砂に蓄積していると考えられる。

 今回、ミドリイシサンゴが比較的多く生息する沖縄島北部沿岸部と、市街地や農地に比較的近い南部沿岸域で採取した石灰質の砂と共に、コユビミドリイシの稚サンゴを約40日間飼育し、稚サンゴの骨格形成の様子と飼育海水に溶出したリン酸塩濃度を調べた。北部沿岸部の砂から溶出したリン酸塩は5~8μMで、稚サンゴの底面骨格は海水のみの飼育時に比べ7割程度に減少した。

 一方、南部沿岸域の砂からの溶出量は12~20μMで、底面骨格は3割程度にまで減少し、高濃度リン酸塩添加時と同様の凹凸の激しい骨格表面になった。これにより、石灰質の砂は陸から流れ込んだリン酸塩を吸着し、高濃度で蓄積することが分った。砂に蓄積したリン酸塩を蓄積型栄養塩と定義し、サンゴなどの底生生物に対する影響の本格的調査を始めた。また、沿岸域の蓄積型栄養塩を調べることで、陸域負荷の大きな場所を特定することも可能だ。さらに底生生物の生育に影響を及ぼす可能性のあるその他の陸域由来物質についても、石灰質砂への蓄積の有無の調査を開始した。

ユニチカ PA6T/PA66代替のバイオマスPA開発

, , ,

2021年3月23日

 ユニチカはこのほど、世界的に供給不足が続く6Tナイロン(PA6T)や66ナイロン(PA66)を代替できるナイロン樹脂「ゼコットAG310A-64」「ゼコットAG310A-67」「ナノコンM2090」シリーズの販売を開始したと発表した。

 自動車や電子部品などに使用されているPA6T、PA66の世界的な供給不足が続くが、その原因は主成分の1つであるヘキサメチレンジアミンの原料アジポニトリルの自然災害などの影響による供給不安定にあり、解消には数年はかかると見込まれている。

 このような中、ヘキサメチレンジアミンを使わずにPA6TとPA66を代替できるナイロン樹脂を、ポリアミド合成技術とバイオマス素材の利用技術の組み合せにより開発した。融点315℃の高耐熱性ホモポリマー ポリアミド10T「ゼコット」をベースに独自のコンパウンド技術により、PA6Tとほぼ同等物性で耐摩耗性が大幅に上回る「AG310A-64」シリーズを、また、ガラス繊維強化PA66とほぼ同等の物性の「AG310A-67」シリーズを開発した。

 「ナノコンM2090シリーズ」はPA6にクレイをナノメートルサイズで分散させた「ナノコン」をベースに、独自のコンパウンド技術で非強化PA66とほぼ同等の物性を実現した。いずれもPA6T、PA66の供給不足への対策に貢献できるとともに、植物由来であることから環境負荷低減への貢献が期待できる。

産総研 SiCウエハー量産技術の大型共同研究を開始

, ,

2021年3月22日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、ウエハーメーカーを含む民間企業17社と公的機関3機関との連携で次世代パワー半導体用炭化ケイ素(SiC)ウエハーの量産技術の確立を目指した大型共同研究を開始したと発表した。SiCインゴットを作るバルク単結晶成長プロセスからウエハー化の加工プロセスに至るまで低コスト化を実現する製造技術の開発を進める。

 パワー半導体素子は、大電力を制御する発電・送電システムや、産業用ロボットなどのFA機器、自動車や鉄道などの輸送機器、コンピューターなどの情報通信機器や家電製品に至るまで、幅広く産業・社会に浸透している。現在シリコン(Si)製パワー半導体が主流だが、SiC製パワー半導体素子はエネルギー損失が少なく、新幹線や電気自動車などへの社会実装も始まっている。しかしSiCは極めて堅く安定な材料であるため、単結晶成長やウエハー加工にかかる時間とコストが課題だ。

 SiC単結晶は2000℃以上の極高温の気相雰囲気で成長させるが、成長速度は1時間当たり500㎛~数㎜と遅く、Si単結晶の100分の1以下だ。またパワー半導体として致命的な結晶欠陥も多く残留し、生産効率の良い欠陥排斥技術も未確立だ。直径6インチクラスの大口径SiCウエハーの需要が世界的に高まる中、より高品質なSiC単結晶を高速に成長させる技術の早期確立を目指す。

 またSiC単結晶をウエハーに加工するには、単結晶の切断から研磨まで多くの工程でダイヤモンド砥粒を消費する。加工時間もSiウエハーの6倍以上かかるため、高速でダイヤモンド砥材の消費の少ないウエハー加工技術の確立を目指す。

 これら技術開発の活動の場として、民活型オープンイノベーション共同研究体「つくばパワーエレクトロニクスコンステレーション(TPEC)」内に材料分科会を新設し、柔軟な産学官連携体制のもとで主に「次世代SiC結晶成長技術開発」や「次世代ウエハー加工技術開発」のプロジェクトを推進している。またSiC結晶成長技術からウエハー加工技術に関わる材料、装置、プロセスの各専門企業が多数連携することで、従来の製造技術の抜本的な技術改革を早期に進められる体制作りを行っており、新規の参入を希望する企業や、研究機関を随時募集している。