JSRトレーディングは26日、ディスポ(使い捨て)タイプのPVC(塩化ビニル樹脂)手袋とニトリル手袋の輸入販売を開始したと発表した。コロナ禍により世界的に公衆衛生の意識が高まる中、同社は、各種衛生用品のニーズが増加していることに対応した。
PVC手袋は、極薄仕上げで手にピッタリフィットする特長をもち、介護など衛生が求められる作業や清掃作業などに使用される。
ニトリル手袋は、耐油・突き刺し強度・耐久性に優れ、機械作業、食品加工、調理、水産加工、給油などに使用される。
2021年5月27日
2021年5月27日
三菱ケミカル、JSR、日本IBM、慶應義塾大学は26日、「IBM Qネットワークハブ」(慶應大量子コンピューティングセンター内)で以前から取り組んでいた「量子コンピューターを用いた有機EL発光材料の性能予測」の研究プロジェクトで得られた成果に関する論文が、世界的に権威のあるNature Research出版社の専門誌「npj Computational Materials」に掲載されたと発表した。
同研究プロジェクトは、有機EL発光材料の1つであるTADF材料の励起状態エネルギーの計算を実施するため、三菱ケミカルとIBMが主導し、JSRや慶應大と共に取り組んできた。従来から量子コンピューターによる計算は実機特有のエラーの発生が課題となっていたが、今回、同プロジェクトではエラーを低減させる新たな測定手法を考案し、計算精度を大幅に向上させることに成功した。量子コンピューター実機を用いて実用材料の励起状態計算に成功したのは、世界初の成果となる。
今後、実機の計算能力の進化と共に従来以上に精密な計算を行えるようになり、より発光効率の高い材料設計に寄与することが期待される。同研究チームは今後も、量子コンピューターを幅広い材料開発に用いるための研究を進めていく。
2021年5月27日
三井化学26日は、EUV(極端紫外線)に対応した次世代の半導体フォトマスク防塵カバー「EUVペリクル」について、世界に先駆け商業生産を開始したと発表した。半導体のさらなる微細化や顧客の技術革新要請に対応することで、世界市場に向け生産を行っていく考えだ。生産量は公開していない。
同社は2019年、半導体リソグラフィー分野で世界ナンバーワンのオランダASML社から、EUVペリクル事業のライセンス契約を受け、その設計と技術に基づき同製品の生産設備を岩国大竹工場(山口県和木町)に新設した。
データ通信を超高速化する第5世代移動通信システム(5G)の導入により、スマートフォンの一層の高機能化と半導体の高性能化が求められる中、先端デバイスに使われる半導体では、回路線幅7㎚以下の超微細化が必要なことから、それに伴い超短波長であるEUV露光技術の採用が本格的に拡大している。
三井化学は、ICT分野を成長市場としてフォーカスし強化策に注力、モビリティ、ヘルスケア、フード&パッケージングに続く第4の成長領域の柱を目指し取り組みを加速させている。今後もICT分野関連製品群への積極投資を展開していくと見られる。
三井化学は、露光工程の防塵カバー「ペリクル」を1984年に発売して以来、半導体の微細化に合わせたペリクルの改良と製品品質の向上に努めてきた。ペリクルで培った異物管理などの生産ノウハウがEUVペリクルの生産にも生かされており、引き続きEUV露光機の進化に合わせ、同製品の技術改良・革新をASML社と共に取り組んでいく。
2021年5月26日
BASFはこのほど、2050年までにCO2排出量実質ゼロ(ネット・ゼロ)、2030年までにCO2排出量の2018年比25%削減、とする気候目標を設定した。今後の成長と中国に建設中の統合生産拠点も含まれており、既存事業に限ると10年で半減させることになる。なお、2018年のグループ総排出量(CO2換算)は2190万t、1990年はその約2倍で、2030年排出目標は1990年比約60%の削減で、EUの「55%削減」目標を上回っている。
目標達成に向け2025年までに最大10億ユーロ、2030年までにさらに20~30億ユーロを投資する計画だ。最初の一歩は、再生可能エネルギーの利用に注力する。化石燃料は電力で代替するが、技術の大半はパートナーと協力して開拓中で、大規模スケールアップの実現は2030年以降になる。
一方、電力需要は急増し2035年にはグループ全体で現在の3倍以上になる見込みだ。それまで体系的なプロセス改善、自然エネルギー源への移行を進め、風力発電への投資も計画している。同時に、CO2フリーの化学品製造プロセスの開発・展開を加速する。
最重要技術の1つがオレフィンなどの基礎化学品製造用の電気加熱式スチームクラッカーで、パイロットプラントの運転開始予定は2023年としている。同じく重要原料の水素の製造は、シーメンス・エナジーと共同で出力50㎿のプロトン交換膜水電解システムを検討するほか、消費電力が約5分の1で済む天然ガス由来のメタン熱分解法を開発中だ。
エネルギー効率の向上では、廃熱で蒸気を作る電気ヒートポンプによる工場全体の廃熱回収を、シーメンス・エナジーと協力して進めている。また、北海での最大規模の炭素回収・貯蔵プロジェクトへの投資も計画しており、基礎化学品製造に伴う年間100万t超のCO2排出量削減が見込まれる。
しかし、これら新技術のほとんどは、現在のフレームワーク条件では競争力がなく、経済的成功のためにはバリューチェーン全体で価格上昇を受容することが必要。そのために、産業界と政策立案者が協力して成果を重視した前向きな規制を導入し、国際競争力を維持する必要がある、としている。
2021年5月26日
三菱ケミカルと日本製鋼所(JSW)はこのほど、窒化ガリウム(GaN)単結晶基板の量産に向けた実証設備をJSW M&E室蘭製作所構内に共同で竣工したと発表した。今年度にかけて4インチのGaN単結晶基板の量産に向けた実証実験を行い、2022年度初頭からの市場供給開始を目指していく。
GaNは、高効率・高耐久性により超高効率デバイスの実現を可能にする素材。大幅な消費電力の削減によりCO2排出量も削減できることから、環境負荷の低減が期待されている。GaNは青色LED用途のみならず、①高出力・高輝度光源、②情報通信、③パワー半導体、といった用途での応用が期待されている。
JSWは、人工水晶製造用のオートクレーブ(圧力容器)を製造し、日本国内のシェアは100%で累計415基、海外も24基の実績がある。またグループ会社で30年間にわたり人工水晶を製造し、主に国内のカメラメーカーに多くの光学部品を納入している。
一方、三菱ケミカルは、気相成長法(HVPE)と化合物半導体の加工技術を用いた高品質なGaN基板の製造技術を保有。より高い生産性を目指し独自の液相成長法(SCAAT)によるGaN基板の開発を進めている。
両社は、東北大学と共同で大口径・高品質・低コストGaN基板の製造技術の開発を進めてきた。さらに名古屋大学・天野研究室とも結晶成長や特性評価等の共同研究体制を構築している。2017年には、室蘭製作所内に建設したパイロット設備において、透明で結晶欠陥が極めて少ないGaN基板の低コスト製造技術の開発に成功し、4インチサイズの均一な結晶成長も確認した。
新たに開発した製造プロセス「SCAAT-LP」は、従来の約半分の圧力条件となる低圧酸性アモノサーマル技術を利用した、将来の量産に向けた製造技術となる。今回、導入する大型設備では、「SCAAT-LP」を用いて4インチのGaN基板の量産に向けた実証実験を行う。この結果を踏まえ、GaN基板の安定供給体制を構築するとともに、近年需要が増加するパワーデバイス用途に適用可能な6インチ基板の開発にも取り組んでいく。GaN基板は、パワーデバイスをはじめ、光エネルギー、電波エネルギーに関する様々な用途への応用が期待される。
両社は、未来の社会を支える材料として重要な位置づけをもつ高品質なGaN基板の供給を通じ、燃費・発電効率向上といったエネルギーミニマム社会への貢献を目指していく。
2021年5月26日
日鉄ケミカル&マテリアル、日本製鉄、金属系材料研究開発センターは25日、共同で、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ブルーカーボン(海洋生態系における炭素貯留)追及を目指したサプライチェーン構築に係る技術開発」に採択されたと発表した。マリンバイオマス(海藻)の多角的製鉄利用に資する技術開発に着手する。
昨今、気候変動対策としてCO2削減の重要度が増しており、カーボンニュートラル(CN)社会の実現は世界的な潮流となっている。日本でも昨年12月に「2050年CN、脱炭素社会の実現を目指す」ことが閣議決定され、革新的技術の実用化を見据えた研究開発を加速度的に促進する方針が示された。具体的な戦略として、経済産業省から「革新的環境イノベーション戦略」が提示され、その中に「ブルーカーボンの追及」が明記されている。こうした中、NEDOは、ブルーカーボン追及を目指したサプライチェーン構築に係る技術開発事業への取り組みを開始し、3者は技術開発事業の委託先として採択された。
日本は古くから海藻養殖が盛んであり、世界トップレベルの技術・ノウハウを保有している。また、長い海岸線に恵まれていることからもブルーカーボンに関する技術開発は温暖化対策・産業育成の両面で有効と考えられている。こうした背景を受け、同事業では臨海製鉄所という地の利を生かして、CN材であるマリンバイオマス(海藻)を生産し、それを製鉄プロセスの中で利用する「バイオマスの地産地消」といった新たなサプライチェーンの構築を目指していく。
マリンバイオマスの利用については、製鉄プロセスで利用される炭素源(炭材や炭素材料)としての活用を検討。生産については、製鉄プロセスで発生する鉄鋼スラグを利用した藻場造成で培った技術を活かして、海藻の積極的な育種に取り組む。マリンバイオマスのCN材としての検討は、世界に例がない研究となる。
同事業では、こうした要素技術の開発とともに、全体の経済性やCO2削減効果を含めた事業性検討を行い、実証段階への道筋を作ることを目指す。
2021年5月26日
三井化学は25日、新素材フィルム「ヒートシーラブル高ガス透過フィルム」(開発品)の市場開発を開始したと発表した。同フィルムは、特定のガスを選択的に高く透過する性能に加え、他の樹脂製フィルムと比較して低温でヒートシール性を発現する特長も併せもつ。
同社のデータによれば、ポリエチレン製のフィルムと比較して、ガス透過係数は二酸化炭素で約4倍、酸素で約5倍、ヒートシール性能は120℃で約2倍の強度を示している。これまでにも選択的に特定のガスを高く透過するフィルムはあったものの、ヒートシールが困難なことから用途が限られるという課題があった。「ヒートシーラブル高ガス透過フィルム」は、それらの課題を解決し、パッケージ加工が容易になったことで、用途拡大が期待されている。
三井化学では、液体や菌などは通さずに気体のみを透過する特性から、細胞培養キットの保護用途、医療用器具のパッケージ、特定ガスの分離膜といった産業分野などの用途を想定している。
2021年5月25日
物質・材料研究機構(NIMS)と産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、希少元素を含まず低熱伝導率と高電荷移動度を両立した高効率の熱電材料の開発に成功した。低価格の熱電モジュールの実用化と普及に道を拓き、省エネ効果に加え、Society5.0の実現に必要な無数のセンサーの自立電源やモバイル発電機など幅広い分野での応用が期待される。
一次エネルギーの多くは熱として排出され、その約90%は320℃以下の低温域だ。廃熱を電気に変換する熱電変換材料の効率には、熱伝導率を低く、電気伝導率を高くする必要があるが、電気伝導率が高いと熱伝導率も高くなる。Bi2Te3系が低温域で最高の熱電変換効率を示すが、主成分のTeが希少元素であることが普及を妨げている。
今回、n型Mg3Sb2系材料に微量の銅原子を添加することで、熱伝導率低減と電気伝導率向上を両立できた。原子間隙に入った銅原子が熱伝導を司るフォノンの速度を低減し、熱伝導率を低減。また、粒界に入った銅原子が電子の散乱を抑え、高電荷移動度を向上。これにより、ジュール発熱によるエネルギー損失を抑え利用熱の散逸を抑止し、熱伝導率の低い多結晶体でありながら単結晶材料並みの電気伝導率、すなわち高熱伝導率を実現した。
同様に高性能化したp型材料と組み合わせて熱電モジュールを作製。室温と320℃の温度差での熱電変換効率は、最高性能のBi2Te3系材料に匹敵する7.3%を示した。この材料の理論効率は約11%であり、さらなる高効率化も見込まれる。また、今回発見したフォノン散乱効果や粒界制御効果は、他の熱電材料の高性能化へ活用することも期待される。
なお本研究は、科学技術振興機構(JST)未来社会創造事業大規模プロジェクト型技術テーマ「センサ用独立電源として活用可能な革新的熱電変換技術」の支援を受けて実施された。今後、低価格で広範囲に適用可能な熱電モジュールの実用化を進めるとともに、他の温度域にも活用できる高性能熱電材料の研究開発も引き続き推進していく。
2021年5月25日
三洋化成はこのほど、次世代型リチウムイオン電池(LIB)「全樹脂電池」の開発を行う子会社APB(東京都千代田区)が輸送時の安全維持試験「UN38.3」の認証を取得したと発表した。約400mm×400mm×1.2mmの大型セル40枚を積層した大型全樹脂電池モジュール(約3kWh、約15kg、約400mm×400mm×50mm)での認証取得だ。
APB社は全樹脂電池(APB)の製造・販売を行うスタートアップ企業。全樹脂電池は両社が共同開発したバイポーラ積層型のLIBで、電極は樹脂集電体に三洋化成開発の樹脂を被覆した活物質を塗布したもの。この独自の製造プロセスは従来プロセスより短く、製造コストとリードタイムを削減でき、これまでにない高い異常時信頼性とエネルギー密度を実現した。バイポーラ積層型は部品点数が少なく樹脂製電極は厚膜化も容易なため、セルの大型化が可能で、形状の自由度が高いことも特長だ。
UN38.3試験をクリアしたことで、ターゲットである海外定置用途に向けた航空輸送が可能となった。今回の認証取得を受けて、定置およびモビリティ用途向け蓄電池システムへの展開を進めていく。
2021年5月25日
大陽日酸はこのほど、米国の政府系研究機関であるサンディア・ナショナル・ラボラトリーズに、2台目となるMOCVD装置を納入することが決定したと発表した。
米国エネルギー省傘下にある同研究機関は、国家の安全保障やエネルギー、環境技術、経済競争力に関するR&Dを担当する機関であり、ガリウムナイトライド系の化合物半導体研究に関しては世界でも最高レベルにある。
今回、同研究機関が2014年に続いて2台目となる同社のMOCVD「SR-4000HT」の採用を決定した。この装置はパワーエレクトロニクスおよびUVオプトエレクトロニクスのデバイス開発促進に必須となる高品質なアルミニウムガリウムナイトライド(AlGaN)やアルミニウムナイトライド(AIN)の製造に用いられる。同研究機関に再度採用されたことは、同社のMOCVD装置が高度で安定した性能をもつことが評価されたことによるもの。
同社は、同研究機関の先進的な技術開発を今後も継続的に支援することで、MOCVDの優位性をさらに高めていく。