三菱ケミカル 3Dプリンティング用樹脂を本格始動

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2021年1月15日

コロナ禍で3Dプリンター活躍、一気に市場拡大

 三菱ケミカルは、長年培ってきた樹脂に関するノウハウをベースに、2018年に3Dプリンティング用樹脂事業に参入。翌年には、米国に工場を新設し、製品の量産を開始した。今後、3Dプリンティング用樹脂の需要はグローバルで年率10%程度伸びていくと見られており、同社は市場の伸び以上の事業成長を実現していく考えだ。

3Dプリンティング
3Dプリンティング

 3Dプリンターの原理は1980年代に考案され、製造業を中心に部品の試作に採用されてきた。2000年代に入ると、特許切れにより3Dプリンティング事業に参入する企業が増加。これが低価格化につながり、その後、欧米を中心に安定的に市場が広まった。

 こうした中、昨年は世界的に新型コロナウイルスの感染が拡大。グローバル企業のサプライチェーンが深刻な影響を受けたが、図面さえあれば必要な場所で、必要なときに、必要な量を製造できる3Dプリンターがこの窮地を救った。また、病院でも3Dプリンティングが活躍。世界中の企業やエンジニアが医療物資に関連する設計図を無償でウェブ上に公開したことにより、欧州では病院が3Dプリンターを購入して、現場でフェイスシールドや人工呼吸器の部品を製造するケースが増加。日本でも、既存設備の3Dプリンターを活用して医療部品を作り、病院に寄贈する企業が相次いだ。世界規模の外出制限が一段落した今も、「部品調達手段の多様化」「生産コストの効率化・省力化」「DX化推進の一環」などをキーワードに市場の拡大が続いている状況だ。

 3Dプリンティング市場の拡大で重要となるのが造形物に使用する素材。特に、産業分野の部品生産に利用するためには、強度や造形時間、加工のしやすさなど、素材にも高い品質が求められる。同社は、2018年にグループ内に分散していた3Dプリンティングに関する研究機関や事業を高機能ポリマー部門に集約。本格的な3Dプリンティング用樹脂事業参入に向けて、積極的な事業展開を推進している。

3Dプリンター用フィラメント
3Dプリンター用フィラメント

 2018年には熱溶解積層(FDM)方式のフィラメントのトップメーカーである蘭ダッチ・フィラメンツ社を買収し、3Dプリンティング用樹脂事業の足掛かりを構築。2019年には独自の基盤技術「フリーフォーム射出成型(FIM)」をもつデンマークのアディファブ社へ出資し、両社の技術の融合により、多種多様な特性・形状の部品が製造可能となった。

 また蘭アトム3D社とは、紫外線硬化樹脂「ダイヤビーム」技術を共同で開発。耐熱性と耐衝撃性の両立を実現した。さらに昨年には独AMポリマーズ社と業務提携し、粉末床溶融結合(PBF)方式3Dプリンターに使用するPBT(ポリブチレンテレフタレート)を用いたパウダーを開発し供給を開始。三菱ケミカル初の3Dプリンティング用樹脂の製造・販売となった。同社の3Dプリンティング用樹脂は、自動車の内装材、航空機部品、医療分野といった幅広い試作用途に使用できるため、各分野への展開が期待される。

 一方、3Dプリンティングは、デザイン性の向上に寄与するだけでなく、使用材料の削減、製作・物流リードタイム短縮によるCO2削減など、今の時代に不可欠な環境にやさしい工法でもある。三菱ケミカルは3Dプリンティングへの樹脂ソリューションをグローバルに提供し続けることで、社会・環境課題の解決の一助を担うとともに、三菱ケミカルホールディングスが掲げる「KAITEKI」の実現に向け取り組んでいく考えだ。

3Dプリンター印刷様式
3Dプリンター印刷様式

 

BASF 循環型経済の新プログラムを発表、解決策提示

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2021年1月14日

 BASFはこのほど、第1回デジタルリサーチプレスカンファレンスで新しい循環型経済プログラムを発表した。2030年までに関連するソリューションの売上高を倍増させ、170億ユーロを目指す。「循環型原料」「材料の新しい循環」「新しいビジネスモデル」の3つの分野に注力。「廃棄物の減少」「製品の再利用」「資源の回収」を目的に、2025年に年間25万tの化石原料をリサイクル・廃棄物ベースの原材料へ置き換える。

 会長兼CTOのM・ブルーダーミュラー氏は「循環型経済に向けたソリューションを提供できる企業は決定的な競争力をもつ。道は厳しく多大な努力が必要だが、コミットメントと創造性をもって取り組み、革新的な強さを見せられる」と述べている。

 カンファレンスでは材料リサイクル(MR)、ケミカルリサイクル(CR)、再生可能資源の例を発表した。「バッテリーのリサイクル」では、2030年には150万t以上のバッテリーと、各材料と前駆体の製造工程廃棄物の処理が必要になる。含有される希少金属は化学的に回収でき、採掘に比べてCO2排出量を25%以上削減できるが、低収率・高エネルギー消費の上、大量の塩廃棄物を発生するため、新プロセスを開発中だ。

 「MR」でリサイクルされるのは、年間約2.5億tのプラ廃棄物の約20%だ。廃プラを破砕・溶融して再資源・製品化するが、繰り返し使用・加工すると品質が劣化する。また、互いに相溶しないプラスチックを混合すると品質が低下するため、相溶化剤など品質の安定・改善のための添加剤を開発している。「CR」では熱化学プロセスで熱分解油に変換し、新製品の原料にする。汚れたプラ廃棄物でもリサイクルでき、従来品と同品質の製品ができる。

 同社は2018年に「ChemCycling」プロジェクトを立ち上げ、プラ廃棄物組成によらず高純度の熱分解油を生成する触媒の開発を進め、第一世代の触媒が工場で使用されている。

 「再生可能な原材料」の例は、植物の未利用部分から化粧品の有効成分を抽出する「ランブータンプログラム」だ。ライチの近縁種ランブータンの葉の水性抽出物がヒト皮膚遺伝子を活性化し、コラーゲン産生を促進することを発見。果皮や種に含まれる有効成分には肌の潤いを高め、毛根を活性化する効果もある。ベトナムの現地パートナーと共に社会的・環境的に責任が取れるサプライチェーンを構築し、消費者だけでなく労働者や地域環境にも利益貢献している。内容の詳細と、同社の循環型経済への取り組みは、ウェブで公開中だ。

日本触媒 高速で高密度な蓄熱デバイス、共同開発を推進

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2021年1月13日

 日本触媒は12日、北海道大学、産業技術総合研究所と共に、NEDOエネルギー・環境新技術先導研究プログラムについて「合金系潜熱蓄熱マイクロカプセルを基盤とした高速かつ高密度な蓄熱技術の研究開発」事業を受託したと発表した。

合金系潜熱蓄熱マイクロプセル「h-MEPCM」
合金系潜熱蓄熱マイクロプセル「h-MEPCM」

 地球温暖化防止に向けて再生可能エネルギーの活用が進みつつあるが、条件によって変動するため、蓄エネルギー技術を併用する必要がある。蓄熱は蓄電池と比べ安価であるが、熱の発生する時間や場所が必ずしも需要と一致しないため、現状では大量の余剰熱が廃棄されている。蓄熱技術を用いることで、余剰熱を再利用し大幅な省エネにつなげることが可能となる。

 今回の事業では、同大・能村准教授の開発した合金系潜熱蓄熱マイクロカプセル(h-MEPCM)を同社の触媒製造技術により成型体に加工。同大ではこの成型体を使ったプロトタイプモジュールの諸物性を評価し、産総研ではデータを基にシミュレーションモデルの構築と応用モジュールの作成を行う。これにより、蓄熱成型体のデバイスとしての性能を取得し、応用展開を促進する計画だ。

 h-MEPCMは金属の核をセラミックス(アルミナ)の殻で封じた粒子径30㎛前後の粒子で、核の金属が600℃付近で溶解することにより潜熱として熱を蓄える。高い基礎的熱特性をもつが、実用に向けては粉体を適切な形に成型することが求められていた。

 同社は蓄積したノウハウを活用して、種々のサイズのペレット、リング、ハニカムなどの形状をもつh-MEPCM成型体を作成。これにより実用モデルでの諸物性の評価が可能となるため、蓄熱密度、伝熱特性などの基礎物性の取得に加え、出力特性、繰り返し耐久性など使用形態での熱特性の測定を行い、具体的性能を示す。さらに、社会実装を促進するため、想定する用途でのシミュレーションを行い、炭酸ガス抑制効果やコスト削減効果など、既存技術に対する優位性も示していく。

 同事業の展開先として、高温産業炉の省エネ技術リジェネバーナーでの利用や電炉排熱の再利用、コジェネレーションの熱電需給調整、EVの暖房用蓄熱などの省エネ用途に加え、再生エネとの組み合わせでは24時間安定発電も可能な集光型太陽熱発電(CSP)、石炭火力の燃焼器を蓄熱体で置き換えた蓄熱発電などの再生エネ安定利用などを想定している。

 

ダイセル エアバッグ用インフレ―タ、インドに生産拠点

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2021年1月13日

 ダイセルは12日、インドの自動車エアバッグ用インフレータの需要拡大に伴い、同国内に新たに生産拠点を設置することを決定したと発表した。インド南部、タミル・ナドゥ州ワンハブチェンナイ工業団地に建設し、2023年12月の稼働開始を目指す。

 同社は、インド自動車市場の成長や安全規制強化に伴い、2018年に販売拠点ダイセル・セイフティ・システムズ・インディア(DSSI:ハリヤナ州グルグラム)を設立し、マーケティングや現地調査を進めてきた。これまではタイなどの生産拠点からインド市場へ製品を供給してきたが、インド自動車市場の成長可能性や、自動車メーカー・エアバッグモジュールメーカーからの同国内でのサプライチェーン強化のニーズを背景に、同国内に生産拠点を設置する。

 同社は今後、製品の安定生産、安定供給によって同国市場での存在価値をより強化するとともに、同国でのインフレータ生産や部品調達などを通じて同国経済の発展にも寄与していく考えだ。

昭和電工 ハードディスク用アルミニウム基板、能力増強を決定

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2021年1月13日

 昭和電工は12日、連結子会社である昭和電工HD山形(SHDY)に、ハードディスク(HD)メディア用のアルミニウム基板生産設備を増強すると発表した。HD事業強化のため、供給能力を拡大するとともに、サプライチェーンの分散・強化を図る。今年2月に着工し、2022年初頭の量産開始を予定しており、同社グループの生産能力は現状から3割向上する見込みだ。なお、今回の施策は、経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」の対象事業として採択された。

 5Gのサービス開始、IoTの普及やテレワークの浸透、デジタルトランスフォーメーションの進展・拡大などにより、データ通信量は今後とも飛躍的に増大することが想定されている。それに伴いデータセンター向けハードディスクドライブ(HDD)の需要が大きく拡大しているが、HDDのキーパーツであるHDメディアに使用するアルミニウム基板は、需要拡大に応じた安定的な供給能力確保が課題となっている。

 また、昭和電工は現在、アルミニウム基板をマレーシア、台湾、国内の3カ所で生産しているが、その供給能力の多くがマレーシアに集中しているため、世界的な新型コロナウイルス感染拡大などに対して、より安定したサプライチェーンを確保する必要がある。

 こうした中、同社は、これらの課題解決のため、国内拠点のSHDYにアルミニウム基板の設備を増強し、供給能力拡大とさらなるサプライチェーンの分散・強化を図ることを決定した。

 同社は、世界最大のHDメディア外販メーカーであることから、今後も〝ベスト・イン・クラス〟をモットーに、世界最高クラスの製品をいち早く市場に投入して、拡大・進化を続けるデジタル化社会を支えるとともに事業拡大に努めていく。

富士フイルム バイオ医薬品CDMO事業、米に製造拠点を新設

2021年1月12日

 富士フイルムはこのほど、バイオ医薬品の開発・製造受託の事業成長を一段と加速させるため、米国にバイオ医薬品の大型製造拠点を新設すると発表した。投資規模は2000億円超になる。新拠点は、原薬の大量製造に加えて、拠点内で原薬製造に続く製剤化・包装までを一貫して受託できる「ワンサイト・ワンストップ」の体制を整備。2025年春に、バイオ医薬品CDMO(開発製造受託)の中核会社FDBの拠点として稼働する予定だ。

 バイオ医薬品の製造には、高度な生産技術と設備が必要とされるため、CDMOにプロセス開発や製造を委託するケースが増加している。同社は、FDBの米国(ノースカロライナ州・テキサス州)、英国、デンマークの4拠点で、バイオ医薬品の生産能力増強や高効率・高生産性技術開発の投資を積極的に行ってきた。

 こうした中、今回、世界最大のバイオ医薬品市場である米国のFDB拠点の近郊に大規模投資を行い、バイオ医薬品の大型製造拠点を建設する。新拠点には、FDBの米国内拠点として最大となる2万ℓ動物細胞培養タンクを8基導入。さらに今後、同サイズの培養タンクを最大32基まで拡張できる拠点とし、受注の増加にも対応していく。また、大型の製剤製造ラインや包装ラインを設置。年間3000万本以上の充填が可能な最新鋭の全自動型製剤製造システム、薬液が充填されたシリンジ(注射器)を多品種のオートインジェクターへ組み立て可能な装置、汎用性の高い自動ラベル貼付・梱包設備などを導入し、幅広い顧客ニーズに応えていく。

 同社は、バイオ医薬品市場で大きなシェアを占める米国・欧州で、「ワンサイト・ワンストップ」の受託体制を備えた大型製造拠点を構築し、2024年度にバイオCDMO事業で2000億円の売上を目指す。さらに、今回の設備投資が寄与する2025年度以降も、市場成長を大幅に上回る年率20%の成長率で事業を拡大していく。同社は、今後も高品質な医薬品の安定供給を通じて、医薬品産業のさらなる発展に貢献していく考えだ。

 

 

大日本住友製薬 米ファイザーと抗がん剤で共同開発を提携

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2021年1月7日

 大日本住友製薬はこのほど、米・連結子会社マイオバント・サイエンシズが、米ファイザー社との間で、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)受容体阻害剤レルゴリクスについて、がん領域と婦人科領域における北米(米国、カナダ)での共同開発と共同販売に関する契約を締結したと発表した。マイオバント社はファイザー社に対し、がん領域について北米と一部のアジアを除く地域でのレルゴリクスの販売に関する独占的なオプション権を許諾する。

 同契約締結の対価として、マイオバント社はファイザー社より、契約一時金として6億5000万ドル(約670億円)を受領。さらに、配合剤の米国承認時マイルストンとして2億ドル(約210億円)、レルゴリクスの前立腺がんに係る売上収益、子宮筋腫と子宮内膜症に係る売上収益のそれぞれが25億ドルに達するまで段階的に支払われる販売マイルストンを加え、総額で最大42億ドル(約4350億円)を受け取る可能性がある。

 また、ファイザー社ががん領域での北米と一部のアジアを除く地域でレルゴリクスの販売に関するオプション権を行使した場合、マイオバント社はファイザー社から5000万ドル(約50億円)を受領し、売上収益に対して2桁台のロイヤリティを受領する。

旭化成 デジタル共創ラボ開設、DX推進を加速

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2021年1月6日

社内外での交流を促進、新組織とビジョンも計画

 旭化成は5日、デジタルトランスフォーメーション(DX)のさらなる加速を目指し、デジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」(東京都港区芝浦)を同日付でオープンしたと発表した。

CoCoーCAFE
CoCoーCAFE

 同社グループは、DX推進をさらに加速するために、社内外の知恵を〝Connect〟し、価値を共創していくことが極めて重要であると捉えている。同拠点では、マーケティング、R&D、生産技術各部門のデジタル人財を集結させ、社内外の交流を促進し、DX基盤の強化とビジネスの創出を目指す。

 具体的には、①「挑戦・共創の場」として、同社グループのデジタルプロフェッショナル人財とビジネスリーダーが集いビジネスの創出に挑戦し、また産学官の様々な社外のパートナーとの共創の場として活用する。

 ②「デジタル技術の高度な活用・検証・体験の場」としては、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたデジタルツイン環境を整備し、海外の工場を日本から遠隔で運転支援するなど、デジタルを活用した新しいビジネススタイルを開発・検証していく。また、デジタル技術を駆使した様々なデモ装置を設置しそれを体験することで、新たな価値につながるアイデアを創出する。

 ③「DX人財育成の場」としては、DX推進には、デジタルプロフェッショナル人財の育成だけでなく、全従業員へのDX教育が重要であることから、同社グループ内の人財を「旭化成DXインターンシップ」として同拠点に受け入れ、教育を実施することにより、DX人財を計画的に育成・拡充していく考えだ。

 同社グループは、マテリアル、住宅、ヘルスケアの3領域で事業を展開。多様な事業・技術・人財から生じるデータを基に、バリューチェーンの様々なステージを通じデジタルを活用することで新しい価値提供の機会が広がっていくと考えている。

旭化成グループのDX推進の全体像
旭化成グループのDX推進の全体像

 また、同社グループがDXを活用できるシーンは、研究開発、生産、品質管理、設備保全、マーケティング、事業戦略、新事業の創出など幅広く存在する。デジタル人財の育成やDXを推進する場・空間の提供に加え、従業員の意識も変革しながら、DXの取り組みを「基盤強化(DXリーダー・デジタル人財の育成、働きがい向上)」と「事業高度化・変革(生産、R&D、事業戦略、新規事業創出)」の両輪でステージアップしていく。

 なお、2021年は、DXのさらなる加速に向けて、同拠点のオープンに加え、グループ横断のDX新組織設置の構想や、DXビジョン策定を計画している。同社はDX推進を加速し、新しいビジネスの創出にグループ一丸となって挑戦していく。

旭化成グループのDX推進ロードマップ
旭化成グループのDX推進ロードマップ

デンカ クロロプレンモノマーはがん死亡率に無関係

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2020年12月28日

 デンカはこのほど、米国の産業医学専門科学誌JOEMに発表された最新の疫学的研究で、米国のクロロプレンモノマー取り扱い施設で従事した作業員約7000人を70年近く追跡調査した結果、肺がんや肝臓がんによる死亡率はクロロプレンモノマーと関連がないと結論づけられたと発表した。

 米子会社デンカ・パフォーマンス・エラストマー社(DPE)は米国ルイジアナ州で、同社ポンチャートレイン・クロロプレンゴム製造工場周辺の複数の住人が工場から排出されたクロロプレンモノマーによって身体的、財産的、精神的損害を被っているとする複数の損害賠償訴訟を受けている。賠償請求に対しては、訴訟内容を精査した上で適切に対処しているとしている。

 同研究は国際合成ゴム生産者協会の資金提供のもと、ピッツバーグ大学の研究者により2000年末までのデータを元に2017年までの17年分の作業員の健康調査データを用いて行った。

 DPEポンチャートレイン工場(米国ルイジアナ州)の1300人超と他社工場(米国ケンタッキー州)の約5500人の計約7000人の対象者は、全米平均および地元郡平均と比較して全死亡、がんによる死亡とも死亡率が低いことを確認した。ルイジアナ州腫瘍統計局の調査でも、DPEポンチャートレイン工場のある地域の発がん率と同州全体の発がん率には大きな差異は見られなかった。

 DPEは今後とも、州・連邦規制当局と協力して化学物質に関する最善の科学を追究し、さらなる環境負荷の低減に努めていく考えだ。

東レ 環境配慮型PETフィルムを開発、CO2削減に貢献

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2020年12月28日

 東レはこのほど、電子部品用途での使用済みポリエステル(PET)フィルムを回収・再利用するリサイクルシステムを構築し、サステナブルな社会の実現に貢献する環境配慮型PETフィルム「Ecouse(エコユース)」シリーズを開発したと発表した。年産2500t規模の生産体制を整え、本格販売を開始する。

環境配慮型PETフィルム「Ecouse」シリーズ
環境配慮型PETフィルム「Ecouse」シリーズ

 PETフィルムの用途は、電子部品や包装材料、ディスプレイ関連向けなど幅広い。中でも電子部品用フィルムは、フィルム製造から廃棄までのサプライチェーンが比較的短く、使用済みフィルムのリサイクルシステムの検討が進められてきた。しかし、サプライチェーンの各工程で使用される多種多様な塗材、樹脂などを除去できる方法がこれまでなく、廃棄物処理やサーマルリサイクルでの活用が中心だった。

 こうした中、東レは、サプライチェーン各社と協力して、電子部品の使用済みPETフィルムを回収・再利用するリサイクルシステムを構築。そして、フィルム表面の塗材、樹脂を除去するメカニカルリサイクル処理技術と、各製造工程における異物除去を組み合わせることで機械特性、信頼性を損ねることなくフィルムに再利用することを可能にした。

 今回開発した環境配慮型PETフィルムは、化石由来原料と廃プラの削減に加え、CO2排出量を従来品比30~50%削減可能だ。「Ecouse」は、同社が2015年からグローバル展開しているリサイクル素材と製品の統合ブランド。フィルム分野では従来、製造工程で発生した端材を原料としてフィルムに再利用してきたが、顧客から回収し再利用処理した原料を用いた環境配慮型PETフィルムを開発したことで、リサイクルフィルムの展開を加速する。

 同社は今後、さらなるリサイクルシステムと生産体制の構築を進め、電子部品用途だけでなく、各用途でリサイクルフィルムの拡大を目指し、また、PET以外のフィルムやフィルム加工品にも「Ecouse」の展開を拡充する考えだ。