SABIC 銅張積層板用樹脂の能増で5Gをサポート

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2020年9月11日

 SABICはこのほど、5G基地局や高速サーバーに使われる高性能プリント基板(PCB)用の「NORYL SA9000」樹脂の生産能力を大幅に引き上げると発表した。昨年に続く今回の能力拡大で、生産量は昨年比でほぼ倍増、一昨年比で10倍になる見込み。将来の製品開発に向けた機能も備え現在インドで進行しており、年内に完了する予定だ。

 「NORYL SA9000」はポリフェニレン・エーテルベースの二官能変性オリゴマーで、トルエンやメチルエチルケトンなどの溶剤に溶解し、スチレン系、アリル系、アクリル系、マレイミド系、メタクリル系や、不飽和ポリエステルなどのモノマー・樹脂などの熱硬化性樹脂と配合可能。それにより耐熱性、寸法安定性、熱膨張率、高多層化がバランスした低損失銅張積層板(CCL)を既存工程で生産できる。

 無線ネットワーク用の高速、広帯域幅、低遅延の5Gインフラで使用されるハイエンドPCBには、高周波数による高速・低挿入損失の高性能CCLが要求され、「NORYL SA9000」は重要構成材料として世界中で使用されている。5Gインフラ市場の今後5年間の年平均成長率は53%との予測もあり、今回の生産能力増強で、ハイエンドCCL向け材料のリードタイムを短縮し、急激な需要変化にも柔軟に対応する。

 また、5G無線ネットワークには膨大な数のスモール・セル基地局などの特殊なインフラが必要。多入出力型基地局とアンテナはレドーム、ダイポール共振器、アンテナ・コンポーネント、ファスナー、ネジ、スタンドオフ、付属部品、位相器、無線周波数フィルター・ハウジングなどで構成され、いずれも機械的特性、物理的特性、誘電特性のバランスのとれた高性能材料が求められる。

 同社は、テクノロジー推進に必要な独自の材料ソリューション、射出成形ソリューションの提供に取り組み、スペシャリティ材料への投資を継続し、5Gネットワークのグローバルな導入促進に貢献していく考えだ。

日立化成 低損失・低変形の5G対応プリント板材料を量産

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2020年9月11日

 日立化成はこのほど、第5世代移動通信システム(5G)や先進運転支援システム(ADAS)、人工知能(AI)などの半導体実装基板に求められる低伝送損失と低そり性を実現するプリント配線板用高機能積層材料「MCL-HS200」の量産を3月より開始したと発表した。

 エレクトロニクス関連製品のIoT(モノのインターネット)化やADAS、AIなどの普及には高速・大容量で低遅延、多数接続が可能な5Gが不可欠だ。またコロナ禍の影響によるリモートワークの増加など、5Gの需要はますます拡大している。

 5GやADASでは、4Gより高い周波数帯を使用するため、電気信号の減衰(伝送損失)が大きい。高周波向け回路基板には伝送損失に加え、信号遅延も低く抑えることが重要。さらにスマートフォンなどデバイスの小型化・高機能化に伴い回路基板も薄型化し、実装時の低そり性も求められるが、これらの両立は難しく課題だった。

 同社は、低極性樹脂と低誘電ガラスクロスの使用で伝送損失を低く抑え(低誘電正接特性)、信号遅延を低減した(低比誘電率)。また、低熱膨張樹脂とフィラー高充填化で低そり性を実現(低熱膨張特性)。

 さらに同社の半導体パッケージ用基材の低熱膨張化技術と高速通信用の多層基板材料の低誘電率化技術を融合し、誘電正接0.0028(10GHz)、誘電率3.4(10GHz)、熱膨張係数10PPM/℃と、高次元で低伝送損失と低信号遅延、低そり性を両立した。薄型基板に対応する回路充填性(樹脂の流動性)をもち、薄型化構造に対応する極薄プリプレグも揃えた。

 日立化成は、さらなる低誘電率化と薄型化の実現に向けて開発を進めており、今後も高度な技術と新製品の開発を通じて、プリント配線板の高機能化に貢献していく考えだ。

宇部興産 生分解性材料の開発に出資、繭由来の天然素材

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2020年9月11日

 宇部興産は10日、カイコの繭に由来するタンパク質であるシルクプロテインの抽出・加工技術をもつながすな繭(京都府京丹後市)の第3者割当増資の引き受けによる出資を決定したと発表した。

 ながすな繭は、『「繭」の可能性を信じ、社会にその価値を届ける。』という経営理念の下、日本有数のシルク産業の地である京丹後市で、シルクプロテインの研究・開発と、その加工品などの製造・販売を行っている。

 シルクプロテインは、自然界の微生物によって分解される生分解性のある材料で、ながすな繭独自の抽出技術により、フィルムやスポンジ、粒子など幅広い形状へ加工できる。同社は、これらの技術により、医療機器や化粧品、繊維、コーティングなどの市場で、「人にも環境にやさしい、そして世の中に役立つものを」提供することを目指している。

 この取り組みに宇部興産が賛同し出資を決定。今後は両社で連携し、市場のニーズを把握しながらシルクプロテイン製品の品質向上やスピーディな量産立ち上げを行い、早期に事業を確立していく。同時に、共同研究を通じ、迅速に生分解材料の知見を蓄積するとともに、新たな用途の開拓に取り組み、将来にわたる両社の成長と事業の発展を目指す。

宇部興産 循環型陸上養殖に向けスタートアップに出資

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2020年9月11日

 宇部興産は10日、京都大学や近畿大学などの技術シーズをコアに設立されたスタートアップであるリージョナルフィッシュ(RF社:京都府京都市)の第3者割当増資の引き受けによる出資を決定したと発表した。

 RF社は、京大大学院農学研究科の木下政人助教と近大水産研究所の家戸敬太郎教授らの共同研究の成果を基に設立。オープンイノベーションを通じて、超高速の水産物の品種改良とスマート陸上養殖を組み合わせた次世代水産養殖システムを作り、「世界のタンパク質不足の解消(SDGs目標2:飢餓をゼロに)」「日本の水産業再興および地域の産業創出(SDGs目標8:働きがいも経済成長も)」「海洋汚染の防止(SDGs目標14:海の豊かさを守ろう)」を目指している。

 宇部興産は、次世代水産養殖システムの構築を通じて持続可能な水産物供給方法の確立を目指すRF社の取り組みに賛同し出資を決定。今後は、新規事業の創出を見据え、化学メーカーとして培った有機・無機・高分子の素材設計や合成技術、プロセス解析力を最大限に活用していく。

 両社は海洋汚染の防止につながる循環型陸上養殖向けのソリューションを目指し、生育環境の制御、廃棄物の削減・利活用、養殖水浄化の効率化などを共同で開発していく考えだ。

 宇部興産グループは、「UBEグループ環境ビジョン2050」を定め、自然と調和した企業活動の推進に取り組み、2050年までに温室効果ガス排出量の80%削減を目指している。また、中期経営計画の基本方針の1つに「資源・エネルギー・地球環境問題への対応と貢献」を掲げており、さらなる温室効果ガス排出量の削減や、環境負荷低減に貢献する新たな技術・製品の創出と拡大に取り組んでいく。

ENEOS 秋田県沖の洋上風力発電事業開発に参画

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2020年9月11日

 ENEOSは10日、秋田県八峰町および能代市沖での洋上風力発電事業の事業化検討を行う合同会社八峰能代沖洋上風力に出資し、 国内での洋上風力発電事業開発に参画すると発表した。

 同事業開発は、当該海域に最大15.5万kW(0.8~1万kW級風力発電機×最大22基)の洋上風力発電所の建設を計画。ENEOSは、メガソーラーや陸上風力で培った再生可能エネルギー事業の事業化と運営などに関する知見を生かし、共同出資者であるジャパン・リニューアブル・エナジーと東北電力と共に、2024年以降の稼働を目指して、事業化の検討を加速していく。

 秋田県は、洋上風力発電事業では日本国内有数の適地。今年7月、経済産業省と国土交通省は、同事業の対象海域である八峰町および能代市沖を、「再エネ海域利用法」に基づく促進区域の指定に向けた有望な区域として認定し、協議会の組織化や国による風況・地質調査の準備に着手することを決定した。

 ENEOSは、再エネ事業を次世代の柱の1つと位置づけ、メガソーラー(18カ所、約4.6万kW)や風力(2カ所、約0.4万kW)、バイオマス(1カ所、約6.8万kWを全国で展開。また、昨年4月には、台湾の洋上風力発電事業へ参画し、世界的にも開発余地の大きい洋上風力発電事業の知見習得に注力している。

 同社は引き続き、再エネ事業の拡大に取り組み、発電容量を2022年度までに約100万kWまで拡大することを目指すとともに、環境配慮型のエネルギー供給を積極的に推進し、低炭素・循環型社会の実現に貢献していく。

NEDO 低炭素社会に向けCNF関連の研究開発に着手

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2020年9月10日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、低炭素社会の実現に向け、新たに「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー(CNF)関連技術開発」事業で14件の研究開発に着手すると発表した。期間は今年度からの5年間で、今年度予算は6.6億円。

 石油の価格上昇や枯渇リスク、CO2排出にともなう温暖化問題など、持続可能な低炭素社会の実現にはバイオマスなどの非石油由来原料への転換が必要となる。植物由来のCNFは、重量は鋼鉄の5分の1、強度は5倍以上の高性能バイオマス素材で、実用化への期待は高く、市場拡大のための用途開拓やコストダウンが求められている。

 NEDOは2013年度からの「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発」事業で、「高機能リグノセルロースナノファイバーの一貫製造プロセスと部材化技術開発」「CNF安全性評価手法の開発」「木質系バイオマスの効果的利用に向けた特性評価」など、木質系バイオマスから得られるCNFの活用技術開発を推進してきた。

 今回、低炭素社会の実現に向け「革新的CNF製造プロセス技術の開発」「量産効果が期待されるCNF利用技術の開発」「多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」を行う。

 「CNF製造プロセス技術」では、CNF複合樹脂の製造コスト低減のため「生産性向上による労務費・原動費削減」「疎水化処理の薬品コスト低減」など製造プロセスの抜本的な見直しを行う。複合対象の樹脂は塩ビ、PA、PP、CRなど。

 「CNF利用技術」では、自動車や建築・土木資材、家電分野などに適用させるための製造技術や成形・加工技術の開発などを行う。「有害性評価手法の開発と安全性評価」では、拡大用途での安全性評価と、製品化時に行う簡易的な有害性評価手法を開発し、事業化支援につなげる。

 CNFを利用した製品の社会実装・市場拡大を早期に実現し、エネルギー転換・脱炭素化社会の実現を目指す考えだ。

 

BASF 高摺動・耐久ポリエーテルスルホン樹脂を発売

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2020年9月10日

 BASFはこのほど、特に高温オイルと接する自動車部品に適したエンジニアリングプラスチックを上市した。

 ポリエーテルスルホン(PESU)「Ultrason E0510 C2TR」は、卓越した摩擦特性、高耐油性、優れた寸法安定性をもち、広範囲の温度変化にも対応。炭素繊維10%配合の射出成形グレードで、マイナス30℃からプラス180℃の温度範囲で使用できる。粘度が低く流動性に優れ、加工も容易。世界各地に供給する。

 同製品はオイルポンプ、オイルコントロールピストン、圧力バルブ、オートマチック/マニュアルギアボックス内の高速コンポーネントなどのオイルと接する自動車部品や、代替駆動システム向けの新用途に使用可能。

 流動性を生かし、厚さ1mm未満の部品でも安定性や耐久性、耐油性を損なうことなく射出成形できる。熱膨張係数は10.4マイクロ/Kと寸法安定性は高く、低温から高温への急激な温度変化にも耐える。国際規格準拠の試験で、低摩擦熱可塑性樹脂を上回る摺動性(滑りやすさ)を示した。耐摩耗・耐薬品試験でもほとんど変化せず、優れた耐薬品性、耐加水分解性、難燃性と温度安定性、高い剛性と強度といった「Ultrason」の特性も備えている。

 「Ultrason」は今回のポリエーテルスルホン「Ultrason E」のほか、ポリスルホン「Ultrason S」、ポリフェニルスルホン「Ultrason P」などのスルホン系樹脂製品群のブランドで、電子機器、自動車、航空宇宙産業にとどまらず、ろ過膜や、温水や食品と接する部品にも使用され、熱硬化性樹脂や金属、セラミックの代替としての利用もある。

 

三井・ダウ ポリケミカル 広島・千葉などにフェイスシールド寄贈

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2020年9月10日

 三井化学と米国ダウ・ケミカル社の合弁会社である三井・ダウ ポリケミカル(MDP)はこのほど、「ハイミラン」樹脂で製作したフェイスシールド7000個を、事業所のある地元自治体や医療機関、学校などへ寄贈した。

市原市の小出譲治市長(右)とMDP千葉工場の三輪敦史工場長
市原市の小出譲治市長(右)とMDP千葉工場の三輪敦史工場長

 寄贈先は、広島県庁、大竹市役所(広島県)、市原市役所(千葉県)、日本赤十字社東京都支部、三井記念病院(東京都)、千葉労災看護専門学校、東京都立港特別支援学校、市原市楽友協会合唱団の8カ所。

大竹市の入山欣郎市長(右)とMDP大竹工場の出羽保之工場長
大竹市の入山欣郎市長(右)とMDP大竹工場の出羽保之工場長

 「ハイミラン」は、米国ダウ・ケミカル社のライセンスを受け、MDPが1978年から製造・販売するアイオノマー樹脂。エチレン-メタクリル酸共重合体の分子間を金属イオンで架橋したアイオノマーで、透明性や強靭性、耐摩耗性、耐油性などに優れている。

 

宇部興産 CO2回収・資源化プロセス、NEDO事業に

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2020年9月10日

 宇部興産は9日、東京大学、大阪大学、理化学研究所、清水建設、千代田化工建設、古河電気工業と共同で提案した、「電気化学プロセスを主体とする革新的CO2大量資源化システムの開発」プロジェクトが、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業に採択されたと発表した。

 同事業は、「ムーンショット型研究開発事業/2050年までに、地球再生に向けた持続可能な資源循環を実現」に公募したもので、委託期間は2022~2029年度の最大10年間の計画となっている。

 地球環境の保全のためには、社会活動により生じる温室効果ガス(GHG)の削減が必要であり、中でもCO2が非常に高い割合を占めている。日本は、「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」(閣議決定)の中で、2050年までに80%のGHGの排出削減に取り組むことを宣言。GHGの削減は、緊急対策が必要な地球規模の大きな問題となっている。

 また、昨年に示された「カーボンリサイクル技術ロードマップ」(経済産業省)では、CO2を資源として捉えて有効利用する「カーボンリサイクル技術」を通して、排出量を抑制する方針が示され、革新的な技術開発が求められている。

 こうした状況下、NEDOは、ムーンショット目標4の達成を目指す研究開発プロジェクトに着手。今回、採択された委託事業では、電気化学技術を主体とし、400ppm~15%程度の幅広い濃度範囲の気体中CO2濃度に対応し、かつ分散配置が可能なCO2回収・有用化学原料への還元資源化プロセスの開発を目指す。

 具体的には、大気中に放散された希薄なCO2と放散される前のCO2を回収し、再生可能エネルギーを駆動力として電気化学的に富化/還元し、有用化学原料を生成するプロセスまでの統合システムを開発。これにより、カーボンリサイクルの基盤を構築する。共同研究者は、今回の事業採択を受け、希薄な濃度に対応可能なCO2回収・資源化に係る革新的技術を産学官の協働により開発するとともに、統合システムの実用化と普及に向けた取り組みを加速する。

 

東ソー ハイブリッドリサイクル技術、NEDO事業に

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2020年9月10日

 東ソーは9日、東北大学、産業技術総合研究所(産総研)、宇部興産、恵和興業、東西化学産業、凸版印刷、三菱エンジニアリングプラスチックスと共同で提案した、「多層プラスチックフィルムの液相ハイブリッドリサイクル技術の開発」が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業に採択されたと発表した。

 同事業は、「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」で進める「廃プラスチックを効率的に化学品原料として活用するためのケミカルリサイクル技術の開発」に公募したもの。なお、同事業の委託期間は今年6月から来年3月までとなっている。

 採択された技術は、包装・容器に多く使用されている多層プラスチックを高温高圧水中で処理することで、特定のプラスチック成分のみを原料にまで分解し、得られた原料と単離されたプラスチックの双方を再利用する。食品などで汚染されたプラスチックごみをそのまま処理できる可能性があり、一般ごみのリサイクル率向上に寄与することが期待される。

 今回の委託事業では、産官学で連携してプラスチックの分解条件の探索と連続処理プロセスの開発を進めることでプロセスの高効率化を図るとともに、社会実装を見据え、対象となる廃棄物の調査と処理プロセス適用時のLCA(ライフサイクルアセスメント)評価を行っていく。