出光興産 スノーレ油田、追加開発プロジェクトで生産を開始

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2020年12月16日

 出光興産は15日、スノーレ油田(ノルウェー領北海)の追加開発プロジェクトとして新たに掘削した坑井からの原油生産を今月12日から開始したと発表した。

 同油田は、子会社である出光スノーレ石油開発(出光興産50.5%、大阪ガスサミットリソーシズ49.5%)が、ノルウェー現地法人出光ペトロリアムノルゲを通じ権益を保有している。スノーレ油田では1992年の操業以来、約14億バレルの原油が生産されている。今回のプロジェクトにより、同油田の可採埋蔵量は約2億バレル追加となり、総可採埋蔵量は約20億バレルとなると見られる。

 今回生産を開始した追加開発プロジェクトは、スノーレ油田の可採埋蔵量増加を目的に海底生産設備を追加し、新たに24本の坑井を掘削するもの。2017年にノルウェー政府に提出した修正開発計画では2021年の生産開始を計画していたが、順調に作業が進捗したことから前倒しで生産を開始した。なお、同油田は、2022年後半の運転開始を目指し建設作業を進める洋上風力発電設備から電力供給を受ける予定。これまでガスタービン発電から得ていた電力の35%程度を、再生可能エネルギーである風力発電に置換できる見込みだ。

スノーレ油田
スノーレ油田

宇部興産 抗血小板剤の効能追加、一部変更承認を国内申請

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2020年12月16日

 宇部興産は15日、第13共との共同研究開発により創製した抗血小板剤「プラスグレル塩酸塩」について、第13共が脳梗塞再発抑制の効能追加に係る国内での医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請を行ったと発表した。同申請は、血栓性脳梗塞患者を対象とした国内第3相臨床試験(PRASTRO-Ⅲ試験)の結果および虚血性脳血管障害患者を対象とした国内第3相臨床試験(PRASTRO-Ⅰ、PRASTRO-Ⅱ試験)などの結果に基づくもの。

 「プラスグレル」は、両社が創製した経口抗血小板剤であり、経皮的冠動脈形成術が適用される虚血性心疾患患者に対し、早期から維持期にかけて安定した抗血小板作用と、優れた心血管イベント抑制効果を示すことが国内および海外の臨床試験で確認されている。また、日本国内では両社が共同開発し、2014年に虚血性心疾患患者に対する適応を取得。

 一方、海外については、2009年に欧米での経皮的冠動脈形成術を施行した急性冠症候群患者の、アテローム血栓性イベント抑制を適応症として承認を取得し、世界各国で発売されている。両社は、脳梗塞患者へ新たな治療の選択肢を提供できるよう取り組んでいく考えだ。

産総研と東大 深層学習で未知化合物物性を高速外挿予測

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2020年12月15日

 産業技術総合研究所(産総研)と東京大学はこのほど、量子物理学の密度汎関数理論(分子や結晶などの物性は電子密度のみで計算可能)に基づく深層学習技術を開発したと発表した。化合物の原子配置を電子の確率分布を表す波動関数に変換し、深層学習により電子密度やエネルギーなどの物性値を高速・高精度に外挿予測する。

 材料開発や創薬の分野では化合物のエネルギー、触媒の反応収率、発電材料の効率、薬剤の活性など様々な物性値の計算・予測が必要だが、理論計算・シミュレーションの計算コストは膨大である。深層学習技術により計算量は減るが、ブラックボックス性の計算であり解釈性・信頼性が低い上、学習データ範囲外のデータを推測する外挿予測は精度が低い。

 今回、産総研の最先端の機械学習技術の理論・アルゴリズムの開発と実データへの応用技術と、東京大学の機械学習技術を材料開発に利用するマテリアルズ・インフォマティクスに関する研究を統合。化合物の原子配置をまず原子の波動関数、そして分子の波動関数に変換。これに分子波動関数から得られる電子密度と原子配置から計算できるポテンシャルが一対一対応するような物理制約を課した上で、原子配置と物性値の大規模データベースを学習し、物性値を予測する。量子物理の基本情報を深層学習モデルの内部で表現・経由した上で化合物の物性値を予測するため、深層学習モデルのブラックボックス性がなく、予測結果の解釈性・信頼性が得られ、学習データから外れた未知の化合物の物性も外挿予測できる。

 理論計算予測値と実験値の誤差が1~2kcal/molであるのに対し、誤差2~5kcal/molと実用に耐える精度で外挿予測が可能。また20原子以上の複雑な構造でも、外挿予測誤差は小さいことを確認した。さらに理論計算では1分子に数十分から数時間かかるところを、数分で1万種類の分子予測が可能。これにより、実用に耐える外挿精度と10万倍以上の高速化を実現した。

 今後は材料開発や創薬の実応用に適用し、有用な触媒や薬剤の大規模な探索を行う。また物理学者・化学者と協力して物理学・化学関係の知識をより多く取り入れ、より高精度の予測ができる深層学習技術の開発を目指す。

レンゴー 海洋生分解性バイオマス透明パッケージ材開発

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2020年12月15日

 レンゴーはこのほど、海洋プラスチックやマイクロプラスチック問題の解決に向け、セロファンや紙をベースに生分解性素材を組み合わせたパッケージング材料の新シリーズ「REBIOS(レビオス)」を上市したと発表した。バイオマス由来のセロファンや紙を最大限活用して、高いバイオマス度と生分解性を示す。また、生分解性樹脂を複合してヒートシール性や防湿性を付与し、食品や日用品、衣類、衛生材料などのパッケージとして幅広く使用できる。

 セロファンは木材パルプを原料とするバイオマス由来の透明フィルムで、同社武生工場(福井県越前市)で生産。日本有機資源協会のバイオマスマークで「バイオマス度95」認定を取得している。土壌だけでなく海洋での生分解性にも優れ、ベルギーの測定機関OWS(Organic Waste Systems)の海水中の生分解性試験で、極めて高い生分解性を確認した。

 同社は、今後も「レビオス」シリーズの拡充を図るとともに、資源を有効活用し地球環境への負荷を低減しながら、高品質・高付加価値のパッケージづくりを通じて、より良い持続可能な社会づくりに貢献していく考えだ。

帝人 マルチマテリアルによるバッテリーボックスを開発

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2020年12月15日

 帝人はこのほど、電動車に求められるバッテリーの環境効率や安全性の向上に貢献することを目指し、マルチマテリアルによるコンポジット製バッテリーボックスを開発したと発表した。

マルチマテリアルによるバッテリーボックス
マルチマテリアルによるバッテリーボックス

 従来、バッテリーを格納するバッテリーボックスは、主に鉄やアルミニウムなどの金属材料を用いることで強度や剛性を担保しているが、軽量性や、バッテリーおよび乗員の保護に必要な耐火性や耐熱性、複雑な車両レイアウトに適応する形状自由度などでは課題があった。

 こうした中、帝人グループは、独自の高機能素材やエンジニアリング技術、成形技術を駆使して、複合材料(FRP)と金属材料を最適条件で組み合わせてマルチマテリアルのバッテリーボックスを開発。特徴として、①FRPには炭素繊維またはガラス繊維を使用することが可能、②FRPをプレス成形することで複雑な形状を一体成形できるため、容易にシール性を確保して安全性を担保でき、製造コストの最適化も実現、③車種ごとに異なるサイズに適切に対応しながら従来と同等の剛性や耐衝撃性を確保するためフレームには金属を使用、④アルミニウム製の従来品と同等の軽量化に加え、耐火性や寸法安定性、耐腐食性にも優れ、FRP製のトレイやカバーには電磁波シールド性を付与することも可能、といったことが挙げられる。

 同社は今後、開発したバッテリーボックスについて、国内の複合材料技術開発センターや、米CSP社、独テクニカルセンター(TACE)などの設備や人財を活用し、顧客ニーズに沿った最適な設計や改良を行い、2025年からの量産開始を目指していく。同社は、マルチマテリアルでの部品供給メーカーとして、ソリューション提案力の強化を進め、2030年近傍には、自動車向け複合材料製品事業で売上20億ドル規模を目指す考えだ。

三井化学 小規模太陽光発電のオンライン診断事業を開始

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2020年12月15日

 三井化学はこのほど、10kWから1MW程度の小規模太陽光発電事業者を主なターゲットに、適切な発電量の予測を目的としたオンライン診断事業を来年4月より開始すると発表した。

オンライン診断の仕組み
オンライン診断の仕組み

 同サービスは、診断専用ウェブサイトと最新のAI技術を利用して、同社の太陽光発電に関する過去からの知見と正確な気象データを背景に将来的な発電収支を予測するもの。事業者自らがサイトにアクセスし必要情報を入力することで、数分という短時間での発電性能の診断結果や期待発電量を含む報告書の発行が行えるようになる。

 同診断事業が主な対象とする小規模発電事業者は、今まで自らの適正な発電量を正確に予測する簡易な方法がなく、将来にわたる正確な発電収支が予測できなかったが、これらの小規模発電事業者が精度の高い将来の発電収支を予測できることで、より安定した事業運営が可能になる。さらに、これらの確度の高い発電収支の予測が裏付けとなり、他社への事業譲渡も容易になると考えられ、日本の太陽光発電市場全体の活性化も期待される。

 同社グループはこれまで、三井化学東セロで30年以上にわたり製造・販売する太陽光パネル用封止材の劣化予測技術、2014年から愛知県田原市で実施してきた「田原ソーラー・ウインド発電所」を通じた事業者としての開発・運営経験、市原工場茂原分工場や袖ケ浦センターの試験用発電所でのデータ蓄積など、太陽光発電に関する様々な知見を蓄積してきた。また、今月にはインドでの太陽光パネル認証試験事業も開始している。

 三井化学はこうした太陽光発電に関する様々な知見と信頼を生かし、日本の再生可能エネルギー利用拡大に対応し、今後もSDGsに掲げられている社会課題の解決に貢献していく考えだ。

ADEKA 環境対応型の樹脂添加剤、新ブランドを展開

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2020年12月15日

 ADEKAは14日、環境対応型の樹脂添加剤ブランド「アデカシクロエイド」を新たに展開すると発表した。同ブランドでは、リサイクル樹脂向けワンパック添加剤の2製品(酸化防止剤および核剤)とバイオ由来原料塩ビ用可塑剤を開発し、サンプル提供を開始。今後、リサイクル樹脂やバイオプラスチックといった境対応型プラスチック市場に製品を積極投入することで、プラスチック資源の循環型社会への貢献を通じて樹脂添加剤での真のグローバル・トップメーカーを目指す。

 同社の「樹脂添加剤」は、プラスチックに添加するだけで、熱や光による劣化から守り、強靭さ、透明性、難燃性など様々な機能性を付与する。例えば、自動車の軽量化による燃費の向上や家電製品の難燃性付与など、くらしのあらゆる場面でなくてはならない〝素財〟であり、同社はグローバル・トップメーカーとして〝プラスチックの長寿命化〟に貢献してきた。

 一方、プラごみによる環境汚染が地球規模で社会問題化。リサイクル技術やバイオプラ開発など環境負荷低減を目指す取り組みも進歩してきたが、循環型社会の実現に向けてさらなる機能性向上が求められている。こうした中、同社は新ブランドを開発。環境対応型プラに従来のプラスチックと同等もしくはそれ以上の機能を付与することで、環境負荷低減と人々の豊かなくらしを同時に実現する。

 同社は、この新製品ラインアップ拡充とグローバル規模の販売拡大を目指し、環境対応型プラスチック分野の樹脂添加剤の市場を新たに形成することで、持続可能な社会に貢献していく。

アデカシクロエイド
アデカシクロエイド

帝人 自動車向け複合成形材料、米に先端技術の開発拠点

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2020年12月15日

 帝人は14日、軽量複合材料製品の生産・販売・技術開発を手がける米CSP社が、ミシガン州に「アドバンスド・テクノロジー・センター」(ATC)を開設したと発表した。

CSPの米アドバンスド・テクノロジー・センター(ATC)
CSPの米アドバンスド・テクノロジー・センター(ATC)

 2017年に帝人グループに加わったCSP社は、主力材料である「GF-SMC」と、帝人がもつ複合成形材料や炭素繊維に関する知見を融合し、EVやハイブリッド車など次世代の環境配慮型の自動車に求められる、軽量で高強度な部品開発を強力に推進している。こうした中、自動車向け複合成形材料事業の日本・欧州にある各研究開発拠点との共同開発強化に向けATCを開設し、マルチマテリアルでのグローバル・ソリューション・プロバイダーとしての地位をより強固なものにする。

CSPが開発したハニカム構造パネル
CSPが開発したハニカム構造パネル

 今回、ATC初のプロジェクトとして、CSP社がこれまで進めてきた画期的な軽量ハニカムパネルの開発に成功。同パネルは、軽量なハニカムコア材料を、繊維にポリウレタン樹脂を含浸させた外板で覆ったサンドイッチ構造をしており、超軽量で強度に優れ、深絞り、鋭角といった複雑な形状の成形が可能となっている。また、自動車業界で「クラスA」と称される美麗な外観をもつ外板パネルにも適用することができ、幅広い用途展開が期待される。

 帝人グループは、マルチマテリアルでのティア1サプライヤーとして、使用材料の拡充から部品設計にまで踏み込んだソリューション提案力の強化や、グローバルでの安定供給体制の確立を進めていく。そして、2030年近傍には、自動車向け複合材料製品事業の売上を20億ドル規模へと拡大していく考えだ。

東京大学ら ポリマー半導体への分子ドーピングが制御可能に

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2020年12月14日

 東京大学、産業技術総合研究所(産総研)、広島大学などによる共同研究グループは、世界で初めてポリマー半導体の立体障害と分子ドーピングの相関を明らかにし、ポリマー半導体の「隙間」サイズを制御することでドーピング量を100倍向上させることに成功した。

 半導体の結晶中に不純物(ドーパント)を添加することで、半導体中の電子数やエネルギーを精密に制御できる。 シリコン半導体のドーピングは、シリコン原子を別の原子に置換して行うが、ポリマー半導体のドーピングはユニークな形・サイズのポリマー分子とドーパント分子を複合化する必要があり、複雑な立体障害を制御する必要がある。

 同グループは結晶性ポリマー半導体へのドーピングに着目し、結晶性ポリマー半導体1ユニット当たり1ドーパント分子を高密度に複合化する技術を開発したが、ドーピング効果を最大化する分子設計指針は明らかではなかった。

 今回、結晶性ポリマー半導体のナノスケールの「隙間」に着目し、立体障害と分子ドーピングの相関を系統的に調査した結果、電気を流す骨格に周期的に付いた側鎖の密度を精密に制御し、隙間を適切に拡張することで、分子ドーピング量を100倍程度増加させることに成功。隙間を拡張した結晶性ポリマー半導体は従来の3倍程度の体積のドーパント分子を複合化でき、ほぼ最密充填された分子複合体を作製することにも成功した。

 結晶性ポリマー半導体の隙間とドーパント分子サイズの関係が明らかとなり、これまでにない様々な分子複合体材料の設計指針が明確になった。また、最密充填した分子複合体は金属のように電気が流れやすく、熱耐久性や環境耐久性も向上することが分ってきた。今後、異なる分子の複合化という単純な化学操作による革新的な電子・イオン材料の創製が期待される。

BASF PPAが45kW燃料電池の複数の部品に採用

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2020年12月14日

  BASFはこのほど、ポリフタルアミド(PPA)「Ultramid Advanced N3HG6」が高馬力ゼロエミッションエンジンを製造するNuvera Fuel Cells社(ヌベラ、米国マサチューセッツ州)の最新世代の45kW(E-45)燃料電池エンジンの複数部品の素材として採用されたと発表した。同エンジンは、今後3年かけて中国の路線バスや配達用車両に導入される予定。

 マニホールドやサーモスタット用筐体、逆止め弁、エジェクター、エキゾーストパイプなどの部品は、様々な温度帯で安定した材料特性が必要。「Ultramid Advanced N3HG6」は高い熱耐性、薬品耐性と優れた機械特性に加え、衝撃強度や寸法安定性が高く、長期性能も安定している。部品によっては冷却水や空気、水素の流れにより様々な媒剤にさらされるが、ポリアミド9T(PA9T)ベースのPPA化合物は優れた薬品耐性と、反応しやすい燃料電池や電気部品用途での純度要件も満たす。

 E-45燃料電池エンジンのアルミダイカスト部品や高温ホースを高性能プラスチックに置き換え、性能と安全性を維持しつつ生産規模拡大のために軽量化するという課題に対し、優れた剛性と強度、高い強靭性、優れた摩耗挙動でエンジン部品の安全性と高品質を実現する。冷却剤用途向けの広範な試験で、エチレングリコール・水・水素混合液/105℃/1万~2万時間の継続使用に耐えることを確認。低燃料・気体透過性、低揮発性により、エンジンシステムの腐食やファウリングを防ぐ。また、BASFの専門知識と独自のシミュレーションツール「Ultrasim」によるデザイン最適化サービスや、適切な材料提供により開発を早め、低単価と予定通りの市場投入を実現した。

 「Ultramid Advanced」には異なる樹脂(PA9T、PA6T/6I、PAT6T/66、PA6T/6)、難燃剤の有無、様々な熱安定剤、無着色からレーザーマーキング可能な黒色といった色味、短・長繊維ガラスや炭素繊維強化材など、射出成形や押出成形用に50以上の配合グレードがある。自動車産業や電気電子産業、機械工学、消費財など多様な分野で、軽量・高性能な次世代プラスチック部品の可能性を広げる。