AGC バイオ医薬品のデンマーク拠点の培養能力を倍増

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2020年11月26日

 AGCはこのほど、CDMO事業子会社AGC Biologics社(米国)でのバイオ医薬品CDMOの培養能力増強を決定したと発表した。デンマーク拠点の隣接地を購入し、工場棟とオフィス棟から成る新社屋を建設し、シングルユース仕様の2000リットルの動物細胞培養槽を増設。総投資額は約200億円、稼働開始は2023年の予定だ。

 バイオ医薬品CDMO市場は年間約10%以上の成長を続け、同社の受託件数はそれを上回る。これに対応するため動物細胞を使ったバイオ医薬品CDMOの培養能力を増強し、デンマーク拠点のシングルユース仕様の培養能力は従来の倍以上に拡大。それに合わせた分析・開発設備や人員増にも対応し、延床面積約1万9000㎡の新社屋を建設する。

 AGCグループはバイオ医薬品CDMO事業を含むライフサイエンス事業を戦略事業の1つと位置づけ、合成医農薬CDMO、動物細胞と微生物を使ったバイオ医薬品CDMOで積極的な買収・設備投資を行い、事業を拡大させてきた。今年7月には成長著しい遺伝子・細胞治療領域にまでCDMO事業の幅を広げ、2025年の目標売上高1000億円以上を2~3年前倒しで達成する見込み。

 今後も各地域でグローバル統一の高水準の品質・サービスを提供できるよう、各拠点のシナジーを最大限発揮させ、製薬会社、患者そして社会に貢献していく考えだ。

 

三井化学ファイン 超微細スクリーン印刷技術を共同開発

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2020年11月26日

 三井化学ファインは25日、高硬度2層ウレタンスキージーのメーカーである大阪ケミカルらとの共同により、スクリーン印刷法でライン&スペース(L/S)=20/20㎛を可能にする超微細印刷技術を世界で初めて開発したと発表した。同技術は、既存のスクリーン印刷ラインに導入可能であり、競争力のある超微細印刷が期待される。三井化学ファインらは今後、同技術の普及を図るために今年度末より顧客への営業活動を開始し、来年度中の実用化を目指していく考えだ。

タッチパネル中の超微細スクリーン印刷例
タッチパネル中の超微細スクリーン印刷例

 近年、タッチパネル(静電容量方式)はスマホやタブレット、ノートPC、車載などに多く使用されている。また、ICT技術の進歩とともに高い検出感度を実現するため、センサとなる電極には狭ピッチ化・超微細化が求められている。こうした中、L/S=50㎛以下の超微細印刷は、微細配線化に優位性のあるフォトエッチング法が主流となっている。スクリーン印刷法はフォトエッチング法と比較してコスト競争力はあるものの、L/S=50/50㎛レベルが限界とされ、超微細印刷への使用が限られてきた。

スクリーン印刷に使用されるウレタンスキージー
スクリーン印刷に使用されるウレタンスキージー

 今回この課題に対し、ウレタンスキージーの販売を手掛ける三井化学ファイン、平滑性と膜厚安定性に大きな特徴をもつ高硬度2層ウレタンスキージーを製造する大阪ケミカル、製版メーカーのムラカミ、ペーストメーカーのアサヒ化学研究所、印刷機メーカーのセリアコーポレーションの5社は共同で、スクリーン印刷法でL/S=20/20㎛を可能とする超微細印刷技術を開発した。

東京工科大 hLFが脊髄損傷の神経再生阻害因子を中和

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2020年11月25日

 東京工科大学はこのほど、大学院バイオニクス専攻の研究グループが、ヒトラクトフェリン(hLF)が、脊髄損傷での神経再生阻害の主因となるコンドロイチン硫酸E(CS-E)に対して強力な中和活性を示すことを発見したと発表した。

 WHO(世界保健機関)によると、世界で年間約25万~50万人の脊髄損傷患者が報告されている。高齢化社会が進む日本でも増加が懸念される難治性疾患の1つだが、現在有効な治療薬は存在しない。今回の成果が、難治性疾患である脊髄損傷に対する新たな治療薬の開発につながる可能性がある。

 すでに、LF製剤の開発に特化したベンチャー企業のS&Kバイオファーマでは、CS-Eを分子標的とする脊髄損傷治療薬の開発に着手している。また、CS‐Eは軸索伸長阻害だけでなく、がんの浸潤・転移にも深く関わることが報告されており、今後、同研究の成果を創薬シーズとする脊髄損傷治療薬や抗腫瘍薬の開発が期待される。

CS-Eは 強力な神経再生阻害因子
CS-Eは 強力な神経再生阻害因子

ダウ 韓国化粧品メーカーの包装材に高精度PEが採用

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2020年11月25日

 ダウはこのほど、韓国の化粧品メーカーであるアモーレパシフィック社が、新しいリサイクル可能な包装用の素材として、ダウのテンターフレーム二軸延伸用(TF-BOPE)「INNATE TF」高精度ポリエチレン樹脂を採用したと発表した。

 TF-BOPEフィルムの商用化は、サステナブルなパッケージの未来にとって画期的であり、高性能、商品棚でのアピール力、プラスチック使用量の低減、リサイクル性を実現。大手ブランドオーナーが、マテリアルリサイクル(MR)可能なパッケージを導入することを可能にする。これは、包装用製品の全製品を2035年までに再利用またはリサイクル可能にするというダウの新たなサステナビリティゴールに沿うもの。

 ダウ、アモーレパシフィック社、フレア・パッケージング社の3社間での提携により、ラグジュアリー化粧品ブランドである「Sulwhasoo」、クリーンビューティーブランドの「primera」、肌美容ブランドの「illiyoon」の液体製品用に、オールポリエチレン(PE単一素材)製でMR可能なスタンドアップパウチが採用。

 フレア・パッケージングが設計および製造するスタンドアップパウチで使用されるダウの「INNATE TF」樹脂は、優れた耐久性、美しさ、優れた耐ピンホール性、製造効率とともに、既存のMR工程でリサイクルが可能である点が評価された。

ENEOS 家庭向け自家消費支援事業で業務・資本提携

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2020年11月25日

 ENEOSはこのほど、再生可能エネルギーなどによる発電事業とその管理・運営を行うシェアリングエネルギー社への出資を行い、同社との家庭向けの自家消費支援事業の展開に向けた業務提携を開始したと発表した。

 シェアリングエネルギー社は、地場のハウスビルダーとの業務提携による家庭向けの販売ネットワークや、競争力のある太陽光発電設備の施工体制を強みとし、他社に先行して一部エリアを除く全国で家庭向けに自家消費支援事業を展開している。

 一方、ENEOSは、分散電源の活用を中心とした次世代型エネルギー供給・地域サービス事業を成長事業の一つと位置づけ、自社リソースを活用したエネルギーサービスの創出を目指している。今回の提携により、住宅の屋根を借りて太陽光発電設備を設置・運営する自家消費支援事業の早期サービス開始を目指す。

 ENEOSは、今年6月にはLooopとの業務提携による店舗や工場向けの自家消費支援事業を発表している。今回の家庭向けサービスの展開に加え、今後はサービスステーション(SS)など同社アセットの活用も検討しており、同事業を加速していく考えだ。

花王 抗菌作用メカニズムを原子・分子スケールで解明

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2020年11月25日

 花王はこのほど、ドイツのハイデルベルク大学と共同で放射光X線を使った精密解析により、細菌に対する界面活性剤・芳香族アルコール抗菌剤の作用メカニズムを原子・分子スケールで明らかにしたと発表した。

 浴室のピンク汚れなどの主な原因であるグラム陰性菌に対し、塩化ベンザルコニウム(界面活性剤)・ベンジルアルコール混合物は高い抗菌効果を示し、浴室洗浄剤などに応用されている。グラム陰性菌は糖鎖と炭化水素鎖を主成分とする「リポ多糖」の層に覆われ、カルシウムイオンがマイナスに帯電したリポ多糖分子同士をつないでバリア層を作っている。塩化ベンザルコニウムはプラス電荷をもち、マイナスに帯電したリポ多糖分子と電気的に引き合う性質があるため、抗菌作用への関与が推察された。そこでサルモネラ菌(グラム陰性菌)から抽出したリポ多糖で均一モデル膜を作製し、塩化ベンザルコニウムとベンジルアルコールを作用させ、放射光X線分析でX線反射率によるリポ多糖層の微細構造の変化と、斜入射角X線蛍光によるカルシウムイオン分布の変化を同時測定した。

 その結果、塩化ベンザルコニウムはマイナスに荷電したリポ多糖に結合はするが、リポ多糖膜はカルシウムイオンのバリア層によって安定に維持されている。そこにベンジルアルコールを混ぜると、ベンジルアルコールの作用でリポ多糖分子の糖鎖と炭化水素鎖の界面部分にゆるみが生じ、塩化ベンザルコニウムが膜に侵入して破壊することが分かった。抗菌作用メカニズムを0.01㎚の原子・分子スケールでとらえた世界的に先駆的な発見となった。

 抗菌作用メカニズムの解明により、人や環境に低負荷で効果的な抗菌剤や抗菌技術の開発が可能になる上、感染症の原因となるほかの細菌の抗菌や、細菌と類似の表面構造をもつウイルスの不活化メカニズムの解析への応用が期待される。なお、塩化ベンザルコニウムは経済産業省が公表している新型コロナウイルスに有効とされる界面活性剤の1つだ。

 同社はサイエンスに裏打ちされた製品や技術の開発を通じて「感染症と向き合う新たな社会」の課題である「公衆衛生レベルの向上」と「感染予防」に貢献していく考えだ。

 

住友ベークライト 米工場が生産・品質管理システムの認証を取得

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2020年11月25日

 住友ベークライトはこのほど、スミトモベークライトノースアメリカ(SBNA)・マンチェスター工場が、プラスチック材料工場として国内外4工場目となる航空機関連部品に関連する生産・品質管理システムのAS9100の認証を取得したと発表した。

AS9100の認証を取得した米SBNA・マンチェスター工場
AS9100の認証を取得した米SBNA・マンチェスター工場

 航空機業界は目下厳しい状況にあるが、同社は、新規拡販ターゲット市場に航空機市場を定め、中長期視点に立ってVaupell社(航空機関連の関係会社)を中心にビジネス拡大に向けた活動を展開。航空機関連市場では、電子部品や自動車とは異なる独特な生産・品質管理が求められるため、同社がもつ優位性あるプラスチック材料の信頼性を高める必要がある。生産・品質管理システムをもとにした材料開発、生産、品質保証を整備・証明するために、国内外の材料工場でAS9100認証取得を進めている。

 すでに静岡工場、北米のナイアガラフォールズ工場、マレーシア工場ではAS9100認証を取得。4工場目の取得となるマンチェスター工場ではフェノール樹脂やプリプレグ、パネル関連材料などを取り扱っている。

 また同工場では、高強度、高耐熱、耐衝撃性、寸法精度などに優れる長繊維補強熱硬化性成形材料や、航空機用コネクタや電子部品に使用されている短繊維補強熱硬化性成形材料を生産しており、航空機部品の軽量化を一気に実現し、一括成形による部品点数削減とコストダウンに貢献できる可能性をもっている。すでに、航空機メーカーおよび航空機部品メーカー(Tier1)から高い関心が寄せられ、サンプルワークでは一部顧客から好評価も得ている。

 同社は今後、さらにマーケティング活動を進め、2023年度に売上高数十億円に加え、5年間で航空機関連ビジネスを2倍にすることを目指していく。

JNC コロナを迅速かつ高感度に検出する技術を共同開発

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2020年11月25日

 JNCと東京農工大学は24日、共同開発した迅速-高感度免疫診断技術AptⅠa(アプティア)法を活用し、新型コロナウイルス(S抗原タンパク質)の迅速‐高感度検出に成功したと発表した。

 アプティア法では、JNCの特許技術である熱応答性磁性ナノ粒子「Therma-Max(サーマ・マックス)」と東京農工大の池袋一典教授が開発した抗原認識試薬(DNAアプタマー)を検体と混ぜ合わせることで、安価(抗体利用時の2分の1~10分の1程度)で短時間(ELISA法の2分の1~3分の1程度)かつ高感度(ELISA法の1~10倍程度)に抗原を検出(濁度)することが可能となる。

 従来の抗原検査キットでは抗原認識試薬(抗体)が2種類必要だったが、アプティア法では1種類のDNAアプタマーで抗原を検出できるという特徴がある。さらに、インフルエンザウイルスに結合するDNAアプタマーを併用することで、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時検出も実現。計測には濁度計を使用するためモバイル化も可能だ。

 DNAアプタマーはモノクローナル抗体と異なり、迅速な分子設計と人工合成が可能であるため、変異を繰り返す新型コロナへの対応(診断)も見込まれる。またアプティア法とJNCの特許技術であるペーパークロマト法を組み合わせることで、唾液を使った新型コロナの簡易抗原検査キット(目視判定)への応用も期待される。

 今後は実用化に向けて、診断薬メーカーをはじめとする共同研究先を広く募集し、商品化を目指していく方針だ。新型コロナの簡易検査を巡っては、多岐にわたる業種やアカデミアから数多くの新技術開発が発表され、磁性ナノ粒子を使う簡易検査法では、日本大学から「SATIC」法という新たな診断法が発表されている。

 なお、アプティア法で利用する「サーマ・マックス」は、JNCと神戸大学による産学連携の研究成果から製品化された。

AptIa法による 抗原検出の原理
AptIa法による 抗原検出の原理

NEDO 革新的ロボット研究開発基盤の構築事業を開始

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2020年11月24日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、多品種少量生産現場などロボット導入が進んでいない領域にも対応する革新的産業用ロボットの実現に向け、重要な要素技術を産学連携で研究開発する事業に着手すると発表した。8社11大学などが参画し、期間は今年度からの5年間、今年度予算は2.5億円。既存技術の改良・改善のアプローチのみならず、サイエンス領域に立ち返った技術開発や異分野の技術シーズの取り込みなどによるイノベーション創出を目指す。

 産業用ロボットは自動車産業やエレクトロニクス産業に数多く導入され、日本の産業の発展に欠かせない基盤技術だ。また食品加工や物流分野などにも労働力不足を背景に導入が検討され、産業用ロボットの市場拡大が見込まれる。

 一方、日本には産業用ロボット専業メーカーが少なく、個別企業では対応が限定されるため、基礎・応用研究への支援が期待されている。今回、ロボティクス以外の分野も含めた幅広い大学研究者などと連携して要素技術を開発し、企業ニーズに対して大学のシーズを有効活用できるよう、将来の社会実装に向けた産学連携体制の基盤を構築する。

 研究開発する技術分野は「自動的・汎用的ロボットの動作計画技術」「多用な対象物に対応できるセンシング機能とハンドリング技術」「ロボットを安定操作できる遠隔制御技術」「ロボット構成部材へ適応できる新規な非金属や複合素材」だ。

 具体的テーマは「産業用ロボットの機能向上・導入容易化のための産学連携による基礎技術研究(6社10大学・研究所)」「変種変様な多能工作業を可能にするセンシング技術搭載エンドエフェクタの開発と実証(1社1大学)」「果菜作物収穫システムの開発(1社1大学)」だ。

ダウ 中国社とPE単一素材の洗剤用パッケージを商品化

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2020年11月24日

 ダウはこのほど、テンターフレーム二軸延伸用「INNATE TFポリエチレン樹脂(TF‐BOPE)」が、中国の大手洗剤ブランドである立白(Liby)の、タブレット洗剤のパッケージに採用されたと発表した。ダウは、2035年までに包装用製品の100%を再利用またはリサイクル可能にする、という新たなサステナビリティゴールの達成に向けた取り組みを推進しているが、この提携により加速することになる。

「INNATETMTF-BOPE」を使用した洗剤パッケージ
「INNATETMTF-BOPE」を使用した洗剤パッケージ

 タブレット洗剤用のパッケージのマテリアルリサイクル(MR)を可能にする取り組みは、ダウ、立白およびFujian Kaida社との協力により実現。「TF-BOPE」は、既存のMRの工程で再利用可能な、単一素材(オールPE)の素材であること、輸送中の漏れを低減する高靭性など優れた物性や、商品棚でのアピール力や手触りの良さを実現する光学特性を備えていることが評価されて選択された。大手包装メーカーであるFujian Kaidaが、立白のタブレット洗剤用のパッケージを製造する。

 ダウは今年7月初め、「TF-BOPE」フィルム用のPE樹脂を「INNATE」高精度樹脂シリーズに加える、革新的かつ画期的なブランド拡張を発表。「TF-BOPE」は、高性能で使いやすく、MR可能な包装材料に対する世界的な業界ニーズに対応するための製品。「INNATE TF」は、「リサイクル可能なデザイン」ソリューションとして認知されており、ブランドオーナーが開発初期段階からパッケージのリサイクル性を考慮できるようにする。

 ダウは、2025年サステナビリティゴールの一環として、バリューチェーン全体の主要なステークホルダーと協力し、革新的で持続可能なパッケージ用のソリューションを促進することで、プラスチック業界の健全かつダイナミックな発展の推進に取り組んでいる。「TF-BOPE」樹脂は、加工業者、ブランドオーナー、小売業者に、MR可能であると同時に必要とされる特性をもつ革新的なパッケージ用のソリューションだ。これは、従来のPE製品と比較して、優れた物性を備える同樹脂特有の分子構造により可能となった。