DNP 5ナノ対応EUVフォトマスクプロセスを開発

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2020年7月13日

 大日本印刷(DNP)は10日、マルチ電子ビームを使うマスク描画装置を利用し、現在の半導体製造の最先端プロセスであるEUV(極端紫外線)リソグラフィに対応する、5㎚プロセス相当のフォトマスク製造プロセスを開発したと発表した。

EUVリソグラフィ向け5nmプロセスに相当する高精度なフォトマスク
EUVリソグラフィ向け5nmプロセスに相当する高精度なフォトマスク

 現在の半導体製造では、フォトリソグラフィ技術で十数㎚の回路パターンをシリコンウェハに形成している。しかし、光源に波長が193㎚のArF(フッ化アルゴン)などのエキシマレーザーを使用しているため、解像度に限界があった。この課題に対し、EUVリソグラフィでは、波長が13.5㎚のEUVを光源とすることで、数㎚の回路パターンの形成が可能となる。この技術は、一部の半導体メーカーで、5~7㎚プロセスのマイクロプロセッサーや最先端メモリデバイスなどで実用化が始まっており、今後は最先端プロセスを手掛ける多くの半導体メーカーでの利用拡大が見込まれている。

 同社は2016年に、フォトマスク専業メーカーとして世界で初めてマルチ電子ビームマスク描画装置を導入。高い生産性と品質で半導体メーカーの要望に応えてきた。今回、マルチ電子ビームマスク描画装置の特性を生かした新たな感光材料を含むプロセスを独自に設計。EUVマスクの微細構造に合わせて加工条件を最適化することで、専業メーカーとしては初めて5㎚プロセスに相当する高精度なEUVリソグラフィ向けフォトマスク製造プロセスを開発した。

パターン拡大写真
パターン拡大写真

 マルチ電子ビームマスク描画装置は、26万本の電子ビームを照射することで、高精度なパターニングに必要となる高解像レジストの使用が可能となり、曲線を含む複雑なパターン形状に対しても描画時間を大幅に短縮できる。また、同装置のリニアステージ(部材を直線的に移動させる土台)は動作安定性が高く、描画精度の向上を実現した。

 同社は今後、国内外の半導体メーカーのほか、半導体開発コンソーシアム、製造装置メーカー、材料メーカーなどへEUVリソグラフィ向けフォトマスクを提供するとともに、EUVリソグラフィの周辺技術開発を支援し、2023年には年間60億円の売上を目指す。

 また、ベルギーに本部を置く半導体の国際研究機関IMECをはじめとしたパートナーとの共同開発を通じて、3㎚以降のより微細なプロセス開発を進めていく。DNPは、印刷プロセスを応用・発展させた「微細加工技術」を活用し、今後さらに需要が高まる微細な半導体用フォトマスクの供給体制も強化していく方針だ。

NEDO ネットワーク末端での情報処理効率を一桁向上

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2020年7月10日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、進化型・低消費電力AIエッジLSIの研究開発事業を通じて、ソシオネクスト、ArchiTekと豊田自動織機が、AI認識処理の「ハイブリッド量子化DNN技術(深層学習)」、画像処理の「進化型仮想エンジンアーキテクチャ技術(aIPE)」、自己位置推定・環境地図作成の「リアルタイムSLAM処理技術」を開発したと発表した。

 これらを用いたAIエッジLSIを試作評価したところ、AI認識処理と画像処理は汎用GPUの10倍以上の省電力化、リアルタイムSLAMの自己位置推定処理時間は汎用CPUの20分の1となる短縮化を達成した。

 IoT社会の到来により爆発的に増加するデータを高度に利活用するためには、クラウドでのデータ処理だけでなく、ネットワーク末端(エッジ)での低消費電力・高度情報処理が求められる。今回、パラメーターや入力値を低ビット化して処理する技術と、機械学習用の量子化ライブラリ、推論用の量子化エンジン、学習から推論への変換処理技術により、高速・高精度・低電力でのAI認識処理が可能となった。

 また、最小限のハード部品の組み合わせでアルゴリズムを構築することで、高速移動ロボットの自己位置推定処理時間を、大幅に短縮できた。これにより物流やマシンビジョン、セキュリティ・見守り、車載センシングシステムでの低電力、低遅延、低コストのエッジコンピューティングシステムが構築でき、超低消費電力社会の実現が期待できる。

 今後、進化型aIPEとハイブリッド量子化DNN技術の統合、リアルタイムSLAM処理技術の高度化、コンピュータービジョンとAI基本ミドルウェアライブラリの開発、クラウド・エッジ環境の最適化を進め、産業検査、運転支援、ドローンなどへ適用可能な高度・低電力AIの技術確立を目指す。なお、進化型aIPEを取り込んだプラットフォームのIP(回路情報)は、ArchiTekが10月から提供する予定。

日板硝子 抗ウイルスガラス「ウイルスクリーン」簡易衝立キットを開発

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2020年7月10日

 日本板硝子はこのほど、光触媒技術を活用した抗ウイルスガラス「ウイルスクリーン」を使った簡易衝立キットを開発したと発表した。

 ウイルスクリーン簡易衝立キット
ウイルスクリーン簡易衝立キット

 「ウイルスクリーン」は銅系化合物と酸化チタン光触媒を組み合わせた抗ウイルスガラス製品で、ガラスに付着したウイルスの活性を低減させる。商業施設のレジカウンターなどでの利用を想定した組み立て式の簡易衝立キットで、サイズは2種類、9月ごろ発売の予定。「ウイルスクリーン」は「抗ウイルス」が求められる病院や公共施設などへ提供してきたが、「新しい生活様式」では商業施設、ホテル、幼稚園、工場など様々な施設でもウイルス対策が求められている。

 今回発売の「簡易衝立キット」は、レジカウンターなどでの飛沫感染防止を想定し、客側に抗ウイルス膜、店員側に飛散防止フィルムを貼り付けたもの。抗ウイルス膜は、銅系化合物(抗菌・抗ウイルス効果)を酸化チタン光触媒膜(有機物の分解)にスパッタリングした複合膜。銅系化合物の抗ウイルス効果が弱まっても、光触媒機能により効果が回復する。

 また光触媒は、蛍光灯やLED照明対応の「可視光応答型」である。ものに付着した細菌やウイルスは一般的に12~24時間生存すると言わるが、「ウイルスクリーン」は、ガラス面に付着したウイルスを室内照明下約60分で99%以上減少させる。一般的なアクリルや塩ビと比べ、耐久性(耐UV、変色)、美観(透過性、視認性)、メンテナンス(消毒不要)の点で優れている。

 同社は、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどのレジカウンターで、感染を気にすることなく買い物ができる「新たな生活様式」が生まれることを期待している。なお、「ウイルスクリーン」は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「循環社会構築型光触媒産業創成プロジェクト」で東京大学との共同研究から生まれたもの。

 

帝人 高機能ポリエステルクッションがベビーカーに採用

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2020年7月10日

 帝人はこのほど、帝人フロンティアの高機能ポリエステルクッション材「エルク」が、ピジョンの日本初となるファン一体型ベビーカー「ビングルファンプラス」の座面シートに採用されたと発表した。

 「ビングルファンプラス」はファン一体型ベビーカーで、背中を風が通り抜ける「クーリング構造」と、通気性・透湿性に優れる「エルク」の採用で、安全性に加え、暑い季節にも赤ちゃんが涼しく過ごせる快適環境設計となっている。

 「エルク」は「軽量」「高弾力性」「高通気性」「洗濯可能」や、燃えてもシアンガスを発生しない安全性が高く評価され、すでにウレタン代替の高機能クッション材として多くの採用実績がある。今後さらに幅広い用途への展開を図っていく考えだ。

 

東洋紡 新型コロナ遺伝子検査試薬を今月下旬から販売へ

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2020年7月10日

 東洋紡はこのほど、新型コロナウイルス遺伝子(SARS‐CoV‐2)検査試薬「ジーンキューブ SARS‐CoV‐2」が、厚生労働省より製造販売承認を取得し、今月下旬から、医療機関と検査施設向けに販売開始すると発表した。同社は先月10日に厚労省への申請を行っていた。

 同製品は、生体試料(唾液を含む)から抽出されたRNAを用い、最短約30分で新型コロナウイルスの検出を行う、同社が販売する全自動遺伝子解析装置「GENECUBE(ジーンキューブ)」専用の検査試薬。同装置は、試料と試薬の混合から増幅・検出までを全自動で処理できることから、検査者の作業負担の軽減や、感染リスクの低減に寄与する。

 東洋紡は今後も、解析装置の増産と体外診断用医薬品の普及・安定供給を通じて、医療現場での遺伝子検査体制の充実を支援し、新型コロナウイルス感染症の拡大防止と医療従事者の負担軽減に貢献していく。

デンカ 豪雨で停止した大牟田工場が順次生産を開始

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2020年7月10日

 デンカは、九州地方で発生した豪雨によって停止していた大牟田工場(福岡県大牟田市)の設備点検を今月8日から開始し、安全が確認できた生産設備から順次生産を再開していくと発表した。なお、球状シリカはすでに生産を再開している。

 また、グループ会社の九州プラスチック工業(熊本県玉名市)は、設備への被害がなく、8日から雨どい・ポリエチレン暗渠排水管など、すべての製品の生産を再開した。

 デンカ・大牟田工場と九州プラスチック工業では、6日の豪雨により全プラントを停止していた。

長瀬産業 シンガポールに食品素材ラボ、海外2拠点目

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2020年7月10日

 長瀬産業は9日、販売子会社のNagase Singaporeが、同社グループが取り扱う食品素材によるソリューションの提供や、食品飲料メーカー向けの実演・講習会などのコミュニケーションを行う拠点として、シンガポールに「リージョナル・イノベーション・センター」をオープンすると発表した。同施設は、製造子会社である林原(岡山市)が日本国内(岡山・東京)で展開するアプリケーション開発ラボ「L‘プラザ(エルプラザ)」を海外に展開するもので、昨年に開所した中国・厦門に続き2例目となる。

エントランス
エントランス

 同施設は、各国の食文化や味付けによって異なるニーズをふまえたレシピ提案、アプリケーション開発、顧客へのプレゼンテーションやセミナーの実施を目的に開設するもので、主なターゲットは東南アジア、オセアニア、中東地域のパン、菓子、飲料、乳製品、加工食品、麺などを含む食品飲料業界メーカー。

 林原の主力製品である多機能糖質「トレハ」、ビタミン・アミノ酸などの多様な食品素材のプレミックス(配合品)に強みを持つ米国の食品素材加工・販売会社プリノバ・グループの取り扱い製品、ナガセケムテックス(大阪市)が製造する酵素製剤などグループの商材を中心にソリューションを提供していく。

 長瀬産業では、今年度までの中期経営計画「ACE‐2020」の注力領域の1つにライフ&ヘルスケア分野を掲げており、今年4月には食品素材を事業領域とするフードイングリディエンツ事業部を立ち上げた。特に海外を舞台にグループ全体で食品素材事業を展開するため、「Nagase Food Ingredients」(中文:长濑食品素材)のブランド名で事業をグローバルに推進しており、今後もグループのシナジーを最大限に生かし食品素材業界でのプレゼンスを向上していく考えだ。

実演イメージ
実演イメージ

産総研 6Gの低電力化に向け、100G㎐超での導電率を計測

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2020年7月9日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、高周波平面回路などに用いる金属材料の導電率を100G㎐超までの超広帯域にわたって簡便に測定する技術を開発した。

 通信インフラとし第5世代移動通信システム(5G)の事業化が進む一方で、次世代のポスト5G/6Gの研究開発も注目されている。6Gではさらなる高速大容量通信のためにミリ波(周波数100G㎐超)の利用が見込まれるが、周波数が上がるほど伝送損失は増大し消費電力も上がるため、低消費電力材料が求められている。

 高周波回路では、伝送損失は誘電体基板の誘電損失と金属線路の導電率で決まるが、金属・誘電体接着面での導電率低下が問題である。産総研は、誘電体基板で金属円板を挟んだ平衡型円板共振器を用いて、170G㎐までの超広帯周波数帯の誘電率測定技術を開発してきた。

 しかし、金属導電率に関しては、周波数100G㎐超帯での簡便・高精度な計測技術はない。今回、誘電体基板で金属箔を挟んだ誘電体共振器に対して、高次モード励振の共振特性から導電率を決定する電磁界解析アルゴリズムを開発し、10~100G㎐超の超広帯域にわたる簡便かつ従来と同等精度での計測を実現した。この技術により、5Gや6Gの低消費電力化に向けた材料開発が加速すると期待される。

 技術の詳細は、オンライン開催の国際会議IMSで先月発表された。今回、独立した金属円板の導電率計測を実証したが、今後、銅箔を誘電体基板上に実装した銅張基板の導電率計測を実証するとともに、銅張基板のミリ波帯での損失低減に向けたプロセス技術開発に貢献していく。さらに、ポスト5G/6G時代を見据えて、500G㎐までの計測技術の開発を進める考えだ。

 

 

三菱ガス化学 次世代低損失BTレジン積層板材料が受賞

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2020年7月9日

 三菱ガス化学の次世代低損失BT(ビスマレイミド・トリアジン)レジン積層板材料「CCL‐HL972LFG/GHPL‐970LFG」と「CRS‐791」はこのほど、「第16回JPCA賞」を受賞した。

 同賞は、日本電子回路工業会(JPCA)が主催・運営する2020年JPCAショー/マイクロエレクトロニクスショー/有機デバイス総合展などでの新製品・新技術促進による活力向上と総合的技術の進歩発展を目的とし、全出展企業がエントリーした製品・技術から選出される。学術界、電子回路業界、専門誌編集者など有識者から成る選考委員会で、「独創性」「産業界での発展性・将来性」「信頼性」「時世の適合性」を基準に選考される。

 同社独自のBT樹脂技術による高耐熱性積層材料は、半導体パッケージ用途などで使われている。この高周波用途向け「HL972LF(LD)」の次世代材料として、低損失性を進化させた「HL972LFG/LFG(LD)」と電子部品の低背化を実現する低誘電率ビルドアップ材「CRS‐791/792FX」「GHPL‐970FT」を開発。5Gの高周波数領域での高速・低損失信号伝送に対応する、低誘電率・低誘電正接特性の高精細配線が可能な材料を、樹脂改良技術で達成したことが評価された。

 同社は今後も新しい技術を追求し、BT積層材料で市場の要求に速やかに応えることで、高度情報通信社会の発展に貢献していく考えだ。

 

三井化学 ゲル新素材の拍手ロボット、ヒトの拍手を再現

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2020年7月9日

 三井化学は、ヒトの肌に近い感触を備えるゲル新素材を使い、ヒトの拍手に近い音を再現する拍手ハンドを開発し、このほど、バイバイワールド(東京都品川区)のエンターテイメントロボット「ビッグクラッピー」の2020年モデルに採用された。

三井化学のゲル新素材を採用した拍手ロボット『ビッグクラッピー』
三井化学のゲル新素材を採用した拍手ロボット「ビッグクラッピー」

 「ビッグクラッピー」は、拍手と音声で楽しませてくれる拍手ロボット。店頭での販促をはじめ、飲み会やスポーツ観戦など各種イベントでその場を盛り上げてくれる。

 よしもとロボット研究所チーフクリエーターも務めたバイバイワールドの髙橋征資代表は、よりヒトに近い拍手音の再現を追求していた。こうした中、東京都中小企業振興公社の紹介が契機となり、両社間で拍手ハンドの開発を開始。三井化学は拍手音を最適化するため、「ビッグクラッピー」の音響テストを実施し、ゲル素材の分子構造を変えることで、様々な硬度や反発性の異なる拍手ハンドを製作した。さらに、音響テストによる時間周波数特性解析を比較することで、ヒトの拍手音に合った広い周波数帯の再現が可能になった。

 近年、ロボットをヒトへ近づけていくために、柔らかい素材でできたロボット部品のニーズが高まっている。ゲル新素材は、三井化学の分子設計技術をベースに、10年以上を費やし蓄積したヒトの肌に近い物理特性を自由に制御する技術により開発した。同社のロボット材料事業開発室では、革新的なロボット向けにプラスチック部品の製造販売を行う。

拍手ロボット『ビッグクラッピー』の全体像
拍手ロボット「ビッグクラッピー」の全体像

 今回の拍手ハンドは、ゲル新素材と金属を一体成型して製造。また、ゲル新素材は、眼科手術練習シミュレーターの眼球モデルへの採用実績もあり、サービスロボットや医療分野など、ヒトの肌に近い柔らかな触感が求められる様々な製品へ応用を図っていく考えだ。

 革新的な新商品を生み出すチャレンジには、新しい素材が欠かせない。三井化学は今後も、世の中のイノベーションを促進するため、長年の素材の知見を生かし、新規事業やベンチャー企業をサポートしていく。

 なお、「ビッグクラッピー」は、赤い扇風機の羽根の部分をタコの頭にしたような外観で、頭上に掲げた両手でパチパチと拍手するロボット。コミカルな大きい目と、音声に合わせて動く分厚いピンクの唇も特徴の1つ。サイズは高さ900㎜×幅300㎜×奥行340㎜。2個の人感センサーを内蔵し、ヒトの動きを感知して拍手と音声が作動する。電源はACアダプタ仕様。現在、レンタル・販売中。