東レは1975年から「トレコン」の製品名で、ポリブチレンテレフタレート(PBT)事業を展開している。現在は愛媛工場(2万3000t/年)と、2006年に稼働を開始した、BASFとの合弁会社であるマレーシアのプラント(6万t/年)でポリマーを製造している。
コンパウンドの拠点は日本(名古屋事業場)と中国の3カ所(蘇州・深圳・成都)、タイ、インドネシア、米国にあり、インドの新拠点が9月から量産を開始する予定だ。これらグループ会社のほか、ベトナムと
2019年8月23日
2019年8月19日
海洋プラごみ問題など、環境貢献も需要なテーマ
日本の化学産業は米中貿易摩擦の深刻化による中国経済減速の影響により、逆風が吹き始めている。世界経済のバランスが崩れてきたことで、サプライチェーンの分断化が懸念されており、生産・供給体制の見直しや、地産地消といったローカル戦略が重要となってきた。
これまで各社は、高付加価値品へのシフト、成長分野への進出、M&Aなど事業ポートフォリオ変革に注力し、変動への耐性を高めている。その真価が試される中、持続的成長を模索する動きが強まりそうだ。
また、急速に進むグローバル化やデジタル化に対応した、社内基盤の整備も大きなテーマとなっている。プロフェッショナル人材の確保や育成、また海外拠点の増加に伴うガバナンス体制の強化も図っていく必要がある。
一方、海洋プラスチックごみ問題や地球温暖化問題がクローズアップされ、世界的に環境意識が高まっており、素材産業にも厳しい目が注がれている。ESGやSGDsといった視点に立ち、持続可能な社会の構築にいかに貢献できるかが、今後ますます問われてくるだろう。
国内の化学産業は「令和」という新時代に、企業価値の向上や環境問題にどう取り組み、持続的成長を果たしていくのか。その戦略と方針について、業界を代表する首脳の方々に聞いた。
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信越化学工業会長 金川千尋氏/▽さまざまな事態への備えが重要、安定的な収益確保を目指す
三菱ケミカル社長 和賀昌之氏/▽安全が第一、安全・安心を担保できない事業はやめる覚悟
旭化成社長 小堀秀毅氏/▽サステナビリティへの貢献を軸に、製品・用途開発を推進
三井化学社長 淡輪敏氏/▽増設・増強でナフサクラッカー強化、下流の競争力を向上
東ソー社長 山本寿宣氏/▽スペシャリティで相次ぎ能増、新中計で成長図る
昭和電工社長 森川宏平氏/▽創立80周年を迎え、さらなる収益力向上のサイクルを回す
JSR社長兼COO 川橋信夫氏/▽ポートフォリオを拡充、新体制でグローバル化に対応
PSジャパン社長 佐藤公氏/▽新中計では目標を「見える化」、実力のさらなる向上を目指す
2019年8月16日
新中計では目標を「見える化」、実力のさらなる向上を目指す
━社長就任から1年が経ちました。
昨年の社長就任時に「リーディングカンパニーとしてのあるべき姿を目指す」ことを掲げたが、振り返ってみると収益を含め総じて順調な1年だった。事業環境が良かったこともあるが、テーマとしてきた高付加価値化が進展したことや、コストダウンに注力してきたことで、事業基盤が確実に強化されてきたと感じている。また、ポリスチレン(PS)業界は、四半期ごとの価格改定が定着しているなど、樹脂メーカーから加工メーカーまで透明性が高いという印象を持っている。ほかの樹脂と比べても、良い業界と言えるのではないか。
━見えてきた課題は何ですか。
課題はいくつかあるが、第1はやはり安定供給責任だ。事業の拡大戦略を打ち出している顧客に対応するため、供給能力を確保していかなければならない。次に品質保証の問題だ。リーディングカンパニーとして「品質ナンバー1」を目指しており、これまで異物問題に対し集中して投資を行ってきた。
第1段階である異物発生源対策は終了し、また流出防止対策も一段落した。今後も、異物を低減する対策は継続して実施していく。ポリマー中に残るモノマーの量を極力減らした当社の
2019年8月15日
ポートフォリオを拡充、新体制でグローバル化に対対応
━社長に就任され、経営体制も変わりました。
当社売上の海外比率が約60%、また従業員の40%ほどが海外におり、市場も含めたグローバル化に対応するためCEO・COO制度を導入しました。CEOは経営方針や経営計画などJSRグループ全体に関する事項を担当するとともに、北米統括会社の社長としてライフサイエンス(LS)事業を統括します。この6月に社長兼COOに就任し、LS事業を除く全ての事業や研究開発、人事からガバナンスまで統括しています。
社長就任の抱負として、事業環境が変化していますので、各事業の5G向け材料などでポートフォリオの拡充・拡大を図り売上を伸ばしていきたい。LS事業では健康長寿分野への貢献を図り、またCTO(最高技術責任者)も兼務していますので需要に対応した新しい素材の開発にも注力していきます。
━環境問題への関心が高まっていますが、対応策について。
われわれの大きな用途の1つであるタイヤについてはカーボンも入っていますし、われわれだけでは対応できないので、業界と歩調を合わせて最大の努力をしていきます。海洋プラごみ問題で出てくるものとして、ゴムの微粉がありますが、当社が開発している高耐久性・耐摩耗性のS-SBRは、微粉の
2019年8月14日
創立80周年を迎え、さらなる収益力向上のサイクルを回す
━2018年度の業績の総括をお願いします。
当社グループは、2016年から推進してきた中期経営計画「Project 2020+」で、持続的成長に向けた収益基盤の強靭化を推進してきました。この結果、2018年は黒鉛電極事業において統合効果の顕現と国際市況の上昇により大幅な増収となったほか、すべてのセグメントで中計目標を達成し、過去最高の営業利益を達成しました。すべての事業で収益力が向上した結果です。
━2019年度の景気動向と事業環境の見通しや、米中貿易摩擦の影響を教えてください。
18年後半から懸念された中国景気減速については、中国政府による景気刺激策により持ち直しの傾向が見られたものの、米中貿易摩擦の長期化が中国経済に直接的・間接的に影響を与え、不透明感が強まっているように見えます。この問題は米中だけにとどまらず、原材料在庫、流通在庫の調整が起こるなど、世界経済全体に大きな影響を及ぼしており、この状態が継続するのか、引き続き注視する必要があります。日本経済への影響については、2018年後半から中国への電子材料や各種機械装置の輸出、メモリや半導体需要の低迷が表面化しています。2019年下期は
2019年8月13日
増設・増強でナフサクラッカー強化、下流の競争力を向上
━ 昨年度の振り返りと、今年度の見通しについてお伺いします。
対外的なカントリーリスクなどがあったが、国内需要はそれなりに推移し、その状況下では比較的底堅く動いていったのではないか。ただ、原料価格の急変、特にナフサの急落は、一過性ではあるが、負のインパクトがあった。
また、当社として反省すべきは事故がなかなか止まらないことだ。昨年6月の大阪工場・用役プラントでの火災事故も負のインパクトとなり、3年連続の最高益更新には至らなかった。ただ当期純利益が最高益を更新できたことは、一定の手応えを感じている。
今年度については、社内に向けて、「潮目が変わった、
2019年8月9日
2019年8月9日
サステナビリティへの貢献を軸に、製品・用途開発を推進
━昨年度の振り返りと施策について、お聞かせください。
昨年度は3カ年の中期経営計画「Cs for Tomorrow 2018」の最終年度だったが、売上高と営業利益が過去最高を更新し、計数面で非常にいい成果がでた年だった。また、拡大投資にかなり踏み込んだ年でもあった。競争優位性のある事業では、オーガニックな成長に向けた能力拡大投資を決定した。
M&Aでは、CO2センサーのモジュールメーカーであるセンスエアー社、自動車用内装材メーカーのセージ社、住宅の部材サプライヤーであるエリクソン社などの買収を発表した。この3社についてはクロージングも完了しており、将来に向けた成長への布石が打てたと考えている。
一方、事業の基盤強化では、
2019年8月9日
2019年8月8日
スペシャリティで相次ぎ能増、新中計で成長図る
━前中計の最終年度だった2018年度の振り返りと、2019年度の見通しについて。
2018年度の売上は8615億円、営業利益は1057億円を達成し、前中計の目標はクリアしました。ただ、これは交易条件が非常に良かったためです。2019年度は売上高が8600億円、営業利益は950億円の減収減益という業績予想を組んでいます。その理由は、製品の海外市況が下落する見込みであること。特に、塩ビやウレタンの海外市況を厳しく見たことが、この数字に表れています。
━海洋プラスチックごみをはじめとする環境問題への対応は。
廃プラスチック問題に関しては、例えば、廃ボトルの国内処理拡大が必要となっており、当社はセメント・プラントを持っているので、サーマルリサイクルを拡大できるよう設備を見直し、燃料代替として使っていく取り組みを進めています。地球温暖化問題では、CO2排出削減のため、ボイラーの効率化とバイオマス燃料の使用拡大、燃料転換に取り組んでいます。
ただ、海外の企業と競争していますので、イコール・フッティングという観点からすれば、単純に、例えば燃料を