ブタジエン200ドルの急騰、SMは上昇基調継続
アジア地域の11月第1週の石化市況では、エチレンは下値10ドル安、上値20ドル高の740~800ドル/tでの取引となった。下値は4週連続で弱含んだものの、上値は再び800ドル/tを回復しており底打ち感が出始めている。アジア地域で行われていた各社の定修が明けてくるものの、海外メーカーのトラブルが発生したことで、需給の先行きに不透明感が強まった。
ただ、ナフサとのスプレッドは
2020年11月25日
2020年11月18日
冬物衣料の需要好調、中国トラブルで需給タイト
宇部興産は、ナイロン原料であるカプロラクタム(CPL)について、11月(上旬決め)の韓国・台湾大手向け契約価格を前月比90ドル高の1240ドル/tで決着した。これで、2カ月連続90ドル高となり、9月からの3カ月間で210ドルも急騰している。冬物衣料に向けた需要期に入る中、アジア地域では複数プラントが定修入りや定修を控えていたこともあり、市場に先高観が出ていた。
こうした中、中国メーカーの間でトラブルによる稼働停止が続発。需要家の間で玉を確保する動きが強まり、契約価格を大きく押し上げる結果となった。スプレッドについても、原料ベンゼンの上昇分をカバーし、前月比55ドル拡大の780ドル/tにまで改善している。とはいえ、4~11月の平均スプレッドは673ドル/tと昨年同期(908ドル/t)を下回っており、収益的には依然として厳しい状況だ。
一方、中国・SINOPECは、10月(下旬決め)の契約価格を前月比34ドル高(100人民元高)の1192ドル(9800人民元)で決着。11月の仮価格については、今月12日に1324ドル(1万800人民元)で打ち出した。需給バランスを見ながら段階的に上げてきており、強気の姿勢となっているようだ。
中国メーカーの稼働率を見ると、ナイロンチェーン全体で高水準となっている。11月初旬の稼働率は、CPLはトラブル要因で80%弱(10月初旬90%弱)と全体的に下がったものの、川下のチップは70%半ば(同60%半ば)、ヤーン(糸)は80%弱(同70%程度)と10%ほど上昇した。川下の需要が改善してきたことで、今後、ナイロンチェーンが好循環に入っていくとの見方が出ている。また、ナイロンチップの価格も、前月は1300~1400ドル/tだったが、今月に入ってからは1400~1500ドル/tで交渉が進んでいるもよう。足元では1600ドル/tでの取引も見られ、CPL価格の上昇分を転嫁する動きが強まっている。
12月の契約価格については、一段と上昇する可能性が高い。中国メーカーのトラブル要因は徐々に解消してくることが想定されるが、自動車部品や電子部品、また衣料品などナイロン製品の好調さが供給量の増加を吸収すると見られる。
ただ、ベンゼンなどの原料市況が上昇傾向になることが懸念材料。ベンゼンはスチレンモノマー向けに、アンモニアや硫黄も肥料向けなどに、それぞれ引き合いが強まっている状況。仮に、原料市況が一段と上昇基調となれば、CPLのスプレッドを圧迫する可能性もあり、原料市場の動向が注目される。
なお、宇部興産のCPL工場(宇部、タイ、スペイン)については、10月末で定修が終了した宇部工場はフル稼働。タイ工場は90%稼働となり、肥料が好調なスペイン工場はフル稼働を継続している。
2020年11月17日
ブタジエン上昇基調が継続、SMは800ドル台に
アジア地域の10月第5週の石化市況では、エチレンは下値40ドル安、上値20ドル安の750~780ドル/tでの取引となった。3週連続の下落となり、上値は8週ぶりに800ドル/tを割り込んでいる。ナフサとのスプレッドも “アジア石化市況 エチレンは前週比40ドル安に” の続きを読む
2020年11月10日
2020年11月5日
2020年11月3日
2020年11月2日
海外で2社がFM宣言、需給タイトに拍車掛かる
塩ビ樹脂(PVC)の11月分のアジア輸出価格は、インド向けが前月比100ドル高のCFR1200ドル/t、中国・その他向けも前月比90ドル高の1060ドル/tで決着した。台湾大手メーカーも、インド向け同110ドル高の1120ドル/t(ボリュームディスカウントなし)、中国向け同90ドル高の1060ドル/t(同なし)で決着しており、わずか2カ月間に両地域とも200ドル以上も急騰している状況だ。
経済活動の再開に伴い、世界的にPVC需要が強まる中、8月末にはハリケーン影響で米国メーカーが、9月頭にはプラントトラブルで欧州メーカーが、それぞれフォースマジュール(FM)を宣言。需給バランスが一気にタイト化し、各地域向けの10月のオファー価格が100ドルも急騰した。
こうした中、10月には2つの欧州メーカーが相次いでFMを発表。タイト化にさらに拍車がかかったことで、市場では需要家の玉を確保する動きが加速し、オファー価格も2カ月連続で急騰する結果となった。また、FM以外では、塩素の併産品であるカセイソーダの市況が低迷していることも要因の1つ。電解設備の稼働を上げられず、塩ビ生産に影響が出ているメーカーもあるようだ。
地域別に見ると、インドは需要期に入ったことで、農業用パイプ向けなどの引き合いが強い。コロナ禍の影響が地域によってまだら模様となっているものの、在庫を積み増す動きも見られている。この先、さらに経済活動の活発化に伴い引き合いが強まることが想定されるが、オファー価格が急激に上昇したため調整が入る可能性もある。
一方、中国は、政府の補助策もあり生産活動が活発化している。再輸出品に使用される輸入PVCも、外需が戻りつつあることで好調さを継続。また、国内カーバイド法が、住宅向けやインフラ向けの需要増加を背景に一段高となっていることも、輸入PVCのオファー価格を押し上げる要因となっている。この先、中国は冬の不需要期に向かうものの、中国向けのオファー価格も高い水準を維持しそうだ。
今後については、先行きを見通すのが難しい。欧米ではコロナの第2波により、ロックダウンが再び導入されており、経済全体への影響が懸念される。また、先にFM宣言を出した欧米の各メーカーもすでに立ち上げ作業を開始しているもようで、復旧すれば価格の上値を抑える要因となる。年内はタイト感が解消されないとの指摘もあるが、来年以降は先行き不透明感が強まっている状況だ。
なお、日本の9月のPVC輸出は、前年同月比6.1%増の6万5600tとなった(VEC発表)。4カ月連続で6万t以上を輸出しており、依然として高水準を継続している。仮に足元の状況が続けば、今年(暦年)の輸出量は67万t前後となりそうだ。
2020年10月27日
2020年10月21日
中国で需要が急増、海外トラブルでタイト感強く
ウレタン原料であるMDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)は、中国需要の急増と海外トラブルによる域外品の減少を背景に、ここにきて市況が上昇基調を強めている。足元の市況を見ると、モノメリックは2700ドル/t、ポリメリックは2200~2300ドル/tで取引されており、8月末に比べモノメリックで1000ドル/t程度、ポリメリックで600~700ドル/t程度と急騰している状況だ。
コロナ禍を脱した中国では、政府の景気刺激策もあり、家電や住宅の需要が急速に回復。それらに使用されるウレタン断熱材の需要が伸長し、その原料となるポリメリック市況が上昇傾向を強めた。ただ、幅広い用途に使用されるモノメリックは、製品の需要回復が遅れ市況が低迷。MDIはモノメリックとポリメリックが併産されるため、全体の生産量を抑える要因となっていた。
しかし、中国では経済活動の再開に伴い、コロナ禍の反動による「リベンジ消費」が拡大。消費者の購買意欲が高まり、モノメリックを原料としたウレタン製品の引き合いが急増しているもようだ。また、欧米のウレタンメーカーにトラブルが発生したことも背景に挙げられる。アジア市場への玉の流入が弱まり、需給バランスがタイト化したことで、需要家の間で玉を確保する動きが加速。これらの要因により、わずか1カ月の間にモノメリック、ポリメリックとも市況が大きく押し上げられる結果となった。
こうした中、MDIのスプレッドも大幅に拡大している。原料であるベンゼン価格(ACP)は、
2020年10月20日