ENEOS 水素SC構築の4件、NEDO事業に採択

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2021年8月27日

 ENEOSは26日、CO2フリー水素サプライチェーン(SC)の構築に向けて実施する4件の実証事業が、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業」として採択されたと発表した。

グリーンイノベーション基金を活用したCO2フリー水素サプライチェーン実証事業の全体図
グリーンイノベーション基金を活用したCO2フリー水素サプライチェーン実証事業の全体図

 今回採択された実証事業は、①MCH(メチルシクロヘキサン)SCの大規模実証、②直接MCH電解合成(Direct MCH)技術開発、③水素発電技術(専燃)実機実証、④液化水素SCの商用化実証、の4事業。なお、実証期間は2030年度末まで(④のみ2029年度末まで)を予定している。

 同社は、海外で製造した水素(ブルー・グリーン)のキャリア(輸送手段)として、ガソリンに組成が近く安定的に輸送・貯蔵ができるMCHに注目。2030年30円/N㎥の水素供給コスト達成に向け、既存設備を活用した脱水素技術や、MCHSCの構築を目指す。

 ①については、協業検討に合意してきた豪州やマレーシアなどの現地企業と共同で、海外でのCO2フリー水素とMCH製造プラントの建設・運用、MCHの海上輸送、国内の製油所数カ所の既存設備を最大限活用したMCH受け入れ・貯蔵・水素製造について、年間数万tの商用規模の技術を実証する。また、MCHから製造した水素は、製油所内で石油製品の製造プロセスに利用するほか、近隣の発電所などへ供給することも検討する。

 ②については、同社が独自開発し研究を進めてきた、再エネ由来のMCH製造の低コスト化(2050年20円/N㎥)を可能にする直接MCH電解合成技術の実用化を目指す。同技術を活用したMCH製造装置(電解槽)の大型化に向けた技術開発を行う。豪州では、商用規模の5MW級(水素製造能力:1000N㎥/h相当)の大型プラント技術の開発と実証運転に取り組む。

直接MCH電解合成(水電解との比較)

 ③については、同社がもつガスタービンを活用し、国内で初めて大型の水素専焼発電技術の適用可能性を調査し実機実証を行う。水素は燃焼温度が高く排ガス中のサーマルNOx量の上昇が大きいことや、燃焼速度が速く逆火や燃焼振動が生じやすいという課題がある。発電機メーカーと協力してこれらの課題に対応した専用燃焼器を実機に実装した技術検証を実施する。併せて、①のMCHSCの大規模実証などを通じた水素を供給することで、同社電源のゼロエミッション化の実現可能性を検討する。

 ④の実証では同社は水素キャリアとして液化水素にも取り組む。年間数万t規模のCO2フリー水素の製造、液化、出荷、海上輸送、受け入れまでの一貫した国際間の液化水素SC実証を、日本水素エネルギー(川崎重工業の100%出資)および岩谷産業と共同で行う。国内外を含め実証場所は未定だが、コンビナート地区など、パイプラインによる水素供給ポテンシャルが高い場所に受け入れ基地を設置し、近隣の発電所などへの供給インフラの構築を目指す。ENEOSは、SDGsの課題解決につながる同実証などを通じて、CO2フリー水素SCを構築し、脱炭素エネルギーの安定効率供給に取り組んでいく。

 

旭化成 水素製造システム活用、グリーンケミ工場を実証

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2021年8月27日

 旭化成と日揮ホールディングスは26日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「グリーンイノベーション基金事業」に対し、2021~2030年度を事業期間と想定した「大規模アルカリ水電解水素製造システムの開発およびグリーンケミカルプラントの実証」と題したプロジェクトを共同提案し、採択されたと発表した。カーボンニュートラル社会を実現していく上で、水素は重要な役割を果たすことが期待されている。

 旭化成は、NEDO事業の一環として福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)にて世界最大規模の10MW級アルカリ水電解システムを開発するなど、水素製造技術の実用化開発に取り組んできた。また、日揮HDは、内閣府「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)事業」を通じて、CO2フリー水素を活用したアンモニア製造技術の開発に取り組んでいる。

 こうした中、両社は、これまで長期にわたり培ってきた水素関連技術をベースに、その社会実装をより早く確実なものとするため、今回のプロジェクトでは、100MW級を見通した大規模アルカリ水電解システム、および再生可能エネルギー由来の水素を原料としたグリーンケミカルプラントの実証に共同で挑戦する。

 大規模アルカリ水電解システム開発では、FH2Rでの開発成果を要素技術開発にフィードバックするとともに、アルカリ水電解槽を並列設置するモジュール化技術を導入することで、安全性・耐久性・性能・コストの面で市場ニーズに適合した数十MW級のアルカリ水電解システムの実証と実用化に取り組む。

 グリーンケミカルプラント開発では、変動する再エネ由来水素を原料としたプロセスについて、水素供給量を制御し運転最適化を実現する統合制御システムを共同開発する。さらに、統合制御システムを活用し、グリーンアンモニアなどの化学品の合成プラントのFSと技術実証に取り組む。

 一方、グリーン水素やグリーンケミカルのサプライチェーンを構成する企業にプロジェクトへの参加を募り、社会実装をする際の便益や課題を抽出することで、事業化と市場創出を加速していく。今年度中には、三菱商事とJERAが委託企業として参加する計画となっている。

水素製造を活用したグリーンケミカルプラント実証プロジェクト
水素製造を活用したグリーンケミカルプラント実証プロジェクト

NEDO 水素の利活用拡大へ、調査・技術開発を開始

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2021年8月25日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、再生可能エネルギーから製造した水素や海外産水素、副生水素などをコンビナートや港湾、工場などで大規模に利活用するモデルを創出していくため、今回14件の調査・技術開発テーマを採択した。

 水素は化石燃料や水の電気分解、工業プロセスの副産物(副生水素)など様々な資源から製造できるほか、利用時にはCO2を発生しないことから、電力部門と非電力部門の両方を脱炭素化することができる。また、需要以上に発電し余剰となった再エネを水素に変換し貯蔵・利用できることや、化石燃料をクリーンな形で有効利用できることから将来のエネルギーキャリアとして期待されている。

 こうした中、NEDOでは1980年代から燃料電池や水素ステーション、大規模水素サプライチェーン、P2G(再エネの電力を水素に転換し利用するシステム)などの技術開発に注力。しかし、現在も技術的課題やインフラ整備状況、経済性などの課題により、水素の大規模な普及拡大にはつながっていない。

 そこでNEDOは、再エネから製造した水素や海外産水素、副生水素などをコンビナートや港湾、工場など特定の地域で大規模に利活用するエネルギーシステムのモデルを創出していくため、11件の調査テーマと3件の技術開発テーマを採択。この中で将来の経済性やGHG(温室効果ガス)削減効果などの可能性を探る調査や、日本国内での海外産水素の大規模受け入れ基地の検討、実環境を想定した水素製造・利活用技術の開発について支援に取り組み、水素を活用した統合的なエネルギーシステムモデルの構築を効率的に促進していくことを目指す。

 NEDOは、同事業を通じて地域特性に応じた水素社会実装モデルを構築することで、各分野での普及を後押しし、水素利活用の拡大に貢献する。

 

NEDO、地熱発電の導入拡大、14の研究開発に着手

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2021年7月30日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど「地熱発電導入拡大研究開発」において、重点課題である「地熱資源のポテンシャル拡大」と「地域共生・環境保全」、「発電原価低減化」の解決につながる研究開発に着手すると発表した。NEDOは今回の研究開発を通じて大規模超臨界地熱発電所の実用化を目指すとともに、新たな地熱開発や地熱発電所の性能向上を後押しする。

 2018年に閣議決定された「第五次エネルギー基本計画」では、地熱発電は発電コストが低く、安定的な発電が可能なベースロード電源と位置づけられた。同時に、エネルギーミックスの中で2030年度に最大で発電容量155万㎾、発電電力量113億㎾hの導入が掲げられている。

 こうした背景から、NEDOは2019年度に国内外の地熱開発・地熱技術開発動向を調査し、2030年の導入目標達成と2050年の社会実装にあたり求められる技術開発テーマを探索・検討し3つの技術開発の重点課題を挙げた。

 これらの課題解決に向け、NEDOは2021年度から新たな研究開発プロジェクト「地熱発電導入拡大研究開発」を立ち上げる。同研究開発によって将来の大規模超臨界地熱発電所の実用化を目指すとともに、新規地熱開発や既存の地熱発電所の性能向上を促進し、国内における地熱発電のさらなる導入拡大を推進する。

 今回採択した14件の研究開発テーマでは、まず地熱発電ポテンシャルが高いと想定される火山地帯の地表から3~5㎞深部にあると推定される高温・高圧の超臨界水を活用。従来の地熱発電よりも大規模な出力が期待できる超臨界地熱発電の実現に向けた有望地域の地熱資源量の調査と、探査技術の開発を行う。

 また、国立・国定公園内での地熱開発や、開発地域のステークホルダーとの合意形成を可能にするための環境保全対策技術開発に取り組む。さらに、IoTやAIの活用によって地熱発電設備や地熱貯留層の管理を効率化・最適化し、既存発電設備における発電量の引き上げや、新規地熱開発時の発電量向上、コスト削減につながる高度な管理技術の開発を目指す。

NEDO 燃料電池の新たな研究開発着手、普及を加速

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2021年7月29日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、燃料電池の飛躍的な普及拡大に向け、新たに24件のテーマを採択したと発表した。

 2020年度から実施中のテーマを踏まえて、今後さらに補強すべき分野として、セパレータやガス拡散層(GDL)などの先端的な研究開発のほか、農機や建機、港湾荷役機器、ドローンなど多様な用途での燃料電池の活用を目指す実証事業に着手する。

 燃料電池は、燃料がもつ化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換するため、原理的に高いエネルギー効率を得られる。また発電時にCO2を発生させないため、GHG排出抑制への貢献が期待されている。

 日本では家庭用燃料電池エネファームを2009年に、燃料電池自動車(FCV)を2014年に世界に先駆けて市場投入した。しかし、今後の自立的な普及拡大に向けて高効率・高耐久・低コスト化が必要となり、また、製品を市場投入したことで多数の課題が顕在化している。

 こうした中、NEDOは、2019年1月にトヨタ自動車や本田技術研究所、燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)らとともに「FCV課題共有フォーラム」を開催し、各々で協調して取り組むべき課題の抽出・共有を行った。

 また、経済産業省とNEDOは同年6月に「水素・燃料電池プロジェクト評価・課題共有ウィーク」を開催し、産学官全体にわたる技術開発の活性化に向けて議論した。

 これらの議論を踏まえて策定された「水素・燃料電池技術開発戦略」に基づき、NEDOは2030年以降燃料電池を飛躍的に普及拡大させるため、2020年度から燃料電池システムに関する大規模な研究開発事業である「燃料電池等利用の飛躍的拡大に向けた共通課題解決型産学官連携研究開発事業」を実施。

 そして今回、燃料電池のさらなる高度化に向けて、現在のテーマではカバーされていない分野を対象に追加公募を実施し、24件の新規テーマを開始する。

 同事業の推進を通じ、日本の燃料電池技術の競争力をさらに強化し、世界市場で確固たる地位を確立するとともに、水素社会の実現に貢献する。

 

NEDO 将来像レポートを公表、価値軸と社会像を提示

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2021年7月21日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、豊かな未来の実現に向けたイノベーション活動を後押しするための将来像レポート「イノベーションの先に目指すべき『豊かな未来』」を公表した。

 国内外の豊かさに関する報告書や各種政府白書、未来予測に関する報告書など計75編を俯瞰的に分析し、イノベーション活動を推進していく上で「大切にすべき6つの価値軸」と「実現すべき12の社会像」を提示。あわせて「現代社会が取り組むべきイノベーション事例」を取りまとめた。

 「自分らしい生き方」「健康で安定な生活」「持続可能な自然共生世界」「持続可能な経済成長」「強靭で快適な社会基盤」「安全・安心な国」の実現を大切にすべき価値軸とし、実現すべき社会像については、3Rの推進や低環境負荷材料の利用により環境負荷を最大限削減しながら経済成長も実現する「物質循環による持続可能な社会」や、社会経済の発展に向けた取り組みと自然共生社会に向けた取り組みを軸とする「環境と調和した持続可能なエネルギー社会」などのように、より具体的なイメージを提示している。

 また、各省庁から発行されている各種白書や国内外の未来予測に関する報告書など計46編に加え、NEDO技術戦略研究センターがこれまでに策定した技術戦略などを参考とした「環境に優しいものづくりの追求」や「エネルギー網の脱炭素化・強靭化」など、豊かな未来の実現に向けて現代社会が取り組むべき40のイノベーション事例も別冊として取りまとめた。

 様々な企業・団体でイノベーション活動の目的の分析や今後の展開のよりどころとして活用されることを期待し、今後も豊かな未来の実現につながるイノベーション活動を展開していく。なお、同レポートについては、9月にオンラインセミナーを開催する予定だ。

 

 

戸田工業とエア・ウォーター メタンから水素とCNT

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2021年7月20日

 戸田工業とエア・ウォーターはこのほど、「メタン直接改質法による鉄系触媒を用いた高効率水素製造システムの研究開発」が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「水素利用等先導研究開発事業/炭化水素等を活用した二酸化炭素を排出しない水素製造技術開発」公募の委託事業に採択されたと発表した。天然ガスやバイオガスなどの主成分であるメタンから、高活性鉄系触媒を用いたメタン直接改質法(DMR法)で、CO2フリー水素を高効率に製造するプロセスとシステムを開発する。

 DMR法は、現在工業的に広く用いられている天然ガスの水蒸気改質法と比べて、メタン1分子当たりの水素生成量は半分だが、製造時にメタン由来のCO2を発生しないCO2フリー反応。戸田工業のDMR触媒調製技術・DMR反応技術で純度70%の水素と高導電性の多層カーボンナノチューブ(CNT)を生成し、エア・ウォーターのガス精製技術で、工業用として一般的に利用される純度99.99%以上の水素を得るシステムで、2022年度中の完成を目指す。

 水素製造コストは、副生CNTの販売を組み合わせることで、日本政府の「水素基本戦略」の2030年目標の「30円/N㎥以下」を目指す。将来的には、DMR反応炉の加熱に再生可能エネルギーまたはカーボン・ニュートラルエネルギーを用いることで、「ターコイズ水素」の提供を目指す。

 同システムは、既存の産業水素サプライチェーンの早期クリーン化を目標とし、現存の都市ガスインフラを最大限に活用した安価なCO2フリー水素の提供を実現するもの。2050年脱炭素社会の実現に向けた取り組みを加速し、水素を利用する企業の価値向上と国内産業の発展に向けて推進していく。

製造システムの概略図
製造システムの概略図

 

NEDO 産業用物質のバイオ生産システム、実証に着手

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2021年7月15日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、産業・社会に有用な物質のバイオ生産システム(産業用物質生産システム)の有効性を実証する14件の研究開発を採択した。

 植物や微生物などの生物を用いて物質を生産する技術(バイオものづくり)は、従来の化学プロセスに比べ、省エネルギーであるとともに、バイオマスからの物質生産も可能であるため、炭素循環型社会実現・持続的経済成長に導くものづくりへの変革が期待できる。しかし、現状の技術ではコストに見合わないため、民間企業での研究開発や投資が促進されにくい状況にある。

 こうした中、NEDOは、バイオ資源の活用を促進する各種技術や従来法にとらわれない次世代生産プロセスの開発に取り組み、バイオものづくり産業の基盤を創出するとともに、産業用物質生産システムの実証を通じてバイオ由来製品の創出を加速させることを目的に「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発」を昨年度から推進。

 今年度は「産業用物質生産システムを実証」の研究開発を支援するための公募を行い、今回14件のテーマを採択・着手した。例えば、植物由来微量成分を発酵生産に転換する技術として、野生植物カンゾウ由来の微量成分グリチルレチン酸を微生物発酵によって生産する技術を開発し、安価な新規生産方法開発を実施するテーマ(住友化学、大阪大学)に取り組む。

 また、化石資源由来製品をバイオ由来に転換する技術開発として、ポリアミドを100%植物原料に置き換えることを目指し、ポリアミドの原料となる化合物の獲得を微生物発酵による生産に転換し、工業化に向けて単離精製技術やスケールアップ検討などを実施するテーマ(東レ)、ポリプロピレン原料のバイオ化を目指し、バイオイソプロパノールを高効率に生産する微生物の取得と発酵生産プロセスのスケールアップ検討などによりCO2削減を実現するプロセス開発を実施するテーマ(グリーン・アース・インスティテュート)などに取り組む。

 目的物質の生産性向上を狙うとともに量産化を見据えた生産プロセスの最適化などの研究開発を行い、バイオで実現できる高付加価値機能の創出や、化石資源を含む天然資源への依存低減などにつながるバイオ由来製品の実用化を加速させる。これらの取り組みにより、バイオ由来製品の社会実装加速や新たな製品・サービスの創出を後押しすることでバイオ産業の裾野拡大や炭素循環型社会の実現を目指す。

 

NEDO 高効率帯水層蓄熱システム、ZEB適応性検証

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2021年7月14日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発事業において、日本地下水開発が、日本で初めて高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システムを、ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)に適応させる実証施設を山形県山形市に整備したと発表した。

 実証試験とモニタリングによりデータを収集し、システムの最適化設定によってさらなるコストダウンに取り組む。これにより同システムのZEBへの適応性を向上させ、地下水熱エネルギーの有効活用による建物のエネルギー収支ゼロを目指す。

 再生可能エネの利用拡大には電力に加え、地中熱や太陽熱、雪氷熱などの熱利用も重要とされる。しかし再生可能エネルギー熱利用においては、依然として導入にかかる高いコストが課題となっている。

 こうした中、NEDOは、再生可能エネルギー熱利用システムの普及促進・市場拡大を図るため、導入や運用システムのコストダウンに関する研究開発を実施。同事業でNEDOと日本地下水開発は、秋田大学、産業技術総合研究所と共に、地下帯水層に冷熱・温熱を蓄え有効利用する国内初の高効率帯水層蓄熱システムを開発した。

 日本地下水開発の事務所で空調に導入した結果、従来のオープンループシステムと比較して初期導入コストの21%削減と年間運用コストの31%削減を達成した。その後、2019年にスタートしたNEDOの助成事業「再生可能エネルギー熱利用にかかるコスト低減技術開発」において、日本地下水開発はゼネラルヒートポンプ工業と共同で、事業の成果を発展させ開発した高効率帯水層蓄熱によるトータル熱供給システムを、ZEBに適応させる検証に着手。今年7月、国内では初となる、

 同システムのZEB適応性を検証するための実証施設を山形県山形市に新築し、検証に向けた各種データのモニタリングとデータ収集を開始した。

 

NEDOなど 世界最高出力のパルスレーザー装置を開発

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2021年7月13日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と浜松ホトニクスはこのほど、NEDOの「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」プロジェクトで半導体レーザー(LD)励起では世界最高のパルスエネルギー出力250J(ジュール)の産業用パルスレーザー装置を開発した。エネルギー増幅能力は、従来の同程度サイズの産業用パルスレーザー装置の2倍以上だ。

 レーザーは加工条件などのデジタル制御が容易で、IoTやAI(人工知能)によるクラウドを通じた生産設備の連携と自動化・無人化における最重要ツールの1つ。加工用レーザーには一定強度のレーザー光を連続出力するCW(連続波)レーザーと、短い時間間隔で繰り返し出力するパルスレーザーがあるが、CWレーザーは溶接や切断などレーザー加工の主流である。パルスレーザーは高強度のLDや大型のレーザー媒質がなく高出力装置がないため、レーザーピーニング(衝撃波による金属の硬化加工)などの利用以外に、応用開拓が進んでいない。

 今回、レーザー媒質として最適化した世界最大面積のセラミックス10枚を搭載し、光エネルギーの蓄積能力を約2倍に向上。また、増幅器の設計を見直し、新開発の小型LDモジュール8台を照射角度や位置などを工夫して搭載し、レーザー媒質の励起効率を約2倍に向上させた。さらに同社独自の高出力レーザー技術で装置全体の光学設計を最適化し、集光性や照射面に対する出力分布の均一性などビームの品質を上げた。これらにより、パルスエネルギー出力250Jの産業用パルスレーザー装置を実現した。

 この性能を維持したままビームサイズを4倍に拡大することで、1kJ級レーザーを実現できる可能性を確認した。これにより、レーザー加工技術の発展に加え、医療やエネルギー、新材料、基礎科学といった新分野でのレーザーの応用開拓も期待される。

 両者は今後、高効率レーザープロセッシング推進(TACMI)コンソーシアムと連携し、同装置を用いたレーザー加工実験と加工データを集約したデータベースの構築を進め、浜松ホトニクスは1kJの産業用パルスレーザー装置の実現に向けた研究に取り組んでいく。