AGC 新研究開発棟開設でオープンイノベーション加速

, ,

2020年12月16日

 AGCはこのほど、総工費約200億円を投じてAGC横浜テクニカルセンター(横浜市鶴見区)内に建設していた新研究開発棟が完成したと発表した。同研究棟内には、社内外の協創を加速させる協創空間「AO(アオ:AGC OPEN SQUARE)」が設置されている。

新研究棟エントランス
新研究棟エントランス

 同社は祖業のガラスに加え、電子、化学品、セラミックスなど多彩な事業を展開し、各分野の多様な技術を組み合わせ、創業以来リーディングカンパニーとして新たな機能や価値を提供し続けてきた。社会の変化のスピードが加速し、素材開発にもスピードが求められる中、「社内外にシームレス&融合・反応・協創の場」をコンセプトに、2018年に新研究棟の建設に着手。研究開発スピード向上のために、2カ所に分散していた基盤技術開発、新商品開発、プロセス開発、設備技術開発機能を集約・統合し、また、新領域の開拓や新たな価値創造を実現するために、基礎となる独自の技術開発を行う研究実験室と他の企業や研究機関と協創できる空間を設けた。

 新研究棟内には社内専用エリアと、顧客やアカデミア、ベンチャー企業などの社外パートナーとの協創を加速する場として協創空間AOがある。ビジネス拡大や価値最大化を目指し、「つなぐ」「発想する」「ためす」をコンセプトに、AOギャラリー(AGCの新たな魅力を体感するエントランス)、AOパーク(協創で生まれた様々な製品や価値などをきっかけに対話するホール)、AOスタジオ(発想のための展示エリア)、AOラボ(協創実験室)を設置。

 AGCグループは経営方針AGC Plusの下、社内外の協創を通じ顧客の満足、新たな価値をプラスした製品やソリューションを提供できるよう、技術革新を進めていく考えだ。

AGC 遺伝子・細胞治療CDMOサービス拡大を本格化

, , ,

2020年11月27日

 AGCはこのほど、株式公開買い付けで100%子会社化したMolecular Medicine(イタリア)の社名をAGC Biologics(イタリア)に変更した。AGC Biologics社のグローバルネットワークに遺伝子・細胞治療CDMOを組み入れ、サービス拡大を本格化する。

 遺伝子・細胞治療は、遺伝子または遺伝子を導入したヒト細胞などを人体に投与する最先端医療の1つ。世界中で進行中の治験数はすでに約1000件を超え、CDMO市場も高い成長が見込まれている。AGC Biologics(イタリア)は、遺伝子・細胞治療の開発・製造を行い、細胞加工・ベクター製造などのプラットフォーム技術をもち、バイオベンチャーから大手バイオ医薬品製薬会社まで様々な顧客にGMP対応の遺伝子・細胞治療CDMOサービスを提供している。

 すでにミラノを起点に、欧州のほか日米グローバルに遺伝子・細胞治療CDMOサービスを提供できる体制にあり、今後の日米拠点での製造拠点の設置も視野に、遺伝子・細胞治療CDMOサービス分野でのグローバル一体運営を推し進める。

 AGCグループはライフサイエンス事業を戦略事業の1つと位置づけ、合成医農薬CDMOと動物細胞と微生物を使うバイオ医薬品CDMOで積極的な買収・設備投資で事業を拡大。2025年に売上高1000億円以上の目標を、2~3年前倒しで達成する見込み。成長著しい遺伝子・細胞治療領域までCDMO事業の幅を広げグローバル展開し、製薬会社、患者、社会に貢献していく。

AGC バイオ医薬品のデンマーク拠点の培養能力を倍増

, , ,

2020年11月26日

 AGCはこのほど、CDMO事業子会社AGC Biologics社(米国)でのバイオ医薬品CDMOの培養能力増強を決定したと発表した。デンマーク拠点の隣接地を購入し、工場棟とオフィス棟から成る新社屋を建設し、シングルユース仕様の2000リットルの動物細胞培養槽を増設。総投資額は約200億円、稼働開始は2023年の予定だ。

 バイオ医薬品CDMO市場は年間約10%以上の成長を続け、同社の受託件数はそれを上回る。これに対応するため動物細胞を使ったバイオ医薬品CDMOの培養能力を増強し、デンマーク拠点のシングルユース仕様の培養能力は従来の倍以上に拡大。それに合わせた分析・開発設備や人員増にも対応し、延床面積約1万9000㎡の新社屋を建設する。

 AGCグループはバイオ医薬品CDMO事業を含むライフサイエンス事業を戦略事業の1つと位置づけ、合成医農薬CDMO、動物細胞と微生物を使ったバイオ医薬品CDMOで積極的な買収・設備投資を行い、事業を拡大させてきた。今年7月には成長著しい遺伝子・細胞治療領域にまでCDMO事業の幅を広げ、2025年の目標売上高1000億円以上を2~3年前倒しで達成する見込み。

 今後も各地域でグローバル統一の高水準の品質・サービスを提供できるよう、各拠点のシナジーを最大限発揮させ、製薬会社、患者そして社会に貢献していく考えだ。

 

AGCの1-9月期 減収減益も前期を底に回復基調

,

2020年10月30日

 AGCは29日、2020年12月期第3四半期(1-9月期)の連結業績(IFRS)を発表した。売上高は前年同期比10%減の1兆128億円、営業利益45%減の406億円、親会社の所有者に帰属する四半期純利益は53%減の135億円だった。戦略事業はコロナ禍の影響を受けずに業績を拡大したが、ガラスと化学品は影響を強く受けて減収減益となった。全般では第2四半期(4-6月期)を底に、回復傾向にある。

 セグメント別では、ガラスセグメントは売上高17%減の4659億円、営業損失219億円(316億円の悪化)。建築用は経済活動再開に伴い全地域の出荷が対前四半期で増加し稼働が改善。自動車用は依然厳しい状況の中、各国自動車生産の回復で増加した。

 電子セグメントは売上高5%増の2101億円、営業利益61%増の272億円。液晶用ガラス基板の出荷は影響なく、ディプレイ用特殊ガラスはスマホ市場回復に伴い出荷は増加。オプトエレクトロニクスや半導体関連の電子部材の出荷に大きな影響はなかった。

 化学品セグメントは売上高8%減の3216億円、営業利益26%減の325億円。クロールアルカリ・ウレタンは東南アジアのカセイソーダ市況の低迷はあるが塩ビ市況は回復傾向だ。フッ素関連は一部コロナ禍の影響が緩和されたが、輸送機器向けは減少。ライフサイエンスは新型コロナ関連ワクチンの新規受託もあり堅調に推移している。

 セラミック・その他セグメントは売上高6%減の577億円、営業利益8%減の29億円だった。

 通期連結業績予想は、新型コロナウイルス感染拡大による影響は事業や地域で差はあるが、経済活動の段階的再開に伴い緩やかに回復するとの前提の下、売上高と営業利益を上方修正した。売上高8%減の1兆3900億円(前回予想比400億円増)、営業利益は46%減の550億円(同150億円増)、親会社の所有者に帰属する当期純利益は据え置き、60%減の180億円を見込んでいる。

AGC 新型コロナワクチン関連の受託製造規模を拡大

, , , ,

2020年9月8日

 AGCはこのほど、CDMO事業子会社のAGCバイオロジクス(米国)が、米国ノババックス社からの新型コロナウイルス感染症ワクチン候補「NVX-CoV2373」のアジュバント(性能促進剤)「Matrix-M」の受託規模を従来の約1.5倍に拡大したと発表した。追加受託分は、米国シアトル工場で製造する。

 ノババックス社は、重篤な感染症の次世代ワクチン開発を行うバイオテクノロジー企業で、独自のナノ粒子技術で製造する「NVX-CoV2373」は、新型コロナウイルス感染症ワクチン候補だ。従前からのCEPI(感染症流行対策イノベーション連合)の支援に加え、今年7月には米国政府がワクチン開発の目的で立ち上げた官民連携プロジェクト「Operation Warp Speed」から16億ドルの助成を受け、ワクチンの臨床開発を進めている。

 「Matrix-M」は「NVX-CoV2373」の免疫応答を増強し、中和抗体産生を刺激する、同社占有のアジュバントだ。AGCバイオロジクスは現在、ノババックス社のワクチン供給量の大幅増強に向けて、「Matrix‐M」製造のプロセス最適化の段階から受託し、現在コペンハーゲン工場で実施中。受託拡大分は米国シアトル工場で製造する。

 AGCグループは日米欧に製造拠点をもち、プロセス開発、スケールアップ、治験段階から商用医薬品原薬の製造まで、様々な高付加価値サービスを提供。引き続き、製薬会社の新型コロナウイルス感染症ワクチンや治療薬の製造を担うことで、新型コロナウイルスの感染拡大抑止や流行の終息に貢献していく考えだ。

AGC 伊モルメド社を連結子会社化、CDMOの事業を拡大

, , ,

2020年8月18日

 AGCはこのほど、遺伝子・細胞治療のCDMOサービスを手掛けるイタリアのモレキュラー・メディシン(モルメド社)の株式公開買い付けが終了したと発表した。応募株式は全体の93.23%相当で、支払い完了後にAGCグループの連結子会社となる。またその後、追加買い付け期間を経て上場廃止となる予定。

 遺伝子・細胞治療は、遺伝子、または遺伝子を導入したヒト細胞などを人体に投与する治療法で、現在注目されている最先端医療の1つ。この分野の発展はめざましく、現在世界中で進行中の治験数はすでに約1000件を超え、CDMO市場も高い成長が見込まれている。

 モルメド社は、自社の創薬を起点に、細胞加工・ベクター製造などのプラットフォーム技術を確立しており、大手製薬やバイオテック企業に対して、GMP対応の遺伝子・細胞治療薬CDMOサービスを提供している。

 今回の株式公開買い付けを行ったAGCの100%子会社・AGCバイオロジクスは、日本・米国・欧州の世界3極で、動物細胞と微生物を用いたCDMOサービスを提供。すでにハイデルベルグ工場(ドイツ)では、遺伝子・細胞治療薬の原料であるプラスミドの製造受託を事業化しており、モルメド社と大きなシナジーを発揮することが見込まれる。

 さらに、モルメド社の高品質な遺伝子・細胞治療薬CDMOサービスをAGCバイオロジクスのグローバルネットワークに組み入れることで、より大きな事業成長を見込む。

 AGCグループは、バイオ医薬品CDMO事業を含むライフサイエンス事業を戦略事業の1つと位置づけており、2025年に1000億円以上の売上規模を目指している。これまで合成医薬品CDMO、動物細胞と微生物を用いたバイオ医薬品CDMOで積極的な買収・設備投資を行い、その事業を拡大させてきた。今回の買収により、成長著しい遺伝子・細胞治療領域にまでCDMO事業の幅を広げグローバルに展開することで、製薬会社、患者、そして社会に貢献していく考えだ。

AGC EUV露光用マスクブランクスの供給を大幅増強

, ,

2020年8月17日

 AGCはこのほど、グループ会社であるAGCエレクトロニクスが、EUV露光用フォトマスクブランクスの供給体制を大幅に増強すると発表した。今年10月に建屋拡張を含めた増強工事に着工し、2022年より生産を開始する予定。

 IoTや人工知能(AI)、次世代高速通信(5G)などの本格普及を迎え、半導体チップは計算処理の高速化やデータの大容量化、高集積化を求められている。これに対応するために半導体チップ回路パターンの微細化が必要とされているが、従来の光リソグラフィ技術では限界があり、それに代わる最先端の微細化技術としてEUV露光技術が注目されている。

 AGCは、2003年にEUV露光技術を用いた半導体生産プロセスで用いられる消耗部材であるフォトマスクブランクスの研究開発に着手。自社で保有するガラス材料技術、ガラス加工技術、コーティング技術などを融合し技術開発を進め、2017年にEUVマスクブランクスの生産を開始した。これまでも市場のニーズに応じ必要な投資を実施してきたが、今後の更なる市場の伸長に対応するため、今回供給体制の増強を決定した。

 同社は今後も、「ガラス材料」から「コーティング」までを一貫して手掛けることができる、世界で唯一のEUVマスクブランクスメーカーとして、市場成長に合わせた量産体制を構築し、2025年には売上高400億円以上、シェア50%を目指す。

AGC スイス社から新型コロナ向け治療薬の製造を受託

, , ,

2020年7月29日

 AGCはこのほど、CDMO事業子会社であるAGCバイオロジクス(米国)がスイスのモレキュラー・パートナーズの開発する新型コロナウイルス感染症向け治療薬候補「MP0420」の製造を受託したと発表した。同治療薬は、今年後半の臨床試験開始を目指し開発されている。

 モレキュラー・パートナーズの保有する「DARPin」技術を用いた「MP0420」は、新型コロナウイルスの表面に存在するスパイクたんぱく質に特異的に結合することで、感染症を治療する効果だけでなく予防する効果もあり得ると考えられている。臨床試験用に100リットルおよび1000リットルの微生物バイオリアクターを使い製造を開始する。

 AGCバイオロジクスは、日本・米国・欧州に製造拠点をもち、プロセス開発、スケールアップ、治験段階から商用医薬品原薬の製造に至るまで、様々な高付加価値サービスを提供している。今回、数十年にわたるCDMOの実績と、グローバルで統一された高水準の品質・サービス力を評価され、治療薬候補の製造パートナーとして選定された。

 AGCグループは、製薬会社のワクチンや治療薬の製造を担い、新型コロナウイルスの感染拡大の抑止や流行の終息に貢献していく。

AGC AIのQ&Aシステムで、ガラス製造の匠を共有

, , ,

2020年7月15日

 AGCはこのほど、FRONTEO(東京)との共同によりコンピューター上にガラス製造の知見を集約し、その知見をAIを用いて簡単に引き出すことができるAI Q&Aシステム「匠KIBIT(キビット)」を開発した。

  ガラス製造には、溶解・成形・加工など複数の技術を組み合わせる独自の高い技術力が必要で、それが他社との差別化に繋がっている。一方、各工場が持つノウハウの共有や、熟練から若手への技能の伝承が課題である。

 AGCは、AIやITでこれら課題を解決する「匠プロジェクト」を2017年より開始。FRONTEOの自然言語解析AIエンジン「KIBIT」を使ったガラス製造AI Q&Aシステム「匠KIBIT」を開発した。

 熟練技術者の知見を、グループ内の技術者が簡単に引き出せる。流れは①質問(聞きたい質問を入力)、②学習(質問の特徴を「KIBIT」が学習)、③評価(「KIBIT」によるスコアリング)、④回答(類似度の高い質問に紐付いた回答を質問者に提示)。自動回答できなかった質問は、「KIBIT」が推定した該当熟練技術者に回答を依頼し回収することで、自律的にデータベースを拡充できる仕組み。2017年に国内ガラス製造拠点でトライアルを開始後、月間300件以上の利用があり、技能の共有と伝承に着実な成果を上げている。

 今後は、欧州を含む世界中のガラス製造拠点にも展開する考えだ。

AGC 次世代パワー半導体酸化Gaウェハの実用化を加速

, , ,

2020年7月14日

 AGCはこのほど、次世代パワー半導体材料開発会社ノベルクリスタルテクノロジー(NCT:埼玉県狭山市)への追加出資を決定した。これにより、2023年のの実用化に向けて開発スピードをさらに加速させる考えだ。

4inch 酸化ガリウム基板(販売中)4inch 酸化ガリウム基板(販売中)
4inch 酸化ガリウム基板(販売中)

 NCTは、タムラ製作所と情報通信研究機構(NICT)により2015年に設立されたベンチャー。17年にはタムラ製作所との共同で、世界初の酸化ガリウムエピタキシャル膜使用のトレンチMOS型パワートランジスタを開発。4インチまでの酸化ガリウムウェハの開発・製造・販売にも成功し、100%近い世界シェアを持つ。

 パワー半導体は、サーバー、自動車、産業用機械、家電製品など様々な電気・電子機器の電力制御を行う電子部品。電力制御モジュールの省エネ化、軽量・小型化に直結するため、低電力損失で耐電圧・大電流特性に優れた半導体材料が求められている。酸化ガリウムはシリコンと比較し、3000倍以上のパワー半導体性能指数(電力損失指数)を持つ次世代パワー半導体材料で、競合のSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)と比べても、より高電圧・大電流で使用できる可能性がある。

6inch 酸化ガリウム基板(開発中)
6inch 酸化ガリウム基板(開発中)

 同社はNCTの高い技術力に、同社がガラス製造で培った高温溶解、研磨加工、洗浄などの無機材料量産技術を生かし、酸化ガリウムの早期量産化と、さらなる高品質化、大型化を目指す。

 AGCグループは、経営方針「AGC plus」でエレクトロニクス事業を戦略事業の1つと位置づけている。成長が見込まれる半導体関連事業に積極的に開発・投資し、半導体産業の発展に貢献していく考えだ。