産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、人工光合成化学プロセス技術研究組合、徳島大学、京都大学、信州大学と共同で、可視光で水を水素と酸素に分解する酸硫化物光触媒のエネルギー変換効率の改良指針を明確化した。
光触媒による水分解反応は太陽エネルギーで水素を生成できるため、世界中で研究開発が進められている。粉末光触媒の
2022年1月24日
2021年2月5日
日亜化学工業はこのほど、同社製280㎚深紫外LEDの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の不活化効果を確認したと発表した。徳島大学による実験の結果、新型コロナウイルスに対して30秒の紫外線照射で99.99%の不活化効果が得られた。新型コロナウイルスに対する代替消毒方法の有効性評価(経済産業省)では、除去効果については99.99%以上の感染価減少率を目安に有効性を判断している。
流水での手洗いでは15秒で99%程度、消毒用アルコール(エタノール濃度77~81%)では30秒で99.99%とされる。しかし、流水では十分なもみ洗いが、消毒用アルコールでは十分量のアルコールの接触が必要で時間や手間を要するが、深紫外LEDでは短時間で手間なく高い殺菌効果が期待できる。深紫外LEDによる殺菌パワーは、波長別殺菌効果と光出力の積で求められる。波長別殺菌効果は、260㎚波長が100%で最も有効とされ、同社開発中の265㎚品は95%、280㎚品は60%だ。
一方、光出力は、280㎚品の70㎽に対し、265㎚品は35㎽。従って、280㎚品の殺菌パワーは265㎚品の約1.3倍高い。またLEDの推定寿命は280㎚品が約2万時間と、265㎚品の約10倍だ。紫外線LEDは波長が短くなると出力、寿命などが低下し、電力変換効率が極端に低くなることを踏まえ、今回280㎚品で不活化実験を行った。照射距離5cm、照度1.7㎽/㎠の条件で、5秒で93.28%、10秒で98.42%、30秒で99.99%の不活化効果を示した。このピーク波長280㎚のLEDは、放射束70㎽、電力交換効率3.6%と業界最高レベルだが、今後、より殺菌効果の高い高出力深紫外LEDの開発に注力するとしている。
2020年12月18日
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と徳島大学はこのほど、世界で初めて、新しいゲノム編集ツールCRISPR-CasタイプI-D(TiD)が植物細胞の遺伝子改変技術として有効であることを実証したと発表した。海外のゲノム編集知財に抵触せず、現行のゲノム編集技術CRISPR-Cas9と比べて標的以外のDNA配列の変異リスクが低く、より広範囲な様式の変異をゲノムに導入できることが確認された。
植物や微生物の細胞がもつ物質生産能力を人工的に最大限引き出した生物合成技術「スマートセル」により、生産が難しい有用化合物の創製や生産性をより向上させた合成技術の開発など、物質生産での基盤技術と実用化技術開発を目的に「植物などの生物を使った高機能品生産技術の開発(スマートセルプロジェクト)」を2016年から推進してきた。その中でゲノム編集は遺伝子機能を改良する重要な技術だが、海外の知的財産権であるため活用しにくい。
徳島大学は、機能が不明でゲノム編集には使われてこなかったTiDに注目。標的の認識やDNA切断のメカニズムを明らかにし、ゲノム編集ツールとして利用できることを見出だし、植物細胞の遺伝子改変に世界で初めて成功した。既存技術と比較して、導入できる変異の様式が多様で、標的以外のDNA配列に変異が起こるリスクが低いことも確認。海外のゲノム編集知財にも抵触しない。動物や微生物など様々な生物遺伝子の機能改変も可能だ。日本のバイオインダストリー推進の原動力として期待される。
今後、徳島大学はTiDの変異導入効率の向上や、様々な機能ドメインを付与した多様なゲノム編集のツール化を進める。NEDOは後継事業「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発(バイオものづくりプロジェクト)」を今年度より立ち上げ、原料供給から最終製品のスケールアップにいたるボトルネックの解消を進めていく。