中外製薬 クライオ電子顕微鏡装置を導入、国内製薬企業で初

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2021年6月11日

 中外製薬はこのほど、創薬研究のさらなる加速に向け、国内製薬企業で初めてクライオ電子顕微鏡装置を導入したと発表した。

 クライオ電子顕微鏡装置は、2017年にその基幹技術にノーベル化学賞が授与され、革新的な技術として注目を集めている。今回の同装置の導入は、創薬研究の必須プロセスである、標的タンパク質と結合した新薬候補化合物分子の立体構造解析を目的としている。

 同社は、創薬研究の際の立体構造に基づく化合物デザイン(SBDD:ストラクチャー・ベースド・ドラッグ・デザイン)を重視し、精緻なデザインの追求による質の高い新薬候補化合物の創製を目指している。これまで立体構造の取得に同社が主に行ってきたX線結晶構造解析は、標的分子となる細胞内タンパク質を結晶化するプロセスを必要とする。中分子医薬品の標的タンパク質は、結晶化が難しいものが多く、化合物デザインの精緻化の課題となっていた。

 クライオ電子顕微鏡装置による解析は、結晶化のプロセスを必要とせず、解析の大幅な効率化とともに、結晶化の難しい細胞内タンパク質を含む、より広い対象への立体構造解析が実現。これにより、SBDDが強化され、化合物デザインの成功確率の向上が期待される。

 同装置は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社より導入され、中外製薬の鎌倉研究所で、中分子医薬品を含む様々な新薬候補化合物の立体構造解析に使用される。

クラレ カルゴン社のUV・バラスト事業を伊社に売却

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2021年6月11日

 クラレは10日、米国子会社カルゴン・カーボン社のUV(紫外線)や活性炭・ろ過膜を使って船舶のバラスト水を処理する事業を、イタリアのデ・ノラ・ウォーターテクノロジーズ社に売却すると発表した。譲渡日は今月末日を予定。譲渡金額は非公開としている。

カルゴン社のUV・バラスト事業を売却する(デ・ノラ社ウェブサイトより)
カルゴン社のUV・バラスト事業を売却する(デ・ノラ社ウェブサイトより)

 クラレが2018年に買収した世界最大の活性炭メーカーであるカルゴン・カーボン社は、瀝青炭系、木質系、ヤシ系の幅広い活性炭を展開し、水・大気の浄化など環境関連用途で広く使用される活性炭ビジネスの拡大を図っている。クラレは、カルゴン・カーボン社の事業ポートフォリオの見直しを進めた結果、UV・バラスト事業のリーディングカンパニーであるデ・ノラ社への譲渡を決めた。

 同事業のバラスト水処理システムは、沈殿物とプランクトンをろ過などで除去したのち、さらに微生物やバクテリアを中圧UVランプにより殺菌するもの。事業譲渡先のデ・ノラ社は、持続可能な技術を提供するグローバル企業であり、1923年の創業以来、工業用電気化学プロセスと水・廃水処理ソリューションのパートナーとして、革新的な電極や電気化学システム、高度なろ過、消毒技術を提供している。近年は、脱炭素化や水素社会に向けたエネルギー転換に対応する革新的なソリューション開発に取り組んでいる。

昭和電工 次世代記録技術対応HD、共同開発契約を締結

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2021年6月11日

 昭和電工は10日、シーゲイト社とハードディスクドライブ(HDD)の次世代記録技術である熱アシスト磁気記録(HAMR)に対応した次世代ハードディスク(HD)メディアを共同開発する契約を締結したと発表した。

 昭和電工は、HAMRに対応した技術として従来のHDメディアでは実現困難とみられていたFePt合金の超高温規則化温度を実現しつつ量産を可能とするメディア製造技術にめどをつけ、FePt新磁性体を開発。シーゲイト社は、HDD業界でHAMR対応HDDの技術開発を長年リードしてきている。今回の共同開発契約に基づき、FePt新磁性体および両社が将来共同で開発する同磁性体を評価する。この協業により、両社のHAMR対応HDD関連技術の開発スピードを一層加速する考えだ。

 5Gのサービス開始、IoTの普及やテレワークの浸透、DXの進展・拡大などにより、新たに生成されるデータ量は今後とも飛躍的に増大することが見込まれる。それに伴いそれらのデータを保管するデータセンター向けHDDは1台当たりの記憶容量の増大がこれまで以上に重要な課題となっている。

 昭和電工グループは、個性派企業(収益性と安定性を高レベルで維持できる個性派事業の連合体)の実現をVision(目指す姿)としており、HD事業を個性派事業のコアの1つと位置づけている。今後も〝ベスト・イン・クラス〟をモットーに、世界最大のHDメディア専業メーカーとして、HAMR、MAMR(マイクロ波アシスト記録方式)などの次世代記録技術に対応した業界最高クラスの製品をいち早く市場に投入し、HDDの高容量化に貢献していく。

三井化学 循環型経済の実現に向けて包括的協働

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2021年6月10日

HK1896との連携深め、MR起点の開発推進

 三井化学は、2050年のカーボンニュートラル達成を目標に、様々な取り組みを始めている。このほど、hide kasuga 1896(HK1896)との、サーキュラーエコノミー(循環型経済)実現に向けた包括的協働を発表。両社は、環境対応型素材やリサイクル技術の開発、市場と連携した素材の回収システムの構築など、循環型ビジネスモデルの確立を共同で目指す。

HK1896の春日社長(左)と三井化学の柴田研究開発本部長
HK1896の春日社長(左)と三井化学の柴田研究開発本部長

 三井化学が参画するのは、マテリアルシンクタンク・HK1896が昨年、東京と長野を拠点に設立した「グリーン・コンポジット・ヒルズ by hide k 1896」プロジェクト。HK1896が開発した炭素繊維と特殊樹脂によるテキスタイル複合材「hide k 1896」をベースに、製品、市場、リサイクル技術、教育を連動させて、サーキュラーエコノミーを構築していく。

 三井化学・研究開発本部長の柴田真吾常務執行役員は、「グリーン・コンポジット・ヒルズ構想には、サーキュラーエコノミーの具現化という視点から、

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出光など3社 再エネアグリゲーション実証事業に参画

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2021年6月10日

 出光興産、関西電力、関電エネルギーソリューション(Kenes)は9日、経済産業省資源エネルギー庁の補助事業である「再生可能エネルギー(再エネ)アグリゲーション(集約)実証事業」に共同で申請し、補助金の執行団体から採択決定の通知を受けたと発表した。

 2022年度から再エネ発電事業者が市場価格で電力を販売する場合、市場価格との差額(上乗せ分)をプレミアムとして補助する「FIP(フィード‐イン・プレミアム)制度」が導入されることなどを踏まえ、同実証事業では、変動性の高い太陽光発電といった再エネ発電設備や蓄電池などの分散型エネルギーリソース(DER)を組み合わせた需給バランス制御技術の構築を目指す。なお実証期間は、2021年6月8日~2022年2月17日を予定している。

 関西電力は、これまで負荷変動に対応する調整力に活用するため、ユーザー所有のDERを統合制御することで、バーチャルパワープラント(VPP)の構築を目指した制御実証を実施。また、VPP事業を推進する際のプラットフォーム「K-VIPs」(Kanden Vpp インテグレーテッド・プラットフォーム・システム)の開発や運用などを実施してきた。一方、出光興産とKenesは、これまで多数の再エネ発電所の開発をはじめ、同実証事業に関連するビジネスを推進している。

 同実証事業では、3社がもつ再エネ発電所を「K-VIPs」で監視・制御することで、需給バランスを制御するための発電量予測やリソース制御に必要な技術の実証に取り組むとともに、需給バランス制御に関するビジネススキームの検討を進めていく。

 3社は今回の実証事業を通じて、DERを活用した安定かつ効率的な電力システムの構築と、再エネの普及拡大への寄与を目指し、2050年のゼロカーボン社会の実現に貢献していく。

実証事業のシステム構成と体制のイメージ
実証事業のシステム構成と体制のイメージ

ADEKA 新中計策定、営利益目標350億円

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2021年6月9日

環境貢献製品に注力、カーボンニュートラル目標

 ADEKAは今年度からスタートした、新中期経営計画「ADX 2023」(2021~2023年度)についてビデオ会見を開催した。

 城詰秀尊社長は前中計を振り返り、「売上高3000億円を目標に掲げていた。日本農薬グループを買収したことでクリアすることができたが、オーガニックグロースでは未達に終わっている。3本柱の規模拡大を目指したが、自動車産業の低迷やコロナ禍がマイナス要因となった」と語った。新規領域への進出については

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ダウなど 循環型包装ソリューション促進、インドで提携

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2021年6月9日

 ダウとインドのリサイクル企業ルクロ・プラステサイクルはこのほど、同国の大手消費財企業マリコ社をパートナーシップに迎えると発表した。これにより、マリコ社の消費者向け製品群に、PCR(ポスト・コンシューマー・リサイクル)材料を活用したダウの集積シュリンクフィルムが導入されることになる。この提携により、ダウは、2030年までに100万tのプラスチックを回収、再利用、リサイクルし、廃棄物をゼロにするという新たなサステナビリティ目標の達成に向けた取り組みを前進していく。

 今年初め、ダウとルクロ社はポリエチレン(PE)フィルムソリューションを開発し、展開するための覚書に署名した。それに基づき、ダウは、包装の専門家、素材技術者、リサイクル設備、パック・スタジオ上海およびムンバイのインフレーションフィルム製造・試験機能など、業界をリードするチームを結集し、ルクロ社による各種用途向けのリサイクルフィルムの開発を支援している。

 マリコ社を加えた3社パートナーシップは、プラスチックのサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現を目指すダウの包括的な戦略の一環であり、リサイクル材料を製品に取り入れ、製品の価値を最大限に高めるとともに、その価値が生産から使用、廃棄に至るまで、ライフサイクルにわたって最大化、拡張されることに重点を置いている。

 

ちとせ 三豊市と健康増進・農業活性化で包括連携

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2021年6月9日

 バイオベンチャー企業群・ちとせグループはこのほど、香川県三豊市との間で、データ駆動型による健康増進と農業活性化の推進に向けた包括連携協定を締結したと発表した。両者は今後、ちとせグループのもつバイオの知見と技術を生かし、同市の持続的で高品質な農業の推進や市民一人ひとりの健康増進に取り組んでいく。ちとせグループが自治体と同様な連携を結ぶのは、昨年末の山梨県北杜市に続く2例目となる。

ちとせグループの藤田朋宏CEO(左)と三豊市の山下昭史市長。協定締結式で
ちとせグループの藤田朋宏CEO(左)と三豊市の山下昭史市長。協定締結式で

 ちとせグループは、千年先まで続く豊かな世界の実現への貢献を目指し、化石資源中心の消費型社会からバイオマス資源基点の循環型社会に近づけるための研究開発や事業開発を推進している。微生物や藻類、動物細胞などの「小さな生き物」を活用する技術に強みをもち、国内のみならず、マレーシアやシンガポールなどの東南アジア諸国で農業や食品、エネルギーといった幅広い分野で事業を展開。また、腸内環境に起因する健康増進をデータ駆動で実現するための新たな事業領域についても、行政と連携を取りながら同テーマの産業化を牽引している。

 一方、三豊市はデジタルファーストを宣言し、先端のデジタル技術を活用する施策を展開。同市の基幹産業である農業分野では、高い収益性を確保した生産体制・流通の仕組みを構築するとともに、新しい技術を積極的に導入することで、暮らしの安定や豊かさを実現できる魅力とやりがいのある農業を目指している。また市民の関心が高い健康分野についても、心と体の健康づくりを促し、生涯を通じて健康でいきいきと暮らせるまちづくりを進めている。

 両者は連携を深めながら、市内生産地の土壌データや市民の腸内環境データといったバイオデータの活用を通じ、農産物のブランド化、生活習慣病の予防など、健康・農業の両面から三豊市の地域活性化に取り組んでいく。

 

昭和電工マテリアルズ プリント配線板事業、投資ファンドに譲渡

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2021年6月9日

 昭和電工マテリアルズはこのほど、同社およびグループ会社が手掛けるプリント配線板事業を投資ファンドであるポラリス・キャピタル・グループが設立した特別目的会社に譲渡する契約を締結したと発表した。なお、プリント配線板に係る基板材料・感光性フィルムなどの原材料の製造・販売事業は対象事業には含まれていない。昭和電工マテリアルズは今月、新会社2社を設立。9月1日に対象事業を承継し、同日付で新会社の株式すべてを特別目的会社に譲渡する予定。

 昭和電工マテリアルズは、1964年にプリント配線板の製造・販売を開始以来、約50年にわたり高い技術力に基づく高品質な製品を国内外の市場に提供してきた。特に近年は、半導体検査・ITインフラ・5Gといった分野での、高密度化・高速信号対応、薄型化などプリント配線板に対する技術的要求が高まっており、独自の技術力によるソリューションを提供することで、対象事業のさらなる成長を見込んでいる。

 一方、同社は、昨年4月に昭和電工の連結子会社となり、2023年に両社は完全統合を予定している。最適な経営資源の配分や事業ポートフォリオの再編、両社技術の融合を通じたイノベーションの創出に向けて取り組む中で、対象事業について慎重に検討を重ねてきた。その結果、対象事業の技術力や顧客との強固な関係性などの強みを最大限活用できるよう、豊富な投資実績と投資先企業の企業価値向上を実現してきた経験のあるポラリス・キャピタル・グループの下で事業拡大を図ることが最適との結論に至った。

 

ENEOS EV事業推進部を新設、SS基点のインフラ加速

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2021年6月9日

 ENEOSは8日、EVやPHV(プラグインハイブリッド車)を含む電動車両事業の検討・展開を加速することを目的に、7月1日付で「EV事業推進部」を新設すると発表した。

ENEOSプラットフォーム(次世代型エネルギー供給、地域サービス)の全体像
ENEOSプラットフォーム(次世代型エネルギー供給、地域サービス)の全体像

 同社は、グループの2040年長期ビジョンの中で、次世代型エネルギー供給・地域サービスの展開を事業戦略として掲げている。燃料油に加えて電気・ガス・水素といったエネルギーを幅広く供給していくとともに、全国のサービスステーション(SS)を基点としたモビリティ関連や生活関連のサービスをトータルで提供する「ENEOSプラットフォーム」の構築を目指している。

電動車両関連ビジネスの取り組み
電動車両関連ビジネスの取り組み

 その一環として、電動車両が広く普及する社会を見据え、SSを中心とした電動車両の充電ネットワークの拡充をはじめとした関連事業の検討を開始しており、今回、電動車両に関する検討を集中的に行うことで、事業の展開を強力に推進する専門組織の設置を決めた。

 今後はEV事業推進部主導で、同社の強みである全国約1万3000カ所のSSネットワークを生かした経路充電(移動経路での充電)事業に加え、「ENEOSでんき」と連携した基礎充電(自宅などでの充電)向けの新たなサービスの開発・運用、さらに電動車両のリースやシェア・メンテナンスなどの関連サービスの展開を検討していく考えだ。