旭化成 世界で初めて冷却ストッキングのメカニズム解明

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2020年4月15日

 旭化成はこのほど、着用により冷却効果を得られるストッキング(冷却ストッキング)のメカニズムを、世界で初めて数値流体力学(CFD)と表面形態の連成解析により定量的に解明したと発表した。

ストッキングTOP
a)素足の状態で、上が歩行前、下が歩行後。b)冷却ストッキングを着用した状態で、上が歩行前、下が歩行後。

 同社生産技術本部の生産技術センターCAE技術部が解析によるシミュレーションを行い、結果は同パフォーマンスプロダクツ事業本部の繊維技術開発総部商品科学研究所で実験・検証。なお今回の結果は、「Nature」出版グループの学術誌「Scientific Reports」に掲載されている。

 一般的にストッキングは足を温めるために履くが、通常の繊維材料は断熱性があり、体熱が放散するのを防ぐ。一方、特殊構造を持ったニットストッキングの着用で、一定の冷却効果を得られることも分かっていた。

 例えば冷却ストッキングの冷却機能は、感覚として冷たいと感じる(接触冷感)既製品とは異なり、着用により体表面を物理的に冷やすという効果を発現する。その効果は、かねてよりサーマルマネキンを用いた放熱実験によって確認されていたが、体表面を物理的に冷却するメカニズムについてはこれまで不明だった。

 この現象を解明するために、CFDで解析する流体/固体熱連成解析で冷却ストッキング表面に形成される突起構造(リブ)を定量的に数値モデル化し、リブ表面(ストッキング表面の周期的なマイクロメートルスケールの突起物構造)の自然対流を分析。

旭化成 ストッキング
一般的なストッキングのニット構造イメージ(上)と冷却ストッキングのニット構造イメージ(下)。

 その結果、冷却効果を発現するのは、マイクロメートルスケールのリブであることが判明した。一般的に衣服を着用すると保温効果が発現するが、このマイクロメートルスケールのリブは、リブからの放熱が自然対流によって促進され、冷却効果が発現される。

 今回の解析手法による解明は、工業的、学術的にも有用な成果であり、このメカニズムの解明によって、繊維や生地の構造により繊維製品に冷却機能を付与できることが明らかになった。今後、ますます温暖化が進む環境下で、快適な生活を提供できる繊維製品の開発などの進展が期待される。

 旭化成は、今後も繊維のテクノロジーをはじめ、同社がこれまで培ってきた技術とCAE(Computer Aided Engineering)技術の融合による新しい付加価値の提供に努め、「世界の人びとの〝いのち〟と〝くらし〟」に貢献してく考えだ。

クラレ 新小学1年生の「将来就きたい職業」調査を実施

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2020年4月14日

 クラレはこのほど、この春に小学校に入学する子どもとその親を対象に「将来就きたい職業」「就かせたい職業」のアンケート調査を実施した。

 子どもが将来就きたい職業の1位は男の子「スポーツ選手」、女の子「ケーキ屋・パン屋」で、ともに調査開始以来22年連続トップ。

 男の子の「スポーツ選手」の内訳は、サッカー、野球に続き、ラグビーが人気を集めたものの、その比率は2007年をピークに減少傾向にある。一方、2012年から9年連続2位となった「警察官」は15%とポイントを上げ、1位との差を詰めた。「ユーチューバー」は初のトップテン入り。「宇宙関係」(宇宙飛行士など)も過去最高の11位となった。

 女の子については「ケーキ屋・パン屋」が26%で、2位以下を大きく引き離してトップ。内訳は、ケーキ屋とパティシエが約8割を占めた。2位にはアイドル人気を背景に「芸能人・歌手・モデル」が入り、「看護師」「保育士」など、子どもたちにとって身近な職業が比率を伸ばした。

 調査は「クラリーノ」製ランドセルの購入者を対象に実施。昨年7月から12月のインターネット回答分から有効回答を抽出した。有効回答は子ども4000人(男女各2千人)とその親4000人。調査回数は、子どもが1999年から通算22回、親は1992年から通算29回目となる。

 

JXTGエネルギー 「バイオマス・ショア寄付講座」に参画

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2020年4月14日

 JXTGエネルギーは、東京大学大学院農学生命科学研究科に開設されている「バイオマス・ショア寄付講座」に対し、三菱ガス化学、三菱商事および日新商事と共同で寄付を行っている。

 同講座が実現を目指す「バイオマス・ショア構想」は、大気中のCO2を削減しながら産業活動を行う社会の構築を目標としている。具体的には、海洋深層水湧昇流のある砂漠海岸で、海洋深層水を淡水と高濃度海水に分離し、淡水で農業・緑化、高塩濃度海水で藻類を培養し、それぞれの過程でCO2を吸収させることで高付加価値な生産物を得るシステムを構築するもの。また、同システムには再生可能エネルギーを活用する構想となっている。

 同講座は2016年に開設され、2018年4月の三菱ガス化学が参画した第1期では、バイオマス・ショア構想の基本コンセプトの構築、実施候補地の確認などの基盤づくりが実施された。今年4月から開始する第2期では、同構想の実現可能性が検証される予定。

 JXTGエネルギーは、遺伝子組み換えを一切行わない独自の発酵技術を用いて、天然色素であるカロテノイドの生産性を高める研究開発を進め、アスタキサンチンやレアカロテノイドの商品化を達成している。高塩濃度海水で培養し得られる藻類には、タンパク質やグリセロール、グルタチオン、脂質などに加え、同社が扱うカロテノイド類も含まれることから、同講座への寄付を決定した。

 同社は「2040年JXTGグループ長期ビジョン」の達成に向け、機能材事業分野での「発酵生産技術」をはじめとする製品開発力の強化を通じて、革新的な事業を創出し、新たな価値を創造していく考えだ。

三井化学 世界遺産応援PJで知床にデッキ、動画を公開

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2020年4月14日

 三井化学と三井化学産資はこのほど、知床財団(北海道斜里町)が主催する知床自然教室の40周年を記念してツリーデッキを3基寄贈し、その組み立て作業の様子など活動内容を収録した4分18秒の動画を公開した(https://youtu.be/pH4oRBiTO24)。同取り組みは昨年の夏、同社グループが世界自然遺産応援プロジェクト第3弾の一環として行ったもの。

子どもたちやボランティアが協力しツリーデッキを組み上げた
子どもたちやボランティアが協力しツリーデッキを組み上げた

 知床財団は、日本初のナショナルトラスト運動「しれとこ100平方メートル運動」発祥の地である世界遺産・知床の地で、環境教育や普及啓発、野生生物の保護管理・調査研究、森づくりなど、知床の大自然を「知り・守り・伝える」活動を行っている。

 活動の1つとして、知床の大自然を次世代へ伝えるため、全国から集まった子どもたちを対象に、知床国立公園内の100平方メートル運動地で過ごす1週間の野外キャンプ「知床自然教室」を1980年から実施。第1回以来、のべ1900人以上の子どもたちが夏の知床の1週間を過ごしている。

ツリーデッキに塗装した三井化学産資の『ノンロット』
ツリーデッキに塗装した三井化学産資の『ノンロット』

 今回、知床自然教室40周年を記念して、三井化学グループは自然教室の舞台である「ポンホロの森」にツリーデッキを3基寄贈した。自然教室に参加した子どもたちや自然教室卒業生、斜里町役場、知床財団などからの多くのボランティアとともに、昨年7~10月に製作し、仕上げには三井化学産資が提供する、木材保護塗料「ノンロット」の塗装を施した。

 動画の中で、知床財団自然復元係の松林良太さんは「子どもたちに自分の目線だけではなく、高い所から見渡して海を見たり、木の葉を見たり、いろいろな風景を見てもらいたい」と思いを語り、大人の背丈の倍ほどの高さがあるツリーデッキの製作にあたった。アイデアスケッチを基に、子どもたちが自ら材料の木材を運び、釘を打ち、大人たちの手を借りながらツリーデッキをこしらえた。

 なお、三井化学産資が提供した「ノンロット」は、木材本来の通気性(=調湿性)を最大限に生かしながら、風雨をしのぐ超撥水性や耐UV性、防腐・防カビ・防虫性を持つ安全性の高い塗料。木の呼吸を妨げず、心地よい木の香りが感じられることから、多くの建築家・設計士、施主から選ばれている。今回のプロジェクトでは、木材保護のためツリーデッキに塗装された。

東洋紡 PBO短繊維、消防服向けにグローバル戦略加速

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2020年4月14日

 東洋紡はこのほど、世界一の強度と難燃性を持つPBO繊維の短繊維を、デュポン社の日本法人、デュポン・スペシャルティ・プロダクツへ消防服向けに独占供給することで合意した。今後は、同社のグローバルな販売網を通じてPBO短繊維を拡販していく。

 PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維は、東洋紡が1998年に世界で初めて開発し、販売を開始。現存する有機繊維の中で最高レベルの強度・弾性率・耐熱性・難燃性を誇り、消防服をはじめ、耐熱資材やレーシングカーの車体などに幅広く使用されている。

 世界の消防服市場は、中国やインドでの市場拡大などを背景にさらなる成長が見込まれている。両社は、PBO短繊維を活用することで、軽量性と遮熱性を両立する次世代の消防服の開発・供給が可能になるとして合意に至った。

 東洋紡は今後、デュポン・スペシャルティ・プロダクツにPBO短繊維を独占供給することで、消防服の高性能化を図り、消防士の安全確保に貢献していく。

三井化学 次亜塩素酸Na圧縮タオル、九州から販売開始

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2020年4月14日

 三井化学は13日、100%子会社で無機系化学品の製造・販売などを手掛ける三井化学ファインが、次亜塩素酸ナトリウムと圧縮タオルを同梱した「FASTAIDウイルス・スウィーパータオル200」を4月から販売開始すると発表した。まずは、九州地区の衛生資材が不足している介護施設や公共施設などに業務用として提供を始める。

「FASTAID ウイルス・スウィーパータオル200」
「FASTAID ウイルス・スウィーパータオル200」

 同製品は、通常1~2週間で分解して機能が失活する次亜塩素酸ナトリウムを安定した状態でパッケージしたもの。次亜塩素酸ナトリウムはあらかじめ200ppmに希釈されており、現場での調合は不要。使用したいときにパッケージを押すと、次亜塩素酸ナトリウムが圧縮タオルに浸透し、除菌タオルが完成する。

 必要な時にその場で瞬時に次亜塩素酸ナトリウムを使用できることから、災害時のみに留まらず病院や介護施設、ホテル、乗り物内など様々な使用場面が想定されている。

 同製品は、三井化学ファインがNPO法人のジャパン・プラットフォームやCWS Japan、また、三井化学などと共に進めている災害支援イノベーション共創イニシアチブ「More Impact(モア・インパクト)」から生まれたコンセプトで、三井・ダウ ポリケミカルのロック&ピール技術を活用して同梱した災害支援イノベーション製品。

 ロック&ピール樹脂は、パッケージを製造する際のヒートシール温度を変えるだけで、完全シールとイージーピールの異なる機能を使い分けることが可能な新素材。食品や化粧品の2室分離袋のパッケージとして採用が広がっている。

 なお、同製品の売上の一部は、ジャパン・プラットフォームの基金に寄付され、災害被害を減らすモア・インパクトの活動に活用されるエシカル・プログラム製品になっている。三井化学グループは今後も、健康安心な長寿社会の実現に向けた技術開発、製品開発を進めていく考えだ。

SEMI 半導体工場が事業継続対象事業者に追加指定

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2020年4月14日

 SEMIジャパンはこのほど、日本政府が、新型コロナウイルスを巡る緊急事態宣言時に事業継続が求められる事業者の対象に、設備の特性上、生産停止が困難なものとして半導体工場を追加指定したと発表した。

 これは、SEMIジャパンが、政府に対し、宣言時でも半導体・製造装置・材料の製造に関して事業継続できるよう働きかけを求めていたもので、経済産業省へ今回の要請に至る背景や、要請内容を直接伝えている。   

 SEMIは、半導体に関する各工場が今回の宣言によって活動停止することが、世界のエレクトロニクス製造産業に深刻な影響を与えることになり、製造サプライチェーンに混乱をもたらし、ひいては経済および未来の国民全体の生活に影を落とすリスクが高いということを書簡や協議の場で強調した。SEMIでは今回、事業継続の対象として追加指定されたことで、サプライチェーンに与えるリスクを少しでも緩和する一助になったと考えている。

 現在、各国政府は、国民の生活を保護することと、経済的打撃の抑制との両立をバランスさせる難しいかじ取りを迫られている。各種政策や関係企業の尽力により、必要最善の対策が取られサプライチェーン分断の最悪の事態は回避されているが、ウイルスとの闘いが長期化すると、新たな課題が生じる可能性が高い。

 SEMIは、グローバルで各政策立案者と協力し、こうした課題に対して、各種情報を収集し、関係企業の声に耳を傾け、健全なサプライチェーンの維持に向け最善の道を模索し続けていく方針だ。

 

三菱ケミカル モスアイ型反射防止フィルムが腕時計に採用

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2020年4月14日

 三菱ケミカルは13日、同社が開発したモスアイ型反射防止フィルム「モスマイト」が、カシオ計算機が今月24日に発売する耐衝撃ウオッチ「G‐SHOCK GBD‐H1000」に採用されたと発表した。

“G SHOCK ”『 GBD H1000 』(画像提供:カシオ 計算機株式会社)
“G SHOCK ”『 GBD H1000 』(画像提供:カシオ計算機株式会社)

 太陽光発電素子と液晶モジュールにモスマイトを貼合することで光の反射を抑制し、ディスプレイの高精細化・高コントラスト化を実現している。

 同社が開発した「モスマイト」は、蛾の眼(モスアイ)が持つ微細な突起構造を模倣した反射防止フィルム。「モスマイト」の表面には高さ200㎚の突起が100㎚の間隔でフィルム上に並んでいる。この突起の幅が可視光線の波長よりも狭いことで、光の屈折率の変化が緩やかになり、光の反射を抑制する。

モスマイト の 拡大写真
モスマイト の 拡大写真

 一般的なガラスやプラスチックの表面は光の反射率が通常4~5%程度あるが、それらの表面に「モスマイト」を貼付すると反射率を0.1~0.3%にまで抑えることができる。その優れた光透過性から、これまでに車載ディスプレイや医療用モニター、サイネージ、額装などに幅広い分野に採用された実績があり、今後も用途が拡大することが見込まれている。

 三菱ケミカルは、引き続き同製品の新たな用途開発・市場開拓に向けて、国内のみならず、グローバルに事業を展開させ、さらなる拡販に努めていく考えだ。

日本触媒と三洋化成 新型コロナ感染拡大で統合を延期

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2020年4月14日

 日本触媒と三洋化成工業は13日、昨今の新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大や、原油および石油製品相場の急落などを踏まえ、両社の業績や事業環境の見通しが不透明となったことから、それぞれの臨時取締役会において、経営統合の延期と、合意した株式移転比率の見直しを行うことを決議し覚書を締結したと発表した。

 両社は昨年11月、共同株式移転の方式により両社の親会社となる「Synfomix」(統合持株会社)を設立し、経営統合を行うことを決議。両社間で対等の精神に基づいた最終契約を締結し、今年10月1日を統合持株会社の成立日とする予定だった。

 今回の覚書では、統合持株会社の成立日(株式移転の効力発生日)を2021年4月1日に延期し、最終契約で合意した株式移転比率の見直しを行うことを合意している。

 なお、経営統合の内容については、経営統合のスケジュールと株式移転比率を除いて、昨年11月に公表した内容から重要な変更はないとしている。

BASF 革新素材バンパーステー、マツダ車に採用

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2020年4月13日

高い耐熱性と耐久性、ヒマシ油原料で環境貢献

 ドイツの総合化学会社であるBASFは、エンジニアリングプラスチックの中では、ポリアミド(PA)樹脂「Ultramid(ウルトラミッド)」に注力している。

BASFの「ウルトラバランス」が使用された、マツダ車用リアバンバーステー
「ウルトラミッドバランス」が使用された、マツダ車用リアバンバーステー

 PA6、PA66、PA66/6といった、さまざまなコポリマーからなる製品群に加え、PA610やPA6T/6のような特殊ポリアミドも取り揃える。また非強化材だけでなく、ガラス繊維やミネラルによる強化材、さらに特種用途向けに長繊維ガラス強化材などのラインアップがある。

 特徴として、機械強度や剛性、耐熱安定性に優れ、また低温下での耐衝撃性や摺動特性、成形性を発揮する特性を備えていることから、幅広い工業分野で多様な構成部品や機械部品、高品質な電気絶縁材料、特殊部品などに、欠かせない存在として評価が高い。

 中でもPA610「ウルトラミッドバランス」は、ガラス繊維を30%含有していることで、より長期にわたる耐熱性に加え、安定剤とポリマー技術により耐薬品性を持っている。他のPAに比べても吸湿性が低く、湿度の高い環境下でも寸法安定性の維持が期待できる。

 この革新的素材「ウルトラミッドバランス」を使用し、スポーツ用品と自動車部品のグローバルサプライヤーであるモルテン(広島市)が製造する「リアバンパーステー」が、マツダの新型車「MAZDA3」と「CX‐30」に採用されている。

 リアバンパーステーは、自動車の車体下部を保護するための部品。冬季に路上で使用される融雪剤や凍結防止剤に含まれる塩化カルシウム、またサイレンサーによる高熱にさらされるため、ポリプロピレン(PP)や一般的なPAなど従来の素材で作られた部品では、時間の経過とともに劣化や変形が発生してしまう。

 それに対し、「ウルトラミッドバランス」を使用することで、高い耐熱性のほか、オイルやさまざまな溶剤、アルカリ水溶液などに対する高い耐久性をリアバンパーステーに持たせることが可能となった。

 また、PA610は、トウゴマ(植物)から抽出したヒマシ油を精製して作られるセバシン酸が原料。昨今、プラスチックにも環境貢献が求められているが、こうした顧客の要望に応えられることも大きな特徴だ。

 BASFジャパンパフォーマンスマテリアルズ事業部の山本勇執行役員は、「顧客にとって付加価値のあるソリューションを提供するために、われわれの専門性を最大限に生かすことに注力している。今後も顧客と協力し、進化するニーズに対応していく」と述べている。