AGCはこのほど、素材の組成開発を担う材料融合研究所と、素材の生産プロセス・設備開発を担う生産技術部で、スタートアップのKAKUCHO(東京都渋谷区)がもつ「webAR」の試験使用を決定したと発表した。今月から同技術を開発現場に導入し、開発のスピードアップ化を図る。
KAKUCHOは「AR/MRを社会に浸透させ、誰もみたことのない新しい日常を創造する。」を企業理念に掲げ、ARを利用した高級インテリアEC「FURNI」と、FURNIに使われているAR技術を提供する「webAR」の2つの事業を提供している。
AR(Augmented Reality)とは、一般的に拡張現実と訳されるもので、物体検知・空間認識・顔認識などの画像認識を通して、現実環境をコンピュータにより拡張する技術。建設現場や工場などの作業現場での活用や、自動運転への応用など、ビジネスのさまざまなシーンで活用が進んでいる。
「webAR」は専用のアプリを開発することなく、ウェブブラウザ上でARを簡単に使用できる技術だ。事前にURLを共有しておけば、スマートフォンやタブレットなどのデバイスを現場でかざすことで、開発設備をそのままの形状・サイズ感で現場風景に重ね合わせて表示できる。
これまで図面や仕様を共有するだけでは正確に伝えることができなかった、現場のレイアウト・作業性・安全性などを設備導入前に明らかにすることが可能になる。同技術により開発者間のコミュニケーションを促進し設備開発のスピードを向上することで、素材開発全体のスピードアップに繋げていく考えだ。
素材の開発には、組成開発、生産プロセス開発、設備開発などの開発フェーズから量産に至るまで数十年を要することもある。中でも設備開発は同じ図面や仕様を共有しているにもかかわらず、組成開発者と設備開発者が認識する現物イメージに乖離があり、開発に多大な時間を要するケースがある。この課題を解決する手段の1つとして、AGCはAR技術に着目した。