昭和電工は5日、アルミニウム合金と汎用の非晶性エンジニアリングプラスチック(エンプラ)であるポリカーボネート(PC)樹脂を、接着剤を使わずに直接接合する画期的な技術を開発したと発表した。
アルミ合金と樹脂を接合するには、ボルトなどで締結する機械的接合や、接着剤を用いた接着接合が主流だが、近年、樹脂材料の射出成形時に金属素材と直接接合する新たな技術が注目されている。
金属樹脂直接接合は、工程の簡略化、高い生産性、複雑形状でも加工可能などの優位性が期待される技術だが、これまでの多くは粗面化した金属表面に樹脂を注入して得られるアンカー効果をはじめとする機械的結合力に依存するため、PC樹脂に代表される非晶性エンプラの接合は難しいとされていた。
同社は長年の事業で培ったアルミ合金と高分子化学の知見を生かし、特殊表面処理とプライマー処理を施したアルミ合金を使用することで、PC樹脂との直接接合を可能にした。
同社が開発した接合技術はアンカー効果だけではなく、化学結合力も併せもつ画期的な接合方法。また同技術は一般的なPC樹脂の成形条件で、25MPa(メガパスカル) 以上の実用上十分な接合強度を示す実験結果が得られており、接合強度を十分に発現させるための特殊な条件や付帯設備が不要だ。
同技術は汎用性の高いPC樹脂と軽量な金属であるアルミを接合できることから、スマートフォンの筐体用途に適用可能。今後はアルミの表面処理技術やプライマーの塗工条件を最適化し、接合強度・耐久性を高める開発を推進。将来的には同技術の適合樹脂を拡充させ、より耐熱性の高いスーパーエンプラへ応用を実現し、自動車部品用途での実用化を目指す。
同社グループは中期経営計画に基づき、事業間連携の推進とマーケティング機能の強化に取り組んでいる。自動車や電子デバイス産業では技術の進化が一段と進み、素材へのニーズは軽量、放熱・蓄熱、絶縁性など多様化・高度化している。
同社はこれらの市場ニーズからバックキャストの発想を取り入れ、保有する技術を組み合わせた複合材の開発に取り組んでいる。今回発表した金属樹脂直接接合技術も、事業間連携により実現したテーマの一例。今後も幅広い事業・製品の技術を深化・融合させることで、新たなソリューションの提供を目指していく。