バイオインダストリー協会(JBA)は第5回「バイオインダストリー大賞」の受賞者を決定した。大賞に輝いたのは、慶應義塾大学先端生命科学研究所所長の冨田勝氏(同大学環境情報学部教授)。「システムバイオロジーの先駆的研究とその産業化による地域振興」の業績に対して贈られた。
同氏は、生物学と情報科学を融合させた「システム生物学」の世界的なパイオニアとして、ゲノム情報解析や細胞シミュレーション、メタボローム解析、マルチオミクス解析など、大量データに基づく生命科学「データドリブン・バイオロジー」の分野で革新的な技術を数多く開拓してきた。また、2001年に山形県鶴岡市に開設された同大学先端生命科学研究所の所長を現在まで20年間務め、研究成果の事業化に率先して取り組んできた。
その活動を通じ、自らベンチャー企業を創業するとともに、後進の研究者に起業家精神を伝授し支援することで、バイオベンチャー6社と街づくりベンチャー1社の創業につなげ、地域振興や人材育成に大きく貢献してきた。これらの業績は、世界的な科学研究と産学官連携によるバイオコミュニティー創生の優れた先進事例であり、今後国内外のバイオインダストリーの発展に大きく寄与することが期待され、その業績を高く評価された。
「バイオインダストリー大賞」は2017年、JBAが30周年を迎えるのを機に、次の30年を見据えて〝最先端の研究が世界を創る―バイオテクノロジーの新時代―〟をスローガンに創設。バイオインダストリーの発展に大きく貢献した、または、今後の発展に大きく貢献すると期待される顕著な業績を表彰している。 今回、科学技術振興機構の顧問・相澤益男氏を選考委員長とする13人の選考委員会による厳正な審査を経て、受賞者を決定した。
なお、「バイオインダストリー大賞 特別賞」には、「バイオミメティック生体親和型ポリマーの創発・工業化と医療応用」の業績により、石原一彦氏(東京大学名誉教授・大阪大学大学院工学研究科特任教授)を選出した。
副賞として大賞300万円、特別賞100万円が贈られる。表彰式・受賞記念講演会は今秋10月13日に、国際的なバイオイベント「BioJapan 2021」の会場(パシフィコ横浜)で開催される予定。