日化協 淡輪会長がノーベル賞受賞の吉野名誉フェローに祝辞

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2019年10月11日

 日本化学工業協会は10日、旭化成名誉フェローの吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞したことに対し、淡輪敏会長(三井化学社長)の祝辞を発表した。

 淡輪会長は、「旭化成名誉フェローの吉野彰様が、この度ノーベル化学賞を受賞されることになったことは、誠に喜ばしいことであり、心からお祝い申し上げる。企業の研究成果が認められ、今回の受賞に至ったことは、日本の化学産業界にとって大きな誇りだ。吉野名誉フェローが開発されたリチウムイオン電池は、ITデバイスをはじめとする様々な製品の基幹部材としてそのイノベーションを支え、今や私たちの生活になくてはならないものとして、深く広く浸透している。また、性能に改良を重ね、ハイブリッド自動車や電気自動車における航続可能距離の延伸を実現し、その市場拡大にも大きく貢献している。さらに、太陽光や風力で発電したエネルギーを蓄積でき、気候変動問題の解決に資する技術としても大いに期待されている。企業の研究者として、ここに至るまでには、さまざまなご苦労と、粘り強いご努力があったことと拝察し、改めて敬意を表する。また、今後も日本の化学産業が地球規模の課題解決につながる新技術や新製品を創出し、世界に貢献していくことを期待している」とコメントしている。

京大・産総研 合成ダイヤを使い量子センサーで世界最高感度 

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2019年10月8日

 京都大学と産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、人工的に合成したリンドープn型ダイヤモンドを使い、NV中心(窒素―空孔中心)の室温での世界最長電子スピンコヒーレンス時間(T2)と、単一NV中心を用いた量子センサーの世界最高の磁場感度実現に成功したと発表した。

 京大化学研究所の水落憲和教授やエンスト・デイヴィッド・ヘルブスレブ特定研究員、産総研の加藤宙光主任研究員らの研究グループによるもの。

 NV中心とは、ダイヤモンドの格子中の炭素の位置に入った窒素と、それに隣接する炭素原子が抜けてできた空孔から成る不純物欠陥。また、T2とはスピンの量子的な重ね合わせ状態が、e分の1の大きさ(eは自然対数の底)になるまでの時間のこと。

 今回の成果により、n型半導体特性を生かした量子デバイスへの幅広い応用に道を開くことが期待される。高品質のダイヤモンドが人工的に合成できるようになり、これを使ったこれまでにないデバイスの実現が期待されている。

 中でも注目されるのがNV中心である。NV中心は室温でも長いT2を持ち、超高感度量子センサや量子情報素子の実現、量子センサの生命科学分野への応用の観点から注目されている。

 量子センサーではT2が長いほど感度が良くなり、今回の研究では、産総研で作製した高品質なリンドープn型ダイヤモンド中の単一NV中心のT2が、あるリン濃度で非常に長いことを見出した。

 リンは電子スピンを持つため磁気ノイズ源となり、リンをドープするとT2は短くなると考えるのが常識だが、今回の結果はそれに反するものだった。リン濃度だけを変えた試料での結果からも、一定量以上のリンがドープされた試料で世界最長のT2が測定され、リンドープの効果が確認された。

 n型ダイヤによるT2長時間化は、合成中に生成した空孔欠陥が電荷を帯び、磁気ノイズ源となる複合欠陥の生成が抑制されたためと考えられる。精密なノイズ測定から、今回の試料でのノイズ源は、リン以外の不純物欠陥の電子スピンであることが示唆され、それらを抑制することで、さらなるT2の長時間化も見込まれる。

 なお、この成果は8月28日に英国の国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載された。

 

SEMI 今年のシリコンウエハー出荷は前年比6%減と予測

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2019年10月3日

 SEMIはこのほど、半導体向けシリコンウエハー出荷面積の年次予測を発表した。2019年の出荷面積は、過去最高記録となった2018年から6%減となるが、2020年には再び成長に転じ、2022年には過去最高記録を更新すると予測している。

 2022年までのシリコンウエハーの需要予測では、ポリッシュドウエハーとエピタキシャルウエハーの合計出荷面積が、2018年は前年比8・0%増の125億4100万平方インチ、2019年は同6・3%減の117億5700万平方インチ、2020年は同1・9%増の119億7700万平方インチ、2021年は同3・5%増の123億9千万平方インチ、2022年は同3・2%増の127億8500万平方インチとなる見通し。

 SEMIのクラーク・ツェン市場調査統計担当ディレクターは「今年は、業界が累積した在庫と需要の低迷に対処するため、出荷面積は減少するだろう。しかし2020年に業界は安定し、2021年、2022年に成長の勢いを取り戻すと予測される」とコメントしている。

日化協 日本動物実験代替法学会、LRI賞受賞者を決定

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2019年10月1日

 日化協はこのほど、研究者奨励(育成)の一環として、〝化学物質が人の健康や環境に与える影響〟に関する優れた業績を上げた研究者を表彰するため、日本動物実験代替法学会(JSAAE)内に設立した日化協LRI賞の第4回目の受賞者を、東京理科大学工学部情報工学科の寒水孝司(そうず・たかし)氏に決定したと発表した。

 受賞テーマは「小標本データにおけるEffective Time50(ET50)の区間推定法」。実験条件である比較的少数の測定時点と組織数から得られるデータ数であっても、皮膚刺激性試験代替法の指標(50%細胞生存率)を安定的に偏りなく区間推定(95%信頼区間の構築)できるようにした。これにより、ヒト表皮モデルの効率的な使用が可能になり、試験法の有用性が大きく向上したことが評価された。

 また、バリデーション、第三者評価、統計的研究を通じて動物実験代替試験法の開発と実用化に大きく寄与してきており、今後もさらなる貢献が期待される。授賞式は11月21日に産業技術総合研究所(茨城県つくば市)で開催する日本動物実験代替法学会第32回大会で執り行われる予定。

 なお、LRIとは長期自主研究活動のこと。「日化協LRI賞」はLRIの認知拡大と理解促進を図るとともに、同分野の優れた若手の研究者、世界をリードするような新しい研究分野を発掘することを目指して2015年に設立された。

石化協 第21回事故事例巡回セミナーを大分地区で開催

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2019年9月25日

 石油化学工業協会(石化協)はこのほど、9月13日に開催された「第21回事故事例巡回セミナー(大分地区)」を報告した。

 同セミナーは保安管理に関する現場管理職の気づきの機会として、諸先輩などの生の声で「経験や思い」を語ってもらう場として、毎年夏と冬に開催。今回は大分地区にある各社の製造課長など約80人が参加した。

 講演に先立ち、保安・衛生小委員会の岩永徳幸委員長(三井化学理事 生産・技術本部 安全・環境技術部長)が「保安・安全の確保は事業継続の最重要基盤の1つである。本日の講演から得た気づきを自事業所・自部署の安全活動に役立ててもらいたい」と挨拶を述べた。

 続いて、旭化成製造統括本部製造企画部上席研究員の中原正大氏が「化学プラント材料の損傷劣化に起因した事故防止」をテーマに講演。プラントの損傷事例解析・対策立案業務などに携わってきた経験の中から事故事例を紹介し、学術的な視点も踏まえた解析と対応策について説明を行った。

 また現場レベル、専門家チーム別に必要な教育のあり方、技術支援ツールの整備、社内外の専門組織とのネットワーク活用などの必要性について言及。最後に、事故防止のためには、対策の具体化、着実な実施、検証と改善を継続的に行うことが重要であると指摘した。

 住友化学レスポンシブルケア部長の伊藤孝徳氏が「プラント管理者の役割 事故防止と安全配慮義務」をテーマに講演。部長時代に味わった自らの辛い体験を基に、事故が起こるとどうなるのか、事故を防ぐためにすべきことなど、多くの具体的な事故事例を紹介。参加者が現場で何をすべきか、自ら考えることを意識させるような内容だった。

 加えて、管理者に必要な安全配慮義務に関する説明のほか、安全文化の八つの構成要素の考え方に基づく管理・活動が重要であることが示され、管理者の役割について再確認を行った。

日化協 淡輪会長「原油・ナフサ価格の急変動を懸念」

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2019年9月24日

 日本化学工業協会は20日、定例となる淡輪敏会長(三井化学社長)の会見を開催した。

 4-6月期の経済動向は米中貿易摩擦激化や中国経済の減速の影響を受け、日本の輸出は電子部品や工作機械を中心に減少。また海外需要の影響を受け自動車も悪化している。主要化学企業30社の実績では、収益は十期ぶりにマイナスとなった。淡輪会長は「汎用品は

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VECなど3団体 樹脂窓リサイクル検討委員会を発足

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2019年9月20日

 塩ビ工業・環境協会(VEC)は、日本サッシ協会、樹脂サッシ工業会と協力して「樹脂窓リサイクル検討委員会」(委員長:東京大学・清家剛教授)を発足させ、8月30日に第1回検討委員会を開催した。業界3団体が一致団結し、廃棄樹脂窓のリサイクルを進める枠組みの構築と実現を図っていく。

 VECの定例会見の席で、進藤秀夫専務理事は「着実に需要を伸ばしている

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SEMI 300mmファブ製造装置の投資額、21年に600億ドルと予測

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2019年9月6日

 SEMI(米国)はこのほど、300mmファブの製造装置投資額が、2021年に600億ドルと過去最高記録を更新するとの予測を発表した。

 2019年は減少するものの、2020年から緩やかに回復してくる見込み。2021年以降については、2022年に1度減少するが、2023年には再び増加に転じるとしている。また、2019~2023年の5年における製造装置への投資増分の大半は、メモリ(主にNAND)、ファウンドリ/ロジック、パワー半導体製造用となる。

 地域別の投資額では、韓国が首位となり、台湾と中国が続くが、欧州、中東、東南アジアも順調に拡大すると予想。稼働中の半導体ファブ/ラインの数は、2019年の130から2023年には170と30%以上急増する見込みで、実現性の低いファブ/ライン計画も含めると、200近くにまで増加する。

 同予測は、SEMIが発行した最新の「300mm Fab Outlookレポート」に基づいている。2023年までの予測を提供する同レポートは、半導体前工程ファブの投資額、および300mmウェーハで製造されるDRAM、NAND、ファウンドリ、ロジック、その他製品の生産能力、技術投資について詳しく説明している。

 また、2023年までの設備の詳細が四半期ごとに収録され、さらに2030年までの実現性が低いものから高いものまで、ファブ計画の予測を提供している。

NEDOなど 流水熱エネルギーに特化した熱交換ユニットを開発

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2019年9月2日

 NEDO・ジオシステム・角藤は、農研機構・東北大学・金沢大学と共同で、農業用水や温泉水などの流水がもつ再生可能エネルギー熱の利用に特化した、樹脂製投げ込み式熱交換ユニットを開発した。

 投げ込み式熱交換器とは、流水や水槽類の中に設置し、液体の温度を加熱または冷却させる装置。今回対象とした流水は、さまざまな異物やスケールを生じる化学成分が含まれる可能性が高いため、腐食に強く、メンテナンスが容易な樹脂製投げ込み式熱交換器の使用が適している。

 しかし、従来の樹脂製投げ込み式熱交換器は、熱交換性能が低いことなどから投資対効果が合わないことが多く、利用可能な流水の条件が限られ、熱利用が進んでいない状況だった。

 今回開発した熱交換ユニットは、水を強制攪拌するためのエアレーション機構を搭載し、既存の樹脂製投げ込み式熱交換器と比べ、熱交換性能を約6倍に高めた。また、多数細管構造の熱交換器を採用し、既存の樹脂製熱交換器と比較して、循環水の圧力損失を約10分の1に抑え、流水からの安価な熱回収を実現した。

 開発では、ジオシステムが樹脂製投げ込み式熱交換ユニットの設計・試作・性能評価、角藤が性能・機能要件整理、農研機構が平板型樹脂製投げ込み式熱交換器の基本性能計測と設置方法の開発、東北大学がエアレーション機構の熱・流動解析など、金沢大学が平板型樹脂製投げ込み式熱交換器の数値シミュレーションなどの技術開発の役割を担った。

 この熱交換ユニットは、今後、ジオシステムが「G‐HEX」の製品名で販売を開始する予定。これにより、今まで十分に活用できていなかった流水熱源からの高効率な熱利用が可能となり、再生可能エネルギー熱利用の普及拡大が期待できる。