《化学企業トップ年頭所感》三井化学 橋本修社長

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2021年1月7日

 昨年は新型コロナウイルスの影響を受け、当社グループの通期業績は過去数年に比べて減益となる見通しだ。この難局を乗り越えるために、キャシュフローの確保を最優先し、投融資の厳選を行った。一方で、事業ポートフォリオ変革の実行スピードを高め、成長事業領域での買収などを実施した。さらに基盤素材事業では収益変動の改善に向けた新たな変革にも着手した。

 予断を許さない状況ではあるが、主要産業では需要回復の兆しもあり、業績は回復基調にある。成長が期待されるICT分野やヘルスケア分野を中心に、今後とも攻めの投資を行っていく方針だ。

 さて、2021年を展望すると、ワクチン開発の成果に依るところもあるが、新型コロナウイルスとの共生、あるいは感染拡大の収束に向けた新たな社会像や価値観が進展すると思われる。これに対応して、当社グループは〝新たな日常〟に向けた4つの施策を進めて行く。

 1つ目は「長期経営計画のレビュー」だ。2030年の世界を見据えて当社グループの目指すべき姿を再定義し、実現するための道筋をグループ内で共有し、実行に踏み出していく年にしたい。

 2つ目は「デジタル化の推進」だ。社内に新たな専門組織を設置し、あらゆる分野でのデジタル化を統合的に推進していく。

 3つ目には「2050年カーボンニュートラル宣言」を挙げたい。2050年のGHG(温室効果ガス)排出「実質ネットゼロ」を目指し、全社での取り組みを加速していく考えだ。

 そして、4つ目として「働き方改革」を推進していく。「自主・自律・協働」をキーワードに個の力を束ね、組織の総合力を発揮する仕組みを作っていく。

 2021年は業績のV字回復への挑戦を含め、三井化学グループの成長・発展に向けた新たなスタートとなる重要な年だ。先に挙げた4つの施策はいずれも挑戦的な課題となる。社長就任時の挨拶でも申し上げたが、当社グループで働く皆さんの挑戦による成功や失敗を通じて得る学びは、グループの競争力の源泉だと言える。失敗を恐れず、今年はもう一段高い目標に向かってさらなる高みへと粘り強く挑戦してほしい。

《化学企業トップ年頭所感》三菱ケミカル 和賀昌之社長

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2021年1月7日

 2020年はまさしくコロナ禍の年となったが、当社グループとして人々の生活を直接的に支える製品を社会に提供することができた。人、社会、地球が抱える様々な課題に正面から向き合い、世の中に必要とされる素材を提供し、社会に貢献し続けるという当社グループの信念に変わりはない。

 また、経営効率向上のために、一部事業を縮小する反面、成長分野についてはM&Aなどによる強化を行っている。変わりゆく事業環境に適応し、着実に成長していくために、安全第一とコンプライアンスの徹底を基盤とし、「安全・安定操業」、「収益力の強化」、「真のグローバル化」および「営業改革」を推進する施策に、本年も引き続き取り組んでいく考えだ。

 人事制度については、「従業員と選び選ばれる関係」を実現するため、新しい制度を実施することとした。「Pay for job,Pay for performance」を基本方針に、挑戦する風土醸成、公正な評価・処遇、社員一人ひとりの自律、透明性の高い人事制度の実現を目指した制度変更を進めていく。

 本年4月には大幅な組織改正を実施し、事業部門を製品や市場分野といった軸で集約を行い、共通部門についても、より大きな単位の組織として再編する。組織の壁を取り払い、近い分野の人の交流が増えることで、シナジーを推進し、ソリューションの質を向上することが狙いだ。また、権限委譲を進めることで、アクションや判断の速度アップと、より柔軟な資源投入を図っていきたい。

 一方、菅総理が所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と述べ、日本でもカーボンニュートラルへ向かって大きく舵が切られた。総合化学としての引き出しを活用して、地球を救うための技術を社会に提供していくことが、当社グループの使命だと考えている。昨年4月にサーキュラーエコノミー推進部を新設し、グローバルな視点でサーキュラーエコノミーに資する事業・製品・サービス全ての課題整理、ソリューションの提案を進めてきた。地球の限りある資源の循環、有効利用という観点で、素材産業が目指していくべきビジネスモデルについて産学連携の共同研究も開始している。本年も、循環型社会の実現を目指して、社会全体に総合化学として価値を提供する活動を加速させていく。

《化学企業トップ年頭所感》昭和電工 森川宏平社長

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2021年1月6日

  新型コロナウイルス感染症に罹患された方々と、感染拡大により厳しい生活環境におかれている方々に、心よりお見舞い申し上げる。

 新型コロナウイルス感染症は、世界規模で市民生活や企業活動に極めて多大な影響を与え、生活や働き方なども大きく変化した。一方でマスクや消毒液といった衛生用品や、テレワークなどで需要が拡大したPCやタブレットなどの電子デバイスを製造するには化学産業が必要であり、こうした化学製品が人々の暮らしに不可欠であることが再認識された1年でもあった。

 昨年4月に昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)をグループ化して以降、両社で将来に向けた成長の基盤を確立するため議論を重ね、12月には統合新会社の長期ビジョンを発表し、「化学の力で社会を変える」を存在意義(パーパス)として掲げた。統合新会社は、先端材料パートナーとして時代が求める機能を創出し、グローバルトップの機能性化学メーカーとして「世界で戦える会社」と「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」になることを目指していく。

 今年は、昭和電工グループが一流を目指して歩み始めた中期経営計画「The TOP2021」の最終年であるとともに、7月の昭和電工マテリアルズとの実質統合、10月の本社統合、12月の新中期経営計画の発表など、これまでにない大きな変化の年となる。昭和電工マテリアルズという仲間を得たことで、我々はより高いレベルを目指せるステージに立てた。大きな変化を進化に、お互いを認め合い多様性を強みに変えて、グループの底力を発揮して中期経営計画「The TOP2021」を完遂しよう。

 

《化学企業トップ年頭所感》東ソー 山本寿宣社長

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2021年1月6日

 昨年は新型コロナウイルスの蔓延が世界経済に大きな影を落とし、終息時期も見通せない状況だ。出張・移動の自粛や会食・会議の制限、在宅勤務が続く一方で、ウェブ会議が定着し、DX(デジタルトランスフォーメーション)がより求められてきた。物事の変化に、デメリットだけでなくメリットを見出だすことも大切だ。

 今年の経営課題は、第一に2020年度業績予想の達成だ。中期経営計画の基本方針をさらに進め、外部環境の変化に耐え得る強い企業体質を目指す。

 第二に安全対策だ。安全安定運転は永遠の課題であり、技術力の向上や安全文化の醸成を引き続き目指す。異常現象や労働災害の未然防止は、安定稼働に加え現場の負担軽減にもつながる。そのためにIoTやAIなど、デジタル技術の導入も積極的に推進する。

 第三に成長戦略だ。コモディティ事業は基盤強化で競争力を一層高め、能力増強の機会を探る。スペシャリティ事業は機能性・差別化の強化と、需要増に対応できる能力増強を積極的に実施していく。新しくなった南陽・四日市の両研究所では、新規事業を1つでも多く立ち上げることを期待する。

 第四にコンプライアンスだ。法令順守は企業や個人にとって最低限守るべきルールだが、今の業務が法令に適合しているか、原点に帰り再度点検する。

 第五に現場力の強化だ。製造・研究・販売・管理の力の結集が会社の真価となる。各職場の目指すべき方向や課題の解決のため、各自がプロ意識をもち、研鑽し、自由闊達な意見交換を通して主体的に業務を行い、自負できる明るい職場になることを期待する。

 最後に持続可能な開発目標(SDGs)への対応だ。積極的な情報開示を行いCDP(気候変動)の総合評価は改善した。TCFD(気候関連財務情報タスクフォース)への賛同も表明している。CO2排出は具体的な目標や指標を掲げて対応しているが、一朝一夕に解決できる課題ではない。化学会社として「化学の革新」を通して、多角的にCO2の削減・有効利用に取り組みたい。何事にも慢心せず、使命を着実にこなし、より信頼してもらえる会社を目指していこう。

《化学企業トップ年頭所感》旭化成 小堀秀毅社長

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2021年1月6日

  旭化成グループは創業以来、時代に合わせポートフォリオの転換を図り、変化する社会へ柔軟かつダイナミックに対応し、新たな価値を提供し続けた歴史をもつ。そして来年、当社はいよいよ創業100周年を迎える。この大きな節目を機に、未来のあるべき姿を皆さんと一緒に描き、その姿を実現するための施策を構築していくが、その重要な一歩となるのが2022年度から始まる次期中期経営計画だ。

 今年は、次期中計が良い形でスタートダッシュを切れるよう、今後の事業戦略構築のベースとなる3つの取り組みを強力に推進していく。

 まず、「サステナビリティ」の実現に向けた取り組みの実行だ。気候変動対策やカーボンニュートラルへの取り組みなど、環境・エネルギー分野への貢献がいっそう求められている。脱炭素社会や水素社会の実現に向けて、アルカリ水電解水素製造やCO2関連技術といった当社の強みを生かした上で、社外とのコネクトを今まで以上に強く推進し、挑戦し、新たな社会価値創造に向けて邁進していこう。また、レジリエントな住まいや健康・安全なくらし、人の命を守るという視点でサステナビリティを追求していこう。

 次に、DX(デジタルトランスフォーメーション)のさらなる進化・加速だ。新型コロナの影響で世界ではデジタル化が急速に進んでいる。当社グループの強みである多様性を生かしてビジネスモデルを変革し、価値を創造していくためにDXの推進は必須だ。そのため、東京・田町に新しい実験室としてデジタル共創ラボ「CoCo-CAFE」を開設した。デジタル人財を集結させ、研究・開発、生産、販売、ビジネスモデル構築など各機能におけるDXの加速を目指す。今後はグループ横断組織の設置や2030年を見据えたDXビジョンを制定していく。

 最後に、「働きがい改革」の実行だ。生き生きと働ける環境づくりを通じて、皆さん一人ひとりが〝We want to work together(みんなと一緒に働きたい)〟という想いをもって、事業を通じた社会貢献の担い手であることを実感できる会社をつくっていく。実現に向けて制度やルール改革にも取り組んでいくので、皆さんも自らの目標を考え、達成に必要な専門性を身につけることを心がけてほしい。

 2021年のキーワードは〝変革〟だ。環境変化への危機感をもつと同時に、変化はビジネスのチャンス、業務改善のチャンスと捉えられる。これまでの延長ではなく、当社グループの良さを大切にしつつも、一人ひとりの成長と今後のグループの価値向上に向けて、大胆に挑戦し〝変革〟していこう。

《化学企業トップ年頭所感》住友化学 岩田圭一社長

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2021年1月6日

 昨年は、新型コロナウイルス感染症により、政治や経済、医療体制など広範囲に影響を受けた。今年は、2022年度からの次期中期経営計画を策定するが、アフターコロナの社会経済情勢を見据え、将来も社会から信頼される企業として存在し続けるためにどう進んでいくのかを考える年となる。まさに企業の真の力が問われる1年になるが、企業の力のベースとなる組織力を磨き上げていくために、次の3点の実践をお願いしたい。

 まず、自らイノベーションを起こすことだ。課題を見つめ直し、あるべき姿と現状の差を縮めようと苦闘する中からイノベーションは生まれる。一人ひとりが「自分ごと」として、変化を続ける環境において自分が担当する業務はどうあるべきかを考え、仕事の進め方の変革を含めたイノベーションの担い手となってほしい。

 次に、スピードを意識することだ。今は時代が大きく変化する過渡期にある。時代の変化を常に実感し、その変化に負けないスピードで行動することを意識してほしい。そのためにも、変化の底流にある方向性を押さえ、素早く着手し、プロセスを進める過程で機敏かつ柔軟に軌道修正する能力を身に付けてほしい。

 最後に、多様性を高めることだ。組織の力を最大化する上で重要なことは現場力の一層の向上だ。変化していく社会では、自分の価値観や従来のやり方に固執していては決して飛躍や成功は望めない。また、コロナ禍で対面のコミュニケーションが制限される中では、相手の気持ちに思いを致すことが重要になる。国籍や性別をはじめ各々がもつバックグラウンドにかかわらず、全ての社員がお互いを尊重し、多様性がしっかり根付いた組織を目指してほしい。

 新型コロナは様々な変化をもたらした。中でも、「デジタル革新の社会実装の加速」と「サステナビリティ」の2つの長期的なトレンドが、今年はさらに大きなうねりとなり、当社グループの事業にも大きな影響を与えるだろう。社会基盤を支えるとともに、革新的な素材や技術を開発し新たな価値を創造する「イノベーションの先兵」として、化学産業の役割はますます拡大する。化学産業に従事する誇りと責任感をもって、引き続き、社会価値と経済価値を共に創出していくことを目指し、諸課題に取り組んでいこう。

《化学企業トップ年頭所感》三菱ケミカルホールディングス 越智仁社長

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2021年1月6日

 昨年は、新型コロナウイルス感染症によりリーマンショックを上回るダメージが生じた。世界経済の本格的な回復は2022~2023年まで遅れるという見方も強い。コロナ感染症の影響で最も変化が実感されたのは「働き方」だ。急速にテレワークの比率が高まり、製造やR&Dにおいても自動化やリモート化が進み出している。コミュニケーションや仕事自体のあり方に本質的な変化が生じている以上、私たち一人ひとりが満足いく仕事をできているか、充実感を得るためにはどうしたらいいかが、いっそう深く問われていると強く感じている。

 KAITEKI健康経営は、個人の健康と働き方改革を車の両輪とする取り組みだ。コロナ感染症は健康経営の意義をあらためて際立たせており、変化を奇貨として、さらに推進をしていく。

 三菱ケミカルでは4月から新人事制度が始まる。従来の制度を、独自の「ジョブ型」制度に変革していくが、欧米型の制度とは一線を画し、従業員の向上心と仕事への満足度を高めていくことを主眼としている。健康経営と相まって、一人ひとりの多様性を生かし、活力ある職場をつくりあげてほしい。

 世界を見ると、環境問題や社会問題は深刻さを増し続けている。地球温暖化、食糧・水、社会保障の持続可能性、経済的格差、文化的断絶といった難問が山積しており、早急な対処が求められている。一方で、デジタル、通信、バイオ、医療分野など、科学技術の急速な進化が、大きな変革を呼び起こしている。

 当社は、2030年にあるべき姿を見定めた中長期的な経営基本戦略「KAITEKI Vision30(KV30)」を策定した。KV30を基盤として、新たな中期経営計画(2021~2025年度)の策定を進めているが、最初の2年間はコロナ感染症がもたらした事象に即応しつつ、集中的なダメージからの回復と経営基盤の強化、事業成長施策の実行に重点を置く考えだ。

 私たちを取り巻く環境は、常に先行き不透明なため、当社の企業理念「人、社会、そして地球の心地よさが続いていくことをめざし、Sustainability、Health、Comfortを価値基準として、グローバルにイノベーション力を結集し、ソリューションを提供していくこと」を達成するという強固な意思が、より重要になる。4月からジョンマーク・ギルソン新社長の下で、三菱ケミカルホールディングスグループがますます成長していくことを期待している。

《化学企業トップ年頭所感》信越化学工業 金川千尋会長

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2021年1月6日

 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が続く中、皆さんには国内および海外の事業所で工場の安全かつ安定した操業に力を注いでいただき、感謝申し上げます。

 さて、新型感染症は世界経済にも深刻な影響を及ぼしていますが、皆さんの献身的な取り組みとご努力により、当社では底堅い業績を維持してまいりました。その結果、当社はお客様や投資家をはじめ社会の多くの方々から大きな信頼と期待を寄せていただいております。これにお応えするためにも、本年は昨年10月に公表した業績目標を何としてでも達成することが重要です。現在の経済情勢を考えますと、決して容易なことではありません。しかしながら私たちは、逆風の中にありましても不屈の精神により、問題を乗り越えながら成長してきた実績があります。今こそ私たちの底力を発揮し、力強く前進してまいりましょう。

 そのためには、まず既存事業をさらに強くすること、そして新しいお客様の開拓、新しい用途の開発、新しい製品の事業化が欠かせません。同時に、日々の仕事の中では、安全で安定した操業と徹底した品質の管理に全力を注ぐことが重要です。安全と品質こそが私たちの競争力の源泉です。この点を常に意識し、毎日の仕事の着実な積み重ねを大切にしてください。

 また、私たちが引き続き事業を発展させていくためには、地球温暖化対策をはじめとした地球環境への配慮や貢献が欠かせません。すでに、当社では環境に貢献する数多くの製品や技術を世界へと送り出しています。こうした実績の上に立って、皆さんは自信をもって地球環境への負荷を減らす製品の開発、販売ならびに生産過程での環境負荷の低減に一層力を発揮してください。お客様や社会が求める製品の安定供給、独創的な新製品の開発や新サービスの提供を通じて、2021年を信越化学グループの飛躍の年といたしましょう。

《化学企業トップ年頭所感》中外製薬 小坂達朗社長

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2020年1月21日

 昨年、当社は3カ年の中期経営計画「IBI 21」を発表し、初年度として期待を上回る成果を挙げることができた。

 新製品では、抗がん剤「テセントリク」市場浸透と適応拡大が順調に進展し、自社創製の血友病A治療薬「ヘムライブラ」がグローバルで大きく成長した。

 がんの個別化医療では、包括的がんゲノムプロファイリング「FoundationOne CDx」、がん種を問わず特定の遺伝子変異を有する固形がんで承認を取得した「ロズリートレク」を発売し、がんゲノム医療への貢献を目指している。

 研究開発では、「ヘムライブラ」に続く成長ドライバーとして期待する、リサイクリング抗体サトラリズマブ(予定適応症:視神経脊髄炎スペクトラム)が日米欧の同時申請を果たし、抗体に続く新規モダリティである中分子医薬品の開発も順調に進捗した。将来の成長を支える基盤整備も進み、新たな中核的研究拠点である中外ライフサイエンスパーク横浜が着工している。

 まさに、新たに掲げた「患者中心の高度で持続可能な医療を実現する、ヘルスケア産業のトップイノベーターになる」という目標に向かい、着実に歩みを進めた1年だった。今年も独自のサイエンス力・技術力に基づくイノベーションを通じた医療への貢献を目指し、一層取り組みを進めていく。

 サトラリズマブを世界の患者にいち早く届けるため、ロシュと共に引き続き努めるとともに、「テセントリク」の複数の適応拡大をはじめとする承認申請を着実に実行していく。次世代のイノベー ションとしては、新たな抗体エンジニアリング技術を用いたスイッチ抗体の臨床試験が今年スタートの予定で、中分子医薬品についても、「IBI 21」の期間中に臨床開発に着手することを目指し、引き続き進めていく。

 また、製薬産業を取り巻く激しい環境変化に対応するため、必要な改革も推進する。環境変化に対応し、持続的な成長を実現するためには、中外製薬グループ全体の機能をさらに強化し、スピードと機動力を高める必要がある。

 特に重視するのがデジタルへの対応であり、デジタル・ITを活用した一元的な戦略の確立・実行に向け、昨年新設したデジタル・IT統轄部門の下、AIを活用した革新的な新薬創出と、バリューチェーン効率化をスピーディーかつ強力に推し進めていく。

 世界の医療と人々の健康に貢献するため、全社員が一丸となり、新しい技術や方法を積極的に取り入れながら、今年もイノベーション創出に果敢に挑戦していく。

《化学企業トップ年頭所感》ランクセス 張谷廷河社長

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2020年1月20日

 ランクセスグループとしては、これまで築いてきた強固な財務基盤により、注力事業への投資を進めるとともに、明確なポジショニングによる、安定した事業を推進していく年となる。日本でも3つの事業領域への注力を継続し、持続可能な発展への取り組みと、デジタル化を積極的に進めていく。

 注力分野の1つは、環境にやさしい「新しいモビリティ」への取り組みだ。現在、自動車産業は、低燃費、二酸化炭素排出量削減への取り組み、安全性、設計の自由度の向上など、様々な課題解決に取り組んでいる。弊社はそれらの新しいモビリティ分野の開発パートナーとして、軽量化や電気自動車向けの新しい製品ソリューションの提案を行っていく。

 特に、熱可塑性コンポジットシートや高性能プラスチック製品で、より高い難燃性、耐久性、優れた加工性といった付加価値の高い製品を提供し、新しいモビリティの分野に貢献していく。

 また、特殊化学品の分野では、添加剤と潤滑油事業の製品ポートフォリオの拡充により、建築、自動車、機械、電子・電気機器などの幅広い製造業への採用が広がっている。近年、車の軽量化や電子材料への環境規制などから、金属代替材料として樹脂化が進んでいる。

 ランクセスは難燃剤への需要増加に応える、幅広い製品ソリューションを提供している。また、さまざまな産業への難燃剤への用途拡大に応える、新しい材料の開発にも積極的に取り組んでいる。さらに、建築材料の分野では、「住み続けられるまちづくり」として持続可能な都市の発展を実現する製品を提供していく。

 特にランクセスの提供する高品質な特殊黒色顔料は、従来の黒色顔料と比べ、屋根瓦の熱吸収率を抑えることができ、現在、都市圏で問題となっているヒートアイランド現象の軽減にも貢献できると期待している。また、ポリマー系難燃剤など、建築材料である断熱材などへの応用を通して、建築分野での提案を進めていく。

 ランクセスは今年も引き続きグローバル企業として、持続可能な社会の発展のために持続可能な開発目標(SDGs)を実現すべく、気候・環境の保護、人々の生活向上など国内外の様々な分野での取り組みを推進していく。さらに、弊社組織におけるダイバーシティ(多様性)の推進、従業員の働きやすい環境と制度の充実化を積極的に進めていきたいと思う。