産総研 血管をもつ生きた3次元組織の作製技術を開発

,

2020年5月13日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、細胞分子工学研究部門ステムセルバイオテクノロジー研究グループが、実際の臓器と似た構造の血管をもつ組織を人工的に作る技術を開発したと発表した。

今回用いた組織培養デバイスと作製した血管を持つ人工組織
今回用いた組織培養デバイスと作製した血管を持つ人工組織

 細胞と組織ゲルを組み合わせてヒトの臓器や腫瘍を模倣した人工組織「3次元組織」は、医薬品開発や再生医療、がん研究といった分野で、医薬品の検査、失った臓器・組織の置き換え、抗がん剤の試験などへの応用が期待されている。

 しかし、3次元組織に動脈のように送液できる主血管や、そこから分岐する毛細血管を作ることは困難であり、失った臓器・組織の治療のために効率よく酸素と栄養を供給したり、医薬品の試験のために組織内部に薬剤を流し込んだりすることは難しかった。

 今回開発した技術は、組織培養デバイスの中で、組織や血管の元になる細胞(臓器の機能を担う実質細胞、血管の元になる血管内皮細胞、血管の形成を助ける間葉系幹細胞)とコラーゲン(組織ゲル)を混ぜ合わせて培養することにより、主血管と毛細血管をもつ3次元組織を作製する。この組織は、培養デバイスで培養液を流すことで、1週間程度維持することができた。

 血管に培養液を流すことで、酸素や栄養、薬剤の供給が可能となり、材料とする細胞やデバイスの形・大きさを変えることで、様々な組織(臓器や腫瘍)へ応用することができ、創薬や再生医療といった幅広い分野への貢献が期待される。

 今後は、より大きな組織(臓器)の作製や、がんモデルでの抗がん剤の評価、iPs細胞由来の細胞を用いた組織の大量生産・高機能化、他の細胞を用いての脳や膵臓、小腸の作製を行う。また、培養デバイスにも改良を加え、安定的な長期間の組織培養や、様々な形の三次元組織の構築を目指す考えだ。

 なお、今回の開発は、日本学術振興会の助成金と、日本医療研究開発機構の委託事業「防御シールドを形成し、免疫監視を回避するがん微小環境の理解と医療シーズへの展開(2018~20年度)」による支援を受けて行った。

千代田化工建設 米LNGプロジェクト最終系列に原料注入を開始

, , ,

2020年5月13日

 千代田化工建設はこのほど、同社の米国グループ会社である千代田インターナショナルが米・McDermott社とジョイントベンチャーを設立して遂行中の、米国ルイジアナ州Cameron LNGプロジェクトについて、第3系列に原料ガスの注入を開始したと発表した。

 2014年の契約締結以来、同ジョイントベンチャーは同プロジェクトの設計・調達・建設業務に従事してきた。すでに第1系列は昨年8月、第2系列は今年2月より商業運転を開始。第3系列が完成するとLNGの年間輸出量は1200万t超となり、米国メキシコ湾岸地域でも最大級のLNG生産設備になる。

 同ジョイントベンチャーは引き続き、同プロジェクトの完工に向け、安全かつ確実な遂行に注力していく。

 

東レ X線シンチレータパネルの輝度を向上、患者の負担軽減

,

2020年5月13日

 東レは、蛍光体を用いた波長変換技術を活用し、輝度を従来比約30%向上させたX線シンチレータパネルを開発した。同パネルを肺疾患などの診断用医療用X線撮影装置のX線検出器に適用することで、より明瞭な患部の観察や被曝量の低減が可能となる。今年度初めから販売を開始する予定。

 医療用X線撮影装置のX線検出器は、一般的にX線を可視光線に変換する「シンチレータパネル」と可視光線をデジタル画像に変換する「フォトセンサーパネル」により構成される。

 シンチレータパネルはX線を吸収して可視光線を放射する厚さ数百ミクロンの蛍光体層からなっており、蛍光体としてCsI(ヨウ化セシウム)やGOS(酸硫化ガドリニウム)が用いられる。CsIは光透過性がよく輝度も高いが、長時間の蒸着工程や防湿シーリングが必要なため、高コストである。一方、GOSは基材に蛍光体を塗布するだけで製造が可能なため製造コストが低く、X線に対して高安定性・高耐久性であるが、輝度が低いという課題があった。

 同社は、ディスプレイ材料開発で長年培ってきた蛍光体による波長変換技術を活用し、GOSの輝度を大きく向上させる技術の実用化に成功。GOSの発光スペクトルのうち、フォトセンサーパネルの感度が低い短波長領域(350~400㎚付近)の光を、感度が高い波長領域(550㎚付近)の光に変換する第2の蛍光体をGOSに加える独自の配合技術を開発。この技術による蛍光体層「GOS-α」は、GOSの低コスト・高安定性・高耐久性のまま、輝度を約30%向上することを可能とした。

 同社はGOSを用いたX線シンチレータパネルの量産を2016年度より開始し、医療用の一般X線撮影用途で採用されている。今回開発した「波長変換型X線シンチレータパネル」を用い、さらに同社独自の高鮮鋭度化技術である「セル方式シンチレータ」と組み合わせることで採用範囲を拡大し、X線シンチレータパネル事業のさらなる拡大を目指す考えだ。

 同社の企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を実現するために、社会を本質的に変える革新素材の創出に取り組み続ける方針。

ダイセル 新たな植物由来プラスチックをベンチャーと共同開発へ

, , ,

2020年5月13日

 ダイセルはこのほど、事業革新パートナーズ(BIPC:神奈川県川崎市)と、新たな植物由来プラスチックの共同開発を開始したと発表した。

 ダイセルは、植物由来セルロースを原料とする「酢酸セルロース」などのセルロース由来バイオプラスチックを長きにわたり製造。酢酸セルロースはグローバルに展開しており、繊維や液晶保護用などのフィルム、化粧品などの原料として利用されている。

 一方、BIPCは、膨大な資源量がありながら活用例の非常に少ない「ヘミセルロース」を原料とするバイオプラの開発に、世界で初めて成功したベンチャー企業。同社はこのバイオプラを「HEMIX」として2019年から販売しており、優れた海洋生分解性や流動性を持つ素材として、独自の化学合成技術と様々なプラスチック材料との混合技術を組み合わせ、新たな材料開発を積極的に進めている。

 セルロース由来バイオプラとヘミセルロース由来バイオプラは、いずれも植物由来で、海洋を含めた生分解性を持つなど環境に負荷を与えない自然回帰型のプラスチック。

 ダイセルとBIPCは、両社の様々な知見や技術、ネットワークを活用して互いの植物由来プラを組み合わせ、植物本来の多様な機能や特徴を引き出した新たなプラスチックの開発を目指している。

 現在は、樹木の特徴である強靭性を最大限に発揮しながらも、成形性や光学特性を兼ね備えた海洋生分解性プラスチックの開発を推進中だ。今後は、「100%植物由来」の新素材開発に挑戦し、ひいては地球環境問題の解決への貢献を目指していく考えだ。

 

東ソーの3月期 市況と景気減速の影響で減収減益

,

2020年5月13日

 東ソーは12日、2020年3月期(2019年度)の連結業績を発表した。売上高は前年度比9%減の7861億円、営業利益は23%減の817億円、経常利益は24%減の860億円、純利益は29%減の556億円の減収減益となった。ナフサなどの原燃料価格や、海外製品市況の下落による販売価格の下落、景気減速に伴う販売数量の減少により減収に。また、販売価格の下落が原燃料価格の下落の影響を上回ったことなどにより減益となった。

 セグメント別に見ると、石油化学事業は、売上高は14%減の1591億円、営業利益は23%減の103億円。景気減速に伴う需要減、原燃料価格や海外製品市況の下落により製品価格が下落した中、ポリエチレン(PE)樹脂は、太陽電池封止膜用途で輸出が増加した。クロロプレンゴムは、アジア向けを中心に輸出が減少した。

 クロル・アルカリ事業は、売上高は12%減の2974億円、営業利益は39%減の282億円。需要減による出荷減と、海外市況を反映した製品価格の下落が響いた。機能商品事業は、売上高は6%減の1850億円、営業利益は21%減の279億円。需要減退による販売数量の減少が主な要因。

 エンジニアリング事業は、売上高は3%増の1015億円、営業利益は53%増の127億円。水処理事業での電子産業分野の大型プロジェクトの進捗に加え、各分野のメンテナンスや設備改造などのソリューションサービスの好調な推移が寄与した。その他事業は、商社や事業会社の売上減少のため、売上高は2%減の430億円、営業利益は6%減の25億円となった。

 今年度の業績予想については、新型コロナウイルスの影響が日々深刻化する中、現時点では不確定要素が多く合理的なの算出が困難なことから未定とし、今後、合理的に予想可能となった時点で速やかに公表される。

 

三井化学 〝心悸〟3Dマスク目指し名大などと共同開発

, , , ,

2020年5月13日

 三井化学はこのほど、「再使用が可能でありながら、ウイルス除去機能を持つ」特長を備えた新規立体型マスクの共同開発を開始した。

新規3D マスク 現行試作品
新規3D マスク 現行試作品

 名古屋大学大学院工学研究科の堀克敏教授、同大学発ベンチャーのフレンドマイクローブとの3者連携により、製品開発を行っていく。 

 新規マスクは、再使用する「マスク本体」と使い捨ての「フィルター」からなり、三井化学は、ウイルス除去効果のある不織布製使い捨てフィルターの素材を提供する。

 マスク本体は、堀教授が3Dプリンターで作成。今後は抗ウイルス効果を示す酵素製剤をはじめとする各種薬剤の探索も進め、マスク本体に適用することで、ウイルス除去効果に優れ、快適性とデザイン性を併せ持つ製品を想定している。三井化学によれば、上市時期は今秋以降とのこと。堀教授主導の下、まずは2、3カ月以内にモニター販売を開始する予定だ。

 同社は今回の取り組みを通じ、大学・大学発ベンチャー・材料メーカーが協力することで社会貢献となるソリューションを提案し、「次代を創る〝心悸〟製品開発」を目指していく。「心悸=心臓の鼓動」に〝心がはずむ新規製品〟の思いを込めた。

三菱ケミカル コロナ対策のガウンとフェイスシールドを供給

, , ,

2020年5月13日

 三菱ケミカルは12日、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う医療現場での深刻な物資不足に対する支援を目的に、同社グループ保有の生産技術やノウハウを応用することでプラスチックガウンおよびフェイスシールドを開発し、子会社のジェイフィルムにて供給する体制を整えたと発表した。

本ガウンの装着イメージ
本ガウンの装着イメージ

 ガウンは、厚生労働省の指導の下、ポリエチレン製の雨合羽を改良して開発したもので、袖口に親指を通す穴をあけ袖めくれを防止する機能を付与したほか、使用後にガウンを脱ぐ際の接触感染リスクを低減するため、背面にミシン目加工を施し容易に脱ぐことができる仕様としている。加えて、1枚当たり100グラム以下と使用後の廃棄物削減にも配慮した。

 また、フェイスシールドは、食品包装トレーに用いるポリエステルシート製造技術と、化粧品ケース加工で培った折り曲げ罫線付与技術を応用したもので、透明性が高く、曇り防止機能を付与した製品。使用者自身で容易に切り抜き・組み立てでき、輪ゴムにより簡単にサイズ調整が可能だ。

本フェイスシールドの装着イメージ
本フェイスシールドの装着イメージ

 なお、月間生産能力はプラスチックガウンが2万枚、フェイスシールドが40万枚。5月初旬より一部の医療機関への寄付を行い、中旬からは厚労省をはじめ、一般の医療機関へも供給する。

 一方、同社グループでは、新型コロナウイルス感染拡大防止に貢献する製品として、透明度が高く受付や窓口・レジなどで飛沫拡散防止に活用できるアクリル樹脂板「アクリライト」や、液体バリア性を保ちつつ水蒸気を透過するため高機能化学防護服の外装に使用される透湿性フィルム「KTF」などの製品も保有。これらの製品を必要とするユーザーに迅速かつ確実に提供できるよう、十分な供給体制を整えていく。

 同社は今後も、政府の策定する行動計画に基づき必要な対策を実行するとともに、政府や業界団体をはじめとする関係者と連携を図りながら、新型コロナウイルスの感染拡大防止に努めていく考えだ。

旭化成の3月期 マテリアル減益で営業益15%減

, ,

2020年5月13日

今期見通し未定、コロナ終息後の経済回復に対応

 旭化成は12日、2020年3月期の連結業績を発表した。売上高は前年度比1%減の2兆1516億円、営業利益15%減の1773億円、経常利益16%減の1840億円、純利益30%減の1039億円となった。

 同日のウェブ会見において柴田豊取締役兼副社長執行役員は、「不動産部門が堅調に推移した住宅領域と、クリティカルケアが伸長したヘルスケア領域はそれぞれ増収増益となった。ただ、マテリアル領域は

コンテンツの残りを閲覧するにはログインが必要です。 お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

日本触媒 役員人事(6月19日)

,

2020年5月12日

[日本触媒・役員人事](6月19日)▽代表取締役専務執行役員、吸水性樹脂事業部長、事業部門管掌、事業企画開発部担当山田浩一郎▽顧問山本雅雄▽取締役常務執行役員、経営企画室長野田和宏▽同同役員、事務部門管掌、IT統括室担当、ERP推進プロジェクト担当、総務人事本部長高木邦明▽取締役(社外)、花水木法律事務所共同経営櫻井美幸▽退任(取締役専務執行役員、事業創出部門管掌、健康・医療事業開発室担当、マロネート事業室担当、化粧品事業室担当)、顧問髙橋洋次郎▽同(同同役員、経営企画室長)、常務執行役員、姫路製造所長松本行弘▽同(取締役(社外))荒尾幸三▽監査役(社外)、勝部・髙橋法律事務所代表髙橋司▽同(監査役(社外))小松陽一郎▽常務執行役員、財務本部長小林髙史▽生産本部長、執行役員荒川和清▽同役員、ベーシックマテリアルズ事業部長肱黒修樹▽同役員、川崎製造所長岡義久▽同役員、事業創出部門管掌補佐、健康・医療事業開発室担当、マロネート事業室担当、化粧品事業室担当、シラス,Inc.社長金井田健太▽同役員、インダストリアル&ハウスホールド事業部長佐久間和宏▽同役員、事業創出本部長住田康隆▽退任(常務執行役員、事業創出本部担当)、顧問長砂欣也▽同(同役員、川崎製造所長)、同亀井輝雄▽同(同役員、インダストリアル&ハウスホールド事業部担当)、同長谷部連。