AGC 米バイオ医薬品原薬工場を買収、生産能力が向上

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2020年6月15日

 AGCはこのほど、アストラゼネカ社が保有するバイオ医薬品原薬製造工場(米コロラド州ボルダー)を買収したと発表した。今回の買収により、AGCのバイオ医薬品生産能力は大幅に増強され、商用段階に最適なラインが2つ加わる。なお同工場は停止した状態で譲り受け、2021年4月からの本格的な受託製造開始を目指す。 

 CDMO事業子会社のAGCバイオロジクス社(米国)は、動物細胞と微生物を生産に使い、プロセス開発、スケールアップ、治験段階から商用医薬品原薬の製造に至るまで、様々な高付加価値サービスを提供。動物細胞を用いた製造設備では、これまで、多品種生産や、生産量のフレキシブルな変更に適したシングルユース製造ラインを中心に、治験初期から商用段階までの原薬製造を受託してきた。

 今回買収するコロラド工場は、総容量2万ℓの動物細胞用ステンレスバイオリアクター2基を備え、より大規模な商用案件に適した工場。現プラントには同規模のバイオリアクター4基の追加設置が可能で、敷地に余裕もあり、将来的な拡張を見込んでいる。

 今後も新規受託案件の増加や、既存受託案件の治験から商用段階への移行が数多く見込まれることから、日米欧で進めている設備増強に加え、同工場の買収を決定した。今までよりも幅広い商用案件や、新型コロナウイルス治療薬としての既存薬展開に伴う需要への対応を可能とし、製薬会社の活発なニーズに応えていく。

 AGCグループは、バイオ医薬品CDMO事業を含むライフサイエンス事業を戦略事業の1つと位置づけ、2025年に1000億円以上の売上規模を目指している。買収と合わせ、日米欧の各拠点で積極的な設備投資を実施しており、各地域の顧客にグローバルで統一された高水準の品質・サービスを継続して提供できるよう務めている。

 AGCは、各拠点のシナジーを最大限発揮することで技術力を向上させ、製薬会社、患者、そして社会に貢献していく考えだ。

コロラド工場外観
コロラド工場外観

ロシュ コロナ肺炎患者対象にREMDACTA試験を開始

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2020年6月9日

 ロシュはこのほど、ギリアド・サイエンシズ社と共同で多施設共同無作為化二重盲検国際共同第Ⅲ相臨床試験(REMDACTA試験)を開始すると発表した。

 同試験では、重症新型コロナウイルス感染症肺炎による入院患者を対象に「Actemra/RoActemra」と抗ウイルス治験薬「レムデシビル」との併用療法の安全性と有効性を、プラセボとレムデシビルとの併用と比較して評価する。同試験は、米国、カナダおよび欧州を含む約450例を目標に、今月から患者登録を開始する予定だ。

 REMDACTA試験に先立ち、同社が実施する、重症コロナ感染症肺炎による成人入院患者を対象とした、「Actemra/RoActemra」静脈内投与と標準的な医療措置の併用の安全性・有効性をプラセボと標準的な医療措置の併用と比較して評価する、無作為化二重盲検プラセボ対照国際共同第Ⅲ相臨床試験(COVACTA試験)では、最初の患者は4月3日に登録された、合計で約450例がCOVACTA試験に登録される予定。症例数を当初の目標であった330例から増加するものの、登録期間の延長を最小限に抑えつつ、より信頼性の高いデータを得ることが可能となる。

 同社では、早ければ今夏にもCOVACTA試験のデータを共有できるように取り組んでいる。さらに、COVACTA試験のプロトコルでは、現在治験中の抗ウイルス薬を含め、抗ウイルス薬による治療を受けている患者の登録も可能であり、REMDACTA試験で得られるデータはCOVACTA試験のデータを補完するよう設計されている。

富士フイルム 米メルク社と提携、リポソーム製剤の臨床開発を加速

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2020年6月5日

 富士フイルムはこのほど、薬剤を患部に届けるドラッグ・デリバリー・システム(DDS)技術を応用したリポソーム製剤の臨床開発を加速させるため米メルク社と提携すると発表した。

 富士フイルムが開発中のリポソーム製剤「FF‐10832」と米メルク社の抗PD‐1抗体「キイトルーダ」(免疫チェックポイント阻害剤)の併用療法を評価する臨床試験の実施に関する契約を締結した。同契約に基づき、進行性固形がんを対象に、併用療法を評価する臨床試験を今年度中に米国で開始する計画。

 リポソーム製剤は、細胞膜や生体膜の構成成分である有機物のリン脂質などをカプセル状にした微粒子(リポソーム)の中に薬剤を内包した製剤で、有効成分を効率的に患部に届け薬効を高めることができると期待されている。

 「FF‐10832」は、膵臓がんなどを適応症とする抗がん剤「ゲムシタビン」を内包したもので、現在、米国で進行性固形がんを対象に臨床第Ⅰ相試験を実施しているリポソーム製剤。すでに実施したマウス実験では、免疫チェックポイント阻害剤との併用投与で大幅に、がん細胞などを殺傷するCD8陽性キラーT細胞ががん組織内で増加し、単剤投与よりも生存期間が延びることが確認されている。

 今回、富士フイルムは、「FF‐10832」と「キイトルーダ」との併用による臨床効果を確認するため、米メルク社と提携。両剤の併用療法を評価する臨床試験を今年度中に米国で開始し、忍容性や薬物の体内動態、初期の有効性を確認していく。

 富士フイルムは、独自の技術を生かして、アンメットメディカルニーズに応える新薬開発に取り組むとともに、新規のDDS技術を開発することで、新たな価値を創出し、社会課題の解決に貢献していく考えだ。

 

AGC 製造受託のコロナ治療薬候補、米で臨床試験を進行

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2020年6月3日

 AGCはこのほど、CDMO事業子会社である米AGCバイオロジックス社が原薬製造を受託している、米CytoDyn社の開発した新型コロナウイルス向け治療薬候補「レロンリマブ」について、FDAが第Ⅱb/Ⅲ相臨床試験実施を承認したと発表した。

 CytoDyn社の開発した「レロンリマブ」は、HIVや乳癌の患者向けに開発されている治療薬。同治療薬を新型コロナウイルスの患者に投与することで、サイトカインストーム(血中サイトカインの異常上昇が起こり、多臓器不全にまで進行する状態)を抑制する効果などがあり得ると考えられている。

 すでに米国の新型コロナウイルス重症患者に実際に投与され、効果が確認されたことから、今回の臨床試験進行の承認が行われた。

 AGCグループは、製薬会社の新型コロナウイルスワクチンや治療薬の製造を担い、新型コロナウイルスの感染拡大の抑止や流行の終息に貢献していく。

旭化成ファーマ 排尿障害改善剤が中国で新薬の承認取得

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2020年6月3日

  旭化成ファーマは2日、排尿障害改善剤「フリバス」(中国名:「福列」、一般名:ナフトピジル)が、先月20日に中国での新薬承認を取得したと発表した。同剤は、前立腺肥大症に伴う排尿障害治療専門のα1受容体遮断薬で、日本では1999年2月から販売を行っている。

 前立腺肥大症は、膀胱の下にある尿道を取り囲む男性特有の臓器である前立腺が肥大する疾患。男性高齢者に多く発症し、尿道が圧迫される際に現れる、尿が出にくい、夜間頻尿などの不快な症状が「前立腺肥大症に伴う排尿障害」と呼ばれている。

 近年、中国では高齢化の進展に伴い前立腺肥大症による排尿障害患者数が増加しており、患者のQOL(生活の質)向上の観点から、排尿障害治療の重要性が高まっている。

 同社は、同剤の販売を通じ、中国での排尿障害の治療に新たな選択肢を提供していく。

ヤンセンファーマ 潰瘍性大腸炎向け抗体製剤が適応追加承認を取得

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2020年4月8日

 ヤンセンファーマはこのほど、モノクローナル抗体製剤「ステラーラ」(一般名:ウステキヌマブ〈遺伝子組み換え〉)について、点滴静注製剤で「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の寛解導入療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」および皮下注製剤で「中等症から重症の潰瘍性大腸炎の維持療法(既存治療で効果不十分な場合に限る)」を効能または効果として、製造販売承認事項一部変更承認を取得した。

 同剤は、炎症性腸疾患に深くかかわるインターロイキン(12および23)を阻害することにより消化管の炎症を抑制。今回の承認は、国際共同試験である第Ⅲ相試験のデータに基づくもの。この試験には、中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の成人患者を対象とした、同剤の有効性と安全性を評価する2つの国際共同試験(寛解導入試験および寛解維持試験)が含まれ、日本もこれらの試験に参加した。

 第Ⅲ相寛解導入試験の結果、同剤の単回静脈内投与が、従来の薬物療法や既存の生物学的製剤で十分な効果を得られなかった、または忍容性を示さなかった中等症から重症の活動性潰瘍性大腸炎の成人患者に対し、主要評価項目である8週目での臨床的寛解とクリニカルレスポンスの導入をもたらすことを示した。

 また、第Ⅲ相寛解維持試験の結果、同剤の単回静脈内投与によりクリニカルレスポンスを達成した患者に対し、同剤の8週間隔または12週間隔の皮下投与により、主要評価項目である44週時点(単回静脈内投与後52週)での臨床的寛解を達成したことを示した。

 ヤンセンは今後も、未だ満たされない医療ニーズに応えることで、患者のQOL向上に尽力していく考えだ。

 

中外製薬 アクテムラのコロナ対象臨床試験、米社が承認取得

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2020年3月25日

 中外製薬は24日、同社が創製したヒト化抗ヒトIL‐6レセプターモノクローナル抗体「アクテムラ」(トシリズマブ〈遺伝子組み換え〉)について、米国ジェネンテック社が重症の新型コロナウイルス肺炎による入院患者を対象とした臨床試験の実施につき米国食品医薬品局(FDA)の承認を取得したと発表した。

 

住友化学 新規の園芸作物用殺菌剤、日本で販売開始

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2020年3月17日

 住友化学は16日、有効成分インピルフルキサム(インディフリン)を含有する新規殺菌剤「カナメ フロアブル」の販売を同日に、日本で開始すると発表した。

 インピルフルキサムは、同社が、B2020(2020年までに主要市場向けの登録申請を完了するパイプライン)の一剤として独自に発明した新たな有効成分。病原菌のエネルギー生産の過程を阻害する作用を持つコハク酸脱水素酵素阻害剤(SDHI)と呼ばれる殺菌剤に属す。

 優れた殺菌作用や浸達性・浸透移行性を持つことから、これまでの社内外での評価を通じて幅広い病害に高い効果を示しており、大豆や麦類など世界各国の主要作物の重要病害に対する新たな防除手段として期待されている。

 日本以外では、これまでに、アルゼンチン、米国、カナダ、ブラジル、およびEUで登録申請を実施しており、今年以降順次、インピルフルキサムを含有する製品をグローバルに販売することを目指している。

 今回、主に果樹や野菜を対象とする「カナメ フロアブル」の日本での販売は、インピルフルキサムを含有する製品として世界で初めてとなる。りんごや梨の黒星病、ねぎのさび病や白絹病をはじめとする病害の防除剤として、住友化学と関係会社である協友アグリが販売する。

 近年の農業分野は、世界的には人口増加に伴う食料増産や農薬に対する抵抗性、日本では農業従事者の高齢化、作付面積の減少をはじめとする様々な課題に直面している。住友化学は、既存剤に加えて、インピルフルキサムを含めた新たなパイプラインの開発によって製品ラインアップを拡充し、農業生産者のニーズに応じたソリューションの提供を一層推進していく考えだ。

田辺三菱 加・子会社が新型コロナのワクチンの開発に着手

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2020年3月16日

  田辺三菱製薬はこのほど、子会社であるメディカゴ社(カナダ・ケベック市)が、新型コロナウイルス感染症(COVID‐19)に対応したウイルスの植物由来ウイルス様粒子(VLP)の作製に成功したと発表した。

 COVID‐19のVLP作製は、ワクチンを開発するための第一歩であり、メディカゴ社は安全性と有効性に関する非臨床試験を実施している。今回の非臨床試験が順調に進めば、ヒトでの臨床試験を今年8月までに開始するため、当局機関と協議したい意向を示している。

 また、メディカゴ社はSARS‐CoV‐2(COVID‐19の原因ウイルス)に対する抗体に関しても、自らの技術基盤を活用し、同国のラヴァル大学感染症研究センターと協力して研究を行っている。

 なお、この研究は、CIHR(カナダ健康研究所)から一部資金提供を受けている。

 

J&J 新型ウイルスの脅威に対し多角的な取り組みを開始

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2020年2月7日

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)はこのほど、ヤンセンにリソースを結集し、新型コロナウイルス感染症の流行に対する多角的な取り組みを開始すると発表した。その一環として、J&Jはワクチン候補の開発に着手するとともに、他の機関と幅広く連携して抗ウイルス療法のライブラリのスクリーニングを行う。

 新型ウイルスに対して抗ウイルス活性を持つ化合物を特定することが、解決策として有効であると考えられている。J&J執行委員会副議長兼最高科学責任者のポール・ストッフェルズ医学博士は「今回の新たな病原体の流行を受け、世界の潜在的なパンデミックの脅威に確実に対応できるよう、準備や調査、対応に投資することの重要性が一層高まった」と述べている。

 ワクチンプログラムでは、最適なワクチン候補の迅速な生産拡大を可能にするヤンセンの「AdVac」および「PER.C6」テクノロジーを活用。これらは、エボラ治験ワクチンの開発と製造に用いられ、J&Jによるジカウイルス感染症、RSウイルス感染症、HIV感染症に対する予防ワクチン候補の創製でも使用されている。

 このほかの多角的なアプローチとしては、既存の医薬品が使用可能であるかを判断するため、コロナウイルスの病態生理での既知のパスウェイを再調査する取り組みが挙げられる。

 ヤンセンはまた、研究の取り組みを支援するため、HIV感染症治療薬「プレジコビックス」配合錠300箱を上海市公共衛生臨床センターと武漢大学中南病院に、さらに、実験室での薬剤スクリーニング研究用として、中国疾病予防管理センターに50箱を寄付した。

 今回の要請は、同治療薬のプロテアーゼ阻害剤成分ダルナビルを含む、潜在的に有効な30の化合物の調査に関する上海マテリアメディカ研究所および中国科学院の勧告に沿って行われたもの。事例報告によれば、プロテアーゼ阻害剤は過去に、コロナウイルスに伴う重症急性呼吸器症候群(SARS)に対して潜在的に良好な臨床反応を示したことが判明している。

 新型ウイルスは、呼吸器系を攻撃するコロナウイルスと呼ばれるウイルスのグループ分類名に由来。同治療薬は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV‐1)感染症の治療に際し、中国をはじめ多くの国々で承認されている処方薬。新型コロナウイルス感染症の治療に関する同治療薬の安全性と有効性は証明されておらず、さらなる研究を行う必要がある。