旭化成と東北電力ネットワーク 浪江町のNEDO水素実証事業に参加

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2020年9月17日

 旭化成など5社はこのほど、東芝エネルギーシステムズ、東北電力、岩谷産業の3社が、2016年から福島県浪江町で進めてきた、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の水素実証事業について、同事業のさらなる拡充・強化を目的に、旭化成と東北電力ネットワークが新たに参加し、さらに期間を2023年2月末まで延長した委託契約を締結したと発表した。

 NEDOの実証事業は「水素社会構築技術開発事業/水素エネルギーシステム技術開発/再エネ利用水素システムの事業モデル構築と大規模実証に係る技術開発」(2016~2022年度)で、2016~17年度は基礎検討(FSフェーズ)を実施。2017~2020年度まではシステム技術開発(実証フェーズ)を実施している。

 今年3月には「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」が開所。世界最大規模の10MW級水素製造装置を活用し、電力系統への需給バランスの調整に貢献することで、蓄電池を使わずに出力変動の大きい再生可能エネルギーの電力を最大限利用するとともに、クリーンで低コストの水素製造技術の確立を目指してきた。

 今後は5社体制で、実証フェーズを2022年度まで延長し、「Power‐to‐Gas」の実用化に向けた技術の確立を目的として、各種制御システム(水素エネルギー運用システム、電力系統側制御システム、水素需要予測システム)や水電解技術のさらなる高度化を目指していく。

 旭化成は、同事業向けに世界最大規模の10MW級大型アルカリ水電解装置を自社技術で新規設計し納入。今後は、サプライヤーの立場から委託事業者として事業に参画し、主に水電解装置関係の技術開発を担当。同事業で得た成果により、大型水電解装置の早期実用化を目指す。

 5社は、同事業を通じ、再生可能エネルギー由来の水素の利用拡大に向けた技術開発を推進。水素エネルギー運用システムの最適運用を行うことで、2030年以降の持続可能な「Power‐to‐Gas」事業モデルの商用化を見据え、再生可能エネルギーの利用拡大へ向けた取り組みを推進していく考えだ。

水素実証事業の全体像
水素実証事業の全体像

 

 

 

NEDO 海洋生分解性プラの社会実装に向けた技術開発

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2020年9月16日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業に着手すると発表した。同分解性の評価手法や新素材の開発により社会実装・市場拡大を進め、2030年には海洋生分解性プラスチックの国内市場年20万tを目指す。

 プラスチックは汎用される一方でほとんど分解せず、海洋プラごみによる海洋汚染が問題視され、海洋生分解性の新素材開発と海洋生分解性の簡便で信頼性の高い評価法が求められている。

 今回の「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業」は今年度からの5年計画の予定で、今年度予算は3.45億円、採択テーマは次の2件だ。

 ①「海洋生分解性に係る評価手法の確立」(産業技術総合研究所、製品評価技術基盤機構、静岡県環境衛生科学研究所、東京大学、愛媛大学、島津テクノリサーチ)では、海洋生分解性プラスチックの分解メカニズムの解明、海洋生分解性の評価手法の確立、分解途中での水中汚染物質の吸着や樹脂添加剤の溶出など生態系への安全性の評価手法を開発する。

 ②「海洋生分解性プラスチックに関する新技術・新素材の開発」(日清紡ホールディングス)では、新規化学構造をもつ新素材や新規バイオ製造プロセス、複合化技術などの新技術による海洋生分解性プラスチックの開発を行う。

 

ランクセス 上海にアジア太平洋地域用途開発拠点を着工

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2020年9月16日

 ランクセスはこのほど、上海化学工業団地(SCIP)でアジア太平洋地域用途開発センター(AADC)を着工した。

 中国での持続的成長のための重要拠点となる。アジア太平洋地域のビジネスユニット間の相乗効果促進のために、2018年に新たな組織を作り、上海にある本部は中国、日本、韓国、東南アジア諸国を管轄している。昨年AADCを設立し、中国とアジア太平洋地域でのイノベーション能力のさらなる強化計画を発表。今年3月同センターをSCIP内に設置することを発表していた。

 銭明誠アジア太平洋地域社長は7月に行われた起工式で「新規ビジネス創出への地域イノベーションの割合は大きい。製品の新グレードに対する地域ごとのニーズが高まる中、AADCによって能力は一層強化される。世界がまだ新型コロナウイルスと闘っている中での着工は、中国市場そして世界最大の化学品市場の将来に対する強いコミットメントだ」と述べた。

 SCIP運営管理委員会の馬静ディレクターは「ランクセスは当イノベーションセンター初の入居企業で、当工業団地のみならず上海の化学産業の革新と発展のプロセスの重要な出発点だ。SCIPのサービスとビジネス環境が発展し、ランクセスと協働して化学産業のイノベーションセンターのベンチマークとなり、上海の化学産業の変革、レベルアップ、持続可能な開発に貢献していくことを期待する」と述べている。

中外製薬 MR2400人に「LINE WORKS」導入

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2020年9月16日

 中外製薬はこのほど、ワークスモバイルジャパンが提供するビジネス版LINE「LINE WORKS」を導入し、医薬情報担当者(MR)をはじめとした約2400人の社員が、医療関係者との双方向コミュニケーションを行うための新たなツールとして利用を開始した。

 「LINE WORKS」は、コミュニケーションアプリ「LINE」とつながる唯一のビジネスチャット。中外製薬MRの「LINE WORKS」アカウントと医療関係者のLINEがつながることで、医療関係者は普段使い慣れたLINEを活用してMRとコミュニケーションを図ることが可能となる。

 医療関係者が仕事とプライベートのコミュニケーションの切り分けを希望する場合は、LINEと同じ操作感で簡単に利用できる「LINE WORKS」の無料版を活用して、MRと医療関係者の円滑なコミュニケーション環境を整備する。

 中外製薬執行役員デジタル・IT統轄部門長の志済聡子氏は、「当社は、ウィズコロナ時代の新たなコミュニケーション手段となる『LINE WORKS』を活用し、医療関係者のニーズを速やかに把握し、それに応じた最適なソリューションをいち早く提供するとともに、MRの生産性向上に取り組んでいく」とコメント。

 中外製薬とワークスモバイルジャパンは、中外製薬の従来の業務ツールと「LINE WORKS」のチャットを連携する機能の開発に着手し、中外製薬は「LINE WORKS」をフロントエンドアプリとして利用する予定だ。

コミュニケーションツールとして導入した「LINE WORKS」
コミュニケーションツールとして導入した「LINE WORKS」

ポリプラスチックス PBT新グレードを開発、加水分解性を向上

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2020年9月16日

 ポリプラスチックスは15日、自動車の先進運転支援システム(ADAS)向けに、PBTの新グレード「ジュラネックス PBT 201HR」を開発したと発表した。

 最近の自動車にはADASの搭載率が増加しているが、ADASの機能も進化を続けている。通信機器やセンサーの部品には長期信頼性が強く求められることから、PBT樹脂の優れた耐熱性、機械的強度、成形性が評価され、採用されるケースが増えてきている。ただ、自動車用コネクターには従来、充填強化剤を使用しない無充填のPBTが使用されてきたが、長期寿命の観点から、加水分解性の向上が課題となっていた。

 こうした中、同社は、靭性や成形性、強度を維持したまま、加水分解性を大幅に改善した無充填のPBTを開発。新グレードは、高湿環境下での使用にも適しており、製品の長寿命化を可能にすることで、特に使用環境の厳しい自動車用コネクターに好適となっている。

 なお、詳細を技術サイト(https://www.polyplastics.com/jp/product/lines/pbt_long-term/index.html)で公開。また同サイトでは併せて、耐加水分解性に加え、耐ヒートショック性を大幅に改善した「ジュラネックス PBT LT」シリーズも紹介している。

住友化学 中国に5拠点目のPPコンパウンド設備を新設

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2020年9月16日

 住友化学は15日、中国での自動車材事業を強化するため、江蘇省無錫市に中国で5拠点目となるポリプロピレン(PP)コンパウンド生産設備を新設すると発表した。同社情報電子化学部門が管轄する住化電子材料科技(無錫)の敷地内に、無錫工場(珠海住化複合塑料・無錫分公司)を整備。すでに設置済みの成都拠点とともに、来年年初の生産開始を予定する。

PPコンパウンドを生産する無錫工場。中国で5拠点目
PPコンパウンドを生産する無錫工場。中国で5拠点目

 PPコンパウンドは、PPにエラストマーやガラス繊維、無機フィラーなどを混錬し、機能性や剛性を向上させた高性能な材料で、自動車のバンパーや内装材、家電製品などに使われている。

 中国は、世界最大の自動車市場であり、また、近年の環境規制の強化や安全性向上に関するニーズの高まりを受けて、自動車の内外装向けPPコンパウンドの需要が年々増加傾向にある。こうした背景から、住友化学は、2016年に中国西部の中心都市である四川省成都市にPPコンパウンドの生産・販売拠点を新設し、現在、試作や顧客評価を進めている。

 今回、成都の同拠点に続き、経済成長著しい華中地域の製造拠点として無錫工場の設立を決定。中国で5拠点目となる無錫工場の設置により、中国の自動車メーカーや家電メーカーに対する広い供給網とタイムリーな顧客対応力を生かし、プレゼンスを一層高めていく考えだ。

住友理工 脂質ナノ粒子用マイクロ流路装置を開発

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2020年9月15日

 住友理工はこのほど、ライラックファーマ(札幌市北区)と共同で「マイクロ流路装置(脂質ナノ粒子製造ツール)」を開発したと発表した。

マイクロ流路チップ・カートリッジ
マイクロ流路チップ・カートリッジ

  脂質ナノ粒子(リポソーム)は10~200㎚の小胞で、内部に封入した薬剤を体内の分解酵素などから守り、患部に確実に効率よく届ける上、薬剤効果の持続や副作用の低減効果もある。医薬以外の利用も増え、高品質リポソームを簡便に再現性よく製造する技術のニーズは高い。

送液装置(開発品)
送液装置(開発品)

 開発した装置は、リポソームを形成する「マイクロ流路チップ」と、そこに原料液を供給する「送液装置」からなる。流路チップは、粒径のそろった高品質粒子を再現性よく作れるライラックファーマ独自のマイクロ流路「iLiNP(アイリンプ)」と同形状のもの。リポソームは脂質溶液を水に希釈し、水中で脂質を自己集合させて作る。

 「iLiNP」はその特殊な流路形状により、脂質溶液と水をマイクロ流路内の微小空間で混合し最適な希釈状態を維持するため、タンク内で撹拌しながら希釈する従来製法より、粒径のそろった高品質なリポソームを再現性よく作れる。送液装置にセットするだけで、簡単に人為的ミスなく、様々な配合のリポソームを短時間で試作可能。また総流量や各溶液の流量比率を変えて希釈状態を制御することで、粒子径を容易に調整できる。

 住友理工はシリコーンゴムの精密成型技術を生かしたマイクロ流路チップの製造・販売を開始、昨年より共同開発をスタートした。今回のマイクロ流路チップは、高分子材料配合・微細加工技術を使い高透明シリコーンで製品化。個別設計のチップを、ガラス製や樹脂製に比べて低コストでスピーディに供給できる。住友理工は長年培ってきた技術を生かし、バイオ・メディカル領域への事業展開を加速する。

 今後も幅広くライフサイエンス研究機関との連携を深め、マイクロ流路チップをはじめとした製品開発を支援することで、人・社会・地球の安全・快適・環境に貢献する企業を目指す考えだ。

三井化学 シンガ社3Dプリンター製品にコート剤が採用

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2020年9月15日

 三井化学は14日、同社の液状ポリオレフィン系接着剤「ユニストール」が、シーメンス社(シンガポール)の扱う3Dプリンター製医療用フェイスシールドフレームのコート剤に採用されたと発表した。

「ユニストール」がシーメンス社(シンガポール)の3Dプリンター製フェイスシールドに採用された。写真提供:Siemens Pte Ltd, Singapore
「ユニストール」がシーメンス社(シンガポール)の3Dプリンター製フェイスシールドに採用された。写真提供:Siemens Pte Ltd, Singapore

 デジタルトランスフォーメーションを推進する企業にガイダンスや研修などを提供するコンピテンスセンターであるシーメンス社のAMTCは、コロナ禍での迅速な貢献を行うため、わずか2カ月で医療用フェイスシールドの設計・開発・製造を行い、6月から同国タントクセン病院で試験導入を開始している。

 「ユニストール」は、三井化学の独自技術によりポリオレフィンに極性基を導入した変性ポリオレフィンを主成分とする液状プライマー・接着剤。従来、接着・密着しにくいといわれていたポリエチレンやポリプロピレンなどオレフィン系樹脂のみならず、各種エンジアリング樹脂など幅広い素材の塗料または接着剤のプライマー、あるいは接着剤そのものとして使用されている。

 今回採用された「ユニストールXPシリーズ」は、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)フリーのヒートシール剤および耐薬品性ドライラミ接着剤。フェイスシールドのフレーム部分にコート剤として活用されている。フレームはAMTCの3Dプリンターで製造されているが、フレーム表面にミクロな空壁ができるため、その細孔にウイルス・細菌が残留する課題があった。

 「ユニストール」は、フレーム部分のコーティング剤として、①フレーム素材と良好に密着する性能に加え、②ウイルス・細菌の残留を抑える表面平滑性、③再利用のための消毒を可能にする耐アルコール性、④耐傷つき性、⑤弾性強化、⑥破砕防止、⑦耐低線量UV滅菌性を発現。3Dプリントフレームの表面をより滑らかにするだけでなく、より強く柔軟にし、滅菌処理も可能になったため、再利用性能を大きく向上させることができた。

 三井化学は、今後とも新型コロナウイルスの感染拡大防止に対して、製品の提供を通じて、社会課題の解決に貢献していく考えだ。

住友理工 フィラー塗布型の薄膜高断熱材を製品化

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2020年9月14日

 住友理工はこのほど、高断熱フィラーを塗料化した塗布型の薄膜高断熱材「ファインシュライト」を開発・製品化したと発表した。

薄膜高断熱材「ファインシュライト」(シートタイプ)
薄膜高断熱材「ファインシュライト」(シートタイプ)

 同社のコアコンピタンスである高分子材料技術を応用し、ナノサイズの微細細孔をもつ高断熱フィラー(シリカエアロゲル)を塗料化。不織布、成形樹脂などの基材にコーティングし、静止空気以上の高断熱性を発揮する薄くて柔軟な断熱材だ。

 熱の移動経路(対流、伝導、輻射)のうちの対流に着目。固体で最も熱伝導率の低いシリカエアロゲルは、内部細孔内の空気は動けず対流しないため熱伝導は低い。これを微細粉砕して断熱フィラーに加工。独自の高分子材料技術でフィラーを高密度状態のままで塗料化した。塗膜の熱伝導率は0.02W/mKで静止空気の0.026W/mKを下回る。なお発泡ウレタンは0.035、グラスウールは0.045である。

 同社は、「ファインシュライト」を不織布にコーティングしたシートタイプの供給を開始。隙間や狭い空間にも設置でき軽量であるため、自動車をはじめ、熱対策が必要な家電、住宅、保冷ボックスなど幅広い用途での断熱対策に有用だ。不織布以外の様々な基材にも適用でき、さらなる製品展開に向けた開発を進めていく。

住友化学と島根大学 CO2をメタノールに、炭素循環を実現

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2020年9月14日

 住友化学と島根大学はこのほど、CO2からメタノールを実用化に見合うレベルで高効率に合成する共同研究を推進すると発表した。

 メタノールは、エチレンやプロピレンといった低級オレフィンを製造する原料として広く使用されているほか、合成樹脂や接着剤、薬品、塗料など化学品の基礎原料。世界で年間約8000万tの需要があり、現在は、化石資源である天然ガスや石炭ガスを主原料に、高温高圧下で複数の製造工程を経て生産されている。

 気候変動対応が世界的に喫緊の課題となる中、企業やアカデミアは、温室効果ガス削減を目指して、炭素循環の実現に資する技術開発に取り組んでいる。メタノールについては、ごみの焼却処理により発生するCO2と再生可能エネルギー由来の水素を原料として合成すれば、温室効果ガス排出量の削減と有用な工業製品の生産を同時に達成することができる。

 また、合成ガス(CO、CO2および水素の混合ガス)からも製造ができるため、地域の使用済みプラスチックやバイオマス資源を合成ガスに変換し、この合成ガスを原料としてメタノールを得ることで、炭素循環の実現が可能となる。

 CO2を原料としたメタノール合成の実用化に向けた課題として、メタノールの収率が低いことや反応で副生する水蒸気による触媒劣化が知られているが、近年、この課題を克服する技術として、島根大学総合理工学部の小俣光司教授が開発する反応収率を向上させるプロセス技術が注目を集めている。

 今回の共同研究では、同大学は、引き続き触媒とプロセスの基礎技術開発を進め、住友化学は、その基礎技術をもとに触媒とプロセスの工業化に取り組み、高効率なメタノール合成反応の確立を目指す。

 両者は、共同研究を通じて高効率なメタノールの合成反応プロセスを完成させ、CO2と使用済みプラを資源とした炭素循環を確立し、持続可能な社会の構築に貢献していく。

CO2からメタノールを合成
CO2からメタノールを合成