出光興産 AI技術による配船計画最適化の実証実験を完了

, , ,

2020年7月7日

 出光興産とテクノロジーベンチャー企業のグリッドはこのほど、三井物産と深層強化学習などのAI技術を活用した「内航船による海上輸送(配船)計画の最適化」の第1弾となる実証実験が完了したと発表した。

 今回の実証実験では、これまで石油元売り業界の喫緊の課題であった熟練担当者の経験や職人技に依存した配船計画策定について、AI最適化技術を用いた最適化と自動化を目指してきた。実証実験では、製油所から油槽所へ製品を海上輸送する現実の配船オペレーションを再現するシミュレーター構築とAI配船最適化モデルの構築を行い、AIによる最適な配船計画策定を実現。過去実績データとAI配船結果との比較検証を行った結果、安定供給を実現しつつ輸送効率を最大約20%改善できる配船計画の作成に成功した。

 これにより輸送コスト削減を図るとともに、属人化しがちであった配船計画業務の標準化ができ、さらには燃料消費量の低減による環境負荷軽減にも貢献できる。また、計画立案速度も格段に上がり、これまで計画立案に要していた時間の約60分の1にまで削減し、約1カ月の計画を数分で立案することが可能となった。この成果は、担当者の業務負担を大幅に軽減し、また複数の配船計画を比較し最良の計画を担当者が選択するという業務プロセスの改善も期待できる。

 構築された配船計画モデルは、船舶の運航効率や製品の積み付けバランス、航海時間や荷役時間を含めた船舶稼働時間など様々な制約条件を考慮しており、計画の実行性という観点からも、配船計画担当者や海運会社にとって違和感のない現実的な配船計画を作成できることを確認している。 

 世界的に見ても類を見ない、深層強化学習の社会課題への応用によるAI配船計画最適化の成功は、サプライチェーン全体の最適化への大きな足掛かりとなることが期待される。今後は実運用に向け、製油所・油槽所・船舶の数をさらに増やしたAI配船計画モデル構築の検証を実施するとともに、システム構築のための仕様検討を開始し、2021年のシステム運用開始を目指す。

凸版印刷 レトルト対応のデジタルプリント接着剤を開発

, ,

2020年7月7日

 凸版印刷は6日、軟包装のデジタルプリントを汎用のラミネーション機械で加工でき、レトルト殺菌対応製品に使用可能な接着剤を開発したと発表した。今回開発した接着剤を使用することにより、デジタル印刷パッケージの活用範囲が広がり、消費者の多様化するニーズに対応した高付加価値商品の提供が可能となる。

 軟包材を用いた商品パッケージの製造は、コスト面などから専用の機械を用いた大量生産が一般的。しかし近年、消費者のライフスタイルの多様化などにより、商品に対する市場のニーズが多角化し、店頭で他社の類似商品と差別化するためにも、パッケージに求められる役割が増加している。

 同社は軟包装分野で小ロット・多品種生産に最適なパッケージを提供する「トッパンFP(フレキシブル・パッケージ)デジタルソリューション」を展開。また昨今「巣ごもり」需要の影響で、長期保存可能なレトルト食品の消費は増加しており、レトルト食品用パッケージはさらなる需要増が見込まれる。ただ、デジタルプリントでレトルト殺菌用製品を生産する場合、専用の設備が必要で、汎用のラミネーション機械では加工が行えない課題があった。

 こうした中、同社は、レトルト殺菌が可能で汎用のラミネーション機で加工できる接着剤を開発。これにより汎用ラミネーション設備でレトルト殺菌対応製品が製造可能となり、レトルト対応製品にデジタルプリントの特長である小ロット(最低ロット1000枚から)のオリジナルデザイン印刷が可能となった。

 同製品の特長として、①小ロットでレトルト食品パッケージにオリジナル印刷展開が可能、②最低ロット1千枚から対応が可能で、パッケージおよびラベルの余剰品を削減でき、環境負荷が最小となる包装設計が行える、③製版不要のため、複数デザインのパッケージ製造が可能、④情報加工技術を応用し、グラビア印刷と同等の印刷品質を実現、⑤テストマーケティングや数量限定パッケージなど幅広い用途に活用、などが挙げられる。

 同社は、7月から食品やトイレタリー、化粧品業界などの国内市場向けに同製品の提供を開始し、2021年に約3億円の売上を目指す考えだ。

新開発した接着剤によりレトルト対応が可能になった製品サンプル
新開発した接着剤によりレトルト対応が可能になった製品サンプル

 

 

カネカ 医療機器事業を再構築、グループ会社を子会社化

, , , ,

2020年7月7日

 カネカは6日、グループ会社のリバーセイコーの全株式を取得し、医療機器受託製造を中心とした事業体制から、製造およびR&B機能(製品開発から営業企画)を併せ持つ医療機器事業会社として再構築すると発表した。今後、インターベンショナルな手術に使用する消化器分野、および不整脈を診断・治療する電気生理分野の事業の拡大と強化を図る方針だ。

 今回の完全子会社化に伴い、7月1日よりリバーセイコーの社名を「カネカメディカルテック」に変更。カネカとの連携をさらに強化し、ブランド力を高める。人員、機能の拡充によるマーケティング、研究開発、製造体制の整備、新製品・ソリューションの創出力を向上させることで事業機会の飛躍的拡大を狙い、2024年には同事業領域の売上高100億円を目指す。製品は、従来通りカネカの販売会社・カネカメディックスが担当していく。

 なお、Health Care Solutions Unitの組織「Medical Devices Solutions Vehicle」は、より幅広いソリューションの提供を通じて医療に貢献するため、6月1日より名称を「Medical Solutions Vehicle」に変更している。

 

三井化学 マスク用ノーズクランプを増強、コロナ禍対応で

, , ,

2020年7月7日

 三井化学は6日、新型コロナウイルス感染拡大防止のためマスク需要が増加していることから、同社100%子会社のサンレックス工業(三重県四日市市)にて、マスク用ノーズクランプ「テクノロート」の生産設備増設を決定したと発表した。

ノーズクランプ
ノーズクランプ

 1ライン増設することにより、三井化学グループのマスク用ノーズクランプの生産能力は2.5倍(年産マスク30億枚相当)になる。新設備の建設には先月からすでに着工しており、今年10月の完工を予定。今後もマスク需要動向により、さらなる増設を検討していく考えだ。

 同製品は、針金と同様に自由に折り曲げたりひねったりすることができる、形状保持特性を持つプラスチック線材。マスクの鼻の部分に使用することで、マスクを顔に密着させる効果を付与する。耐薬品性に優れ、重量は針金の約6分の1と軽量。また樹脂製のため、それ自体が金属探知機に反応せず、食品・医療用製品での金属混入の確認が容易といった利点も備える、三井化学の樹脂材料技術と延伸加工技術により実現した素材。

サンレックス工業外観
サンレックス工業外観

 同社は、新型コロナウイルス感染拡大防止に向けて、今回の「テクノロート」のみならず、マスク用不織布「シンテックスMB」、アイソレーションガウン用不織布「PS‐105‐GW」の供給体制を引き続き強化していく。

 

 

NEDO 世界初、水素輸送の国際実証試験を本格開始

, ,

2020年7月6日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、水素社会構築に向けた事業の一環として、次世代水素エネルギーチェーン技術研究組合(AHEAD)とともに、世界初の国際間水素輸送実証試験を、本格的に開始した。

 NEDOは、水素社会での水素の安定供給を目指し、2015年から「水素社会構築技術開発事業」に取り組んできた。今回、未利用エネルギー由来の水素の国際サプライチェーン構築のために、トルエンを水素キャリアとする「有機ケミカルハイドライド法」の国際実証試験を本格的に開始した。

 水素単体では多くの体積を必要とすることから、輸送に課題がある。トルエンと反応させてメチルシクロヘキサン(MCH)に変換することにより体積は500分の1になる上、既製のISOタンクコンテナによる常温・常圧での輸送・貯蔵が可能となる。さらに今回、大規模なMCH脱水素処理技術を開発し、低コスト運用の可能性が開けた。

 昨年11月にブルネイの水素化プラントが完成、12月には製造したMCHが日本に到着した。川崎市内の脱水素プラントが4月に稼働を始め、MCHから分離した水素を東亜石油京浜製油所内の水江発電所のガスタービンに供給している。脱水素後のトルエンはブルネイへ輸送し、6月からトルエンの再水素化処理を開始した。こうして、一連のプロセスからなる水素サプライチェーンが完成し、安定稼働に入った。

 水素供給源はLNGプラントのプロセス発生ガスで、水素輸送能力は年210t(燃料電池自動車フル充填約4万台相当)。今年末まで実証試験を行い、水素化・脱水素化設備の性能検証と課題の抽出、運用技術の確立、国際取引のノウハウ蓄積を図り、海外からの水素輸送と国内の水素発電の大規模な水素利用システム技術を確立し、本格的な水素社会の実現を目指す方針だ。

 

ブラスケム 米で新PPプラント稼働、年産45万t

, ,

2020年7月6日

 ブラジル石油化学大手のブラスケムはこのほど、北米テキサス州ラ・ポルテにあるポリプロピレン(PP)生産設備「デルタ」の建設が完了し試運転を開始したと発表した。 米国市場への供給と世界各国への輸出を拡大し、グローバルビジネス戦略を強化するのが狙い。

米国テキサス州ラ・ポルテの新ポリプロピレン生産設備
米国テキサス州ラ・ポルテの新ポリプロピレン生産設備

 新生産ラインは、同地区にある既存PP生産工場に隣接する。設計に当たっては持続可能性の観点から、CO2排出量や廃棄物の削減、水・エネルギーの効率化、リサイクルなど環境に配慮。最新設備を備え、ホモポリマー、インパクトコポリマー、ランダムコポリマーなど、様々なPP製品のポートフォリオ全体を生産する。推定生産能力は年産45万t。同社が米国に持つ五つの既存PP生産拠点(テキサス州×3、ペンシルベニア州×1、ウェストバージニア州×1)と合わせ、北米全体では年産約200万tとなる。

 新型コロナウイルスの感染拡大により、特に4月と5月に北米のPP産業は大きな影響を受けた。不織布や包装用途での好調な販売は見られたものの、主に自動車などの耐久財分野が振るわず需要は大幅に落ち込んだ。同社は今後について、6月に入り顧客の事業拡大や消費の回復傾向が見られたことから、第3四半期(7-9月期)のPP業績の好転を見通す。新設備では今月から量産テストを始め、需要回復に照準を合わせる形で3Q中の商業運転を目指す。

帝人フロンティア 高機能繊維を使用した接触冷感マスクを販売開始

, , ,

2020年7月6日

 帝人フロンティアはこのほど、接触冷感素材「クールセンサー」を使用した夏用マスク「洗える!冷感マスク」の販売を開始した。耐洗濯性、快適な着用感、蒸れ低減、UVカット機能、抗菌防臭・消臭効果が特長。生地から縫製まで、国内生産にこだわった。

 「洗える!冷感マスク」は、特殊セラミック含有ポリエステル繊維素材「クールセンサー」を使用し、ひんやりとした着け心地を実現(接触冷感値Q‐max0.3以上)。繰り返し洗濯しても機能は持続する。しなやかなストレッチにより肌に隙間なくフィットし、極細繊維の使用により肌ざわりもソフトだ。

 また、マスク内を蒸れにくくする吸水速乾機能と、紫外線遮蔽率99.9%のUVカット機能も併せ持つ。さらに、抗菌防臭加工によって悪玉菌(黄色ブドウ球菌)の増殖を抑制しイヤな臭いを抑え、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸といった汗の3大臭も抑制する。

 今月上旬より、テイジン公式オンラインショップ「くらし@サイエンス」をはじめ、国内のドラッグストア、スーパー、コンビニエンスストアなどで販売。希望小売価格は800円(税抜)。

出光興産 千葉事業所でRH装置の効率化改造工事を実施

, , ,

2020年7月6日

 出光興産はこのほど、千葉事業所(千葉県市原市)にある重油直接脱硫装置(RH装置)の効率化改造工事を実施し、5月26日から稼働を開始した。この装置効率化により、千葉事業所のHS(高硫黄)C重油生産量を年間60万kl削減すると同時に、LS(低硫黄)C重油を年間50万kl増産することが可能となる。

 今回のRH装置の効率化改造工事は、国際海事機関(IMO)が定める船舶用燃料の硫黄分規制への早期対応を図るもの。IMOは、今年1月からSOx(硫黄酸化物)排出規制を強化しており、世界的に高硫黄船舶用燃料を低硫黄化する取り組みが活発化。石油精製過程で余剰となるHSC重油への対応が必要となっている。

 なお、同社は、増産されるLSC重油の供給余力を活用した競争力強化を図るため、流動接触分解装置(FCC装置)での重油分解能力向上(RFCC化)も実施する予定。また、今回の効率化改造工事は、経済産業省の補助事業「石油供給構造高度化事業費補助金(石油コンビナートの生産性向上及び強じん化推進事業のうち石油コンビナートの立地基盤整備支援事業)に係る補助事業」を活用し実施した。

 出光興産は今後も、IMOが定める船舶用燃料の硫黄分規制への取り組みにより、地球環境負荷低減に努めるとともに、引き続き燃料油事業での競争力強化と石油製品の安定供給に努めていく。

NEC AIを活用した海洋マイクロプラ計測システムを開発

, , ,

2020年7月6日

 NECは3日、海洋研究開発機構(JAMSTEC)とともに、海洋プラスチックごみの動態や環境への影響を評価するためのマイクロプラ計測手法の高度化に向けて、AIによる画像認識技術を活用して高速かつ自動的に海水や前処理を施した堆積物からマイクロプラを計測するシステムを開発し、JAMSTECの研究開発を支援したと発表した。

 近年、マイクロプラ(5mm以下の微小なプラスチック粒子)よる海洋汚染が世界的に拡大しており、生態系への影響だけではなく、食物連鎖を通じた人体への悪影響が懸念されている。海洋マイクロプラ汚染の実態を正確に把握するためには、各海域のマイクロプラの数・大きさ・種類を分析することで、流出源を推定し、流出経路や到達地を予測する必要がある。

 これまでの調査手法は、海水や前処理を施した堆積物などを目の細かい網ですくい、その中からマイクロプラを、顕微鏡などを用いて1粒ずつ手作業で拾い出して分析するのが一般的だった。しかし、これには膨大な時間と手間がかかるだけでなく、一般的に用いられている網の目をすり抜ける300㎛以下の微小な粒子を過小評価してしまうという課題があった。

 こうした中、NECは、最先端AI技術群「NEC the WISE」のディープラーニング技術を搭載した「RAPID機械学習」による画像認識技術で、マイクロプラを高速かつ高精度に検出・分類する仕組みを提供。併せて、蛍光顕微鏡で撮影したマイクロプラが試料中を流れる動画から、AI連携のための画像を抽出してデータ化するソフトウェアも提供した。

 具体的には、JAMSTECの研究開発の知見を生かし、試料中のマイクロプラを蛍光色素で染色し、検出に最適な速度で流しながら、蛍光顕微鏡で動画を撮影。次に、今回開発したソフトウェアにより、この動画からマイクロプラ一つひとつを画像データとして自動抽出する。さらにAIによる画像認識技術を活用することで、毎分60個の処理速度で、サイズや形状を自動的に分類・集計することが可能となった。これにより、マイクロプラの検出を、自動化・高精度化することを実現している。今後この計測手法が確立されて普及することで、マイクロプラ汚染の実態解明が進み、適切な排出規制の立案に貢献できることが期待される。

 NECは今後も、AIをはじめとした先進技術を活用し、社会全体の環境負荷低減に貢献する「環境経営」を通じて、持続可能な社会の実現を目指していく考えだ。

 

ダウ・東レ 消泡剤ソリューション、独自ツールを提供

, ,

2020年7月6日

 ダウ・東レは3日、特約代理店である長瀬産業が、直感的な操作で適切な消泡剤ソリューションの種類や組み合わせを選択できるオンライン・シミュレーション・ツール「消泡剤セルフ診断サイト」の提供を開始したと発表した。

 同サイトは、顧客の質問に答え、インタラクティブな自己診断機能を備えるとともに、詳しいガイドラインを提供するもので、これにより顧客は、高機能化学分野に関するダウ・東レのイノベーションをフルに活用することができる。また、ダウグループの深い製品知識と知見をベースに開発されたものであり、ダウと日本の主要ビジネスパートナーとの強力な提携により実現した。多様な業界で顧客をサポートする画期的なツールとして、今後の活用が期待される。

 過度な発泡は、プロセスの性能、機器の耐久性、素材の信頼性に悪影響を及ぼすことから、不要な発泡を抑えることが課題。ダウ・東レの最先端のシリコーン消泡剤は、農業から食品・飲料、建設から繊維、ハイドロカーボンからパーソナルケア製品や家庭用品に至るまで、あらゆる種類の業界で顧客が直面する過度な発泡への課題を効率的かつ効果的に解決する。

 適切な消泡剤ソリューションを選ぶ際、様々な要因を考慮する必要があるが、同サイトは、多種多様で複雑な課題に直面する顧客向けに、極めて便利な完全デジタル化体験を提供。同サイトを使用することで、ダウ・東レの適切な種類の高品質シリコーン消泡剤ソリューションを選択し、最適な性能と大きな価値を得ることができる。

 ダウ・東レは、今回の長瀬産業とのパートナーシップにより、消泡剤事業を拡大するとともに、最高クラスのソリューションとサービスを提供することが可能となった。両社は、この独自のデジタルプラットフォームにより、顧客の現在および新たなニーズに対応するとともに、市場で成功するための絶好の「ウィン・ウィン」戦略を提供していく考えだ。