ランクセス 黒色顔料が蒸留所に採用、木材の風合いを再現

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2020年6月4日

 ランクセス(ドイツ)はこのほど、カイロ・ディスティラリー社が所有する世界最北のジン・ウイスキー蒸留所に新設した樽貯蔵施設のファサード(正面部分)に、無機顔料「バイフェロックス」が採用されたと発表した。 

世界最北にあるジン・ウイスキー蒸留所の施設内。(写真提供:ランクセスAG)
世界最北にあるジン・ウイスキー蒸留所の施設内。(写真提供:ランクセスAG)

 表面加工したコンクリートを漆黒の顔料で着色し、古い木の焼き板で覆われているような風合いを実現している。この洗練された外観はアバント・アーキテクト社(フィンランド)によって設計され、フィンランドコンクリート建築賞を受賞した。

 アバント社は、森林の中というロケーションに合わせ、伝統的な木造倉庫に着想を得た漆黒の樽貯蔵施設をデザイン。樽貯蔵施設は単なる倉庫ではなく、生産工程の重要な一部分で、「ウイスキー」と銘打つためには、少なくとも3年間オーク樽で熟成させるため、膨大な貯蔵スペースが必要となる。また、ウイスキーは可燃性液体であり、樽貯蔵施設には厳しい防火安全規制もある。

 通常は、着色コンクリートで作った部材を現場で塗装仕上げするが、濃黒色のランクセス顔料「バイフェロックス360」をセメントに対して5%添加することで、現場での仕上げ塗装が不要となった。

 コンクリートに合成酸化鉄顔料を使用し、硬化後のコンクリートを目標の色調にするためには、基礎技術と応用技術の広範な専門性が必要とされる。また、顔料の品質と混合具合だけでなくセメントの種類、コンクリート骨材も影響を及ぼすことから、コンクリートと顔料の相互作用に関する詳しい知識が求められる。

 今回の樽貯蔵施設の建設で、顔料メーカーが設計者をサポートしたのはまさにこの理由によるもの。厳しい予算状況のため、このプロジェクトでは標準のコンクリート骨材が、フィンセメンティ社の白色セメントと共に使用された。その結果、色と風合いが再現されたコンクリートで、風化した木材と見間違える外観を再現することができた。

AGC 5G対応のガラスアンテナをドコモと共同で開発

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2020年6月4日

 AGCは3日、NTTドコモと共同で、ドコモの5G周波数に対応する電波送受信が可能なガラスアンテナ「WAVEATTOCH」を開発したと発表した。

ガラスアンテナWAVEATTOCHの貼付けイメージ
ガラスアンテナWAVEATTOCHの貼付けイメージ

 5G対応の「窓を基地局化するガラスアンテナ」の開発は世界初となる。ドコモの5Gネットワーク拡大に伴い、2020年内に都市部を中心に全国で展開される予定。今後の需要増に対応するため、量産工場の稼働を開始している。

 街の景観を損ねることなく、通信のネットワーク構築を図るアンテナ増設が必要とされている。こうした中、AGCは、ドコモと2018年に既存窓(室内側)の表面にガラスを貼り付けることで屋外をサービスエリア化することができるガラスアンテナを共同開発。昨年よりドコモ4G LTE携帯電話向けのサービスエリアの提供を実施している。

 今回、5Gエリアの拡充に向け、ドコモの5Gで使用される高周波数帯に対応したガラスアンテナを開発。合わせて、周辺部材を透明にすることで、より景観や室内環境を損なわないデザインを実現した。また、従来の指向性が高い高利得タイプ(約100~200m先にネットワーク構築が可能な電波が届く仕様)に加え、より広い角度への電波発信が可能なワイドビームタイプも今年度中に開発が完了する予定で、さらに柔軟なエリア設計を可能にする。

 AGCグループは、今後も顧客に満足される、新たな価値をプラスした製品を提供できるよう技術革新を進めていく考えだ。

AGC 5G

 

 

トクヤマ 先進技術事業化センターを開設、30億円投資

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2020年6月4日

 トクヤマは3日、窒化ケイ素をはじめとする先端材料の事業化を目的として、新明和工業の遊休地(山口県柳井市)に「先進技術事業化センター」を開設すると発表した。製造設備を中心に2年間で約30億円を投資する計画で、来年4月ごろから順次試運転を開始し、同年夏に実証試験に入る予定。

窒化ケイ素(Si3N4)。セラミックス材料の一種
窒化ケイ素(Si3N4)。セラミックス材料の一種

 同センターは、地球環境保護やICT普及に役立つ製品の開発から事業化を手掛ける拠点として位置づける。当面は、環境対応自動車や再生可能エネルギーの発電設備などに搭載されるパワー半導体モジュール向け窒化ケイ素の事業化に取り組む。

 同社は、独自の合成技術で高純度窒化ケイ素粉末の工業化に成功し、その原料を使った板状セラミックスについても、独自技術で省エネ・安全・低コストの環境対応型製造プロセスを開発。同センターでは、これら技術の量産化に向けた実証試験を来年度から開始する。

 同社は、主要放熱材料である窒化アルミニウムのリーディングカンパニー。これまでに培った技術と豊富な経験を生かし、品質とコストを両立した窒化ケイ素材料の普及に取り組むことで、環境に優しく、持続可能な社会の構築に貢献する。

トクヤマの放熱材事業戦略
トクヤマの放熱材事業戦略

旭化成 ゾール社が米国で新機能を搭載したAED販売を開始

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2020年6月4日

 旭化成は3日、米子会社のゾール社が、一般市場向け自動体外式除細動器(AED)「ZOLL AED 3」の米国内販売を開始したと発表した。

ZOLL AED 3
米国での販売が始まった『ZOLL AED 3』

 同製品は、進化した胸骨圧迫ヘルプ機能と、ボタンひとつで切り替え可能な小児モードを搭載し、成人・小児に兼用できる除細動電極パッドを備えるのが特長。すでに米国以外ではグローバルに販売されているが、このたびの米国食品医薬品局(FDA)の承認を受け、同国販売の開始となった。38言語対応製品。

 ゾール社は、米国市場に「ZOLL AED 3」を投入し、一般市場向けAEDのラインアップを拡充させることで、既存製品「ZOLL AED Plus」「Powerheart G5」と併せ、幅広い救命救急医療ニーズにきめ細やかな対応を図る考え。また、同社は現在、新型コロナウイルス感染症が世界でまん延する中、必要とされる製品やサービスの提供を通じて医療従事者のサポートを行っている。

 今後は公共の場での健康・安全がさらに重要視されると考えており、幅広いAED製品群などを提供することで、医療従事者と世界の人びとの〝いのちとくらし〟に貢献していく。

産総研 都市域の大気観測でCO2排出量を起源別に推定

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2020年6月3日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、防衛大学校地球海洋学科などとの共同研究により、大気中のCO2とO2の高精度観測から、CO2排出に使用された化石燃料の種類ごとに評価する手法を開発した。

 産総研などは2012年から、東海大学・代々木キャンパス内の観測タワー上に装置を設置し、代々木街区の人間活動により排出されるCO2の観測を行っていた。この手法は、産総研が開発した大気中のO2の超高精度濃度計測と、主に森林CO2吸収の評価で用いられる鉛直CO2輸送量の計測を都市部での観測に応用し、O2とCO2の交換比(Oxidative Ratio:OR)を導出するもの。消費する化石燃料の種類や生物活動により、ORが異なるため(都市ガス=1.95、石油=1.44、ヒト=1.2)、CO2排出量を起源別に定量化できる。

 今回の大気観測では、産総研が持つ世界最高の超高精度(6桁、PPMレベル)の大気濃度観測技術を用いて、高度52mと37mの2点でO2とCO2の濃度を観測。高度別の濃度勾配に基づく傾度法によって鉛直輸送でのORを導出することで、局所スケールのCO2排出を化石燃料種別に評価した。

 都市部でのCO2排出源として石油(主に自動車)、都市ガス、人間呼吸に注目し、観測で得られたこれら起源別のCO2排出量を、代々木近郊の自動車交通量、家庭・飲食店の都市ガス消費量および人口統計のデータに基づくCO2排出量と比較。その結果、夕~夜間の都市ガス消費データに基づく排出量が観測値に比べて多かったことから、この地区の統計データ基準では、実際よりも過大に見積もられてしまうことが示唆された。

 また、給湯・調理に伴う早朝の都市ガス消費のピークや、通勤時間帯の交通量増加による午前中の石油消費の漸増も見て取れるなど、大気観測に基づき自動車と都市ガス由来のCO2排出量を街区スケールで分離評価することが可能となった。

 同手法は消費する化石燃料の種類毎に評価できるため、ゼロエミッション技術が社会実装されたときのCO2削減効果を、実環境計測に基づいて検証する技術として期待される。今後、放射性炭素同位体比の観測を組み合わせ、大気観測だけで石油・都市ガス・人間呼吸による排出量を分離する手法を目指す考えだ。

 

ダウなど3社 医療従事者用防護マスクの提供に向け提携

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2020年6月3日

 ダウはこのほど、ワールプール・コーポレーションおよびレイノルズ・コンシューマー・プロダクツと提携し、COVID‐19(新型コロナウイルス感染症)流行の最前線で立ち向かう、勇気ある医療従事者が待望する防護マスクを提供すると発表した。

 この共同プロジェクトでは、ワールプールの100%子会社であるWINヘルスラボを通じてヘアキャップやマスクなどの保護具を製造・販売し、初期生産分は病院に寄付される。

 共同チームにより制作された個人保護具(PPE)は、電動ファン付き呼吸用保護具またはPAPRと呼ばれ、従来の医療用マスクとバイザーに代わる役割を果たす。取り換え可能なポリエチレン樹脂製のフェイスシールドが特長で、この透明なシールドは、柔軟で着け心地がよく、別の患者を診る際に素早く取り換えることが可能だ。

 今回の連携は、3社が、それぞれの支援の方法を探している中で誕生した。ワールプールは、ヘッドセットの設計、製造、組み立てを担当。ダウがポリエチレン樹脂をフェイスシールド用に提供し、「Hefty」ブランドのレイノルズが、使い捨てフェイスシールドを設計、製造した。また、フォルクスワーゲン・オブ・アメリカが、素材とサプライチェーンに関わる業者を仲介し、重要な部品を調達している。

 ワールプールとダウが操業している地域にある病院と、PPEを必要とする他の病院に寄付するため、第1段階では2000ユニットを製造。必要とされるPPEをなるべく多くの医療機関に届けるため、「Hefty」のチームが最初のフェイスシールド100万個を寄付している。

 レイノルズのランス・ミッチェルCEOは、「安全で効果的なPPEを提供する取り組みに貢献できてうれしく思う。複数の企業が知見を持ち寄ることで、最も必要なときに新しいシールドを届けることができた」とコメントしている。

東洋紡 飲料用ペットボトルから高機能樹脂フィルムを再生

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2020年6月3日

 東洋紡はこのほど、飲料用ペットボトルからリサイクルされた原料を使用したフィルム製品群について、「Bevarage Bottles to Film‐BB2F」の商標の下、環境に配慮した高機能製品のラインアップを拡充し、グローバル市場への展開に注力すると発表した。

サイクルクリーン
サイクルクリーン

 世界的に環境意識が高まる中、消費者によって使用されたプラスチックをリサイクルした(PCR)原料を使ったフィルム製品の需要が増している。

 同社は2012年、業界最高レベルのリサイクル原料使用率80%と、業界最薄の12㎚を実現した包装用フィルム「サイクルクリーン」を業界に先駆けて上市した。プラ製造時の端材や不良品は一切使わず、飲料用として使用されたペットボトル由来のリサイクル原料のみを使用するため、使用済み廃プラの削減にも貢献。環境に配慮した製品として、ペットボトル用ラベルなどに広く採用されてきた。

 今後、「サイクルクリーン」に加えて、薄肉タイプのシュリンク(収縮)フィルム「スペースクリーン」や、高バリア性能フィルム「エコシアール」についても、リサイクル原料に飲料用ペットボトル由来のPCR原料だけを使用した新製品の開発を加速し、ラインアップを拡充していく。

 同社は、これらの「BB2F」ブランドを通じて、環境に配慮した高機能フィルムとしてグローバル市場へ積極的に展開し、軟包装分野での循環型経済の実現に貢献していく考えだ。

 

富士フイルム 新型コロナ肺炎のAI診断技術開発を開始

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2020年6月2日

 富士フイルムはこのほど、人工知能(AI)技術を用いた新型コロナウイルス肺炎の診断支援技術の開発を開始した。同社と京都大学(大学院医学系研究科呼吸器内科学 平井豊博教授)が共同開発した間質性肺炎の病変を定量化する技術を応用し、新型コロナ肺炎患者の経過評価や治療効果判定などをサポートする診断支援技術の開発を目指す。

 今回の開発は、新型コロナ肺炎患者を受け入れている国内の医療機関と共同で推進。まず神奈川県立循環器呼吸器病センター(横浜市)とスタートし、その後複数の国内医療機関に拡大していく予定だ。

 新型コロナ感染症については、医師が行った様々な治療の有効性の判断基準は未だに明確ではない。新型コロナ肺炎は、間質性肺炎と同様の画像所見を示し、病変パターンが多岐にわたるとされる。肺炎の進行や治療効果の確認には、徐々に変化する病変の性状の目視確認が必要であるが、1患者あたり数百枚にも及ぶ胸部CT画像の読影は専門医でも非常な負担になる。

 同社の「間質性肺炎定量化技術」は、AI技術で設計したソフトウエアで、CT画像から肺野(はいや)内の気管支、血管、正常肺および網状影やすりガラス影、蜂巣肺(ほうそうはい)など肺の7種類の病変性状を識別し、自動で分類・測定を行い、間質性肺炎の病変を定量化する。

 さらに、病変の分布と進行状態を詳細に確認できるよう、肺野を12領域に分割し、領域ごとに病変の容積と割合を表示する。同技術は、京都大学との共同研究によるもので、同社開発の間質性肺炎の病変分類・定量化AI技術を、京都大学保有の症例データで学習させて高精度な識別性能を実現した。

 今回この「間質性肺炎定量化技術」を活用し、新型コロナウイルス肺炎患者の経過評価と、治療効果判定を支援する技術開発を開始。治療薬の効果判定にも利用できる技術を確立することで、新型コロナ肺炎の治療薬の開発・評価の加速も期待できる。

 同社は、医療画像診断支援、医療現場のワークフロー支援、そして医療機器の保守サービスに活用できるAI技術の開発を進め、「REiLI(レイリ)」というブランドで展開。今後も、医師の画像診断支援やワークフローの効率を目指したソリューション開発をスピーディに進めていく考えだ。

BASF プラの循環型ソリューション、共同開発を締結

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2020年6月2日

 BASFはこのほど、セキュリティ・マターズ社(豪州)と、プラスチックのトレーサビリティと循環型のソリューションを開発する共同開発契約を締結した。

 プラスチックは、その特性を生かして適切に使用されると、持続可能な資源効率の良い未来に貢献できる。しかし、サーキュラー・エコノミー(循環型経済)に転換するには、より多くの廃プラを回収し再利用する必要がある。リサイクルではマテリアルリサイクルが一般的だが、再生品はバージン品と比較して物性と品質が劣っていること、インフラ設備も高価で複雑なため多くの地域で整備されていないことが課題だ。

 両社は共同で、この課題に対するソリューションの提供を目指している。セキュリティ・マターズ社は、クローズド・ループ・リサイクル(同品質材料への再生)での物理的およびデジタル追跡を可能にし、サスティナビリティ認証や廃プラの分別精度を高める技術に貢献。

 同社の追跡・トレースが可能なソリューションは、永久的に変更不能な化学物質ベースの「バーコード」で物体をマークし、デジタルツイン(サイバー空間で再現し連動させる仕組み)に接続するもの。バーコードは、製造やリサイクル工程で変化せず、物体の外観や性能にも影響がない。独自の「リーダー」を使用してバーコードを読み取り、プラスチックに埋め込まれた様々な情報を集めてリサイクルに生かすことができる。

 一方、BASFは、プラスチック添加剤および規制のノウハウといった専門知識や、プラスチック・バリューチェーンの豊富な経験を、このパートナーシップに活用する。また、契約の一環として、両社の研究開発能力とリソースを統合していく。

 BASE欧州パーフォーマンス・ケミカルズ事業部シニア・バイス・プレジデントのアヒム・サイツ氏は、「両社は、ポリマー情報とプラスチックの生産・流通プロセスでの追跡情報を把握できる、革新的な技術を共同で開発している。リサイクル材料を使用して、原材料の価値や、資源の生産性を高めることを望んでいる顧客やバリューチェーンのプレイヤーに、最適な添加剤パッケージを提案していく」とコメントしている。

積水化学 圧力管路用のFRP製離脱防止継手を発売

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2020年6月2日

 積水化学工業は1日、環境・ライフラインカンパニーが、FRPM管用の離脱防止継手「エスロンFTR‐N曲管」を発売したと発表した。 同製品は独自成形法のFRP製曲管継手で、業界初となる強化プラスチック複合管(FRPM管)用の離脱防止継手であり、簡単施工でスラストブロックレス配管を実現する。

 同社は、FRPM管「エスロンRCP」と、同製品用の継手「エスロンFT‐R形異形管」を製造・販売している。金属管などの他管種に比べ、軽量性・施工性・耐腐食性・水理性・経済性などの特徴から、農業用水や小水力発電などの圧力管路に多くの実績を持つ。易施工や軟弱地盤対策などのニーズは益々強まっているが、圧力管路の曲管部には水圧の不均衡などによるスラスト力が発生し、高いスラスト力が作用する場合はスラストブロックが必要となる。ただ、スラストブロックの打設は掘削量が大きくなるため環境負荷が大きく、またコンクリートの型枠組みや養生にも多大な時間を要するといった課題があった。

 そこで同社は、「エスロンRCP」と「エスロンFT‐R形異形管」の特徴をさらに強化するため、スラストブロックレス配管の実現が可能な離脱防止継手の開発に注力し、今回「エスロンFTR‐N曲管」の発売に至った。同製品は、簡単施工で離脱防止処理時間の大幅短縮を実現。従来同様に管を接合した後に、スラストブロックを打設することなく、SUSワイヤを挿入するだけで離脱防止処理が工具不要で簡単に完了する。

 同社は、エスロンFTR‐N曲管」の受注拡大を含め、2022年度にエスロンRCP」関連事業の売上高50億円を目指す考えだ。

積水化学 離脱防止継手と構造