三菱ケミカル 生分解性樹脂とスポーツ、循環型システム挑戦

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2021年8月31日

 三菱ケミカルはこのほど、Jリーグサッカークラブ「ギラヴァンツ北九州」と連携し、同社の生分解性樹脂「BioPBS」を使用した紙コップを起点とするコンポストによる循環型システム実現に向けた実証試験を行った。

生分解性樹脂「BioPBS」を使用したコンポスト による循環型システム
生分解性樹脂「BioPBS」を使用したコンポスト による循環型システム

 今回の実証試験では、ギラヴァンツ北九州が今月22日、28日に開催したサッカーイベント「ギラヴァンツサマーフェスティバル2021」に、同社の生分解性樹脂を使用した紙コップ約6500個を提供。そこで使用された紙コップを回収し、コンポスト設備で食品残渣物などと一緒に堆肥化する。出来上がった堆肥の一部は地元高校で野菜の栽培に活用し、さらに収穫された野菜をスタジアムで販売するという、紙コップを起点とした循環型システムの実証試験を行う。

 今回、循環型システムを形成するために、複数の企業や学校が協力。三菱ケミカルはシステム全体の統括と生分解性樹脂の提供を担い、NTTビジネスソリューションズ社とウエルクリエイト社が使用済み紙コップを原料の1つとして堆肥化を行う。

 三菱ケミカルは今後も、様々な企業・自治体などとも連携しながら、循環型システムの構築を積極的に実施し、サーキュラーエコノミーの実現に貢献していく。

コンポスト による堆肥化の様子
コンポスト による堆肥化の様子

 

東洋紡 導電素材使用のサイクリスト向けウエア販売順調

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2021年8月31日

 東洋紡はこのほど、フィルム状導電素材「COCOMI(ココミ)」を使用した、次世代型サイクリング用スマートセンシングウエア「COCOMIサイクリングアンダーシャツ」を開発し販売を開始した。5月下旬からアマゾンの通販サイトで販売を行っており、同社によれば、これまでの売れ行きは「計画通り推移している」ようだ。

 同製品は、心拍センサー(別途購入)を取り付けることにより、着るだけで心拍数の計測が可能になる。トレーニング時の身体のコンディション把握が容易になり、サイクリストのトレーニングの質の向上に貢献する。自転車トレーニング時の心拍計測にはチェストベルト型のセンサーの使用が一般的だが、走行時のずれを防ぐためきつめに装着する必要があり、着用者の圧迫感を軽減することが求められていた。

 「COCOMIサイクリングアンダーシャツ」は、東洋紡が開発した薄く伸縮性に優れた、ウエアラブルデバイス用電極・配線材向けフィルム状導電素材「COCOMI」を電極部に採用しており、自然な着心地で心拍を計測する。電極部が身体にフィットする構造のため、精度の高い心拍データを収集できるのが特長。また、吸水速乾性やストレッチ性、UVカット機能など、スポーツウエアに求められる機能を備え、効果的なトレーニングをサポートする。希望小売価格は8690円(税込み)。メンズのみでSS、S、M、L、2Lの5サイズ。黒と白の2色をラインアップする。レディース向けについても「順次検討していく」(同社)とのこと。

 現時点では他のスポーツへの用途展開は未定とのことだが、「各スポーツ市場の状況を反映しながら検討していく」(同)考えだ。なお、製造販売は東洋紡STCが行っている。

ADEKA 光酸発生剤を能増、先端フォトレジスト向け

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2021年8月31日

 ADEKAは30日、EUVをはじめとする半導体の先端リソグラフィ工程で使用される光酸発生剤について、千葉工場の生産能力を従来比二倍以上に増強すると発表した。投資金額は27億円。2022年3月に着工し、2023年度中の稼働を予定している。

光酸発生剤を増強する千葉工場
光酸発生剤を増強する千葉工場

 5G通信の普及とテレワークなどのライフスタイルの変化に伴い、半導体需要が活況であることを背景に、同社の光酸発生剤「アデカアークルズ」シリーズの販売が好調に推移している。同製品は、微細なパターニング形成とppb(10億分の1)レベルの低メタル管理を特長とし、世界トップクラスの性能をもつ。

 今後、半導体の微細化進展に伴い、最先端リソグラフィ技術であるEUV露光の拡大が予想されており、従来のリソグラフィ向け光酸発生剤の技術革新が必要とされている。今回の投資ではEUV向け製品の提供を加速するため、従来では対応することが難しいppbレベルの低メタル管理を実現する最新の設備を導入。また、導入を決定した生産設備では、微細化進展に伴い新たに必要となる半導体周辺材料の生産も計画している。

 同社は、先端の半導体材料の提供を通じて、ICT社会の実現に貢献していく。

トクヤマなど 水素燃料内航貨物船、導入と実装を検討

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2021年8月31日

 トクヤマなど5社は30日、水素を燃料とした貨物船舶の導入により、地球環境に配慮した次世代型内航船の商用運航を共同検討していくと発表した。今回、基本合意書を締結したのは、トクヤマ、イコーズ、商船三井テクノトレード、商船三井内航、本瓦造船の5社で、プロジェクト名称「SHE’s(シーズ)」には、水素燃料船(Ships powered by Hydrogen Energy)、種(Seeds=水素燃料利活用の最初の姿)、海(Seas=海での水素の利活用)の意味を込めている。

水素燃料内航貨物船の導入および実装プロジェクト
水素燃料内航貨物船の導入および実装プロジェクト

 国土交通省の主導により策定した地球温暖化対策計画では、内航海運のCO2排出量について、2030年度までに157万t削減(2013年度比)を目標に掲げ、省エネ船舶の普及を図っている。

 こうした中、同プロジェクトでは、内航船舶のカーボンニュートラル化の重要な取り組み課題の1つである水素燃料貨物船の実用化に向け、①水素燃料貨物船の導入および実装(船舶の仕様の検証、関連法規の調査・整理)、②船舶への燃料供給方法およびエネルギーマネジメントシステム、③導入する技術に関するリスクマネジメント、④トレードオフ関係にある物流コストと環境コストの調和検証、などを検討し、内航海運により排出されるGHG(温室効果ガス)の削減を目指す。

 なお、今後プロジェクトを進めていく中で協力企業・団体などが参加する可能性もあるとしている。

産総研など 限定的・偏向的データから新材料組成を予想

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2021年8月30日

 産業技術総合研究所(産総研)と北陸先端科学技術大学院大学、物質・材料研究機構、HPCシステムズ、仏コンピエーニュ工科大学の共同チームはこのほど、証拠理論を使ったデータ駆動型アプローチによる新材料推薦システムを開発し、ハイエントロピー合金(多元素組成の合金)の実験検証により、新たな単相合金薄膜材料の合成に成功した。

 材料研究の短期化とコスト削減は急務だ。データから価値を引き出すデータ駆動型材料開発手法が注目されるが、膨大な数の成分組み合わせ数に比べ、理論計算や実験評価数は少ないことが問題だ。実験条件や計算手法の違いで、一貫性がある解釈の難しい結果を含んだり報告データは成功例に偏るなど、データの限定性や偏向性のため、得られた結果の精度や信頼性の定量的評価が困難で、少ない実験数で効率的に作製条件や組成を決める上での障害となっている。

 今回採用した証拠理論は、ベイズ統計を一般化したものでデータの不確かさを評価でき、合金生成が可能な全ての組み合わせの一部または不完全なデータをもとに、組成を推定できる。複数のデータ源から未知の組成が存在する可能性を示す手がかりを集め、その証拠をモデル化・収集・結合して生成可能な新規組成を推薦する手法を開発。

 鉄・コバルト・マンガンと第四元素Rを含む新規ハイエントロピー合金について、スパッタリング法でRの組成が少しずつ異なる薄膜を作製し、組成と結晶構造の関係を系統的にデータベースとして取得。その関係性を効率的に検証することで、同手法で推奨された材料候補群から、これまで知られていなかった体心立方構造の鉄・コバルト・マンガン・ニッケル薄膜の合成に初めて成功した。

 また、試行回数を既存の機械学習による推薦方法の100分の1以下に低減できた。これにより、関連性が明確ではないデータ群から、材料組成が関係し説明可能で合理性があるデータの関連性を抽出し新たに有効なデータ群を構築することで、新材料の提案と合成を実現した。

日本ガイシ 主要4生産拠点でCNなLNGに全量切替

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2021年8月30日

 日本ガイシ(NGK)はこのほど、東邦ガス提供のカーボンニュートラル(CN)な都市ガスの導入を決定し、今月から愛知県内の4つの主要生産拠点で使用を開始すると発表した。これにより、年間約3万tのCO2削減に貢献する。CNな都市ガスは、天然ガスの採掘から燃焼に至る工程で発生するCO2をCO2クレジットで相殺(カーボンオフセット)した液化天然ガス(LNG)で、東邦ガスとNGKにとって初めてのケースとなる。

 導入するのは日本ガイシの名古屋事業所(名古屋市)、知多事業所(愛知県半田市)、小牧事業所(愛知県小牧市)とグループ会社NGKセラミックデバイス本社(愛知県小牧市)地区で、工場や社屋などで使用する都市ガスの全量を切り替える。製品焼成用のガス窯の燃料も切り替え、約3年の契約期間で合計約10万5000tのCO2排出量削減を見込んでいる。

 NGKグループは4月に策定した「NGKグループ環境ビジョン」で、2050年までにCO2排出量ネットゼロを目指すことを掲げ、水素やアンモニアといったCO2を排出しないクリーンなエネルギーをセラミックスの製造に利用する技術開発などにも着手している。同社は、クリーンなエネルギーの採用などでCO2排出削減に取り組み、CN社会の実現に貢献していく考えだ。

DSM バイオベース「ダイニーマ」、シューズに採用

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2021年8月30日

 DSMはこのほど、カナダのシューズブランド「norda」により、バイオベース「ダイニーマ」が初めてシームレストレイルランニングシューズに採用されたと発表した。

バイオベース「ダイニーマ」を採用した「norda」ランニングシューズ
バイオベース「ダイニーマ」を採用した「norda」ランニングシューズ

 「norda」は、ランナーがランナーのために設計したブランドで、イノベーションと最先端技術により、アスリートの潜在能力を最大限に引き出すことを使命として開発された。「norda 001」は、ブランドの主力製品として、バイオベース「ダイニーマ」繊維を使用し、軽量構造でパフォーマンスと持続可能性に注力する。靴のアッパーは、「ダイニーマ ファブリック」を使ったシームレス構造であり、世界最強の繊維である「ダイニーマ」ならではの特性が生かされている。

 例えば、「ダイニーマ」繊維は分子レベルで設計され、高強度、軽量、防水性、通気性を備えていることから、超軽量素材の技術的性能と、強度や耐久性を損なわない美的デザインの融合を実現。こうしたアッパー部による足の安定性と快適性向上に加え、「ダイニーマ」繊維は、靴紐の耐摩耗性と伸縮性を高めるためにも使用され、ナイロンやポリエステルなどの標準的な紐素材と比較して4倍の強度になっている。

 人々と環境を守るというDSMのコミットメントに沿って、バイオベース「ダイニーマ」は、従来の「ダイニーマ」と同じ性能を備えており、一般的な高弾性ポリエチレンよりもカーボンフットプリントを90%低減している。再生可能なバイオベースの原料を利用するDSMの最新ファイバー技術は、マスバランス方式を使用して化石燃料ベースの資源への依存をさらに低減するとともに、循環型経済の確立に貢献している。

 DSMは、サプライヤー、顧客、主要パートナーと協力して、イノベーションと環境への責任の両方が実現可能な製品ポートフォリオを誇る。今回の両社のパートナーシップでは、トレイルランニング分野のフットウェア開発での歴史的なイノベーションが実現し、性能とサステナビリティのどちらも同時に実現できることが証明された。

 

JFEスチールなど 低炭素型コンクリート実用化が前進

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2021年8月30日

 JFEスチールはこのほど、東北大学、日本大学と共同で寒冷地でも適用可能な独自のアルカリ活性材料「ジオポリマー」の開発に成功し、西松建設と共和コンクリート工業を加えた5者で早期実用化に向けた試験体制を構築した。

 ジオポリマーは、製造時に排出するCO2を通常のコンクリートに比べて75%以上削減できる一方、混合時の粘性が高く固まりやすく、耐凍害性が著しく低く、温暖な地域でしか利用できないという課題があった。

 今回、従来のジオポリマーがセメントの代替にしている水ガラスとフライアッシュ(石炭灰)を、アルカリ水、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末(製鉄副産物)にして、その配合量の最適化と高炉スラグ細骨材の活用、特殊な混和剤の適用などにより、流動性を安定的に確保しつつ耐凍害性を大幅に向上させた独自のジオポリマーを開発した。凍結融解試験ではJIS規定の300サイクルでもほとんど劣化せず、凍結防止剤の影響を想定した塩水環境下でも従来品を大幅に超える凍結融解抵抗性を示した。これにより、寒冷地や山間部などでもジオポリマーを制約なく適用でき、コンクリート分野でのCO2排出量を大幅に削減することが可能となる。

 今後、西松建設とはコンクリートの施工性について、共和コンクリート工業とはプレキャスト製品への適用について実用化に向けた試験を開始し、寒冷地を含めた実環境での検証を進めていく。

 

住友化学 半導体用高純度ケミカル増強、愛媛工場と韓国で

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2021年8月27日

 住友化学はこのほど、半導体用高純度ケミカルの製造ラインを増設し生産能力を強化すると発表した。愛媛工場(愛媛県新居浜市)で高純度硫酸の生産能力を約2倍に引き上げるほか、100%子会社である東友ファインケムの益山工場(韓国)では、高純度アンモニア水の生産能力を約4割増強する計画。なお、新製造ラインの稼働開始については、愛媛工場は2024年度上期を、東友ファインケムは2023年度下期を予定している。

 住友化学は、半導体用高純度ケミカルについて、1978年に千葉工場(千葉県市原市)で硫酸や硝酸などの生産を開始して以降、愛媛工場では1991年に硫酸の生産を始め、現在は日本・韓国・中国で事業を展開。半導体製造で精密洗浄などに使われる高純度ケミカルは、その製造工程で金属や有機物などの異物が半導体の品質・歩留まりを低下させないよう、不純物をppt(1兆分の1)レベルまで低減する超高純度化技術が求められる。

 同社製品は、生産から輸送までの徹底した不純物排除により厳しい要求を満たしていることに加え、微小不純物分析技術に基づく品質保証体制を確立していることから、品質安定性に強みをもつ。また、顧客の先端製造ラインへの長年の納入実績や、需要増加に対応した機動的な供給体制整備により、国内外の半導体メーカーから高い評価を得ている。

 韓国では東友ファインケムが平澤工場と益山工場の2拠点で事業を展開し、中国では住化電子材料科技(西安)と住化電子材料科技(常州)が製造・販売を行い、顧客の工場立地に根ざした供給体制をグローバルに構築している。半導体デバイス市場は、5G対応スマートフォンの普及に加え、ライフスタイルの変化に伴うPCやデータセンター関連機器の需要増加を背景に伸長を続けており、その製造工程に不可欠な高純度ケミカルの需要は今後も堅調な拡大が見込まれる。

 同社は、旺盛な半導体需要に対して、今回の愛媛工場および東友ファインケムでの生産能力増強により、安定供給を果たしていく考えだ。

三井化学 クラウドを活用した次世代工場DX基盤を構築

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2021年8月27日

 三井化学は26日、データドリブンなビジネス推進を目指し、次世代工場DX基盤のプライベートクラウドとして、ニュータニックス社の「Nutanix Cloud Platform」を採用し、9月から大牟田工場で稼働を開始すると発表した。12月までに国内全製造拠点に導入し、センサーデータの集約、リアルタイム分析およびBCP(事業継続計画)向上を実現する。

エッジコンピューティング化での変化点
 エッジコンピューティング化での変化点

 同ソリューションの導入は、グループ長期経営方針の達成に導く、重要なDX戦略の一環。不確実性が増す環境下、三井化学は社会課題解決に向けた貢献と持続的成長を実現するためDXを全社に展開し、ビジネスモデル、業務プロセスなどの高度化を目指す考えだ。

 同社は現在、各拠点で試験的に少数のセンサー機器を導入し、運転高度化の準備をしているが、本格導入した場合、多数のセンサーやIoT機器類を設置することになり、膨大な情報が発生する。これらの情報をクラウドやデータセンターに直接転送すると拠点間の通信量が大幅に増加し、通信回線が圧迫され、ITシステム全体が不安定になる可能性がある。また、BCPの観点からも、災害激甚化による通信回線断絶や停電による拠点間通信の不通が想定され、すべての情報を1つのデータセンターにまとめておくことは大きなリスクだった。

 こうした中、同社は、国内の主要5工場と袖ケ浦研究センターに、本格的にIoTセンサーデバイス網を構築し運転のさらなる高度化を図る。その前段として、9月の大牟田工場を皮切りに12月末までに全拠点に前処理用のシステムとして同プラットフォームを導入、膨大な情報量を処理できるDX基盤の整備(エッジコンピューティング〈EC〉化)を決定した。

 導入メリットとして、①次世代工場DX基盤を構築しEC化を実現、②各製造拠点から、振動、ガス、圧力計など多数のセンサーデータを収集し、データレイク化やデータのリアルタイム分析が可能、③EC環境構築により、非常時に通信断絶が起きた場合のBCP向上、④サーバー上で稼働するため、高セキュリティ・高信頼・高パフォーマンスといった安定運用ができる基盤を実現、などが挙げられる。