産総研と電通大 全可視光領域で発光する酵素基質群開発

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2021年2月24日

 産業技術総合研究所(産総研)と電気通信大学はこのほど、医療・環境診断や生体イメージングに適用する全可視光領域発光の「虹色発光標識のポートフォリオ」を共同開発したと発表した。

 生物発光を使うバイオアッセイや癌のイメージングなどが注目され、特に最近はウイルス検出などの医療診断の関心が高い。しかし、生物発光は発光色が限られ、特に海洋生物由来発光は短波長の青~緑色に偏り、ヘモグロビンによる吸収や発光標識間の干渉で生体イメージングには不向きだ。長波長の黄~赤色発光がなく、マルチカラーイメージングによる効率的なバイオアッセイや医療・環境診断ができなかった。

 産総研は化学物質生理活性の発光可視化の研究で、人工生物発光酵素群「ALuc」や赤色蛍光色素がついた発光基質を開発。電通大はホタルや海洋生物由来の発光システムで発光を長波長化・多色化する基質群を合成してきた。

 今回、両者の技術を組み合わせ、黄色より長波長の発光やマルチカラーイメージングを実現する生物発光システムを開発。海洋生物由来の発光酵素に共通するセレンテラジン骨格と、発光エビ由来の発光酵素「NanoLuc」と反応して高輝度発光するフリマジンを参考に、13種の発光基質を開発した。

 ウミシイタケ発光酵素「RLuc」と「ALuc」に発光するが「NanoLuc」には発光しないもの、「ALuc」のみ、「NanoLuc」のみに発光するもの、「RLuc」に特に強く発光するものがあり、天然のセレンテラジンは「ALuc16」に強く発光した。これらの組み合わせで、青色~近赤外の様々な発光色を生み出せる。

 相互選択性が非常に高い組み合わせもあり、発光信号間の干渉のないバイオアッセイなどへの応用により、例えば7つのバイオマーカーの同時計測による各種診断の迅速・簡便化などが期待できる。さらにウイルスを高感度で検出できるバイオアッセイや、赤色発光による動物個体内の癌転移などを可視化できる可能性もある。

 今後これを利用した医療・環境診断研究に加え、長波長領域でより高輝度で化学的に安定な虹色発光標識ポートフォリオや、動物個体内での生体イメージングを目指す考えだ。

三井化学 環境配慮型紙包装材にヒートシール剤を提供

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2021年2月24日

 三井化学はこのほど、日本製紙、ヨシモト印刷社(静岡県静岡市)と共同で、3社の新素材・技術・設備を活用した新規な紙製の環境配慮型包装材「フレパック ONE」を開発したと発表した。今月24日から東京ビッグサイトで開催される「TOKYO PACK 2021」に出展し、新規包装材として提案していく。

バリアヒートシール塗工紙「フレパック ONE」(製袋協力:株式会社イシダ)
バリアヒートシール塗工紙「フレパック ONE」(製袋協力:株式会社イシダ)

 同包装材は、三井化学がもつ印刷で機能を付与できる紙包材用ヒートシール剤「ケミパール」を、日本製紙が開発したバリア紙「シールドプラス」に、ヨシモト印刷社の最新フレキソ印刷機で塗工したバリアヒートシール塗工紙。フレキソ印刷機一パス加工で包材製造が完結するためリードタイムの大幅な短縮ができるほか、水系フレキソ印刷による環境適合性(水系材料・無溶剤)と高度な印刷品質、「紙」でありながら酵素や香りのバリアを実現した。

 三井化学の「ケミパール」は、ポリオレフィンを同社独自の技術で水に分散した製品。紙に塗工することでヒートシール性・耐油性・耐水性を付与するため紙包材として使用でき、食品用途を含め、幅広い用途に適用可能だ。ポリエチレンラミネート紙と比較して薄膜形成ができるためプラスチックの削減に貢献し、また、再パルプスラリー化が容易なことから、リサイクル包材としても期待されている。

 三井化学は、今回の共同提案を契機に、新たな環境配慮型包装材向けのヒートシール剤として、国内外の包装市場への提案を進めていく。

層構成イメージ
層構成イメージ

花王など 使用済み紙おむつの炭素化リサイクル実証実験

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2021年2月22日

 花王はこのほど、京都大学と「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」の確立に向け、先月から愛媛県西条市協力のもと実証実験を開始した。使用済み紙おむつを炭素素材へ変換し、CO2排出量削減による環境負荷低減に貢献していく。炭素素材の産業利用を進め、空気・水環境の浄化、植物の育成促進への活用など、地球環境改善につながる研究技術開発を推進する。リサイクルシステムの開発は京都大学オープンイノベーション機構と花王が協力して行い、社会実装は2025年以降を予定している。

 使用済み紙おむつは年間200万トン以上が主に焼却処理され、燃えるごみの4~6%を占める。多くの水分を吸収しており、焼却炉の燃焼効率悪化の原因となるケースもある。今後、高齢化による大人用紙おむつの使用量増加に伴い、有効なリサイクル技術の確立が期待されるが、①衛生面と重くかさばることから頻繁な回収が必要、②構成材(パルプと多種のプラスチック)の分離が困難、といった課題がある。

 今回、使用済み紙おむつを回収前に炭素化する「炭素化装置」を開発する。低温・短時間で効率的に炭素化し、殺菌・消臭しながら体積を減らすのがポイントだ。衛生課題が解決し体積が減るため、回収頻度を減らせる。炭素化するため、焼却処理によるCO2発生を削減し環境負荷低減につながる。また、炭素化物は活性炭などの炭素素材への変換を目指す。

 先月から使用済み紙おむつを発生する保育施設(1カ所)におむつ処理装置を設置し、発生するごみの量や作業量、継続性など現場の運用面の課題を確認している。同時に、おむつ処理装置を基に炭素化装置の開発を進める。4月以降に開発した炭素化装置を設置し、炭素化物を回収する。容積が小さいため回収頻度は月1~2回と少なく、回収後は環境浄化や保育施設の園庭での植物育成促進に活用する。

 なお、子育て支援の一環として、花王は同保育施設にベビー用紙おむつ「メリーズ」を提供し、保護者・保育士の負担軽減を見込む。

 「使用済み紙おむつの炭素化リサイクルシステム」を確立することで、使用済み紙おむつリサイクルの課題を解決し、炭素化素材を産業利用する。そうすることで、リサイクルとCO2削減、プラスチックごみ問題の解決など地球環境改善、SDGs達成に向け貢献していく。

出光興産など 車両管理とエネ管理システム構築、実証開始

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2021年2月22日

 出光興産、日本ユニシス、スマートドライブの3社はこのほど、国富町役場庁舎(宮崎県)で、エネルギーコストや環境負荷の低減と災害時のレジリエンスの向上に資するシステムの構築を目的とした実証実験を開始すると発表した。実証期間は今年4月~2023年3月末まで。3社はそれぞれの知見を活用し、自治体と共にエネルギーの地産地消と低炭素化の実現を目指す。

 

エネルギーコスト・環境負荷低減、災害時のレジリエンス向上
エネルギーコスト・環境負荷低減、災害時のレジリエンス向上

今回の実証実験では、自然エネルギーの普及に取り組んでいる国富町役場の敷地内に、太陽光発電システム、公用車EV3台、EV予約管理・車両情報取得を行う車両管理システム、複数の蓄電池・EV充放電器/EV充電器、そして、これらのリソースを遠隔から複合的に制御するエネルギーマネジメントシステムを導入し、エネルギー利用の最適化を図る。蓄電池とEVの最適な充放電計画を作成し運用することで、国富町役場の電力コストの低減やCO2排出量の削減につなげる。また、災害などによる停電時における蓄電池とEVからの電力供給の最適運用の検証や事業モデルの検討も実施する。

 なお、今回使用する太陽光発電システム、蓄電池、EV充放電器などは出光興産の100%子会社ソーラーフロンティアの取扱製品。エネルギーマネジメントシステムは、出光興産と日本ユニシスが3月から開始するエネルギーとモビリティの価値最大化に貢献するエネルギーマネジメント技術の開発を目指す実証実験のシステムを活用。さらに、スマートドライブの「SmartDrive Fleet」と「Mobility Data Platform」を通じて公用車の車両データを収集・分析・活用することでEV稼働状態予測の精度を高め、最適な充放電計画の作成に取り組む。

 

中外製薬 「世界希少・難治性患者の日」協賛、QOLを向上

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2021年2月22日

 中外製薬はこのほど、「世界希少・難治性疾患の日」(RDD)が目指す、より良い診断や治療による希少・難治性疾患の患者のQOL向上という趣旨に賛同し、「RDD Japan 2021」に協賛した。

 RDDは、毎年2月最終日に世界同時で開催される疾患啓発イベント。希少疾患は治療法が確立していないものも多く、病態や患者の抱える悩みに対しても、社会の十分な理解や支援が得られにくい現状がある。RDDは2008年にスウェーデンで始まり、昨年には103カ国でイベントを開催。日本では2010年に活動が開始され、昨年も50を超える公認開催を予定していたが、コロナ禍により26地域の開催に留まった。

 今年は、「あなたのしりたいレア わたしももっとしりたい」をテーマに掲げ、日本全国で過去最大となる48カ所での各種啓発イベントを開催。「RDD Japan 2021」を通じて、希少・難治性疾患の認知度の向上が期待される。

 一方、同社は、希少疾患領域での患者中心・社会課題解決支援活動プロジェクト「SPOTLIGHT」を2019年から展開。患者中心・社会課題解決に向けた活動を社内外のステークホルダーと共有することで、患者の届かぬ声に光を当て、希少疾患を取り巻く社会課題の解決の一助となることを目指している。

 この活動の1つが、神経筋疾患に関する報道関係者向けセミナー。また昨年には、世界血友病デーにあわせた子ども向けダンス動画を公開したほか、従業員を対象に認定遺伝カウンセラーを招いた遺伝カウンセリングの勉強会などを開催している。

 

JFEエンジニアリング 使用済み紙おむつの燃料化実証設備が竣工

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2021年2月19日

 JFEエンジニアリングはこのほど、新潟県十日町市より使用済み紙おむつをリサイクルし燃料化する実証設備を受注し竣工したと発表した。

 使用済み紙おむつは一般廃棄物重量の約4%を占め、高齢化の進展とともに2030年には6%以上になると見込まれている。現状は主に焼却処理されているが、燃料化などのリサイクルで可燃ごみの排出量を削減し、焼却施設の規模最適化や処理費用の最小化、焼却灰の埋め立て量やCO2排出量の削減が期待される。

 今回の事業スキームは、十日町市内の高齢者施設から排出される使用済み紙おむつを、破砕・発酵・乾燥処理により燃料ペレットに加工し、排出元の高齢者施設の給湯ボイラー燃料として利用するもの。燃料化装置の熱源はすべて同市エコクリーンセンターのごみ焼却処理で発生する余熱を利用する。紙おむつの最大処理能力は600kg/日で、給湯ボイラーの熱量は7万キロカロリー/時だ。使用済み紙おむつは「廃棄物」からボイラーの「燃料」に生まれ変わり、同市のエネルギーの地産地消に貢献する。

 同社は、紙おむつ燃料化装置を企画・販売するスーパー・フェイズ(鳥取県西伯郡伯耆町)とチヨダマシナリー(埼玉県北葛飾郡杉戸町)と共に十日町市と研究を進め、エコクリーンセンター内に設置する燃料化装置と、高齢者施設内に設置する給湯ボイラーまでのシステム全体のエンジニアリングと工事を行った。昨年環境省が発表した「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン」の再生利用方式の1つに該当し、リサイクルに必要なエネルギーに清掃工場の余熱を利用するのは全国初だ。

 今後も3社でこの方式を拡販していく。JFEエンジニアリングは廃棄物発電やリサイクル分野のリーディングカンパニーとして、環境負荷の低減とSDGsの達成に貢献していく。

出光興産 神戸でローカルVPP実証、再生エネの導入を支援

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2021年2月19日

 出光興産はこのほど、神戸市水道局、横河ソリューションサービスと、神戸市内での地域協調型のバーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業を開始した。

 先月18日から行っている同実証事業は、神戸市内の水道施設にあるポンプ(電力を消費する設備)と出光興産が同市に設置する蓄電池(蓄電設備)を、高度なエネルギーマネジメント技術とデジタル技術により遠隔・統合制御することで、あたかも1つの発電所のように機能させる仕組みの構築を目指したもの。

 3者の役割として、神戸市水道局は、水の安定供給を維持しながら、リソースアグリゲーターである横河ソリューションサービスから提示された電力供給量や抑制量などのガイダンス情報に基づいて各ポンプの起動・停止に関する制御を実施、地域の電力需給バランス調整に必要な調整力を創出する。

 出光興産は神戸市内に設置した大型蓄電池をエネルギーリソースとして提供し、水道局のポンプ群と連携した充放電制御の効果を検証する。

 横河ソリューションサービスは、同市水道局にガイダンス情報を提示することに加え、提示された情報に基づいたポンプ制御による電力値の変化から、目標に対する過不足分を予測演算し、蓄電池を充放電制御して微調整することで質の高い調整力を創出する。

 なお、同事業は経済産業省の令和2年度「需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント(VPP)構築実証事業費補助金」を受けて、関西電力がアグリゲーションコーディネーターとして実施される「関西VPPプロジェクト」の一環で行う。

神戸市VPP実証事業 イメージ図
神戸市VPP実証事業 イメージ図

日本ゼオン 結晶性COPを上市、新たな領域への展開図る

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2021年2月19日

 日本ゼオンは17日、結晶性(立体規則性)を付与した新たなタイプのシクロオレフィンポリマー(COP)「ZEONEX C2420」を上市し生産を開始したと発表した。これまでのCOPにない優れた機能を有するため、新しいアイテムへの応用展開が期待される。

結晶性COP「ZEONEX C2420」 ミリ波レーダーアンテナ基板への応用例
結晶性COP「ZEONEX C2420」 ミリ波レーダーアンテナ基板への応用例

 COPは一般的に非晶性の構造を持ち、主にカメラレンズやディスプレイ用フィルムなどの光学用途、シリンジやマイクロ流路チップなどの医療バイオ用途の材料として使用されている。今回上市した新製品は、結晶性を付与したことにより、従来のCOPが持つ低吸水性、低誘電率・低誘電正接を維持しながら、これまでにない耐熱性、耐薬品性、耐屈曲性を持つ。

 具体的にみると、耐熱性では、従来品はガラス転移温度163℃程度が上限だったが、新製品は結晶性を付与したことで融点が265℃と大幅に向上。また耐薬品性では、従来品では劣っていた炭化水素系溶剤への耐性を有している。さらに耐屈曲性についても、従来品は屈曲試験2万5000回で割れが生じるのに対し、新製品は20万回以上にも耐えるなど非常に優れている。

 新製品の持つこうした新たな特性は、フィルム回路基板やフィルムコンデンサなどエレクトロニクス用途を中心とする新たな領域への展開を可能にする。ゼオングループはこれからも革新的な独自技術により、COPの可能性をさらに追求していく考えだ。

三井化学 バイオマス化で接着樹脂の環境対応製品を開発

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2021年2月19日

 三井化学は18日、同社が世界に先駆けて開発し、多層構造のボトルやチューブ、フィルム・シートなどに使用される接着性ポリオレフィン樹脂「アドマー」に、環境対応ラインアップ「アドマーEF」シリーズを追加したと発表した。同日にオンラインによる説明会を開催。

「アドマーEF」 (バイオマスアドマー)を使用した多層ボトル
「アドマーEF」 (バイオマスアドマー)を使用した多層ボトル

 モビリティ事業本部・機能性コンパウンド事業部アドマーグループの伊左治康博グループリーダー(GL)は、「昨今の社会や顧客からの高い環境ニーズに対応するため、

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中外製薬 生産機能のDXを展開、デジタルプラントを実現

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2021年2月18日

 中外製薬はこのほど、日本IBMと協働で、生産機能のデジタルトランスフォーメーション(DX)を展開すると発表した。

 中外製薬は、「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」の基本戦略の1つにすべてのバリューチェーンの効率化を掲げ、その一環としてデジタルプラントの実現を目指している。今回、日本IBMと協働し、人に着目した生産機能のDXを展開することで、自社創薬の加速と環境変化への対応を果たし、生産性向上、信頼性向上、働き方変革を実現する。

 中外製薬の目指すデジタルプラントでは、「デジタルで生産業務を変革し、生産性を高めて人財を高付加価値化する」をコンセプトに、①計画、②直接業務、③間接業務のいずれにおいても、人とオペレーションのデータ連携・最適化を図る。第一段階として、浮間工場のDXをモデルケースとして先行実施。2022年半ばまでを目途に新しいオペレーションを支えるデジタル基盤を構築し、各施策と他拠点への展開にむけた検証を行う。

 昨年から構想・要件定義について着手しており、今年から各施策を展開する予定。DXの実績が豊富な日本IBMとの連携により、各作業段階に応じ、使いやすいシステム群で人と業務の改革を目指す。

 全体のイメージとして、製造系、品質系、要員系などの各種データソースからの情報を共通のデータ基盤に集約。現場に適した情報端末からアクセスできる業務システムと連携させることで、効率的な生産・要員計画および進捗管理、GMP文書検索、現場のリモート支援など、一連の生産業務を通じた業務改革に活用する。