富士フイルム 英米で新型コロナワクチン候補原薬の量産推進

, , ,

2021年3月12日

 富士フイルムはこのほど、バイオ医薬品の開発・製造受託会社フジフイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズ(FDB)が米国ノースカロライナ拠点に続きテキサス拠点でも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン候補の原薬製造を開始したと発表した。英国拠点でも量産準備をスタートするなど、同ワクチンの迅速かつ安定的な供給に向けた取り組みを加速させている。

 FDBは、米国バイオテクノロジー企業ノババックス社が開発中で、米国政府が立ち上げた官民連携プロジェクト「Operation Warp Speed」が開発支援するCOVID-19ワクチン候補「NVX-CoV2373」の原薬製造を受託し、ノースカロライナ拠点で昨年7月より量産している。今回米国政府の助成の下、テキサス拠点の2㎘細胞培養タンク9基の設置が完了し、原薬製造を開始した。また英国拠点では、米国ノースカロライナ拠点より移管した生産プロセス技術と2㎘細胞培養タンクで、英国政府が調達する「NVX-CoV2373」の原薬製造を行っていく。

 「NVX-CoV2373」は、新型コロナウイルスの遺伝子情報をもとに作った抗原のタンパク質の一部を用いたワクチン候補で、ノババックス社は昨年より南アフリカで後期臨床第Ⅱ相試験、英国で臨床第Ⅲ相試験を開始し、1月には各試験の中間解析結果として主要評価項目を達成し有効性を示したと発表した。また米国やメキシコで臨床第Ⅲ相試験を進めている。

 なおCOVID-19治療薬候補の受託では、COVID-19治療推進プロジェクト「COVID‐19 Therapeutics Accelerator」が開発・製造を支援する米国イーライ・リリー社の抗体医薬品の原薬の量産を、デンマーク拠点で4月より開始する予定だ。

 今後、FDBの米国テキサス、ノースカロライナ、英国、デンマークの全拠点の製造インフラを活用して、COVID-19ワクチン・治療薬の開発・製造に協力していく考えだ。

横浜ゴム ゴム配合物性値のAI予測システムを独自開発

, , ,

2021年3月12日

 横浜ゴムはこのほど、AIを活用したゴムの配合物性値予測システムを独自に開発しタイヤ用ゴムの配合設計への実用を開始したと発表した。

 人がゴムの配合設計パラメーターを入力すると、AIが予測物性値を出力するほか、その確からしさを表示したり、目標物性値に近い配合を探索する機能ももつ。膨大な仮想実験が可能で、開発のスピードアップやコスト削減、高性能な商品の開発に加え、経験の浅い技術者による配合設計が容易になることが期待できる。今後は、ホースやコンベヤベルトなど多岐にわたるゴム商品開発にも利用する。

 同社はマテリアルズ・インフォマティクスによるゴム材料開発技術や、インフォマティクス技術によるタイヤ設計技術など、材料とタイヤの設計開発プロセスでAIを活用した技術開発を進めてきた。今回、同社が昨年10月に策定したAI利活用構想「HAICoLab(ハイコラボ、人とAIの共同研究所))」に基づいて開発した。

 「ハイコラボ」は人間特有のひらめきや発想力とAIが得意とする膨大なデータ処理能力を生かした「人とAIとの協奏」によりデジタル革新を目指す構想で、人が設定する仮説に沿ったデータの生成・収集と、AIによる予測・分析・探索を繰り返すことで、未踏領域の知見の発見を目指す。現在は、プロセスに加え、製品やサービスなどの革新を目指した利活用を進めている。これにより、ユーザーエクスペリエンスの向上とAIやIoTなどの革新技術による新たな未来社会「Society 5・0」の実現に貢献していく考えだ。

三菱ケミカル バイオエンプラがBSMレーダーカバーに採用

, ,

2021年3月12日

 三菱ケミカルは11日、バイオエンジニアリングプラスチック「DURABIO」が、いすゞトラック3車種の交差点警報およびブラインドスポットモニター(BSM)用レーダーカバーに採用されたと発表した。採用された車種は、小型トラック「エルフ」、中型トラック「フォワード」、大型トラック「ギガ」で、「DURABIO」がトラック部品に採用されたのは初となる。

 

 三菱ケミカルでは現在、CASE化により増加が見込まれる車内外のレーダーやセンサーに対応する素材として「DURABIO」の用途展開を加速。「DURABIO」は、再生可能な植物由来原料イソソルバイドを用いたバイオエンプラで、耐衝撃性、・耐候性・耐熱性などの点で一般的なエンプラよりも優れた物性をもつ。また、顔料を配合するだけで艶やかで光沢のある表面を実現。さらに、表面が硬くて擦り傷が付きにくい特長があるため、塗装・コーティング工程が不要となり、塗料工程から発生するVOC(揮発性有機化合物)を低減することができる。これらの特性を生かし、自動車の内外装意匠部品への採用が拡大している。

 いすゞは、交通事故を低減するために常に先進的な安全装置を搭載したトラックを開発しており、車両や歩行者などを検知するレーダーのカバーに電気特性にも優れた「DURABIO」が採用された。塗装レスの「DURABIO」をカバーに採用することで塗料による電波遮へいの懸念がなく、検知エリアや感度の質を維持できる。また、外装材に求められる耐衝撃性や耐候性といった物性に加え、環境配慮型の素材である点が、地球環境と社会の持続可能な発展に貢献するといういすゞのCSRの考え方に合致したことも評価された。

 三菱ケミカルは今後も、「DURABIO」の用途展開を通じて、環境にやさしいクルマづくりに貢献していく。

ダイセルとダイキン 新商品創出に向け協創を加速

, , , , ,

2021年3月12日

コロナ禍で空気質ニーズ拡大、2つの商品を開発

 ダイセルとダイキン工業は、生産現場のプロセス・イノベーションを図る「ダイセル式生産革新手法」をダイキンの化学プラントに導入して以来、長年にわたる技術交流を継続し信頼関係を構築している。

透湿膜全熱交換エレメント
透湿膜全熱交換エレメント

 2016年からはダイセルがもつ先進の「材料技術」とダイキンがもつ「空調要素技術」の双方の強みを生かすことで、顧客にとって価値のある商品を創出する協創に取り組んできた。こうした中、コロナ禍による空気質ニーズの高まりを受け、換気機器向けの「透湿膜全熱交換エレメント」および大型空調機向けの「低圧力損失エアフィルタろ材」の開発に至った。

 オンライン会見において、ダイセルの高部昭久取締役常務執行役員は、「今回の協創は、カスタマーイン、マーケットインによる新事業開発の先行事例だ。両社がワン・チームで取り組んだことで、短期間で開発でき、投下する資源も最小化できた。今後も、協創の取り組みをさらに加速していく」と強調した。

 ダイキンの米田裕二執行役員は「開発した2製品は画期的な技術シーズだ。今後のダイキンの空調を支えていくキーパーツであり、これらを搭載した商品を世界展開していく」との考えを示した。

透湿膜シート
透湿膜シート

 続いて両社の担当者が開発した技術について説明。全熱交換器ユニット向け「透湿膜全熱交換エレメント」は、共同開発した「透湿膜シート」を採用。同シートは従来の紙製シートの約3分の1の薄さで、熱と水分の移動抵抗を低減。多孔質基材と透湿膜の二層構造により、水蒸気を選択的に透過させるとともに、菌やウイルス、CO2などの遮断性を向上した。さらに、耐水性と透湿性を両立したことで、水洗い洗浄も可能となっている。

 「透湿膜シート」とダイキンの独自技術「対向流型フレーム構造」の組み合わせ効果により、エレメント内部の空気漏れを大幅に低減。中国のGB規格の最高グレードである給気正味外気率99%以上をクリアした。ダイキンは、今年から中国で「透湿膜全熱交換エレメント」の販売を開始。さらに今後、各地域のニーズに合わせた商品開発、生産性向上、コストダウンなどを両社で進め、2023年には規制強化が見込まれる欧州市場への展開を目指す考えだ。

エアフィルタVバンク型
エアフィルタVバンク型

 一方、大型空調向け「低圧力損失エアフィルタろ材」は、ダイセルの繊維技術を活用したナノファイバ複合素材をベースに共同開発。同ろ材は、繊維径が異なる複数の繊維を複合し、従来よりも集塵効率が向上。また低い圧力損失で空調機を運転できることから、ファンの消費電力を低減し省エネ性が高い。加えて、目詰まりがしにくく従来品よりも長寿命化を実現している。

 ダイセルは今後、フィルタろ材の高機能化をさらに進め、2030年に売上高40億円を目指す。ダイキンは、差別化ろ材を搭載したフィルタの新商品について、2023年度から欧米を中心に展開していくとした。

 ダイキンはテクノロジー・イノベーションセンターを中心に、外部の技術や知見を取り入れた「協創イノベーション」に注力。またダイセルも、新中期戦略で「社会ニーズを的確に捉えた事業創造を行う会社になる」ことを掲げ、顧客の課題をもとにした協創の取り組みを推進している。今回の成果をもとに両社は、世界初・世界№1の商品創出に向けた協創をさらに強化していく考えだ。

 

NEDO スマートセルを開発、神戸大にパイロットラボ

, ,

2021年3月11日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と神戸大学はこのほど、目的物質の生産能力を大幅に高めた細胞「スマートセル」を開発するプラットフォームの確立を目指すため、これまでに開発してきた要素技術を集積したパイロットラボを神戸大学先端融合研究環の統合研究拠点内に整備した。両者は、植物や微生物による高機能品生産技術の開発「スマートセルプロジェクト」に取り組んでいる。

 同プロジェクトでは開発している基盤技術を中心に先端的なバイオテクノロジーと計算科学を組み合せることで、設計(デザイン)、構築(ビルド)、試験(テスト)、学習(ラーン)のワークフロー(DBTL)を展開し、医薬品を含むファインケミカルやバイオベース化学品、バイオ燃料などの様々な有用物資生産にバイオプロセスを取り入れ、ものづくりを加速させることを目指している。

 今回、両者は、同プロジェクトに参画する様々な機関が共同開発した要素技術群が集積されたパイロットラボを神戸大学先端融合研究環の統合研究拠点内に整備。このパイロットラボでは、既存の手法では数年かかっていたスマートセルの開発を、独自に開発した長鎖DNA合成技術やハイスループット組み換え技術と高速・高精度の細胞代謝物測定技術を組み合わせることで従来の5分の1以下の期間で実現できる。

 今後、実際に企業などがパイロットラボを「スマートセル開発プラットフォーム」のプロトタイプとして広く活用することにより、ターゲットとする特定の物質に対するスマートセルを高速に構築し、高機能な化学品や医薬品などを効率よく生産する次世代産業「スマートセルインダストリー」の創出を目指していく方針だ。

スマートセル DBTLワークフロー
スマートセル DBTLワークフロー

 

三菱製紙 高砂工場でセパレータを増設、22年4月に稼働

, , ,

2021年3月11日

 三菱製紙はこのほど、主にバッテリーセパレータの増産のために、高砂工場に湿式不織布生産設備を増設すると発表した。投資金額は約18億円で、営業運転開始は2022年4月を予定している。

 現在バッテリーセパレータは、同工場にある1台の湿式不織布抄紙機で生産しているが、この抄紙機ではバッテリーセパレータのほかにRO膜などの水処理膜用基材の生産も行っており、水処理膜用基材向けの需要拡大に伴い生産能力不足が課題になってきていた。

 一方、バッテリーセパレータも、日本、中国、韓国などを中心に需要が拡大。特に昨年のコロナ感染の世界的拡大によりリモートワークをはじめとするネットワークインフラ需要が旺盛となっており、加えて、自然エネルギー関連設備、自動車の電装化および電動化などの影響でセパレータを使用しているEDLC(電気二重層キャパシタ)や固体コンデンサの需要も拡大し、その傾向は今後も継続すると見られている。さらに、産業車両用に使用されるLIB用セパレータなど、長寿命と安全性が求められるLIBで使用されている不織布セパレータや、このLIB用セパレータの基材を利用した薄膜電磁波シールド用基材に関しても、需要の拡大が見込まれている。

 こうした中、同社は、新たに湿式不織布生産設備を増設し、薄く高精度が求められるバッテリーセパレータなどの薄型不織布の生産に特化させることを決定。既存の設備は主に水処理膜用基材の生産に使用する。これにより、それぞれの製品群での生産性向上と品質安定化を図り、今後の需要拡大に対応していく考えだ。

北海道三井化学 植物細胞の単回使用培養バッグを開発

, ,

2021年3月11日

 北海道三井化学と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、植物細胞向けの培養装置として撹拌翼を使わずに800ℓスケールでの培養を可能にしたシングルユース(単回使用)バッグを開発したと発表した。

開発した植物細胞培養に適したシングルユースバッグ
開発した植物細胞培養に適したシングルユースバッグ

 撹拌コントロールを含む制御ユニットが不要なことから、バイオ生産プロセスのコストの大幅低減が可能になる。また、使い捨て培養バッグのため、洗浄・滅菌工程が不要で製造期間を短縮するほか、外界からの微生物混入などのリスクを低減できるなど多くのメリットがある。今後は開発したシングルユースバッグを活用し、多様な植物由来機能性物質を高効率に生産することで「スマートセルインダストリー」の実現に貢献していく考えだ。

 北海道三井化学は京都大学と共同で、NEDOが行う「植物等の生物を用いた高機能品生産技術の開発(スマートセルプロジェクト)」事業に採択され、2016年度より、「イチイ細胞培養技術を用いたタキサン系医薬中間体10‐デアセチルバッカチンⅢ(10-DAB)の効率生産法開発」を進めている。

 10-DABは、イチイ属植物に含まれるタキサン系抗ガン剤パクリタキセルの生合成中間体化合物で、他のタキサン系抗ガン剤ドセタキセル、カバジタキセルは10-DABから半合成され製造されている。タキサン系抗がん剤は細胞分裂に重要な役割を果たす微小管に結合・安定化することで脱重合を阻害し、細胞分裂を妨げ抗がん作用を示すことが知られている。このため子宮頸がんや卵巣がん、胃がん、非小細胞肺がんなど、多くのがん種に対して高い有効性が確認されており、がん治療に広く使用されている。

 一方、タキサン系抗がん剤は複雑な構造をもつことから、化学合成による供給は実質不可能と考えられており、海外ではイチイの樹木を10年にわたり栽培し抗がん成分を取り出す手法が主流となっている。しかし、長期間の栽培は自然災害や病虫害の発生リスクが高く、抗がん成分を安定供給する上で大きな課題となっている。

 北海道三井化学は、今回開発したシングルユースバッグの実用化を図るとともに、引き続き10-DABの高効率生産技術の開発を推進していく考えだ。

DIC バイオマス原料の軟包装材用接着剤、展開を加速

, ,

2021年3月11日

 DICは10日、バイオマス原料を使用した軟包装材用ラミネート接着剤「ディックドライ BMシリーズ」の市場展開を加速すると発表した。同製品は、植物由来の原料を一定比率以上使用することでバイオマス度10~20%を実現した環境調和型製品で、すでに食品や日用品などの軟包装材料用途として販売を開始。今後、国内だけでなく海外でも販売を拡大することで、2025年には売上高10億円を目指す考えだ。

 食品や日用品などのパッケージに使われる軟包装材料は、多層のラミネート構造になっているため現状リサイクルが難しく、そのほとんどは廃棄後に焼却処理されCO2として排出されている。バイオマス原料は、植物が成長する過程でCO2を吸収するため、廃棄の際に燃焼しても全体としてはCO2量が増加しない。バイオマス原料を使用することで、CO2排出を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」に貢献することができる。

 同社が開発したバイオマス接着剤は、有機溶剤で希釈してラミネート工程に使用する「ディックドライ LX-BMシリーズ」に加え、ラミネート工程の際のVOC(揮発性有機化合物)やCO2の排出量削減に寄与する無溶剤型接着剤「HA-BMシリーズ」がある。いずれのシリーズもバイオマス原料を含有しており、日本有機資源協会が認定するバイオマスマークを取得。また、従来の石油由来の接着剤と同等の接着性能を発揮する。

 DICグループは、中期経営計画の中で地球環境のサステナビリティに貢献するパッケージソリューションの提供を目指している。パッケージングマテリアル事業では、プラスチックの3R(リデュース・リユース・リサイクル)を切り口に、今後もリサイクルや環境面に配慮した代替素材の開発に注力し、循環型社会の実現に貢献していく方針だ。

 

NEDO レーザー技術を連携、プラットフォーム構築

, , , , , , , , , , , , , , ,

2021年3月10日

 NEDOはこのほど、事業成果を集約し、各装置がもつ加工品質の計測・評価技術やデータベースといった共通基盤技術を組み合わせることで、レーザー加工の課題解決に寄与する「柏Ⅱプラットフォーム」を構築した。

 NEDOが実施中のプログラム「高輝度・高効率次世代レーザー技術開発」(2016~2020年度)では、東京大学、産総研、三菱電機、スペクトロニクス、大阪大学、浜松ホトニクス、パナソニック、パナソニック スマートファクトリーソリューションズ、金門光波、千葉工業大学、レーザー技術総合研究所、ギガフォトン、島津製作所などが参画し、様々な特徴をもつ、最先端のレーザー光源・加工機を開発してきた。

 特に、難加工材の高品位加工を目指した今までにない短波長の高輝度レーザー加工機や、広範囲の焼き入れ加工などを可能とする高出力半導体レーザー、銅のマイクロ溶接などで期待される高出力高輝度青色半導体レーザー、加工や計測用途に期待される短波長ファイバーレーザーは、同プロジェクトで新たに開発した技術として早期実用化を進めるとともに、今回構築した加工プラットフォームで幅広くユーザーを掘り起こしていく。

 NEDOと13法人は今後、レーザー加工に関する産学官協創のために東京大学が設立した「TACMIコンソーシアム」と連携し、様々な材質、用途での加工事例を蓄積していくことで、同プラットフォームの機能向上に取り組む。これにより各種装置の特性とユーザーニーズの効率的なマッチングや装置横断的な加工データ取得を実現し、効率的かつ迅速な最適加工条件の探索が可能なものづくりの実現を目指すとともに、日本の競争力強化に貢献していく。

東洋紡 モノマテリアル化したOPPバリアフィルム開発

,

2021年3月10日

 東洋紡はこのほど、モノマテリアル(単一素材)の包装材を実現する、高いバリア性をもつ二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム「DP065」を開発したと発表した。今月中旬からサンプル出荷を開始し、4月下旬の販売開始を目指す。

 同開発品は、フィルム1㎡あたり1日(24時間)に透過する水蒸気量(g)を示す水蒸気透過度が2g、また、1気圧下、1㎡あたり1日に透過する酸素量(CC)を表す酸素透過度は2CCと、高いバリア性をもつ。近年、消費者の環境への意識が世界的に高まる中、環境に配慮した製品の需要が増している。一方で、高い品質が要求される食品などの包装材は、PETフィルムやアルミ箔、ポリエチレンフィルムなど、異なる機能をもった複数の素材を貼り合わせて要求性能を満たすことが一般的であるため、リサイクルが困難という課題があった。

 同社が開発した「DP065」は、単一素材で構成しながらも高いバリア性を付与したほか、印刷やラミネート、製袋などに対する優れた加工適性、FDA規制やEU規則など国際的な基準に適合する安全性といった、包装材に求められる様々な機能を併せもつOPPフィルム。モノマテリアルの包材設計が可能となるため、プラスチックの再生利用が容易になるほか、非塩素系材料の使用により、リサイクルや焼却時に有害な塩素系ガスが発生しない特長も備えている。

 同社はこれまでも、シーラント素材などに使われるポリエステルフィルム「オリエステル」を上市し、モノマテリアル化を推進してきた。今後はポリオレフィン素材についても環境に配慮した高機能なフィルム製品のラインアップを拡充し、グローバル市場に展開することで、循環型経済の実現に貢献していく考えだ。