ENEOS 再エネ活用型CO2フリー水素の実証を開始

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2020年12月14日

 ENEOSはこのほど、北九州パワー、北九州市、福岡県、IHI、福岡酸素とともに、北九州市で地域の再生可能エネルギーを有効活用したCO2フリー水素製造・供給実証事業を環境省からの委託を受けて実施すると発表した。複数の再エネを同時に制御可能な「水電解活用型エネルギーマネジメントシステム」を実装する国内初の実証となる。2022年度までの3カ年で実施。初年度の事業費は約2億円、3年間で総額8億円を予定する。

 地域の余剰再エネを活用した低コストのCO2フリー水素を製造・供給・利用するモデルを構築することで、水素の社会実装と電力の需給調整の両面に貢献することを目指す。具体的には、太陽光や風力、ごみ発電(バイオマス)など多様な再エネ電源の中から、エネルギーマネジメントシステム(EMS)によって余剰な電力を選択的に調達することで、低コストのCO2フリー水素を製造。このCO2フリー水素は、福岡県内各地に輸送し、水素ステーションや燃料電池フォークリフトのある物流施設、北九州水素タウンのパイプラインなどで利用していく。

 ENEOSは、同社八幡東田水素ステーションでのCO2フリー水素の活用に加え、北九州水素タウン内の実証住宅などにつながる水素パイプラインへのCO2フリー水素供給を担当する。また、同事業と併せて、事業関係者と連携し、水電解装置と水素ステーションを組み合わせた将来的な地産地消型水素サプライチェーンの事業性評価の実施を予定。

 同社は、水素ステーション事業などでの知見を生かし、水素製造・輸送のコスト試算や水電解活用型EMSの最適化検討などを行う考えだ。九州地域では、再エネの普及が進む一方で、電力の需給バランスを維持するため、再エネの一時的な発電停止を求める出力制御が発生しており、電力の需給調整が課題となっている。電力の需給ギャップを埋める手段の1つとして、余剰電力を活用し、水の電気分解によって水素ガスを作るPower to Gas(P2G)が注目されている。

北九州市での地域の再エネを有効活用したCO2フリー水素製造・供給実証事業
北九州市での地域の再エネを有効活用したCO2フリー水素製造・供給実証事業

昭和電工マテリアルズ 半導体材料を台湾で増強、韓国では新設

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2020年12月14日

 昭和電工マテリアルズはこのほど、台湾子会社(SDSMT)で半導体回路平坦化用研磨材料(CMPスラリー)、プリント配線板用積層材料(プリプレグ)および感光性ソルダーレジストの生産能力を増強するとともに、韓国子会社(SDMKR)にCMPスラリーの工場を新設すると発表した。総投資額は約200億円。SDSMTでは、CMPスラリーを2022年1月に、プリプレグと感光性ソルダーレジストを2023年1月に、それぞれ量産を開始し、SDMKRの新工場は来年10月に稼働する予定だ。

CMPスラリー
CMPスラリー

 近年、5Gの実用化や、自動車産業ではCASE分野での技術革新が進み、半導体市場は年率5%超の高成長が期待されている。同社のセリア系スラリーは、独自の砥粒技術により、研磨傷の低減を実現できる点が評価されており、SDSMTの能力増強とSDMKRでの工場新設に計110億円を投資し製品供給体制を強化する。

プリント配線板用高機能積層材料(プリプレグ)
プリント配線板用高機能積層材料(プリプレグ)

 プリプレグについては、SDSMTで今年5月に工場を新設したが、さらなる需要に対応するため生産能力を増強。さらに感光性ソルダーレジストについても、これまで日本国内でのみ生産していたが、今回SDSMTへ液状ソルダーレジスト(LSR)およびフィルム状ソルダーレジスト(DFSR)の生産設備を新たに導入する。

感光性ソルダーレジスト
感光性ソルダーレジスト

 SDSMTでは、これら3製品の生産能力を増強することで、中華圏や東南アジア圏、韓国などの顧客へ、よりタイムリーに製品供給できるとともに、他の生産拠点で緊急事態が発生した際でも、台湾から世界の顧客へ製品提供が可能になる。

 同社は、5GやAI、CASE分野での技術革新に貢献する製品の供給体制を強化することで、情報通信分野で、半導体市場の伸びを上回る成長を目指す。また、今後も昭和電工グループの一員として、引き続き多様な材料の提供と、素材設計から機能評価までの包括的ソリューションの提案によって高度な顧客ニーズに応えるワンストップ型の先端材料パートナーを目指していく。

出光興産 徳山事業所に高効率ナフサ分解炉を新設

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2020年12月14日

 出光興産は11日、徳山事業所(山口県周南市)に高効率ナフサ分解炉を新設したと発表した。今後、試運転期間を経て、来年2月に商業運転を開始する。

新設したナフサ分解炉
新設したナフサ分解炉

 高効率ナフサ分解炉は、原料であるナフサを短時間で熱分解することでエチレンの得率を高め、熱効率を向上させる。これにより、従来の分解炉と比較し約30%の省エネルギー効果が発揮でき、年間約1万6000tのCO2削減に寄与する。ナフサは粗製ガソリンとも呼ばれる石油製品の1つで、分解炉を経由し熱分解することで、エチレンやプロピレンなどの石化製品の基礎原料となる。

 同事業所ではエチレン製造装置により年間約62万tのエチレンを生産し、主に周南コンビナートに供給している。こうした中、エチレン製造装置内にある旧型のナフサ分解炉2基を停止し高効率ナフサ分解炉1基を新設した。

 なお、今回の件は工場の省エネルギー化を支援する経済産業省の「省エネルギー投資促進に向けた支援補助金」を活用している。今後も、省エネルギー推進により事業活動に伴う環境負荷の低減に努めるとともに、地球環境と経済が調和した地域社会形成への貢献を目指す。

積水化学工業 電子機器向けUV+湿気硬化型接着剤開発

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2020年12月14日

初期の接着力を向上、保圧保持工程を大幅に短縮

 積水化学工業は11日、高機能プラスチックスカンパニーが、今年3月に上市した電子機器の組み立て工程に使用するUV+湿気硬化型接着剤「フォトレックB」の性能を改良したと発表した。すでに一部スマートフォンメーカーに採用されており、今後、各メーカーへの提案活動を強化することで、2022年度までにスマートフォン部品接合用接着剤のシェア15%獲得を目指す。また、海外をメインにウェアラブルや大型テレビといった他デバイスへの展開も視野に入れていく考えだ。

 同日、オンラインによる説明会を開催した。スマートフォンの外装部(筐体とカバーパネル)の接合には、両面テープと接着剤の2種類がほぼ半分ずつを占めている。接着剤では主にポリウレタン系のPURホットメルトが使用されているが、液ダレ処理や保圧治具固定、養生・固定化といった工程必要となり、生産工程の効率化が課題となっていた。

 こうした中、同社は今年3月にUV+湿気硬化型接着剤「フォトレックB」を上市。UV照射で接着力を維持したまま形状を保持することで液ダレが起こらず、また0.4mm幅も対応可能となっており、スマートフォンのトレンドである狭額縁にも適用できる。また、完全硬化後も一定の柔軟性を保っていることから、落下時の衝撃を吸収でき、各部品の破損防止にも貢献する。こうした特長から、顧客からは高い評価を得ていた。

 今回、さらなる性能向上ニーズに対応。原料配合設計の工夫でUV硬化後の初期接着力をさらに改善し、塗布、UV照射後に発現する接着力を短時間化した。これにより、接合部材を貼り合わせしたときの保圧や保持に必要とする時間、治具を短縮・削減することで、従来の10分の1程度まで生産工程の効率化を実現。電子機器の組み立て工程では工場のスマート化が進んでいることから、工程の自動化、少人化に貢献する「フォトレックB」の採用拡大が期待される。なお現在、狭額縁用接着剤の市場(2019年)は71t程度と見られるが、今後は年率10%以上の成長が予測されている。

 同社は中華系スマートフォンメーカーを中心に拡販を図り、2022年に市場シェア15%、さらに数年後にはシェアトップを目指していく考えだ。

フォトレックBのスマートフォンにおける使用部位のイメージ
フォトレックBのスマートフォンにおける使用部位のイメージ

フォトレックBの塗布後の接着力の変化
フォトレックBの塗布後の接着力の変化

 

NEDO 発電とCO2回収を一体化、コスト低減を図る

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2020年12月11日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、発電とCO2分離・回収プロセスを一体化したシステムの研究開発として、「多様な燃料を利用するCO2回収型ポリジェネレーションシステム基盤技術開発」と、「CO2分離・回収型ポリジェネレーションシステム技術開発」の2件のテーマを採択した。

 発電システムに燃料をガス化するプロセスを統合し、CO2の分離・回収までを一体化することでエネルギー効率を向上させ、CO2の分離・回収コストの低減に取り組む。併せて、発電燃料には石炭やバイオマス、炭素系廃棄物(廃プラスチックなど)を利用し、水素や化学品といった有価物を併産するポリジェネレーションシステムの構築にも取り組む。これにより、システムの経済性を高めてCO2分離・回収コストの低減につなげるだけでなく、中小規模発電を含めた実用化・事業化も視野に入れることができる。

 一方、出力が安定しない太陽光や風力のような再生可能エネルギーの活用を増やすには、需要と供給の不均衡を防ぐ電力需給調整が重要となる。このため同事業では、電力需給調整力をポリジェネレーションシステムに包括することも検討する。同事業によりCO2分離・回収コストを現状のCO2 1t当たり4000円程度から1000円台にまで低減する発電技術の確立を目指す。そして、将来のカーボンリサイクル技術の実用化につなげていくことで脱炭素社会の実現に貢献する。

 なお、今回の事業名は「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/次世代火力発電基盤技術開発/CO2分離・回収型ポリジェネレーションシステム技術開発」。期間は2020~2024年度で、全体予算は30億円程度となる。

本事業で研究開発するポリジェネレーションシステムのイメージ
本事業で研究開発するポリジェネレーションシステムのイメージ

BASF PESU樹脂がコーヒーマシンピストンに採用

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2020年12月11日

 BASFはこのほど、ポリエーテルスルホン(PESU)「Ultrason(ウルトラゾーン)E 3010 MR」がデロンギ社(イタリア)の新型コーヒーマシン「マグニフィカS ECAM 22」の抽出ユニットの上部ピストンに採用されたと発表した。

 「ウルトラゾーンE 3010 MR」は180℃までの耐熱性・耐蒸気性と機械的特性、長時間の温度変化に対する寸法安定性に優れ、食品との接触、安全性、加工性と組み立てに関するデロンギ社の厳しい要件を満たした。有害物質を含まず温度に影響されない機械的特性で、コーヒーマシン用のポリエーテルイミド(PEI)などの素材にまさる。

 ピストンはマシンの耐用年数期間中、コーヒー抽出中の高圧・高温蒸気に曝される。「ウルトラゾーンE 3010 MR」はISO規格試験で、134℃の加熱蒸気滅菌を2000回繰り返した後も、機械的特性を維持し、ストレスクラッキングに対する高い耐性も実証された。射出成形グレードは複雑な部品の成形性に特化。BASFのシミュレーションツール「Ultrasim(ウルトラシム)」の金型流動解析により最適な金型を開発し、上部ピストンのような薄肉で長く繊細なねじ部分をもつ複雑な形状の部品を製造できる。流動長の長い製品もボイド無しで充填でき、卓越した機械的特性により、ピストンを抽出ユニットにねじで取り付けられる。

 「ウルトラゾーン」は、PESUの「ウルトラゾーンE」、ポリスルホンの「ウルトラゾーンS」、ポリフェニルスルホンの「ウルトラゾーンP」などスルホン系樹脂製品群の登録商標。電子機器、自動車、航空宇宙産業にとどまらず、ろ過用メンブレンや、温水や食品と接する部品にも使用されている。優れた特性により、熱硬化性樹脂、金属、セラミックの代替として利用することもできるとしている。

 

昭和電工 SiCエピウェハーが燃料電池車向けに採用

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2020年12月11日

 昭和電工は10日、同社のパワー半導体材料であるSiC(シリコンカーバイド)エピタキシャルウェハーの6インチ(150mm)品が、デンソー製の燃料電池自動車向け次期型昇圧用パワーモジュールに採用されたと発表した。

 同社のSiCエピウェハーは2009年の上市以来、その高い品質によりシステムサーバー電源や太陽光発電、高速充電スタンド、鉄道車両など様々な用途に採用されてきた。今回、これまでの同社製品の採用実績と、業界最高水準の特性均一性、低欠陥密度といった特性が高く評価され、同パワーモジュールへの採用となった。

 SiCパワー半導体は、現在主流のシリコンパワー半導体に比べて高電圧特性と大電流特性に優れ、電力損失を大幅に削減できることから、電力制御に使うモジュールの高効率化を実現する製品として、電気自動車に搭載される充電器や高速充電スタンド、鉄道車両などへの採用が進む。また、2025年以降には電気自動車のパワーコントロールユニット(PCU)へ本格搭載が見込まれ、今後さらなる需要拡大が期待されている。

 同社グループは、事業活動を通じたSDGs課題解決に貢献し、豊かさと持続性の調和した社会を創造する「社会貢献企業」を目指している。エネルギーの効率的な使用を実現するSiCエピタキシャルウェハーは、2025年市場規模1000億円から、PCUへの本格搭載によりさらに市場拡大が加速すると予想されている。

 同社は世界最大の外販エピウェハーメーカーとして、〝ベスト・イン・クラス〟をモットーに、急拡大する市場に高性能で高い信頼性品をもつ製品を供給し、SiCデバイスの普及に貢献していく考えだ。

産総研 低コスト成膜技術で多接合太陽電池の普及を加速

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2020年12月10日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、同ゼロエミッション国際共同研究センターと大陽日酸が共同で次世代太陽電池普及の鍵となるハイドライド気相成長(HVPE)法によるアルミニウム系材料の成膜と太陽電池への応用を可能にする装置を開発した。

 Ⅲ-Ⅴ族化合物太陽電池はバンドギャップ(光吸収波長)の異なる材料を積層した多接合構造で発電効率は最も高いが、高価な原料と基板、遅い成膜速度など製造コストの高さが課題であった。また、高効率化には各構成セルの高性能化が必要で、特にインジウム・ガリウム・リン(InGaP)トップセルの表面電流損失をAlIn(Ga)P層で抑制することが不可欠だ。

 両者は2015年度よりNEDOの支援を受け、有機金属気相成長法より低コストであるHVPE法の水平置き縦型装置の開発を進め、高速成膜性を実証。今回Al系材料の高品質成膜を検討した。

 HVPE法では、金属と塩化水素ガスを700~850℃の炉内で反応させ金属塩化物前駆体にするが、AlはAlClとなり石英反応炉を損傷するため使用できなかった。今回反応温度を500℃に下げ、AlCl生成を抑え石英との反応性の低いAlCl3を生成することで、Al系材料の成膜が可能となった。これによりInGaPセル表面を不活性化でき、出力電流が増大し、発電効率が向上した。

 また、AlAsの成膜が可能になったことで、基板コストも低減できた。基板上にAlAs層、太陽電池層の順で成膜。AlAs層をフッ化水素酸で除去して太陽電池層を基板から剝離することで、基板は再利用できる。剝離した太陽電池層は薄膜なため、産総研の半導体接合技術「スマートスタック」により異種材料と接合して発電効率を向上できる。今回、剝離や接合の実証にはGaAsセルを使ったが、InGaPセルや多接合構造でも同様に剝離や接合が可能だ。

 これまで2インチ基板で検討したが、今後6インチサイズが成膜できる量産型HVPE装置を開発し、さらにそのⅢ-Ⅴ族化合物太陽電池をシリコンやCIGSなどの安価な太陽電池と接合して発電効率35%以上、発電コスト200円/Wの太陽電池の実現を目指す。

三洋化成ら ナノ粒子利用の農薬送達システム研究が採択

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2020年12月10日

 三洋化成工業と岡山県農林水産総合センター、名古屋大学はこのほど、共同で進める研究課題「ナノ粒子を用いた農薬送達システムによる革新的植物免疫プライミング技術の開発」が生物系特定産業技術研究支援センターのイノベーション創出強化研究推進事業(基礎研究ステージ)に採択されたと発表した。

 病害虫抵抗性誘導剤は植物の免疫力を高めて耐病性を向上させる農薬で、生態系への影響や環境負荷が少なく病害虫が耐性をもつこともない。効果の持続性が高く省力的で利便性が高いが、処理濃度や方法、植物の種類により生育不良などの薬害があり、実用は一部の作物に限られる。適切な用量で植物細胞に作用させた場合、病害虫の攻撃時のみ反応する潜在的な免疫機能を付与するプライミング効果が期待できる。今回、病害虫抵抗性誘導剤を生分解性ナノ粒子に内包し、植物細胞内で適切な用量を徐放する農薬送達システムの基礎研究を進める。

 三洋化成が開発した生分解性材料と界面活性剤からなる葉面散布向けナノ粒子は、農薬を内包し、生分解性材料の分解とともに農薬を放出。界面活性剤の組成設計で放出挙動が制御できる。岡山県農林水産総合センター生物科学研究所による予備検討で、病害虫抵抗誘導剤の徐放が確認できた。今後、代表研究機関である名古屋大学は、世界初の植物の病害防除応答を可視化する免疫シグナルバイオセンサー技術を使い、植物免疫シグナルの評価とナノ粒子による植物免疫プライミング効果の特性解析と研究総括を行う。

 生物科学研究所は、植物の抵抗性誘導の知見やマイクロアレイ解析で集積した遺伝子発現プロファイルのビッグデータを使って、植物免疫プライミングの活性評価や植物免疫プライミング技術を構築する。また三洋化成は、界面制御技術や高分子設計・合成技術により、病害虫抵抗性誘導剤内包の生分解性ナノ粒子の最適な構造設計・合成とその薬剤送達システム特性の解析などを行う。同研究を通して効果的な植物免疫プライミング技術を確立し、農業現場や環境への負荷を軽減した安定な作物生産に貢献していく考えだ。

 

富士フイルム 再生医療分野でiPS細胞提供と特許供与を開始

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2020年12月10日

 富士フイルムはこのほど、バイオ医療領域の事業成長を加速させるため再生医療分野で新たな取り組みを展開すると発表した。

 同社米国子会社でiPS細胞の開発・製造・販売でリードするFUJIFILM Cellular Dynamics(FCDI)が、治療用iPS細胞の提供とiPS細胞作製技術に関する特許ライセンス供与を本格化。第1弾として特許ライセンスの全世界での非独占的使用権をLonza Walkersvilleに許諾した。

 FCDIは、エピソーマルベクターや初期化因子を複数導入してiPS細胞を安全かつ効率的に作製する技術や、多様な細胞へと分化誘導する技術を早期に確立。今年3月にcGMP対応の新施設を稼働させ、高品質な治療用iPS細胞の生産体制を構築した。今後、再生医療製品の研究開発を進める企業に対し、治療用iPS細胞の提供と作製技術特許のライセンス供与を幅広く行い、顧客の製品開発の支援と生産プロセス開発・製造受託サービスを本格化させ、iPS細胞による再生医療の産業化を推進する。

 富士フイルムはバイオ医薬品や再生医療製品、それらの研究開発や製造での細胞培養に必要な培地など、バイオ医療領域で成長戦略を進めている。バイオ医薬品の開発・製造受託の設備増強や培地の新工場建設など、積極的な設備投資で高まる需要増に迅速に対応する生産体制を強化。基礎研究から生産プロセス開発まで一貫する「バイオサイエンス&エンジニアリング研究所」を日米に設立し、基盤技術や次世代技術の研究を推進している。バイオテクノロジーやエンジニリアング技術、培地技術などグループの技術を結集し、バイオ医薬品の原薬製造の培養から精製までの一貫生産を実現する連続生産システムを業界で初めて開発した。

 同社は事業を通じて社会課題の解決に積極的に取り組むことで、バイオ医療領域の事業成長を加速させるとともに、新たな産業の創出に貢献していく考えだ。