日本ペイントホールディングス 光触媒の水性塗料塗膜上のウイルス不活性化を確認

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2020年11月11日

 日本ペイントホールディングスはこのほど、グループ会社で建築用塗料の日本ペイントが、可視光応答形光触媒を採用した水性塗料(試験用)の塗膜表面に接触した新型コロナウイルスの不活性効果を確認したと発表した。世界保健機関(WHO)の感染症調査機関の認定を受けたガーナ大学医学部附属野口記念医学研究所(ガーナ国アクラ)との共同研究の一環で実証実験を行った。

 試験塗料を塗布した試験片とガラス片に、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を含むウイルス液を接種し、ペトリ皿のカバーの上から蛍光灯を照射。12時間後にウイルスを回収しRT-qPCR(逆転写定量ポリメラーゼ連鎖反応)測定で各試験片表面のウイルス濃度を求め、その比で残存率を算出した。ガラス表面に比べて塗膜表面のウイルス残存率が99%以上減少することを確認した。塗膜表面を機能化する技術として、活用が期待できる。

 同社は塗料・コーティング技術を通じて、安心できる空間作りを提案するための研究開発を、引き続き進めていく考えだ。

ちとせ 〝土は生き物〟「千年農業」で長岡市と協業

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2020年11月11日

 バイオベンチャー企業群・ちとせグループは、農業のコンセプトに掲げる「千年農業」を拡げる活動の日本第1弾として、新潟県長岡市と協業を開始した。 

長岡産の「千年農業」金匠米
長岡産の「千年農業」金匠米

 同社は、人類が千年先まで農業を続けるためのカギは、農地と作物を取り巻く生態系の豊かさを維持することにあるという考えの下、美味しく栄養価が高い作物を持続的に作り続ける「千年農業」を拡げる活動を行っており、これまで東南アジアでの活動を進めてきた。

 今回、「千年農業」の取り組みを日本で展開していくための第1弾として、国内2位の水稲作付面積を誇り、バイオエコノミーに対して積極的に取り組んでいる長岡市と一体となった活動を始めた。

 作物に適した健全な土壌を維持するためには、土壌中の微生物の活性度合いを把握することが重要になる。ちとせグループではバイオテクノロジーの視点から、匠の土作りの見える化に成功、〝土は生き物〟だと捉え、土壌中の多種多様な微生物の動態を定量的に解析することで〝土壌の健全さ〟を科学的に評価している。

 同社は「千年農業」の取り組みの一環として、長岡市農水産政策課とともに市内の米農家を回り、土壌環境の調査を実施。その結果、すべての圃場(ほじょう)について生態系を豊かにし、その維持にまで配慮された土壌であることが確認されたため、同圃場で生産する同市のブランド米「金匠米」を日本で初めて「千年農業」と認証し、7日から販売を開始した。

 長岡市では今後、金匠米だけでなく有機栽培米や特別栽培米、枝豆など市内で生産する作物についても「千年農業」の太鼓判を活用しながら、新たな販路開拓や新たな視点でのブランド化を目指していく。

 一方、ちとせグループは今回の取り組みを皮切りに、様々な地域との協議を進めながら国内外に「千年農業」を拡げることで、持続可能な農業の実現に貢献していく考えだ。

 なお、「金匠米」は、2009年より毎年開催されている「長岡うまい米コンテスト」で、上位約20人の金匠を獲得した最高峰の匠の技をもつ生産者によって作られる長岡産コシヒカリ。今年度の金匠米は、昨年のコンテストで金匠を獲得した生産者の新米コシヒカリのみで製品化を行った。

日本触媒 血管構造の細胞凝集塊作製、移植時に高い治療効果

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2020年11月10日

 日本触媒は9日、3次元細胞培養容器「ミコセル」を用いた細胞培養において、表面に血管末端構造を保有する血管構造を含む細胞凝集塊の形成に成功したと発表した。この血管構造を含む細胞凝集塊は、その形態から再生医療の移植などで、従来の細胞凝集塊より優れた治療効果を発揮することが期待される。

3 次元細胞培養容器「ミコセル」
3 次元細胞培養容器「ミコセル」

「ミコセル」とは、同社が独自技術により開発した3次元細胞培養容器。細胞基材への適度な接着性があるため、生体内での状態により近い細胞凝集塊を均一な粒子径で多量に作製できる。

 近年、細胞を3次元培養することで、様々な形態の細胞凝集塊を形成することが注目されている。その1つとして、細胞凝集塊内部への酸素や栄養の供給を目的に目的組織の細胞と血管内皮細胞を共培養して、血管構造が付与された細胞凝集塊形態の形成が提案されている。この形態は、血管構造が付与されたことで、移植時に患者由来の血管と接続し細胞凝集塊の生着率が上がり、治療効果の向上が期待される。しかし、従来の血管構造を有する細胞凝集塊は、細胞凝集塊内部で血管構造がランダムに形成される。そのため血管構造の方向性の制御や細胞凝集塊表面への血管構造の末端形成が困難であり、移植後の生着と治療効果に課題があった。

 同社は今回、「ミコセル」を用いて幹細胞と血管内皮細胞を共培養して作製した細胞凝集塊で、基材に接着した部分に血管内皮細胞も接着し、そこから細胞凝集塊の垂直方向に複数の血管構造がドーム状に形成されることを見出だした。この構造は従来の細胞凝集塊では見られず、基材接着面に血管内皮細胞が存在することで移植時に速やかに患者由来の血管と接続して高い治療効果が得られることが期待される。また、当該構造を有する細胞凝集塊は血管構造を持たない細胞凝集塊に比べて内部の低酸素状態が改善されることが分かった。

 「ミコセル」で作製した血管構造が付与された細胞凝集塊は、再生医療分野への応用の他、より生体内に近い凝集塊を実験室レベルで作製できるという観点から、臓器モデルの作製や創薬スクリーニングなどにおける動物実験代替の試験への応用が期待される。

 同社では、今回新たに作製した血管構造を含む細胞凝集塊をはじめ様々な分野に「ミコセル」を供給し、連携を進めることで、医療技術の発展に貢献することを目指す。

「ミコセル」上の血管含有細胞凝集塊の特徴
「ミコセル」上の血管含有細胞凝集塊の特徴

 

日本曹達と京都大学 Pt‐W水素発生電極触媒で世界最高効率

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2020年11月9日

 日本曹達と京都大学はこのほど、新たに白金(Pt)とタングステン(W)の固溶合金ナノ粒子(Pt‐W固溶合金)を合成し、水の電気分解による水素発生反応(HER)で世界最高レベルの触媒活性を達成した。

 HERはPt原子上の水素イオンの還元と吸着水素原子間の結合で水から水素ガスを生成する反応で、クリーン燃料の水素製造に重要な技術。Ptは最も高活性だが希少で高価なため、使用量削減や高効率化が求められている。

 Pt触媒の高活性化には水素原子と触媒表面との吸着エネルギーの調整が鍵で、Ptを基本元素とした固溶合金ナノ粒子による改善が検討されているが、周期表8~11族の金属元素が主で、周期表3~7族の遷移金属(Mo、Wなど)の報告はほとんどない。

 固溶合金ナノ粒子は前駆体カチオンを還元剤で還元して合成するが、Wは大きな負の酸化還元電位で還元しにくいため、Ptとの酸化還元電位差を考慮し熱分解法で合成した。収差補正走査透過電子顕微鏡のEDS(X線分光法)分析で、Ptに数%のWがドーピングされた直径約5㎚のPt-W固溶合金であることを確認。酸性条件下のHER特性は、㎃/㎠の電流密度に必要な過電圧はPt単体触媒の7割程度でよく、単位Pt質量当たりの水素発生効率は3.6倍であった。

 理論計算から、W原子に隣接するPt原子は負電荷を帯びて水素原子の吸着エネルギーが弱まり、還元された水素原子が水素分子として放出されやすくなり高効率化する、と結論づけた。W増量によるPt活性サイトの増加、周期表3~7族の他の遷移金属との組み合わせ、HER触媒としての材料最適化により、活性が飛躍的に向上する可能性がある。高性能HER触媒の実現と社会実装によるクリーン燃料「水素」の効率的生産で、エネルギー問題や環境問題を解決し、安全でエコロジーな社会実現への貢献が期待される。

デンカ 窒化珪素を能増、機能性セラミックス材料を強化

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2020年11月6日

 デンカは5日、xEV向け放熱材料の事業強化の一環として、大牟田工場(福岡県)で製造する窒化珪素の能力を現行比から約3割増強すると発表した。稼働時期は2022年度下期を予定しており、機能性セラミックス事業の強化を目指す。

窒化珪素
窒化珪素

 窒化珪素とは熱的・機械的特性に優れた代表的なエンジニアリングセラミックの1つであり、同社は生産能力、市場シェア共にトップクラスを誇っている。xEVの普及に伴い、放熱材料市場の伸長だけでなく、車載部品の高性能化により、高熱伝導性や高信頼性など、その要求水準が飛躍的に高まっている。同社の窒化珪素は、高熱伝導性をはじめ高強度、耐摩耗性、高信頼性といった特長から、車載駆動用インバーター向け放熱基板や風力発電向けベアリングボール、半導体製造装置など構造材用途で高い評価を得ている。今回の能力増強により、安定供給体制をさらに強化するとともに、多様なユーザーニーズに答えていく。

 同社は経営計画に基づく成長戦略の一環として、5G・xEVを中心とした環境・エネルギー分野に注力。1915年の創業以来培ってきた無機材料の高温焼成・窒化反応・粒径制御などの基盤技術をもとに、球状溶融シリカ、窒化ホウ素、球状アルミナ、蛍光体など多岐にわたる機能性セラミックスを提供するトップメーカーとして、先月市場に投入した球状マグネシアのほか、新たな素材の開発にも積極的に取り組んでいる。また、今後需要の増加が見込まれるLIB向け超高純度アセチレンブラックの安定供給に努めるとともに、5G用途のLCPフィルムや低誘電絶縁材料(LDM)など、機能性セラミックス以外の新素材開発も進め、環境・エネルギー分野の2022年度の営業利益200億円達成を目指す。

 同社はSDGsを羅針盤に、通信速度の高速化や電気自動車の性能向上に向け5G・xEV用途を広げ、スペシャリティー事業の成長を加速させていく方針だ。

環境・エネルギー分野の主力製品図
環境・エネルギー分野の主力製品図

 

日本触媒など3社 高吸水性樹脂の新規リサイクル技術を開発

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2020年11月6日

 日本触媒は5日、リブドゥコーポレーション(大阪府大阪市)、トータルケア・システム(福岡県福岡市)と共に、使用済み紙おむつ中の高吸水性樹脂(SAP)に関する新規リサイクル技術を開発したと発表した。なお今回の技術は、世界で流通する様々なSAPに適用できる。使用量が増加し続ける紙おむつに対し、リサイクル促進への期待が高まっている。

使用済み紙おむつの再資源化
使用済み紙おむつの再資源化

 環境省が今年3月に「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン」を公表。国土交通省でも下水道への紙おむつ受入れのためのガイドライン策定を目指している。こうした中、紙おむつのリサイクルシステムを国内で初めて構築したトータルケア・システムは、リサイクル処理後の再生パルプを建築資材の原料(外壁材、内装材など)として有効利用している、ただ、プラスチックはマテリアルリサイクルの研究開発を進めているものの、固形燃料としてサーマルリサイクルしている。

 日本触媒は2018年より、SAPのリサイクルの取り組みに参加。リサイクル技術の検討を開始し、大人用紙おむつメーカー大手のリブドゥコーポレーションとトータルケア・システムの3社による共同研究により、新規リサイクル技術の開発に成功した。

 これまで使用済み紙おむつのリサイクル工程では、尿を吸収して大きく膨らんだSAPは紙パルプの回収率を低下させたり、SAPを回収しても性能低下が大きく再利用が難しかったり、といった課題があった。これらの課題に対し、①尿を吸収して大きく膨らんだSAPに処理を施して紙パルプとの分離性を高め、紙パルプ回収率を向上させる技術、②SAPの性能低下を最小限に抑えて回収する技術を開発。これらの技術は、リサイクル時の省エネルギー化や河川などの水質保全も配慮され、日本触媒以外が製造するSAPにも適用が可能だ。

紙おむつの再資源化技術 三社の役割
紙おむつの再資源化技術 3社の役割

 3社は今後、同技術を実用レベルまで高めていくとともに、素材原料メーカー、紙おむつメーカー、リサイクル事業者である3社の知見を生かして、リサイクルしやすい素材開発、紙おむつ開発、環境にやさしい使用済み紙おむつ新規リサイクル技術の開発・実用化を進める計画だ。

 

NEDO 無電力熱エネ輸送のループヒートパイプを開発

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2020年11月4日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT)と名古屋大学とともに、世界最大6.2kWの熱エネルギーを無電力で輸送できるループヒートパイプを開発した。3者は、エネルギーの供給過程で排出される未利用熱の革新的活用技術に関する研究開発に取り組んでいる。

世界最大6.2kWの熱エネルギーを無電力で輸送できるループヒートパイプ
世界最大6.2kWの熱エネルギーを無電力で輸送できるループヒートパイプ

 近年、工場排熱や自動車エンジンからの排熱など、これまで未利用であった熱エネルギーを有効活用する技術が注目されている。このような熱は、排出されている場所が利用先から離れている場合が多く、有効利用のためには、高温の熱源から利用先まで熱を損失なく運ぶ熱輸送技術が極めて重要になる。

 こうした中、2009年に名古屋大学は、電力を使用することなく半永久的に大量の熱輸送を可能にするループヒートパイプ技術を開発。ループヒートパイプは、多孔体が液を吸い上げる毛管現象を駆動源としており、高温廃熱を動力源として駆動することができるため、電力不要の熱輸送技術として期待されており、近年、スマートフォンなどの電子機器への適用が広がっている。しかし、これまでは熱輸送量が数百W程度と少なく、自動車や工場の排熱利用に適用できるような大量の熱輸送を行うことができなかった。

 そこでNEDOは、TherMATと名古屋大学とともに、未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発事業の一環として、「ループ型ヒートパイプの研究開発」に取り組み、今回、大熱量ループヒートパイプを開発し、電力を使わずに6.2kWという世界最大の熱エネルギーを2.5m輸送することに成功した。

 今後、自動車のエンジンや工場からの排熱利用、電気自動車やデータセンターの機器類の熱マネジメント、大型発熱機器の冷却などへの適用を図り、抜本的な省エネルギー化を目指す。

日本ペイント 自動車補修用のオール水性塗料システムを発売

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2020年11月4日

 日本ペイントはこのほど、自動車補修用の次世代型オール水性システム「nax E-CUBE(イーキューブ)WB水性システム」に作業者の健康配慮と環境負荷低減を両立させた新製品「(2:1)NNクリヤー」と「プラサフ ヴィータ」を加え全面リニューアルしたと発表した。

 環境問題が重視される中、自動車補修業界でも従来の溶剤系塗料から環境に配慮した水性塗料への置き換が進むが、水性塗料では溶剤系塗料並みの乾燥性と仕上がり性は困難で、カラーベース(色彩や意匠)に留まっていた。また、生産性向上だけでなく、作業者の健康や環境への意識が高まり、働きやすい安全・安心な職場環境を実現するため、クリヤー(光沢と耐候性)やプラサフ(プライマーとサーフェーサー兼用の中塗り)の水性化も求められてきた。

 「nax E-CUBE WB水性システム」は人と環境の両面に配慮した次世代型オール水性システムで、VOC排出量は溶剤系システム比で約70%削減し、作業性向上と環境負荷低減を同時に可能とした。「(2:1)NNクリヤー」は70℃20分の乾燥でポリッシュ可能な速乾性と同社溶剤系クリヤーと同等の高外観を備え、「プラサフ ヴィータ」はパテ巣穴隠ぺい性を維持しつつ乾燥性を向上させた。今後はウェットオンウェットやグレーバリエーション仕様の設定など、さらなる作業効率の改善に取り組む。

 2005年よりキーコンセプトとして掲げている「E-CUBE」は3つのE(Easy×Exciting×Ecology)を表すが、今年、鈑金塗装事業のサスティナビリティに係るもう1つのE(Engagement)を加えて「E3 PLUS」とした。従業員の会社への愛着、鈑金塗装事業者と顧客や周辺地域との絆といったエンゲージメントを強めることで、一層のサスティナブルな事業経営を実現していく考えだ。

日本ペイント 自動車補修用

エア・ウォーター、宇宙ベンチャーのロケット開発に協力

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2020年11月4日

 エア・ウォーターとエア・ウォーター北海道(北海道札幌市)はこのほど、スペースウォーカー(SPACE WALKER:東京都港区)と北海道大樹町で打ち上げを計画する同社のサブオービタルスペースプレーンの設計・開発・運用での協力関係構築の基本合意書を締結したと発表した。

 スペースウォーカーは東京理科大学発の宇宙ベンチャー企業で「宇宙が、みんなのものになる。」というスローガンの下、飛行機に乗るように自由に宇宙を行き来できる未来を目指している。弾道軌道で高度約100㎞に到達し、有翼飛行で帰還・着陸するサブオービタルスペースプレーンの設計・開発、運航サービスの提供を目的に2017年に設立。現在は技術実証機の設計・開発や、2020年代前半の打ち上げに向け同スペースプレーンの設計・開発を進めている。大樹町では「北海道スペースポート構想」の下、官民一体となり「宇宙のまちづくり」を進め、発射場の整備や滑走路の延伸・新設など航空宇宙産業の形成を推進中だ。

 一方、エア・ウォーターは1970年代から宇宙ロケット開発に携わり、供給設備の納入や大学との研究開発のほか、北海道内トップの産業ガスメーカーとして製造・貯蔵・運搬・使用方法の豊富な知見と技術をもつ。搭載予定のLOX(液体酸素)/メタンエンジンでの燃料メタン(LNG)などの産業ガスの利用を検討する。

 今後、ロケット打ち上げ時の液体酸素やメタンなどの供給、バイオ液化メタンのロケット燃料での実証試験や地上設備に関する検討を共同で行う。宇宙産業という先進技術への挑戦を通じて、北海道の未来に貢献していく考えだ。

富士フイルム 英拠点に遺伝子治療薬専用の開発・製造施設新設

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2020年11月4日

 富士フイルムはこのほど、バイオ医薬品の開発・製造受託事業(CDMO)をさらに拡大するため、バイオ医薬品CDMOの中核会社フジフイルム・ダイオシンス・バイオテクノロジーズ(FDB)の英国拠点に設備投資を行い、遺伝子治療薬専用のプロセス開発・原薬製造施設を新設すると発表した。来年春に生産プロセス開発、同年秋に原薬製造の受託を開始する予定。遺伝子治療分野の受託ビジネスを米国市場から欧州市場にも拡大し、事業成長を加速させる考えだ。

 遺伝子治療薬は、疾患原因となる遺伝子をもつ患者にウイルスなどを利用して外部から正常な遺伝子を導入して治療する、最先端のバイオ医薬品。製造には複数の遺伝子を細胞に導入する高度なバイオテクノロジーやウイルスの封じ込め技術・設備、製造に最適なプロセス開発が必要になる。優れた技術・設備をもつCDMOに遺伝子治療薬の生産プロセス開発と製造の一括委託のニーズが高まり、需要も伸びている。

 富士フイルムは2014年に米国市場で遺伝子治療薬のプロセス開発・製造受託ビジネスを開始。ビジネス拡大のためFDBの米国テキサス拠点に遺伝子治療薬専用のプロセス開発棟新設と製造設備増強を進め、来年には生産プロセス開発から原薬製造、製剤化までをワンストップで受託できる体制が整う。

 今回、欧州市場への展開のため、FDBの英国拠点に専用のプロセス開発・原薬製造の施設を新設する。細胞培養・精製のプロセス条件の実験・分析機器や細胞培養タンクなどの導入と、FDBテキサス拠点の遺伝子治療薬のプロセス開発ノウハウや製造技術も投入。生産プロセス開発から初期臨床試験用治験薬の原薬製造まで、顧客の新薬の早期開発を支援する。さらに、現地の受託要請や顧客の新薬開発の進展に応じて大量生産に必要な原薬製造設備の増強も検討していく。

 今後、富士フイルムはFDBの英国とテキサス両拠点の設備を活用し、遺伝子治療薬の開発・製造受託ビジネスを拡大していく考えだ。