帝人 バイオ由来パラ系アラミド繊維、生産技術を開発

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2020年12月4日

 帝人は3日、帝人グループでアラミド事業を展開するテイジン・アラミド(オランダ)が、パートナー企業との共同により、バイオ由来の原料を使用したパラ系アラミド繊維「トワロン」の生産技術を開発したと発表した。

 軽量で優れた強度や耐久性をもつパラ系アラミド繊維「トワロン」は、自動車、航空用コンテナ、防護服など幅広い用途で使用されている。グローバル市場での確固たる地位を築いているが、生産には石油由来原料が使用され、バイオ由来原料による生産技術はこれまでなかった。

 こうした中、テイジン・アラミドは、持続可能な社会の実現に貢献するため、環境に配慮した原料による生産を目指すこととし、オランダでBTX(ベンゼン、トルエン、キシレン)製品を製造するBioBTX社およびSyncom社とともに、2018年よりバイオ由来原料を使用した「トワロン」の生産技術について検討を進めていた。その結果、使用済みの植物油脂由来の成分を使用し、原料の92%をバイオ由来とする「トワロン」のパイロット生産に成功。従来品がもつ軽量、高強度などの特性に加え、製造プロセスから排出されるCO2量を、大幅に削減できることも確認された。 

 テイジン・アラミドは、バイオ由来原料を使用した「トワロン」の本格生産に向け、今後さらに研究開発を推進していく。帝人グループは、注力すべき重点領域の1つに「環境価値ソリューション」を掲げる。今後も持続可能な循環型社会の実現に貢献するソリューションを提供することで、長期ビジョンである「未来の社会を支える会社」となることを目指していく。

日板硝子 米国の太陽電池パネル用ガラス新工場が稼働

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2020年12月3日

 日本板硝子(NSG)はこのほど、米国オハイオ州で建設中の新工場で太陽電池パネル用透明導電膜(TOC)ガラス製造のフロートラインが稼働を開始したと発表した。新工場は約4.6ヘクタールと東京ドーム並みの面積があり、オハイオ州北西部にアメリカ大陸最大の太陽電池パネルの製造拠点をもつ米国ファーストソーラー社との長期供給契約に基づき供給する。

 NSGのTOCガラスは、ガラス製造工程で導電性膜を成形する同社独自のオンラインコーティング技術で製造し、耐久性が高く、幅広い用途に使用できる。効率よく大量生産できるため、コスト優位性もある。

 同社は堅調な成長を続ける太陽光発電市場に向け、太陽電池パネル用ガラスの生産能力増強を目的とする成長戦略を推進。2018年発表の380億円の投資計画の一環だ。太陽電池パネル用ガラスや他の高付加価値製品の提供拡大により、成長戦略を推進するとともに、再生可能エネルギーの普及に貢献していく考えだ。

 

DICとエフピコ PSリサイクルの社会実装へ協業検討

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2020年12月3日

 DICとエフピコは、ポリスチレン(PS)の完全循環型リサイクルの社会実装に向けた検討を本格化した。

ケミカルリサイクルによるポリスチレンの完全循環型モデル
ケミカルリサイクルによるポリスチレンの完全循環型モデル

 DICは、プラスチックの高度資源循環の社会実装に貢献するため、産官学連携で廃プラスチックの材料再生プロセス開発のプロジェクトに参画しマテリアルリサイクル(MR)の研究を推進。また、食品包装などのパッケージ素材として使用されるPS、フィルム、インキ、接着剤などの素材がプラスチックのMR特性に及ぼす影響について基礎的な研究を行い、環境負荷の少ないパッケージ素材の製品開発を進めている。

 エフピコグループでは、一般家庭から排出される使用済み発泡PS食品容器をMRによって再生利用する「エフピコ方式のリサイクル」を積極的に推進。使用済みの白色発泡PS容器は、粉砕した後、再度溶融した上でエコトレーとして製品化し、色柄付きの発泡PS容器はハンガーなど日用雑貨品に再生利用している。

 一方、PSは制御された加熱条件下で容易にPS原料のスチレンモノマー(SM)に戻る「モノマー還元」の性質があるため、ケミカルリサイクル(CR)に適している。CRで得られたスチレンから生産されたPSは、石油原料から生産されたPSと同等の性能や安全性があり、使用用途が限定されずに幅広い用途で利用できる。

 両社は、CRに関する合弁会社を含めた共同事業体設立などの協業を視野に検討を進めており、モノマー還元技術を外部から導入することで、色柄付きの発泡PS容器の再生を実現し、PS製品の完全循環型リサイクルを目指す。なお、DIC四日市工場での実証実験プラントの建設も検討している。

 CRによるPS製品の完全循環型リサイクルでは、「エフピコ方式のリサイクル」を活用し、使用済み食品容器を9600カ所の拠点で回収。色柄付きの発泡PS容器を両社の共同事業体などでリサイクルSMに再生し、DICでPSを生産、エフピコでエコトレーなどへの製品利用を目指す。

 両社は、様々なリサイクル技術を活用することで完全循環型リサイクルを実現し、使用済みプラスチックの有効活用と、食品包装容器のライフサイクル面でのCO2排出量の削減に貢献していく考えだ。

出光など カーボンリサイクルのビジネスモデル検討開始

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2020年12月3日

 出光興産など6社は2日、東芝研究開発センターが開発したCO2を一酸化炭素(CO)に電気分解する技術を活用するP2Cプロセスにより、排ガスなどからのCO2を「持続可能なジェット燃料(SAF)」に再利用する、カーボンリサイクルのビジネスモデル検討を開始することに合意したと発表した。

 今回、検討に参加したのは、出光興産、東芝エネルギーシステムズ、東芝、東洋エンジニアリング、全日本空輸、日本CCS調査の6社。今後、各社がもつ知見・技術、プラント設備などを生かし、SAFを供給するサプライチェーンの課題抽出や将来のビジネスモデルの検討を共同で実施する。

 具体的には、産業設備の排出ガスなどから分離回収したCO2を原料として、再生可能エネルギーと水素を利用しSAFを製造、フライトまでの供給サプライチェーンの上流から下流まで、一気通貫した検討を行う。

 日本ではパリ協定に対するNDC(国が決定する貢献)で示したCO2排出削減目標の達成に向け、CO2の分離貯留や資源化、再生可能エネルギーの主力電力化や水素利用の拡大、燃料の脱炭素化などの環境イノベーションが期待されている。

 また、航空業界ではICAO(国際民間航空機関)がCORSIA(国際航空のためのカーボンオフセットおよび削減スキーム)の中でCO2排出削減目標を定めており、効果的な削減手法の1つであるSAFを使用する運航に向け、その安定的製造・供給が強く求められている。高いCO2排出削減能力をもつP2Cプロセスは、CO2を原材料としてSAFを製造する次世代技術として期待が高い。

 各社は、持続可能な社会の実現を目指し、SAFサプライチェーンの将来ビジネスモデルについて共同で検討を進めていく。

 

帝人 ポルトガル拠点にCF-RTM成形設備を新設

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2020年12月3日

 帝人は2日、グループで軽量複合材料部品の生産・販売を手がけるイナパル・プラスティコ社(ポルトガル)が、生産性、外観性、寸法・品質安定性に優れるCF‐RTMの成形設備を同国パルメラに新設したと発表した。設備投資額は約6.8億円。

CF-RTM成形設備を新設したイナパル・プラスティコ社パルメラ工場

 CF-RTM(カーボン・ファイバー・レジン・トランスファー・モールディング)は、金型の中に炭素繊維シートを配置した後に樹脂を注入し、加熱により硬化させる成形方法。帝人グループでは、環境負荷低減に向けた自動車メーカーからの要求特性に対応するため、軽量・高強度で生産性に優れるCF-RTMによる成形技術の開発に取り組んできたが、これまで蓄積してきた炭素繊維に関する知見や、2017年に買収した北米最大の自動車向け複合材料部品メーカーCSP社の技術などを融合することでCF-RTM成形設備の新設に至った。

 今回のCF-RTM成形設備は、帝人グループがもつ炭素繊維、CAE解析、流体解析、プリフォーム、金型設計などに関する技術を駆使することにより、製造工程の完全自動化を実現。この設備により、部品の要求性能に応じて厚みを調整することができ、かつ炭素繊維を50%以上含有する高強度な成形品の製造が可能となる。また、射出時間が20秒と短いため生産効率も向上し、さらに、このプロセスによる成形品は、従来のアルミ製部品を約30%軽量化できることから環境負荷低減にも貢献する。

 そして、こうした特長により、自動車業界で「クラスA」と称される美麗な外観をもつ外板部品や、優れた剛性が求められるホワイトボディなど、主要構造部材の成形が可能であることが評価され、すでに欧米の自動車メーカーでの採用が確定している。今後はリサイクルされた炭素繊維材料を使用し、3分間で量産に向けた成形を実現するために開発を強化していく。

 帝人グループは、マルチマテリアルでのティア1サプライヤーとして、使用材料の拡充から部品設計にまで踏み込んでのソリューション提案力の強化や、グローバルでの安定供給体制の確立を進めていく。そして、2030年近傍には、自動車向け複合材料製品事業の売上を20億ドル規模へと拡大していく考えだ。

デンカ xEV向け新放熱基板を開発、異種金属接合が可能

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2020年12月3日

 デンカは2日、電動車xEV向けの新たな放熱材料として異種金属接合が可能な窒化ホウ素(BN)樹脂複合基板を開発したと発表した。

BN 樹脂複合基板
BN 樹脂複合基板

 主にxEVなどに搭載されるモーター駆動インバーター制御用パワーモジュール(電力の制御・供給を行う電源回路集積部品)などに対応できる基板で、高機能セラミックスBNの優れた熱伝導性や電気絶縁性などの特長を生かしながら、接着性樹脂を複合させることで、従来の放熱基板では困難だった厚銅を含む異種金属の基板表裏への接合を実現した。様々な材料で構成されるパワーモジュールの小型・軽量化や熱伝導性の向上が期待される。要求特性に応じて、樹脂とBNの比率を変えて熱伝導率を調整できるため、多様な設計が可能になる。4日まで幕張メッセ(千葉市)で開催中の「高機能素材Week」で紹介する。

 同社は5GやxEVを中心に環境・エネルギー分野に注力し新素材の開発を進めており、新機能セラミックスやLCPフィルム、低誘電絶縁材料のほか、高耐熱フィルム、高耐熱仮固定接着剤、高熱伝導性フィラー(球状アルミナ、球状マグネシア、BN、窒化珪素)、誘電特性制御フィラー、アルミナ繊維、光透過性良触感起毛シートなども展示する。

東ソー 新型コロナウイルス抗体検出試薬の販売を開始

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2020年12月3日

 東ソーは2日、同社の全自動化学発光酵素免疫測定装置「AIA-CL2400」および同等機種向けの専用試薬として、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のヌクレオカプシドタンパク質に対する抗体を検出できる研究用試薬「NP-Total抗体試薬」「NP-IgG抗体試薬」2種の販売を始めたと発表した。

抗体検出試薬「NP-IgG」
抗体検出試薬「NP-IgG」

 両試薬とも試薬調製が不要なため、15分という短時間で結果報告が可能であることから、同社では「新型コロナウイルス感染症の基礎的、臨床的研究に貢献できる」との期待感を寄せている。

 同研究用試薬の開発は、日本医療研究開発機構(AMED)の令和2年度ウイルス等感染症対策技術開発事業(実証・改良研究支援)の補助を受け、横浜市立大学、関東化学と共同で実施した。東ソーは現在、横浜市大をはじめ外部機関の協力を得て、「AIA-CL」装置向けの新型コロナウイルス抗原検査試薬の開発にも取り組んでおり、今後も研究現場と医療現場への貢献を目指していく。

昭和電工など 川崎市で「プラスチック資源循環」実証事業を開始

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2020年12月3日

マックの廃プラをCR・発電し、EVバイクで活用

 昭和電工と日本マクドナルド、川崎市の3者は、今月1日から、川崎市内のマクドナルド店舗から排出される使用済みプラスチックを昭和電工がクリーン水素へ再生し、マクドナルドのデリバリー用EVバイクに利用する「プラスチック資源循環」実証事業を開始した。実証期間は約1カ月間。

実証実験で水素化を担うKPRをバックに、(写真右から)昭和電工の栗山室長、川崎市の間島担当課長、日本マクドナルドの岩井マネジャー。中央はマックのEVバイク

 先月30日、昭和電工川崎事業所で開催された記者説明会で、同市臨海部国際戦略本部の間島哲也担当課長は

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BASF 新ペプチドが皮膚と毛髪を隠れ炎症から保護

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2020年12月2日

 BASFはこのほど、隠れ炎症(慢性的な微小炎症)による毛髪・皮膚のダメージに対し、安全で有効な天然由来成分「PeptAIde4.0」を上市すると発表した。炎症性メディエーターの放出を防ぐペプチドを人工知能により選別し、酵素による加水分解プロセスで有機米タンパク質から取り出して製品化した。

 炎症反応は重要な防御システムの1つだが、不健康な生活習慣で乱される。急性炎症は体の治癒を助け感染症を撃退するが、隠れ炎症は健康な細胞と戦い、病気を引き起こし体調悪化の原因となる。若い人では自覚はないものの、徐々に髪や皮膚に深いダメージを与えていく。

 「PeptAIde4.0」は4つの多機能植物由来のペプチドで、12~17個のアミノ酸で構成される。in silico予測と機械学習プラットフォームで何兆ものデータエントリを評価し、隠れ炎症に最も高い潜在的効果をもつ植物由来ペプチドを同定した。

 「PeptAIde4.0」の有効性は臨床試験で確認した。乾燥・かゆみ・不快症状のある足の皮膚あるいは腹部に28日間毎日2回ローションを塗布した試験では、各々1、2週間で肌の水分量やハリが増加、4週間で9、8割の被験者が肌のしっとり感や滑らかさ、肌の快適さの向上を実感した。

 敏感・かゆみのある頭皮を週3回3週間シャンプーした試験では、頭皮の赤みは9%減少し、頭皮のpHも有意に低下した。「PeptAIde4.0」は乾燥肌や不快感、ハリ不足を防ぎ、フケが出やすい敏感な頭皮の炎症を抑えることが実証された。

ダイセル こんにゃくセラミドの脳への移行性を確認

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2020年12月2日

 ダイセルはこのほど、北海道大学との共同研究により、同社の機能性食品素材である「こんにゃくセラミド」がマウスの試験を通じ、血液脳関門(BBB)を透過できるという成果を得たと発表した。

 両者は、2016年に同学内の「次世代物質生命科学研究センター」内に共同で設置した産業創出講座を中心に、「こんにゃくセラミド」がもつアルツハイマー病予防効果を研究してきた。こうした中、「こんにゃくセラミド」の主要成分である植物性セラミドをマウスに血中投与した際、BBBを透過して脳内へ蓄積することを実証した。

 アルツハイマー病の発症は、「アミロイドβペプチド」が脳内に過度に蓄積することが原因の1つとさる。「エクソソーム」という物質は、アミロイドβペプチドと結合し、これらを分解・除去することが明らかとなっている。「こんにゃくセラミド」は神経細胞のエクソソーム産生を促進し、アミロイドβペプチドの分解・除去する機能を増強。それによって脳内のアミロイドβペプチド濃度が低下することで、短期記憶の改善効果があることが示されている。

 今回は、これまで未解明だった、「こんにゃくセラミド」が体内吸収された後の植物性セラミドがBBBを透過して脳へ移行できるかどうかを明らかにするために、植物性セラミドのBBB透過性について培養細胞およびマウスを用いた研究を行った。

 今回の成果から、「こんにゃくセラミド」には、アルツハイマー病発症を防止できる可能性があり、今回の知見は新たな機能性食品や新薬開発に繋がることが考えられる。今後さらにヒト介入試験により「こんにゃくセラミド」の認知機能改善効果について検証していく予定だ。なお、この研究の成果は、今年11月公開の「PLOS ONE」誌に掲載されている。

 ダイセルは今後も、人々の「美と健康」に貢献する健康食品素材の開発を進めていく考えだ。

こんにゃくセラミド経口投与による認知症予防効果
こんにゃくセラミド経口投与による認知症予防効果