ユーグレナら アミノ酸・有機酸の発酵生産、pHで影響

, , ,

2020年10月29日

 ユーグレナと明治大学、理化学研究所の研究グループはこのほど、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の発酵による有機酸やアミノ酸などの有用産物の生産について、その種類と生産量が発酵時のpHやバッファー(緩衝液)によって変化することを発見した。

 ユーグレナは食品や飲料に利用され認知度が上がってきた。光があると光合成によりCO2を固定して多糖のパラミロンを生産。暗所では蓄積したパラミロンを分解して様々な物質を作り、特に無酸素の発酵条件ではコハク酸などの有機酸やグルタミン酸、グルタミンなどのアミノ酸を細胞外に放出する。パラミロンは免疫調節機能や抗ウイルス作用などが期待され、コハク酸は貝の旨味成分でもあるがバイオプラスチックの原料にもなる。グルタミン酸やグルタミンは旨味成分の原料や栄養補助に使われる。また、ワックスエステルも発酵で作られ、ジェット燃料への利用が進められている。

 今回、発酵時の培地pHを3~8の6条件、3種類のバッファーの組み合わせで3日間発酵させ、コハク酸、グルタミン酸、グルタミンの生産量と細胞の形態変化を調べた。

 グルタミン酸やグルタミンの生産量は酸性で多く中性では少ない傾向。コハク酸はpHによらずバッファーの種類に大きく影響され、酢酸バッファーでは大きく減少した。発酵後の細胞形態は酸性では紡錘形、中性では円形の傾向にあったが、生産量との関係性は低かった。発酵時の細胞密度を10倍に上げたところ、コハク酸の生産量は10倍近くに増加したが、グルタミン酸は1.5倍程度にとどまった。

 今後、発酵生産物の量や種類を決定する因子のメカニズムレベルでの解明が求められる。ユーグレナは食品、化成品、燃料など様々な物質を生産する能力があるため、CO2からの物質生産系が発展することで、環境にやさしいものづくりの可能性が期待されている。

出光興産 生分解性作動油が国交省のNETISに登録

, , ,

2020年10月29日

 出光興産は28日、同社が開発・販売する、生分解性作動油「ダフニービオスハイドロSE」が、国土交通省の新技術情報提供システム「NETIS(ニュー・テクノロジー・インフォメーション・システム)」に登録されたと発表した。同社製品の登録は初となる。

NETISに登録された「ダフニービオスハイドロSE」
NETISに登録された「ダフニービオスハイドロSE」

 今回、NETISに登録された「ダフニービオスハイドロSE」は、自然界に生息するバクテリアに分解されやすく、水質や土壌保全に配慮した環境適応型の生分解性作動油であり、一般に広く使われている鉱油系の作動油と比較して、更油期間や耐摩耗性などの面で遜色ない品質をもっている。また、環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる日本環境協会のエコマーク商品にも認定されている。

 今回のNETISの登録により、使用事業者は同製品を公共工事などに活用することで、総合評価方式および工事成績への加点が見込める。

三菱ケミカル 新型〝水光〟栽培システムを販売開始

, , ,

2020年10月29日

 三菱ケミカルは28日、グループ会社である三菱ケミカルアグリドリーム(MCAD)が、新型〝水光〟栽培システム「AN」(アグリカルチャー・ネクスト)の販売を来月より開始すると発表した。

AN で収穫されたリーフレタス(450g超)
AN で収穫されたリーフレタス(450g超)

  「AN」は、クレオテクノロジー(埼玉県滑川町)と共同研究を行い、千葉大学大学院の丸尾達教授監修の下で開発した、農業用ハウスを利用した完全人工光型植物工場。定植した苗が栽培室内を自動で循環しながら成長し、作業者が栽培室内に入らずに収穫まで行うことができるシステムとすることで、作業者の負担や異物の混入リスクを低減した。

 また、栽培室内の光や気流を制御することで、業務・加工用にも対応可能な高品質で丈夫なリーフレタスを生産することができ、従来の同社完全人工光型植物工場と比較して約3倍にあたる1株300g以上のリーフレタスを播種後45日程度で収穫することが可能だ。

苗専用人工光装置「苗テラス」
苗専用人工光装置「苗テラス」

 近年、集中豪雨や大型台風の頻発により日本農業は大きな被害を受けており、自然環境の影響を受けない植物工場は農産物の安定供給の手段として注目を集める。また、単身世帯や共働き世帯の増加など社会構造の変化により外食・中食の需要が伸びており、その加工業者から安定した品質で、細菌や異物が少なく洗浄などの手間がからない野菜へのニーズが増加していることも、植物工場の期待を高めている。

葉物専用水耕栽培「ナッパーランド 」
葉物専用水耕栽培「ナッパーランド 」

  一方で、従来の植物工場の野菜は業務・加工用としては価格や品質面でのハードルも高く、栽培者は持続可能な経営の実現という大きな課題を抱えている。「AN」は、需要に沿った高品質な野菜を収穫できることをコンセプトとして、徹底した生産原価圧縮や栽培効率の向上を実現させた新製品。今後、MCADでは国内外での「AN」の販売促進を通じ、「儲かる農業経営」の普及を推進していく。

 

産総研 高潜熱・高熱応答性の固体相変化蓄熱材料を開発

,

2020年10月28日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、熱応答性に優れた固体相変化材料(PCM)を開発したと発表した。金属との複合化で熱伝導率、耐水性、機械加工性を大幅に向上させた。

 パワーデバイスなどの電子デバイスの高熱誤動作を避けるための温度制御には、高い放熱効率が求められる。急激な温度上昇対策には、過剰な発熱をPCMに蓄熱し、相変化温度に保つ方法がある。

 融解型PCMは、熱容量は大きいが熱伝導率が低く熱応答性が悪い。産総研が開発した固体PCMの二酸化バナジウム(VO2)セラミックスは機械強度に優れ熱伝導率も融解型の10倍以上だが、数W/m・K程度であり急速に熱吸収する用途には不十分。熱応答性の向上には高熱伝導物質との複合化が有効だが、両物質界面の熱抵抗に課題があった。

 今回、産総研のVO2の表面活性化技術を利用した金属とVO2の複合化で、反応相や拡散層などの不純物層のない界面が形成することを透過型電子顕微鏡観察で確認。界面熱抵抗は抑えられ、金属と同程度の熱伝導率(約70W/m・K)と大きな潜熱(約100J/㎤)を両立した。これらは複合化する金属の量で調整可能だ。

 一方、V2Oは水和物を生成し、水に浸漬すると腐食し溶出する。しかし、複合化する金属を選択すると、電気防食効果で耐水性は大幅に向上。熱交換器など水のある環境への応用が可能だ。また、セラミックスであり機械加工は困難だが、金属複合化により導電性と靭性が向上し、セラミックス加工用ダイヤモンド砥石での研削・切断加工のほか、導電性を生かした放電加工、金属加工用超硬工具での切削加工も可能となった。

 今後は実用化に向け、金属分散固体PCMの有償サンプル提供を開始し、蓄熱温度域や蓄熱量などの熱特性を利用目的に合わせて調整できるよう材料設計を進めていく考えだ。

BASFとシノペック ネオペンチルグリコールの能力倍増

, , ,

2020年10月28日

 BASFとシノペック(中国石油化工集団)はこのほど、両社の出資比率50%:50%の合弁会社BASF-YPCが中国・江蘇省南京市のフェアブントサイト(統合生産拠点)のネオペンチルグリコール(NPG)生産能力を拡大したと発表した。2015年設立の同工場の年産能力は、今回の拡張工事完了により4万tから8万tに倍増した。これは、現地生産を強化するというBASFのコミットメントを高め、環境に優しい粉体塗料に対する中国市場の高まるニーズに応えるもの。

 NPGは化学的・熱的安定性が高く、多くの最終用途、特に各種塗料やプラスチック用ポリエステル、アルキド樹脂の製造で優れた性能を発揮するポリアルコール。重要な応用分野は粉体塗料で、特に家電製品や建設業界の塗料で成功している。

 BASFはドイツ、米国、中国(南京、吉林)にNPG生産拠点をもつ世界有数のメーカーで、数十年にわたり幅広い業界に供給し、存在感、革新力、供給の信頼性で貢献する考えだ。

三井化学 温度依存性新素材がワコール社ブラに採用

, , ,

2020年10月28日

 三井化学は27日、同社が開発した、ヒトの体温を感知してカラダをやさしく包み込む新素材「HUMOFIT(ヒューモフィット)」が、ワコールから来月に発売されるマタニティ向け新商品「とろけてバストになじむブラ―産後―」に採用されたと発表した。 

ワコール製「とろけてバストになじむブラ―産後―」の上辺に『HUMOFIT』を採用
ワコール製「とろけてバストになじむブラ―産後―」の上辺に「HUMOFIT」を採用

 三井化学の「HUMOFI」は、常温ではゴムのようにしなやかで、曲げ・折り・ひねり・伸ばしのあとでも緩やかに元の形状に戻る「形状記憶性」をもち、加温すると柔らかく冷やすと硬くなる「温度依存性」を併せもつ。ヒトとモノとの接点をもっとやさしく、「ヒトに寄り添う」発想をベースに、同社グループの素材開発と加工技術開発で実現した新素材だ。そのユニークな特性は、医療・介護、スポーツ、アパレルなど様々な用途で高く評価されている。

 ワコールの「とろけてバストになじむブラ―産後―」は、授乳前後のバストボリュームの変化に対応し、授乳期から卒乳期、さらに卒乳後も長く使える産後用ブラジャーのコンセプトの下、カップ上辺に「HUMOFI」の特殊シートを搭載した。ヒトの体温に反応してカラダになじむ特殊機能により、バスト変化の大きい産後の胸にジャストフィットするマタニティブラジャーとなっている。

産総研と理研 バイオマスベースの機能性ポリマーを開発

, ,

2020年10月27日

 産業技術総合研究所(産総研)と理化学研究所(理研)はこのほど、共同でバイオマスを原料とする新たな機能性ポリマーを開発した。

 性質の異なる2つのバイオマスベース原料の縮合体をモノマーとして重縮合させた、ヒドロキシ桂皮酸骨格とリシノール酸骨格が規則的に交互配列したコポリマーだ。ヒドロキシ桂皮酸骨格中のメトキシ基数で機械物性や熱物性が変化。ゴムやフィルムなどの透明材料としての応用が期待される。

 2030年の世界のバイオ市場は約200兆円と予測され、欧州は既存石油由来製品の3割をバイオ由来製品で代替する目標を掲げるが、実用化には強度面が課題だ。産総研がバイオマス由来の機能性モノマーの分子配列制御で高物性ポリマーを目指す中、共同事業「理研‐産総研チャレンジ研究」の「新・バイオマスニッポン総合戦略」の支援で実施。米ぬかやリグニンに含まれるヒドロキシ桂皮酸類(クマル酸、フェルラ酸、シナピン酸)とひまし油由来のリシノール酸という性質の異なる2分子の縮合体を重縮合し、2種の機能性分子が規則的に交互配列した純粋な共重合体(コポリマー)を合成した。

 リシノール酸だけの重合体(PRA)は室温で液状だがコポリマーは固体で、加熱プレスで圧縮成形加工したフィルムはいずれも無色透明で繰り返し屈曲が可能だ。クマル酸は引張応力が弱く引きちぎれ、フェルラ酸は応力は最小だが切れずによく伸び(800%以上)、シナピン酸は応力が最大で強靭(15.4M㎩、585%)、破断後にゆっくりと元に戻る形状記憶性を示した。

 ガラス転移温度はポリマー骨格中のメトキシ基数に関係し、0個のPRAがマイナス73℃、1個のクマル酸がマイナス15℃、2個のファルラ酸が4℃、3個のシナピン酸が24℃と分子設計上の重要な指針となる。加熱するといずれも350℃付近で約50%が分解したが、PRAがその後も急速に分解が進んだのに対し、コポリマーはその後の分解は緩やかで完全分解は500℃付近だった。安価で豊富な非可食性バイオマスを原料とする「100%バイオマスベースのポリエステル」として、ゴム材料や包装材料など様々な分野への応用が期待できる。

 今後は生分解性評価などを進める一方、試料提供などで連携を進め、実用化に向けて物性を向上させていく考えだ。

 

ユニ・チャーム 紙おむつのリサイクル実証事業を開始

, , ,

2020年10月27日

 ユニ・チャームはこのほど、東京都が公募した「使用済み紙おむつのリサイクル推進に向けた実証事業」に対し「効率的な収集・運搬手法」モデルの事業者に採用された。東京都の各自治体・企業・団体と協業し、「使用済み紙おむつのリサイクル」推進を通じて持続可能な社会への貢献を目指し、地球環境保全と経済的成長を両立する事業活動に取り組む。

 高齢社会の伸展で紙おむつの使用量は増加し、環境省の予測では2015年度の年間約200万t(一般廃棄物の約4.5%)が2030年度には約250万t(同約7%)に増加する見込み。しかも使用後の紙おむつは水分を吸って嵩が増し、廃棄処理に大きな負担となっている。

 同社は循環型社会を目指し、2015年より使用済み紙おむつの再資源化プロジェクトを開始。16年からは鹿児島県志布志市や大崎町との実証実験を通じて、パルプなどを衛生物品に利用可能なレベルまで再生する技術の確立、洗浄・分離時に使用する処理水まで再利用する「総循環型モデル」を推進している。

 ここで欠かせないのが、使用済み紙おむつの分別方法や分別回収に至る事業計画。都内自治体の協力で高齢者施設・保育園などで使用済み紙おむつの分別を行い、回収会社などとともに分別回収の実証実験を開始する。

 同実証事業を通じて、使用済み紙おむつのリサイクル事業を国内外で展開できる循環型モデルを構築し、新たな課題を明確にして対策を取っていく考えだ。

実証事業イメージ
実証事業イメージ

 

三菱マテリアル 構造体自動設計の東大発スタートアップに出資

, , , ,

2020年10月27日

 三菱マテリアルはこのほど、あらゆる構造体を自動設計する独自技術を開発・提供する東京大学発のスタートアップ企業Nature Architects(ネイチャーアーキテクツ)へ出資を行ったと発表した。なお出資はMMCイノベーション投資事業有限責任組合を通じて行った。

 ネイチャーアーキテクツは、部品軽量化のために必要な部分のみ強度をもたせたり、硬い部材に振動吸収機能を付与するなど、求められるデザインや機能に応じた最適構造を自動で設計・製造する独自設計技術「ダイレクトファンクショナルモデリング(DFM)」を開発・提供する会社。

 三菱マテリアルは、両社の協業により同社の非鉄金属などの材料特性に関する知見とネイチャーアーキテクツのDFMを掛け合わせ、新たな付加価値をもつ独自の製品・サービスを開発・提供していくことを目指す。具体的には、高度な機能と軽量が求められる航空・宇宙用途向けの新材料などの開発に取り組む考えだ。

 三菱マテリアルグループは「人と社会と地球のために」の理念の下、「ユニークな技術により、人と社会と地球のために新たなマテリアルを創造し、持続可能な社会に貢献するリーディングカンパニー」となることをビジョンとし、非鉄金属素材と付加価値の高い製品の提供を通じて、豊かな社会の構築に貢献するとしている。

帝人フロンティア 高吸水・速乾素材を開発、珪藻土の構造に着想

,

2020年10月27日

 帝人フロンティアはこのほど、バスマットなどに利用される珪藻土の微細な構造から着想を得た、新発想の高吸水・速乾素材「ラッカン」を開発した。2021年春夏シーズンからファッション衣料を中心に展開し、今年度に5万m、2022年度に50万mの販売を目指す。

高吸水・速乾素材『ラッカン』。ランダムな繊維構造からなる微細な凹凸層構造が特長
高吸水・速乾素材「ラッカン」。ランダムな繊維構造からなる微細な凹凸層構造が特長

 近年、共働き世帯や単身世帯の増加などに伴い、洗濯をはじめとする家事にかける時間を短縮したいとの要望が強くなっており、洗濯後に素早く乾くなど、取り扱いが容易なウェアへのニーズが高まっている。一方で、近年のトレンドでもある、ナチュラルな外観や風合いをもつウェアに対するニーズも高い。 こうした中、同社は独自の技術により、高い吸水性と拡散性をもつ珪藻土の凹凸構造と表面上の微多孔を特殊構造体として再現することで、高吸水・速乾素材「ラッカン」を開発した。

 『ラッカン』使用例
「ラッカン」使用例

 具体的には、加工によって膨らみを増す複合糸を経糸に、加工によって伸縮する糸を緯糸に使って設計した特殊な織物構造により、生地表面に微細な凹凸層構造を発現させた。併せて、異収縮複合糸が凸部を形成するような織り構造とすることで、糸間に空隙をつくり、珪藻土表面の微多孔構造を再現した。

 また、複合糸に繊度差や収縮差をもたせることでランダムな繊維構造とし、生地表面のナチュラルな天然繊維調と柔らかな風合いを再現した。この構造により、通常のポリエステル素材に比べ乾燥時間を約40%短縮。50回の洗濯を繰り返しても、吸汗・速乾性を維持することが可能になった。