日本触媒 バイオマス由来難重合性モノマーの重合技術を開発

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2020年10月8日

 日本触媒はこのほど、理化学研究所との共同研究チームが、バイオマス由来の難重合性モノマーの重合について、効率的に高分子量化できる重合システムを開発し、高性能なポリマーを得ることに成功したと発表した。

 バイオマス資源からは、不飽和炭素‐炭素二重結合をもつ脂肪族化合物や芳香族化合物が数多く得られる。ケイ皮酸モノマーやクロトン酸モノマーは、β位に置換基があるα,β‐不飽和カルボン酸化合物(β置換アクリレート)に分類することができる。これらを重合して得られるポリマーはモノマー単位当たり2つの光学中心をもち、高度に立体規則性を制御することができるため、バイオマス由来の高性能・高機能な新規樹脂素材の創出が期待される。

 しかしながら、β置換アクリレートは、β位置換基の立体的、あるいは電子的要因で通常のラジカル重合法では高分子量化が困難な難重合性モノマーの1つ。また、数少ない重合例では、工業的には実現困難な反応条件を必要とするなど、実生産への多くの課題もあった。

 両者の共同研究チームは、β置換アクリレートの重合に対して、モノマーを活性化させることで重合を進める点が特徴的である有機酸触媒を用いたグループトランスファー重合(GTP)技術が適用可能であることを見出だした。そして、技術開発を進めるとともに、重合メカニズムを解明することで、高分子量化を阻んでいた要因を特定し、重合を効率化するための知見を見出だした。 

 さらに、使用する有機酸触媒や開始剤の置換基構造を検討して重合条件を最適化することで、温和な条件下で効率的に高分子量化を実現する重合技術の開発に成功した。得られたケイ皮酸系ポリマーは、ポリカーボネートと同等、あるいはそれ以上の耐熱性を示すとともに、多くの薬剤への耐薬品性を示す。また、機械的性質については、高強度な材料への展開が期待できる。

 一方、クロトン酸系ポリマーは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に匹敵する透明性をもちつつ、メタクリレートポリマーに比較して高い耐熱性、および耐薬品性を示す。これらの特徴は、高度に制御された立体規則性によって発現する液晶性に起因するものであると考えられる。両者は今後、生産技術の確立を進めるとともに、ポリマー用途開発を加速していく。

ケイ皮酸系ポリマー
ケイ皮酸系ポリマー
クロトン酸系ポリマー
クロトン酸系ポリマー

NEDO 航空機の燃費改善に向け複合材6件の研究開発

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2020年10月7日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、航空機の燃費改善や日本の航空機産業の国際競争力強化を目指し、新たに6件の複合材料の研究開発事業に着手した。

 同事業では、複合材料などの関連技術開発を中心として、航空機に必要な信頼性・コストなどの課題を解決するための要素技術を開発する。これにより、航空機の燃費改善によるエネルギー消費量の削減と2040年に1500万tのCO2排出量の削減、航空機産業の国際競争力の強化を目指す。

 航空機産業では、CO2排出量の削減のため、航空機の軽量化やエンジンの燃焼効率向上による燃費の改善が期待されている。また、国際的な産業競争が激化しており、燃費改善用の部材や加工技術開発などが急がれている。

 近年、航空機の構造部材には、従来の金属部材に代わり軽量化を目的として炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が積極的に導入されてきたが、今後航空機需要の70%を占めると予想される細胴機では金属材料が主流であり、細胴機へのCFRPの適用に向けて、よりコストが低く生産性の高い成形組立技術の開発が必要になる。

 また、航空機エンジンの燃焼効率向上に向けて、金属材料(ニッケル合金)より3分の1程度軽量で耐熱性に優れたセラミックス基複合材料(CMC)の活用が注目され、中でも、耐熱温度の高い炭化ケイ素(SiC)を使ったCMCの1400℃級航空機エンジン部材への早期実用化が期待されている。

 こうした背景から、NEDOは、航空機の燃費改善、環境適合性向上、整備性向上、安全性向上のため、航空機への適用を想定したCFRPやCMCといった複合材料について、新たに6件の研究開発事業に着手。同事業では、複合材料などの関連技術開発を中心として、航空機に必要な信頼性やコストなどの課題を解決するための要素技術を開発する。

 同事業では、プロジェクトリーダーに東北大学大学院航空宇宙工学専攻の岡部朋永教授を指名し、実施予定先と連携し、成果の最大化を図る。

航空機向け新たな複合材料開発
航空機向け新たな複合材料開発

 

 

BASF 超高粘度PESUを上市、膜などの耐久性向上

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2020年10月7日

 BASFはこのほど、ポリエーテルスルホン(PESU)「Ultrason(ウルトラゾーン)E」の超高粘度グレード「E7020P」を日本で上市したと発表した。優れた機械特性を維持しつつ分子量をかつてないレベルに上げたことで、食品・飲料分野、電子工業分野、医薬品分野向けの高耐久性の中空糸膜やフィルターの製造が可能となった。

 PESUは酸やカセイソーダへの高い耐薬品性と機械的強度をもち、高圧などの厳しい環境下での長期間使用が可能。「ウルトラゾーンE7020P」は過熱蒸気への耐性があり、膜やフィルターの洗浄温度を上げ、洗浄頻度を増すことができる。高圧蒸気(134℃)やエチレンオキサイド、ガンマ線による滅菌を繰り返しても、膜の繊細な細孔構造は維持される。

 「ウルトラゾーンE」は、ゲルやオリゴマー含有量の少ない高純度材料で、安定的な膜製造プロセスを確実にする。広いpH値(0~13)でも劣化しない。米国食品医薬品局(FDA)と欧州の食品接触材料の反復使用基準に適合し、飲料水や食品加工用途にも使用可能だ。

 ほかにも「ウルトラゾーンS」(ポリスルホン)、「ウルトラゾーンP」(ポリフェニルスルホン)などのスルホン系樹脂製品があり、水処理膜、温水や食品と接する部品のほか、電子機器、自動車、航空宇宙産業の軽量部品にも使用される。

 「ウルトラゾーン」製品群のその優れた特性で、熱硬化性樹脂、金属、セラミックを代替することを目指している。

住友電工 ミリ波帯向け高伝送特性のフッ素樹脂を量産化

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2020年10月7日

 住友電気工業はこのほど、5G通信などで活用が期待されるミリ波帯で低伝送損失、高柔軟性のフッ素樹脂のフレキシブルプリント基板(FPC)「FLUOROCUIT(フロロキット)」の量産化に成功したと発表した。

 5G移動体通信の商業利用が進む中、世界各地でサブ6帯(3.5、4.7GHzなど)といわれる周波数帯域の利用が始まり、今後は26、28GHz帯といったミリ波帯まで高周波化が進み、さらに高周波数のミリ波帯の利用が予想されている。高速伝送化のための6G移動体通信の検討が始まり、レーダーやセンサーのミリ波帯利用の実用化が進められている。

 そうした中、同社は「ミリ波帯で低伝送損失」「柔軟」なフッ素樹脂FPCを量産化した。高周波基板に使われ始めた液晶ポリマー(LCP)に比べ、フッ素樹脂は誘電率、誘電正接が低く伝送損失が少ない(40GHz帯で約40%減)上、周波数が高くなるほどその差は大きくなる。そのためフッ素樹脂は、高周波帯に対応する高特性基板材料として注目されている。

 住友電工グループは、長年のフッ素樹脂加工と多彩な製品開発で蓄積した知見や加工技術を生かして、加工が難しいとされるフッ素樹脂FPCの量産化を実現。柔軟性に優れたFPCは曲面などの配線部分に適しており、データセンターの配線、5G基地局や端末機器のアンテナや配線材、レーダー、センサーなどの採用に向けた活動を本格化していく考えだ。

今回開発したフッ素樹脂FPC
今回開発したフッ素樹脂FPC

ダイセル 環境にやさしい酢酸セルロース真球微粒子開発

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2020年10月7日

 ダイセルはこのほど、環境にやさしく柔らかい触感をもつ酢酸セルロース真球微粒子「BELLOCEA」を開発したと発表した。同開発品は、同社の長年の主力製品である酢酸セルロースを独自の技術で加工した真球状の微粒子であり、主に化粧品向けの素材として製品化を進めていく。

顕微鏡で拡大したBELLOCEA
顕微鏡で拡大したBELLOCEA

 酢酸セルロースは天然に存在する「酢酸」と、植物由来の「セルロース」を原料とした環境にやさしい素材で、土壌やコンポスト(廃棄物中)のほか、海洋でも生分解されることが確認されている。同社はその酢酸セルロースを、長年培った技術によって微粒子へと加工することで、表面がなめらかで、粒の揃った高度な真球状の製品開発に成功。特徴として、柔らかい触感と伸びの良さをもっている。

 昨今、マイクロプラスチックによる海洋環境汚染が世界的に問題視されている中で、化粧品業界でも、環境にやさしい天然由来の素材が求められている。同社は、化粧品業界の環境対応ニーズに応えるものとして、すでに「BELLOCEA」のサンプル品提供を開始しており、製品化に向けて検討を進めている。なお、酢酸セルロース真球微粒子に関して、10月下旬に開催される国際化粧品技術者会連盟の学術大会「The 31st IFSCC Congress 2020 Yokohama」で発表する予定。

「BELLOCEA」をリキッドファンデーションに含有した際の延展性(左)と塗布性の比較
「BELLOCEA」をリキッドファンデーションに含有した際の延展性(左)と塗布性の比較

デンカ コロナ抗原迅速診断キットの検体採取範囲を拡大

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2020年10月7日

 デンカはこのほど、医療従事者の感染リスク低減と受診者の負担軽減のため、新型コロナウイルス抗原迅速診断キット「クイックナビ‐COVID19 Ag」について検体種を追加する製造販売承認事項一部変更承認を厚生労働省より受けたと発表した。

 今回の承認により、同診断キットは、従来の鼻咽頭ぬぐい液(鼻の奥で採取した検体)に加えて、鼻腔ぬぐい液(鼻孔から2㎝程度スワブを挿入して採取した検体)による検査ができ、さらに、医療従事者の管理下での受診者による検体採取が可能となった。

 これにより、医療従事者の感染リスクが低減され、受診者の負担も軽減される。また、インフルエンザなどの流行に備え、1度の検体採取で同迅速診断キットとインフルエンザ抗原迅速診断キット「クイックナビ‐Flu2」やRSウイルス抗原迅速診断キット「クイックナビ‐RSV2」を同時に検査することが可能となっている。

 同社では抗原検査のさらなる普及に向け、検査感度の向上、判定時間の短縮など「クイックナビ‐COVID19 Ag」の性能や利便性を高めるとともに、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルスを同時検出するコンビキットの開発など、より使いやすい検査キットの提供を目指していく。

抗原迅速診断キット 操作方法
抗原迅速診断キット 操作方法

 

NEDOなど 温泉水でも熱交換が可能な熱交換器を開発

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2020年10月6日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東北大学、馬渕工業所、小浜温泉エネルギーはこのほど、温泉スケールと呼ばれる固形物が析出しやすい温泉水でも安定した熱交換が可能な熱交換器を開発し、1カ月間の温泉熱回収の実証試験に成功した。

 今回開発した熱交換器は、熱交換器に付着した温泉スケールを自動的に取り除くことで、熱交換の効率を維持することが可能。これにより温泉水の熱交換器のメンテナンスコストの低減が見込める。また、温泉水以外にも、汚泥を含む工場温排水や藻類・貝類を含む海水・河川水など、様々な分野の熱交換に応用でき、未利用熱や再生可能エネルギーの利用促進が期待される。

 一般的に温泉水はカルシウムや硫黄などの溶解成分を含み、熱交換器の伝熱面上に温泉スケールが析出し、熱交換を阻害することがある。そのため、頻繁な清掃が必要で、メンテナンスコストが高いことが課題だった。

 こうした中、NEDOなど4者は「NEDO先導研究プログラム/エネルギー・環境新技術先導研究プログラム」に基づき、伝熱面を回転させ、そこに羽根を押し当てることで伝熱面に析出した温泉スケールを剥ぎ取れるようにした熱交換器を開発。これにより、表面を常時温泉スケールが付着していない状態に保つことを可能にし、熱交換の効率を維持することができる。また、小浜温泉(長崎県雲仙市)で1カ月間の熱交換実験を行った結果、伝熱面からの温泉スケールの除去と熱交換効率の低下抑制に成功した。

 今後、スケールアップした熱交換器を開発し、長期間(3カ月を予定)の現地実証試験を行うことで、さらなる耐久性向上のための検証を行うほか、熱交換器の高性能化のための研究開発を行う。

実証試験の様子
実証試験の様子

 

SEMI コロナ感染がファブ装置の投資増をけん引

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2020年10月6日

 SEMIはこのほど、最新の「World Fab Forecastレポート」の中で、半導体前工程ファブ装置への世界全体の投資額が2020年に前年比8%、2021年に同13%上昇すると明らかにした。これは新型コロナの感染拡大により、通信、ITインフラをはじめとした電子機器向けの半導体需要が急増することが背景にある。さらにデータセンターやサーバーストレージ向けの半導体需要の増加、米中貿易の緊張の高まりに対する安全在庫の確保も、今年の成長に寄与する見通しだ。

 ファブ装置全体の投資トレンドでは、今年は、投資額が前年比9%減少した昨年から回復すると見られる。ただ、第1四半期と第3四半期は投資が減少し、第2四半期と第4四半期は上昇するなど乱高下することが、実績と予測から示されている。半導体分野別では、メモリーの投資増加率が最も大きくなると予測され、今年は前年比16%増の264億ドルとなり、来年はさらに同18%増加し312億ドルに達する見込み。

 内訳を見ると、3D NANDは、今年は同39%増と最大の成長率を記録するが、来年は同7%増と成長が緩やかになる。それに対しDRAMは、今年の投資成長率は後半に減速し同4%増となるが、来年は急増し同39%増となること予測される。

 その他の半導体分野の装置投資額では、ファウンドリは、今年は同12%増の232億ドルとメモリーに次ぐ規模となるのに対し、来年は同2%増の235ドルと微増にとどまることが予測される。MPUは、今年は同18%減の55億ドルとなるが、来年は同9%増の60億ドルに回復する。アナログは、今年は同48%増の急成長を見せるものの来年は同6%増となる。この拡大は主にミクストシグナル/パワー半導体ファブの投資によるものだ。イメージセンサーは、今年は同4%増の30億ドルだが、来年は11%増の34億ドルと急増することが予測される。

ちとせ バイオジェット燃料の技術開発がNEDO事業に

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2020年10月6日

 ちとせグループの中核企業であるちとせ研究所は5日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募したバイオジェット燃料生産関連の技術開発事業に、「微細藻類由来の純バイオジェット燃料の製造に向けた藻類の長期大規模培養技術の確立」を目指すテーマが採択されたと発表した。

 ちとせ研究所は、マレーシア・サラワク州の州立研究機関であるサラワク生物多様性センターや、サラワク州政府系の電力会社サラワク・エナジーらと共同で研究開発に取り組み、火力発電所の排気ガスを利用した藻類の長期大規模培養技術の確立を目指す。

 光合成により二酸化炭素を吸収する微細藻類由来バイオジェット燃料の普及に向けては、十分な供給量の確保と生産コスト削減の観点から、数千㏊規模での藻類の大量培養が必要になる。今回の実証事業では、事業化を目指す上で最小単位となる5㏊規模での実証を行っていく。

 日本と東南アジア全11社で活動するバイオベンチャー企業群のちとせグループは、これまで国内外の様々な環境下で、様々な藻類種、様々な藻類培養技術を応用し、多くの共同事業者と共に、複数の屋外実証プロジェクトを実施、その一部を商業化している。

 これらの知見を生かし今回、5㏊の新規大規模藻類培養設備を構築し、熱帯気候の屋外環境下での純バイオジェット燃料製造に最適な微細藻類を選定することで、同微細藻類種を含む複数の微細藻類種を使って火力発電所排気ガスを利用した大規模藻類培養の実証を行う。また、実証データを基にバイオジェット燃料の社会実装を見据えたTEA(技術経済分析)、LCA(ライフサイクルアセスメント)を実施していく予定だ。

バイオジェット燃料普及に向け、火力発電所の排気ガスを利用した大規模藻類培養の実証を開始
バイオジェット燃料普及に向け、火力発電所の排気ガスを利用した大規模藻類培養の実証を開始

DIC ヘルメットに装着可能なフェイスシールドを発売

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2020年10月6日

 DICは5日、100%子会社であるDICプラスチック(DPI)が、産業用ヘルメットに装着可能なフェイスシールド「フェイスシールド プロ」の販売を開始したと発表した。

産業用ヘルメットに装着可能「フェイスシールド プロ」
産業用ヘルメットに装着可能「フェイスシールド プロ」

 新型コロナウイルス感染症への感染リスクが常に伴うウィズコロナ時代では、飛沫感染を防ぐ対策が日常生活ばかりでなく職場環境でも求められている。日常生活では主にマスク、フェイスシールド、マウスシールドなどの飛沫感染対策製品が用いられるが、ヘルメットの着用が必要な製造および作業現場では、熱中症への対策を踏まえ、視認性、耐久性、作業性を兼備する製品が必要となる。

 プラスチック成型品の製造および販売を行うDPIでは、このようなニーズに対応するため産業用のヘルメットに装着可能なフェイスシールド「フェイスシールド プロ」を開発。同製品は顎下までしっかりガードする形状により飛沫感染を予防、同時に高い視認性、作業性を確保している。加えて、防曇加工による曇り防止や、使用時以外は跳ね上げ脱着が可能なため、作業者の快適性に貢献する。

 DICグループは、新型コロナ感染症の世界的な感染拡大に対し、グループ一丸で何ができるかに向き合っており、今後も顧客ニーズに対応した製品開発を迅速に進めていく。