積水化学 医療事業を拡大、国内外工場の生産設備を増強

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2020年8月31日

 積水化学工業は28日、メディカル事業の国内外主力2工場に総額約60億円を投じ、生産設備を増強することを決定したと発表した。同社は100%子会社の積水メディカルを中核として、「検査事業」と「医療事業(医薬・創薬支援・酵素)」の2事業を軸にライフサイエンス分野の拡大に注力しているが、今回の増強により各種医薬品の原料・原薬の受託製造を行う体制を整え、「医療事業」を強化する考えだ。

 世界の医薬品市場は100兆円を超え、中国や米国を中心に市場が毎年5%前後拡大する中、従来の低分子医薬品に加え、ペプチド(中分子)・タンパク質医薬(高分子)・細胞医薬・再生医療と医薬品による治療手段の多様化が加速している。

 同社グループではこれまで、日本の積水メディカルで低分子医薬品向け原薬など、英国のSEKISUI DIAGNOSTICS社で診断薬向け酵素などの製造・販売を行ってきたが、昨今の医薬品市場の多様化・高コスト化に対応するためには、幅広い領域での供給体制を整える必要があると判断した。

 積水メディカルの岩手工場では、約40億円投資し中間体製造棟を新設。低分子医薬品向け原薬・中間体の25%増産が可能となる。また、ペプチド医薬品原料の生産体制の増強も進めている。

 一方、英国工場では、約20億円投資し微生物タンパク質培養・精製施設を新設。タンパク質医薬向け原料のCDMO(医薬品の研究開発・製造受託)に向けた体制が整う。両工場の増強が完成すれば、低分子から高分子まですべての医薬品製造領域での受託製造が整備される。また、両工場は、医薬品の製造および品質管理基準であるGMPに準拠した生産設備となり、医薬品原料・原薬の開発・製造が可能になる。

 積水化学は、メディカル事業の中で、医療事業をコア戦略領域の1つと位置づけている。今後も大きな成長が見込まれる医薬品市場に向けた生産供給体制の強化と、研究開発・品質管理・サービス体制の強化に努め、製薬会社を中心とした顧客ニーズに応えていく。

東ソー CNF複合化CRの低コスト化がNEDO事業に

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2020年8月31日

 東ソーは28日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー(CNF)関連技術開発」について、「革新的CNF製造プロセス技術の開発」の実施予定先として採択されたと発表した。同社は共同提案先のバンドー化学と連携し、「伝動ベルトをターゲットとしたCNF複合化クロロプレンゴム(CR)の低コスト製造技術開発」に着手する。実施期間は2024年度までの5年間を予定。

 世界では石油の価格上昇や枯渇リスク、CO2排出量の増大に伴う温暖化問題に直面しており、持続可能な低炭素社会を実現していくためには、バイオマスなど様々な非石油由来原料への転換が求められている。植物素材であるCNFは、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上の強度をもつバイオマス由来の高性能素材。その実用化に向けた期待が増す一方で、市場拡大にはさらなる用途開拓やコストダウンなどの課題がある。

 同事業では、製造コストを大幅に低減させる製造プロセス技術の開発や、用途開発の促進、安全性評価などを行い、CNFを利用した製品社会実装・市場拡大を早期に実現することで、CO2の排出量を削減し、エネルギー転換・脱炭素化社会を目指す。

 東ソーは、1971年よりCR「スカイプレン」の製造・販売を開始。その製造・開発技術を生かし、顧客ニーズに合わせた製品開発や、環境配慮型製品の展開に取り組んでいる。CNF複合化による材料技術では、伝動ベルトなど応用製品の基本性能向上が見込まれ、コストダウンによる量産化が期待されている。

 

出光興産 PVモジュールリサイクル技術、NEDO事業に

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2020年8月28日

 出光興産はこのほど、NEDOが実施する「太陽光発電主力電源化推進技術開発/太陽光発電の長期安定電源化技術開発」事業について、100%子会社のソーラーフロンティアが提案する「結晶シリコン及びCIS太陽電池モジュールの低環境負荷マテリアルリサイクル技術実証」が共同研究事業として採択されたと発表した。

パネルセパレータ処理後のCIS薄膜太陽電池モジュール
パネルセパレータ処理後のCIS薄膜太陽電池モジュール

 使用済み太陽電池(PV)モジュールは、2030年代から急激に増加することが予想されている。こうした背景から、ソーラーフロンティアでは、低コストかつ環境負荷の低いリサイクル技術の確立が重要であると捉え、継続的にCIS薄膜太陽電池モジュールのリサイクル技術開発を進めてきた。

 昨年度に取り組んだ、NEDOとの共同研究事業では、これまでの研究開発や技術実証で確立した低コスト分解処理技術をベースとして、CIS薄膜太陽電池モジュールの全ての部材に関するリサイクル用途を明確にし、マテリアルリサイクル(MR)率を約90%まで向上させるめどをつけた。

 今回、採択されたNEDOとの共同研究事業では、昨年度の研究開発で確立した技術を、より低コストで環境負荷の低いリサイクル技術へと進化させていく。

 具体的には、4年間(2020~2023年度)で、CIS薄膜太陽電池に加えて、結晶シリコン系太陽電池のリサイクル技術開発にも取り組み、分離処理コストをCIS薄膜太陽電池、結晶シリコン系太陽電池を問わず3円/W以下、MR率を90%以上とすることを目指す。

 同社の生産拠点である国富工場(宮崎県)に、市販サイズのモジュールを処理する実証プラントを構築し、最終年度までには目標としたリサイクル技術を連続運転により実証する予定。同研究開発では宮崎県工業技術センターや宮崎大学とも協働することで、リサイクル技術の開発をさらに加速させる。

 出光興産は中期経営計画の中で、重点課題の1つである「次世代事業の創出」の主な取り組みにサーキュラービジネスを掲げ、その一環としてPVモジュールのリサイクル技術開発を推進している。この計画の下、ソーラーフロンティアはリサイクル市場の拡大に備え、より低コストかつ環境負荷の低いリサイクル技術開発を行い、主力電源としての太陽光発電のさらなる普及拡大と持続可能な社会の実現に向けて貢献していく考えだ。

ソーラーフロンティア NEDO実証事業の概要
ソーラーフロンティア NEDO実証事業の概要

カネカ 北海道で有機酪農会社を設立、高付加価値品を展開

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2020年8月28日

 カネカはこのほど、生乳を取引する酪農パートナー別海ミルクワールド(北海道野付郡別海町)と有機生乳製造・販売の別海ウェルネスファームを6月に設立したと発表した。別海ウェルネスファームの有機専用牧場は来年4月に稼働、2022年に生乳の有機JAS認証取得を目指す。同牧場の生乳は全量カネカが買い取り、ヨーグルトを中心に牛乳、バターなどの有機乳製品を拡充し、24年には乳製品事業全体で売上高100億円を目指す。

 カネカはベルギーのPur Natur Investと技術提携し、18年に乳製品事業に参入。「パン好きの牛乳」「パン好きのカフェオレ」「ベルギーヨーグルト」「発酵バター」など、技術導入による製品を相次ぎ上市し、市場での高い評価とともに販売は順調に伸長している。今後、有機乳製品や同社のサプリメント素材と組み合わせた機能性食品などの高付加価値商品の品揃えを増やし、販売を拡大していく予定。

 後継者不足や労働力不足で国内の酪農業は厳しい環境下にある中、同社は「酪農家と共に魅力ある酪農業を考え、持続可能な酪農を推進する」ことを乳製品事業展開の理念としている。新会社では高付加価値の有機生乳生産に加え、酪農現場の省力化、飼料の自家栽培など、酪農の生産性向上に取り組み、人・乳牛・環境に配慮した持続可能な循環型酪農を目指す考えだ。

ENEOS 東京高輪ゲートウェイ水素ステーションを開所

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2020年8月28日

 ENEOSは27日、「東京高輪ゲートウェイ水素ステーション」(東京都港区)を開所したと発表した。同ステーションは、燃料電池自動車(FCV)に水素を供給する、同社43カ所目の商用水素ステーション。

東京高輪ゲートウェイ水素ステーション
東京高輪ゲートウェイ水素ステーション

 同社は、JR東日本から高輪ゲートウェイ駅に隣接する敷地の提供を受け、同ステーションの建設を進めてきた。水素は、貯蔵が容易で災害時に強く、利用時にCO2を排出しない究極のクリーンエネルギーであることから、同ステーションは、同エリアの開発方針の1つある「地域の防災力強化と先導的な環境都市づくり」に貢献する拠点になることが期待されている。

 東京2020オリンピック・パラリンピックゴールドパートナー(石油・ガス・水素・電気供給)であるENEOSは、同ステーションを東京2020オフィシャル水素「ENEOS水素」を供給する拠点の1つとして大会の運営を支えるとともに、大会を契機として幅広い産業分野に水素が普及するよう、引き続き水素サプライチェーンの構築に積極的に取り組んでいく考えだ。

NEDO 人と共に進化するAI技術で労働生産性を向上

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2020年8月27日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、「人と共に進化する次世代人工知能(AI)に関する技術開発事業」を開始した。人がAIの推論過程や推論根拠から学び、AIが人の知見を使って推論精度を上げ、人とAIが共に進化するAIの開発を行う。将来の労働力不足に対する労働生産性の向上に、AIを活用した専門家の育成や労働者のスキル習得の効率化などが期待される。

 一方、医療診断、貸付審査、自動運転など社会的・経済的な影響が大きい分野では、AIの推論結果を理解できない、品質の評価・管理手法も未確立であるなど、AIの導入は限定的だ。また、AIの推論精度に必要な大量データに対する要求精度やタグ付けといった前処理なども、AI導入の障壁である。

 こうした中、①人と共に成長するAIの基盤技術、②AIの評価・管理手法、③構築・導入が容易なAIの開発、からなる研究開発事業を開始した。今年度からの5年計画で、今年度予算は約29億円。

 ①は推論過程や推論根拠を説明でき、人の知識を理解できるAIの開発で、人とAIが相互に理解・学習することにより共に進化し、幅広い分野へのAIの適用を目指す。

 ②は評価項目・指標・目的などの具体的な品質評価・管理ガイドラインの策定、推論結果の品質評価・管理手法の開発、膨大な検査データや統計的データの統合処理テストベッドの開発により品質マネジメントを確立し、デファクトスタンダード化を目指す。

 ③は画像や言語などの汎用学習済みモデルと応用分野毎の準汎用学習済みモデルを用意し、目的ごとに適宜組み合わせてシステムを作る。少量のデータで高精度モデルを構築でき、管理と利活用を容易にするプラットフォームを構築する。

 これらの技術開発によりAIシステムの導入を促進し、2030年に日本産業の労働生産性20%超の向上(今年度比)を目指す考えだ。

 

三井化学など 新規3Dマスクを愛知県みよし市へ寄贈

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2020年8月27日

 三井化学と名古屋大学大学院工学研究科の堀克敏教授、同大学発ベンチャー・フレンドマイクローブの3者で共同開発した新規3Dマスク「θ(シータ)」50個を、このほど愛知県みよし市に寄贈した。 

 販売元であるフレンドマイクローブ社は、以前から同市よりマスクの相談を受けていた。今月7日、みよし市役所にて、同市の小野田賢治市長、フレンドマイクローブの西田克彦社長、名古屋大学の堀教授ら関係者が出席し、寄贈式が行われた。

 今後は、同市の養護教諭が使用し、現場での実際の使用感をフィードバックしてもらうことで、「シータ」のさらなる品質改善を図る。

 同マスクは堀教授が3Dプリンタで開発。生分解性樹脂のポリ乳酸(PLA)を使用した本体と交換フィルター用の不織布からなり、不織布の使用量を従来品の10分の1に抑えた。

 三井化学は、同マスクのウイルス捕集機能を担う、交換フィルター用の不織布を提供している。

寄贈写真 (左から)みよし市教委委員会・今瀬良江教育長、名古屋大学大学院工学研究科・堀克敏教授、小野田賢治みよし市長 、フレンドマイクローブ・西田克彦社長、同・蟹江純一主任研究員、同・小原優季研究員
寄贈写真 (左から)みよし市教委委員会・今瀬良江教育長、名古屋大学大学院工学研究科・堀克敏教授、小野田賢治みよし市長 、フレンドマイクローブ・西田克彦社長、同・蟹江純一主任研究員、同・小原優季研究員

ダイセル 酢酸セルロース由来の生分解性材料を共同開発

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2020年8月27日

 ダイセルはこのほど、三和商会(福井県坂井市)と共同で生分解性バイオマスプラスチック「酢酸セルロース」をベースとした成型材料「NEQAS OCEAN」を開発した。従来の生分解性材料よりも優れた物性、成型性をもっており、食品容器や包装資材向けを中心に用途の開発を進めていく。

「NEQAS OCEAN」のペレット
「NEQAS OCEAN」のペレット

 「NEQAS OCEAN」は、耐熱性、耐溶出性、耐臭性などの特性を保有。射出、押出、シートの各成型に対応できるよう開発を進めており、食品容器や成型材料への使用を目指している。

 ダイセルの酢酸セルロースをベースに、三和商会のコンパウンド技術「SANTECH‐BIO」を採用して加工。樹脂中に様々なバイオマス素材を均一に分散させる同技術を利用することで、「NEQAS OCEAN」は酢酸セルロース100%のグレードのほか、酢酸セルロースにバイオマス由来の添加剤を組み合わせた複合材料の製造が可能になった。すでに販売を開始しているグレードに加え、今後は物性や成型性をさらに向上させ、「NEQAS OCEAN」の製品ラインアップを充実させる。

 近年、世界的に環境配慮意識が高まり、脱プラスチックや食品容器の再利用などの傾向が強まっている。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行を機に、衛生面に配慮し感染防止に努めるなどの理由から、使い捨て容器使用の見直しや、容器そのものへの衛生向上などが求められてきている。

  ただ、環境対応型プラスチックは、日本国外からの供給依存に加え、材料物性や成型加工性の不足などが課題。「NEQAS OCEAN」には、酢酸セルロースの特性と生分解性を生かして、これらの課題を解決することが期待される。

 両社は今後、アフターコロナ・ウィズコロナの時代に対応する環境対応型材料として市場への浸透を図るとともに、顧客の要望に応じて物性や成型性の開発をさらに進めていく考えだ。

三菱ケミカル 「BioPBS」製ジッパー、欧州で認証取得

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2020年8月27日

 三菱ケミカルは26日、同社の生分解性樹脂「BioPBS」を活用してタキロンシーアイが開発したジッパーが、欧州の生分解性製品の認証機関「TÜV AUSTRIA」の〝OK Compost〟認証を取得したと発表した。

BioPBSを使用したジッパー
BioPBSを使用したジッパー

 三菱ケミカルが開発し基本特許をもつ「BioPBS」は、タイのPTT MCC Biochem(三菱ケミカルとPTTグローバルケミカルの折半出資)が製造する植物由来の生分解性樹脂。自然界の微生物によって水と二酸化炭素に分解されるため、自然環境への負荷が少ない。また、他の生分解性樹脂に比べ、低温ヒートシール性・耐熱性・柔軟性などの優れた性能がある。

TÜV AUSTRIA 社の認証マーク
TÜV AUSTRIA 社の認証マーク

 今回、タキロンシーアイが長年培ってきたジッパーの製造技術により、「BioPBS」を用いた生分解性ジッパーの開発に成功し、また、ジッパーのような厚みのある製品では取得が難しいとされている「TÜV AUSTRIA」の〝OK Compost〟の認証を取得した。

 プラスチックごみ問題への対策が求められていることを背景に、食品のパッケージなどに使用される包装材料は、従来の非生分解性の樹脂から生分解性のある素材への代替需要が高まっている。

 今回開発したジッパーは、「BioPBS」の柔軟性とタキロンシーアイの成型加工技術により、生分解性をもちながら多様な再開閉ニーズに応えることが可能。今後は菓子やコーヒー豆、ドライフルーツといった食品用パッケージや衣料用パッケージなど、幅広い用途に展開していく。

 三菱ケミカルは、三菱ケミカルホールディングスグループが掲げる「KAITEKI」の実現に向け、今後も「BioPBS」をはじめとする生分解性樹脂や植物由来樹脂の研究開発・用途展開を加速させ、サーキュラーエコノミー(循環型社会)構築やSDGs達成に貢献していく。

旭化成 「へーベルメゾン」の再エネを川崎製造所で活用

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2020年8月27日

 旭化成は26日、東京電力エナジーパートナー(東電EP)ともに、旭化成ホームズが手掛ける集合住宅「ヘーベルメゾン」の太陽光発電設備で創出した環境価値を、旭化成グループ内で有効活用する取り組みを発表した。

 具体的には、旭化成ホームズが賃貸用の集合住宅「ヘーベルメゾン」の屋根に、固定価格買取制度「FIT制度」の対象外(非FIT)となる太陽光発電設備を設置し再生可能エネルギーを創出。その再エネ電力を東電EPが購入し、環境価値を付与した上で、「非FIT非化石証書付電力」として旭化成に販売する。

 旭化成は、東電EPから購入した電力を実質再エネ由来の電力として川崎製造所で利用。旭化成グループ内で創出した環境価値を製造時に使用する電力として活用し、地球温暖化ガスの削減をはじめ、グループビジョンに掲げる「環境との共生」などの取り組みを推進していく考えだ。

 3社は同日に、「非FIT非化石証書付電力契約」を締結。FIT制度に依存しない太陽光発電設備による非FIT非化石証書を付加した電力を、同一企業グループ内の事業所に供給する国内初の取り組みとなった。

 太陽光で発電された電力は、FIT制度を中心に活用されるのが一般的だが、今年4月に同制度の認定条件が変更されたことを受け、旭化成、旭化成ホームズおよび東電EPは、FIT制度に依拠せずに再エネの普及に貢献する手法を共に検討を進め、このほど、同一企業グループ内で有効活用するスキームを実現した。

 3社は今後も、地球環境を重視し、再生可能エネルギーの拡大・活用を検討していく。

旭化成グループ内で、太陽光発電設備による再エネを有効活用するスキーム
旭化成グループ内で、太陽光発電設備による再エネを有効活用するスキーム