【夏季特集】PSジャパン代表取締役社長 室園康博氏

, ,

2021年8月10日

新中計は環境対応と能力増強がテーマ、新規難燃にも注力

 ━PSの業況はいかがですか。

 昨年は、春先に新型コロナウイルスの感染が拡大した影響を受け、4-6月期の内需は前年同期比で20%も落ち込んだ。これが最後まで響いたことで、2020年(暦年)の国内出荷は前年から3万6000tも減少する結果となった。しかし、昨年後半から巣ごもり需要が定着したこともあり、足元ではコロナ禍以前にまで需要が回復している。

 PS需要の約6割を占める食品包材用途では、好調なスーパー向けに加え、市場が拡大しているテイクアウトや宅配向け容器の引き合いが強い。PSの嵌合性(かんごうせい)や剛性が評価されている。さらに、自宅で快適に過ごすために、ウイルス対策として空気清浄機やエアコン、また冷蔵庫やテレビといった生活家電が売れ始め、電気・工業用途も好調に推移している。当社の工場の稼働率も、HIPS系はフル稼働となり、GPPSも高稼働が継続している状況だ。

 2021年の見通しについては、2019年並み(64万3000t)に回復することを見込んでいる。上半期(1-6月期)の国内出荷も33万1000tとなっており、仮に夏場に落ち込んだとしても十分達成できるだろう。ただ、

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

【石油化学事業の展望】石油化学事業の収益安定が課題

2021年6月4日

海外市場の競争激化、脱炭素化への対応もカギに

 わが国化学産業の根幹をなす石油化学事業は、大きな転換点を迎えている。コロナ禍よって落ち込んだ需要は回復基調にあるものの、今年はアジア地域で大型コンプレックスの稼働が予定されるなど、需給バランスの悪化が懸念されている。各社はこれまで市況変動への体制を強化するため、設備の構造改革や製品の高付加価値化を進めてきた。しかし、コスト競争力の高い海外メーカーとの競争で生き残るためには、もう一段の構造改革やバリューチェーンの強化など、早急に次の一手を打つ必要があるだろう。一方、脱炭素化の動きも加速している。

 昨年、政府はカーボンニュートラルを宣言し、今年4月には2030年のGHG削減目標も引き上げた。CO2を排出する石化事業にとっては野心的な目標となっており、これにどう貢献していくかが問われている。原燃料のグリーン化やCO2利用、また水素やアンモニアの活用といったイノベーションが求められているが、サステナブルな事業にするためには収益性との両立が必要不可欠だ。

 また、サーキュラーエコノミーに向けた廃棄プラスチックのリサイクルも重要なテーマだが、技術開発や設備投資などの面から一社単独でソリューションを提供することが難しい。政府の支援の下、サプライチェーン全体でシステムを構築していく必要があるだろう。

 今回の「石化事業の展望特集」では、各社の石化担当役員の方々に、将来の石化事業やコンビナートのあるべき姿、また事業戦略や環境対策などについて聞いた。

─────────────────────────────────────────────

◇インタビュー◇

旭化成常務執行役員 小野 善広氏
▽構造改革で基盤強化、基盤技術で社会のGHG削減に貢献

出光興産常務執行役員 本間 潔氏
▽環境変化に対応、収益安定化に向けバリューチェーンを強化

東ソー取締役常務執行役員 安達 徹氏
▽中京地区センターの責任、差別化によるポリマー事業の拡大

三井化学専務執行役員 芳野 正氏
▽ニッチ分野に注力しダウンフローを強化・拡大、ボラ低減へ

三菱ケミカル常務執行役員 半田 繁氏
▽社会変化は素材のニーズを大きく変える、問われる新たな視点

【石油化学事業の展望】旭化成常務執行役員 小野 善広氏

, ,

2021年6月4日

構造改革で基盤強化、基盤技術で社会のGHG削減に貢献

足元の事業環境と2021年の見通しについて。

  昨年の石化製品の需要は4-6月が底となり、一部の事業では7-9月にも響いた。しかし10月以降は持ち直し、足元では自動車を中心に回復基調を強めている。IMFの発表では、世界のGDPの成長率は昨年がマイナス3.3%だったが、今年は6%、来年は4.4%の成長を見込むなど、世界経済は、コロナ禍当初には想像できなかったスピードと力強さで立ち直りつつある。中でも、GDPが昨年のコロナ禍でも2.3%、そして今年の見通しが8.4%と勢いのある中国が、牽引役となっていくだろう。

 当社の石化事業は

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

【石油化学事業の展望】三菱ケミカル常務執行役員 半田 繁氏

, ,

2021年6月4日

社会変化は素材のニーズを大きく変える、問われる新たな視点    

石化の足元の事業環境と今年度の見通しについて。

  2019年の半ばごろから、徐々に景気後退の傾向が出てきており、昨年初頭にはコロナの影響で、一気に世界中が大打撃を受けた。加えて、原油急落に連動し国産ナフサが4万5000円/klから2万5000円/kl程度まで下落したことから、利益面では在庫評価損が大きく響いた。足元では、コロナ禍にあっても昨年の後半ごろから数量的には世界経済が回復しつつある。

 今期の石化の見通しで言えば、誘導品についてはワールドワイドにフォーミュラでの商売が定着してきているため、状況によってはスプレッド変動による若干の上下はあるかも知れないが、

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

【石油化学事業の展望】三井化学専務執行役員 芳野 正氏

, ,

2021年6月4日

ニッチ分野に注力しダウンフローを強化・拡大、ボラ低減へ  

石化事業の足元と2021年の見通しについて。

  2020年度を振り返ってみると、上期(4-9月期)はナフサ価格の急落に伴う在庫評価損や川下製品の需要減少など、コロナ禍の影響を大きく受けた。オレフィンやポリプロピレン(PP)の販売が落ち込む中、特にPPは自動車関連用途の需要鈍化が響き、ナフサクラッカーの稼働率も低下した。しかし、下期(10-3月期)には自動車産業をはじめとした世界経済の回復とともに原燃料価格が上昇に転じ、製品市況が上向いてきたことでスプレッドが拡大し、クラッカーも高稼働を回復した。

 当社の場合、オレフィン、ポリオレフィンなどの石化部門とアセトンやフェノールといった基礎化学品部門、ウレタン部門を合わせて基盤素材セグメントとして括っている。2020年度の基盤素材は、期初予想は赤字予算でスタートしたものの、最終的には300億円程度の改善があり、コア営業利益196億円と黒字で着地することができた。今年度については、

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

【石油化学事業の展望】東ソー取締役常務執行役員 安達 徹氏

, ,

2021年6月4日

中京地区センターの責任、差別化によるポリマー事業の拡大

足元の事業環境と2021年の見通しについて。

  昨年度の事業環境を見ると、オレフィン事業は、コロナ影響で前半は内需が低調だったが、後半は回復基調の内需と経済が好調な中国への輸出が牽引し、国内プラントは高稼働となった。また、各社の設備トラブルや北米の寒波の影響により供給が制約されたため、後半の需給は比較的タイトで推移し、製品市況も高かった。

 それに対し今年度は、海外で大型コンプレックスの稼働が予定されており、徐々に需給は軟化してくると見ている。ただ将来的には、新興国の人口が増加してくることに加え、アジア諸国の中間所得者層の拡大が続くことから、基礎化学品の需要は堅調な伸びを示すだろう。

 一方、ポリマー事業は、

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

【石油化学事業の展望特集】出光興産常務執行役員 本間 潔氏

, ,

2021年6月4日

環境変化に対応、収益安定化に向けバリューチェーンを強化 

足元の石化の事業環境と、今年の見通しについて。

 2020年は、新型コロナにより需要が落ち込む中、2019年末より中国・韓国では製油所・クラッカーの新増設があり、順調に稼働したことから供給過剰となった。その結果、需給バランスが大きく崩れ、上期には市況が大きく下落し当社の業績も悪化した。しかし昨年度後半から、中国経済が立ち直り、各国の経済活動も活発化し始めた。自動車生産が本格化してきたことに加え、生活必需品の需要も底堅く推移したことから、石化製品の需要も回復傾向となっている。

 しかし、製品によっては

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

◇この人にきく◇ ハイケム サステナベーション本部副本部長 高 裕一氏

,

2021年4月23日

C1化学など中核事業括り、成長分野の出口戦略強化へ

 日中間の化学品の貿易事業で創業したハイケム。その後、中国でのOEM受託製造を展開する一方で、独自に行う触媒技術の研究・開発を進め、合成ガスから非石油由来でエチレングリコールを生産する革新的な「SEG技術」のライセンス事業に参入するなど、C1ケミカルを中核として事業領域を大きく拡大させている。

 今年1月1日付で、持続可能性(サステナビリティ)と技術革新(イノベーション)を包括する「サステナベーション本部」を新設。成長の源泉であるC1ケミカル事業や触媒事業を発展させることで、ポリ乳酸(PLA)をはじめとする生分解性材料の普及、カーボンニュートラル社会や水素事業実現に向けた展開を加速していく考えだ。同本部の高裕一副本部長に、今後の取り組みについて聞いた。

━ サステナベーション本部を立ち上げた意図について。

   当社がこれまで展開してきた、炭素の利用効率を上げるC1ケミカルやプラスチック問題に対する生分解性材料への取り組みは、SDGsの17の目標の中でも、CO2削減と海洋マイクロプラスチックの課題にダイレクトに貢献できる事業だと考えている。

 今回、C1ケミカル事業と、生分解性材料など機能性ポリーマーを扱う素材事業部、工業触媒部などを1つの組織「サステナベーション本部」で括った。「サステナベーション」は、地球や社会、会社のサステナビリティと、それを実現するイノベーションを掛け合わせた造語になるが、会社として今後、その2つの要素を1つの本部で統括し推進していく強い意思を明確に打ち出し、社内外へ向けてメッセージを発信するために新設した。

━ 本部新設から4カ月目だが、どのような成果が見えてきたか。

  発足当時はそこでどういった化学変化が起きるのか、まだはっきりとイメージできていない部分もあったが、実際に走り出してみると、組織が1つだからこそできる、ということが多く見えてきた。我々のC1ケミカルは合成ガスを原料として、非石油由来でポリエステル原料のエチレングリコール(EG)を作る「SEG技術」が一番の強みであり、その反応工程で使う触媒も自社で提供している。

 一方、素材事業部は生分解性材料に代表される商材を、

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。お願い . あなたは会員ですか ? 会員について

【国際化特集】コロナ禍がターニングポイントに

2021年3月29日

事業再編が加速、変化の時代にこそ商機を見出す

 わが国化学産業は、大きなターニングポイントを迎えている。昨年は、コロナ禍によって汎用品を中心に需要が落ち込む反面、半導体材料やライフサイエンスなどは安定した収益を確保しており、事業によって明暗がはっきり分かれる年となった。特に石油化学事業は、市況低迷や原料価格の下落といった変動の波を激しく受け事業環境が悪化。この状況を踏まえ、新たに構造改革を検討する企業も出始めており、その動向が注目されている。今後、成長が期待できる事業に経営資源を集中させるため、各企業ではポートフォリオの再編が一層加速していきそうだ。

 一方、今回のパンデミックは、各国のグリーン政策に勢いを与えた。EUの「欧州グリーン・ディール政策」に続き、わが国でも「グリーン成長戦略」が策定され、経済と環境の好循環を目指す方針が示されている。また、対立を深める米国と中国の間で、気候変動をめぐる「脱炭素」が新たな覇権争いの焦点になるとの見方も強まってきた。こうした脱炭素化の流れは、CO2排出量が多い製造業にとってリスクになりかねない。ただ、日本の化学企業は、サスティナビリティに貢献できる技術や製品を多く持っている。それらを活用して、この変化をビジネスチャンスに転換できるかが、グローバル市場で生き残りを図るカギとなるだろう。

 今回の「国際化特集」では、先行き不透明感が強まる中、世界のトレンドをいかに捉え、どう対応していくのか、業界を代表する首脳の方々に聞いた。

─────────────────────────────────────────────

◇インタビュー◇

経済産業省 製造産業局素材産業課企画調査官 小林麻子氏
▽グリーン社会への転換が国際的潮流に、イノベーションを期待

信越化学工業 代表取締役会長 金川千尋氏
▽塩ビは環境貢献とインフラ整備に不可欠、需要を捉えて増設

三菱ケミカルHD 代表執行役社長 越智 仁氏
▽発想力で新しい価値観を生み出す人材、変化にはDXで対応

旭化成 代表取締役社長 小堀秀毅氏
▽成長は海外に、グローバル・変革を見据えた取り組みに注力

昭和電工 代表取締役社長 森川宏平氏
▽世界で戦える会社へ進化、7月の実質統合からの1年が重要

 

【国際化特集】経済産業省製造産業局素材産業課企画調査官 小林麻子氏

,

2021年3月29日

グリーン社会への転換が国際的潮流に、イノベーションを期待

2021年の世界経済の動向と化学産業の業況見通しについて

 新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の影響により、依然として厳しい状況にありますが、全体としては緩やかに回復していると捉えています。IMF(国際通貨基金)は1月、今年の世界経済成長率の見通しを5.2%から5.5%としました。3月のOECD(経済協力開発機構)の予測も世界成長率を5.6%に上方修正しています。アメリカや日本をはじめとした主要国の政策支援やワクチンが経済活動を活性化させる期待が高まっていますが、新たな感染の波や変異株ウイルスの影響による異例の不確実性のなか、引き続き世界経済の動向をしっかり注視していく必要があります。

 そのなかで、化学産業は、エチレン設備稼働率が

このコンテンツを閲覧するにはログインが必要です。お願い . あなたは会員ですか ? 会員について