《新春インタビュー》出光興産 代表取締役社長 木藤俊一氏

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2020年1月15日

出光興産社長━統合初年度の昨年を振り返って。

 木藤 新元号の発表の日となる4月1日に合同で入社式を行った。令和の幕開けとともに、新統合会社がスタートしたと感じている。

 統合は予定より2年遅れ、方向性を打ち出してから3年の歳月がかかった。難産だったと言えるが、その分シナジーを前倒しで出す業務提携を行ってきた。各段階でも懇親の場を多く作ってきたことによりすでに盛んな交流が進んでいる。こういった助走期間があったことでスムーズなスタートを切ることができたと言えるだろう。

 統合効果については、2019年度には300億円のシナジーが見えてきており、2021年度には当初計画である600億円のシナジーが達成できる見通しだ。今後は業務システムの一本化などの課題などに取り組み、1つの組織の中で生き生きと働ける環境づくりを目指す。両社の優秀な社員がしっかり働ける会社にすることで、さらなるシナジー創出につながるだろう。

━新会社としてまず何に注力していきますか。

 木藤 当社が社会貢献できる体制となるため、基盤事業の構造改革と競争力強化にしっかり取り組む。石油業界は、JXTGが誕生し出光昭和シェルが協業を進めてきた中で、国内の事業基盤が安定化してきた。こうした中、統合新社の課題は、ライフライン

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【新年特集】日本の化学産業、新しい変化をビジネスチャンスに

2020年1月9日

世界経済の先行き不透明、環境問題も大きなテーマ

 日本の化学産業は米中貿易摩擦の深刻化を背景に中国経済が減速傾向となったことで、厳しい事業環境が続いている。原油・ナフサ価格も不安定な動きを見せ始めており、先行き不透明感が強まってきた。化学メーカー各社はこれまで構造改革に注力し、変動への耐性を高めてきたが、今年はその実力が試される1年となりそうだ。

 現在の世界的な潮流を見ると、「CASE」や「5G」など次世代技術の開発が本格化し、新たなビジネスチャンスが生まれている。オープンイノベーションにより研究開発力やマーケティング力を強化し、市場ニーズに対応したソリューションを提供していく必要がある。

 こうした中、長期的な視野に立った戦略も重要だ。持続的成長を図るためには、設備の新増設やM&Aといった成長投資がカギとなる。景気が減速する中、経営資源の配分に対する各社の考え方に注目が集まりそうだ。

 一方、地球環境問題への貢献も重要課題となっている。企業価値の向上を目指し、ESGやSDGsを経営に組み込む動きも活発化しており、今後さらに環境対応が加速していくと見られる。

 このほか、人手不足や設備の老朽化対策、AIなどデジタル技術の導入、人材の確保・育成など、企業体力の底上げも喫緊の課題だ。今回の新年特集号では、業界を代表する首脳の方々に、環境変化への対応や成長戦略の進捗、また今年の展望などを聞いた。

【新年特集】三菱ケミカル代表取締役社長  和賀昌之氏

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2020年1月9日

KAITEKI実現、社会課題解決は化学会社の責務

━2019年を振り返って、どんな年でしたか。

三菱ケミ 和賀社長01 和賀 世界経済を左右する問題が解決しないまま過ぎ去った1年だった。欧州でのブレグジットや米中の貿易問題による混乱が予想される中で2019年が始まったが、問題解決への大きな進展が見られず、これに加えて、中東情勢はさらに混迷し、悪化した日韓関係は改善の糸口もつかめないままであった。

 経済学的に見れば、国際分業を進展させる中で、関税を撤廃し自由貿易を進めれば、お互いに利益があるはずだが、その推進役であった米国が保護主義に走った。

 しかし日本をはじめ世界経済が停滞する中、米国はいまのところ経済的な失速はみせていない。国際分業と自由貿易により全体の富・利益が増大するという前提に立った各国の協調が、試されている状況と言えるのではないか。

━今後の見通しについて。

 和賀 市況やモノの動きから判断し、当初は昨年の2月を底に年末にかけて緩やかに景気が回復してくるだろうと考えていたが、予想以上にそのスピードが遅い感じがある。

 ただ、指標で見れば改善傾向にあることは確かだろう。MMA(メタクリル酸メチル)モノマーの市況が底を打って反転しつつあることに加え、半導体材料の過剰在庫も減少するなど市場に好転の兆しが出てきた。

━自動車はいかがでしょうか。

 和賀 中国の排ガス規制強化に伴い、非対応車の在庫が大量に発生したことで

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【新年特集】旭化成代表取締役社長 小堀秀毅氏

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2020年1月9日

サステナビリティを意識し、常に高付加価値を追求

━昨年は吉野彰名誉フェローがノーベル化学賞を受賞されました。

旭化成 小堀社長 小堀 今回の吉野さんのノーベル賞受賞は、当社の誇りであり、日本産業界の誇りだ。研究開発陣に大きな刺激となっており、若手を中心に士気が上がっていると感じている。

 業績そのものにすぐに反応があるわけではないが、旭化成グループ全体にとっても非常に元気が出る、いい励みであることは間違いない。この励みを力に変えることで、当社グループがさらに成長・拡大していくことを期待している。

━研究開発現場の環境づくりに心掛けられていることは。

 小堀 当社では、日本の科学技術に対し目覚ましい功績や発明・発見などがあった者に授与される紫綬褒章を、これまで吉野さんを含め、7人が受章している。2000年以降でも5人が受章しており、他の企業に比べても多いのではないだろうか。

 当社は売上高の4%をめどに、研究開発費に充てているが、研究者にある程度の自由裁量を与えながらやってきた成果だと自負している。今後も、豊かな発想を持ち、世の中に無かった素晴らしい技術の発見や発明ができる人財を、輩出し続けていく企業文化と風土を大事にしていきたい。

 同時に、

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【新年特集】三井化学代表取締役社長 淡輪敏氏

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2020年1月9日

構造改革を推進、引き続きリスク管理に注力

━2019年を振り返ってみて、どのような年でしたか。

三井化学 淡輪社長01 淡輪 世界経済は減速感を強めた。特に象徴的なのは自動車産業で、昨年の世界の生産台数は、前年比で6%マイナスの見通しになっている。また、自動車産業は裾野が広いことから、多分野に影響が出てきた感があった。

 一方、半導体産業は一昨年末に減速傾向が見えたが、足元では需要が戻ってきたと感じている。

━国内需要の動きはいかがですか。

 淡輪 国内では消費増税の影響などで多少の変動はあったものの、生活用品回りの需要は総じて底堅く、減速感は見られなかった。それを反映して、ナフサクラッカーの稼働率も95%を若干下回るレベルを維持しており、高稼働となっている。

━2020年の見通しについて。

 淡輪 自動車でいえば、今のところまだ回復の兆しは見えていない。不確定要素が多く、期待感を強く持つことはできない。一方、半導体については、次世代通信5GやEUV(極端紫外線)といった次世代技術が出てきたことで、景気とはまた別の動きになるだろう。

 今年は5Gの普及が加速するとみられ、昨年来、半導体メーカーの間では、微細化技術のEUVリソグラフィに関連する露光機の調達が進んできている。当社製品ではEUV対応のフォトマスク防塵カバー「ペリクル」に期待しているところだ。

━今年のキーワードは。

 淡輪 昨年はキーワードとして「リスク管理」を挙げたが、今年も引き続き注力しなければならない。また、今年は

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【新年特集】東ソー代表取締役社長  山本寿宣氏

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2020年1月9日

機能材料の能力増強を推進、塩ビは効率的な体制に

━2019年の総括を。

東ソー 山本社長 山本 上期は売上高が3963億円、営業利益は404億円ということで、減収減益となりました。その大きな要因は原燃料価格が下がったものの、海外市況の下落がそれを上回ったこと、円高により手取りが悪化したことです。

 下期の前提条件については、10―12月期のナフサ価格を4万1000円、1-3月期は4万2000円、為替は105円に見直しました。

 手取りがさらに悪化すると見込まれることから、通期の連結売上高は8千億円、営業利益は840億円と、当初の業績予想に比べ、売上高は600億円の減収、営業利益は110億円の減益と下方修正を発表しています。

 減益の最大要因は、MDIとカセイソーダの海外市況が下がっていることです。一方、コモディティとスペシャリティの比率については、近年は6対4に近い傾向となっていますが、将来的には五対五にすることにより、利益の安定性を図りたいと考えています。

━2020年の景気動向の見通しは。

 山本 一言で言えば「不透明」です。米中の貿易摩擦により中国の景気が悪化し、海外市況に影響を与えています。英国のブレグジットは、当社には直接的にはあまり影響しませんが、中東を含めた地政学的リスクなど見通しにくい状況です。

 アナリストの見方としては、日本のGDPの伸びは1%前後というのが多く、それほど悪くはないけれど、いいということもないということです。消費増税は大きな影響があまり見られないものの、不透明な状況が今後も続くのではないでしょうか。また、2019年は

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【新年特集】昭和電工代表取締役社長  森川宏平氏

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2020年1月9日

市場変化に対応、世界有数のソリューションカンパニーに

━2019年を総括してください。

昭和電工森川社長 森川 2019年の世界経済は、IMFやWTOなどの経済指標が四半期ごとの発表のたびに下方修正が続いたように、年初の予想に比べて大幅に減速し、米中貿易摩擦や中国経済の影響が明確になった年だった。

 2019年初めに「今年は米中貿易摩擦や地政学リスクなど、空の遠くに黒い雲が見えはじめた。この雲がどうなるかが判明する1年間だ」と話したが、黒い雲は我々の頭上に達し、世界中で消費マインドを曇らせる厳しい年になった。ただ、本当に景気が悪化したのか、消費の弱含みだけなのかはまだわからない。

━2020年の見通しについて。

 森川 米国の大統領選挙を前に、表立った摩擦は落ち着くとしても、米中の覇権争いは5年10年続くと思ったほうが良い。2020年も世界経済の大きな回復は期待しにくい状態にあると言える。特に自動車市場は回復が見えておらず、関連素材も厳しい状況が継続するだろう。当社としても、先行きの不透明感が強まる中、施策などに変更が出る可能性は否定できない。

 しかし、現在の中期経営計画でビジョンとして掲げた「2025年までに当社の事業の半数以上を個性派事業に育成する」という方針に変更はない。昨年末に発表した日立化成との統合に関しては、シナジー効果を最大限発揮できるよう、1年くらいかけて新しい中期経営計画を策定していく考えだ。

━景気がダウントレンドになる中、戦略での「攻め」と「守り」のバランスについて。

 森川 厳しさを増す事業環境下では、市場の要求やトレンドをいかに素早く正確に把握するかが重要になってくる。当社では

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【新年特集】JSR代表取締役社長兼COO  川橋信夫氏

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2020年1月9日

景気の影響受けにくい体制へ、ライフサイエンスなどに注力

━2019年を振り返って。

JSR 川橋社長 川橋 米中貿易摩擦やブレグジットなどにより、特に中国と欧州の景気が減速している影響を受けたことから、上半期の業績は減収減益となりました。通期見通しも下方修正せざるを得ず、極めて厳しい状況にあると言えます。

 対面業界では、中国の自動車生産が2018年の後半から下降していることにより、エラストマーと合成樹脂が大きな影響を受けました。

 一方、私どもが最初から拡大を狙っていた3つの領域は、期待通りの成果を挙げています。エラストマー事業の高機能材料であるS-SBRは、景況が悪いにもかかわらず、対前年比10%以上の伸びとなりました。

 デジタルソリューション事業では、半導体関連材料、特に先端リソグラフィ材料や米国で新工場の建設に着手した機能性洗浄剤、そして実装材料などが伸びています。ライフサイエンスについては、目標とする売上収益500億円が見えてきており、通期の営業利益予想を上方修正しました。

━2020年の見通しを。

 川橋 2019年度の下半期から20年度にかけて景気が底を打ち、後半は緩やかに回復するとの見方が多いものの、米中貿易摩擦の継続に加え、技術移転や安全保障などの問題もあり、来年も厳しいという意見もあります。われわれの対面業界のうち、エラストマー事業に関しては、中国をはじめとする世界の自動車市場の動向を考えると、依然として厳しいでしょう。

 半導体材料事業については、ロジック半導体は

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【新年特集】PSジャパン代表取締役社長  佐藤公氏

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2020年1月9日

能力増強で安定供給に注力、環境問題にも真摯に取り組む

━2019年はどのような年でしたか。

PSジャパン 佐藤社長 佐藤 世界的に見ると、米中貿易摩擦の長期化、中東リスクの増大、ブレグジットの混乱、日韓関係の悪化など様々な問題が起こり、先行き不透明感が増大した1年だった。

 特に米中の対立によって各国の経済成長に陰りが見えてきており、社会全体の消費マインドが冷え込むことを懸念している。

 当社のポリスチレン(PS)事業は国内がメインだが、7月以降の内需は4カ月連続で前年同月を下回って推移している。

 その背景として、梅雨が長引いたことや台風などの天候不順、コンビニやスーパーによるフードロス活動の本格化などが挙げられるが、この状況が一過性のものなのか、それとも今後も継続していくのか、しっかり見極める必要があるだろう。

━2020年の見通しについて。

 佐藤 事業環境では2つの点に注目している。1つ目は、原料であるスチレンモノマー(SM)の動向だ。中国では2019~2021年までの間に約350万tの増設計画があり、これが市場に出回れば海外市況が大幅に下落するだろう。安いSMを原料とした海外品の輸入が増加する可能性もあり、国内の需給バランスが崩れるかもしれない。

 2つ目はプラスチックの環境問題だ。今後さらに関心が高まってくることが想定され、プラごみ対策も加速していくだろう。紙製品や木製品に代替する脱プラの動きも強まっており、当社としても

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【ポリカーボネート特集1】自動車など新用途へ展開、経済減速で市況は悪化

2019年12月13日

 ポリカーボネート(PC)の市況が低迷している。4、5年ほど前までは供給過多の状況が続いていたが、その後はグローバルでの需要が年率3~4%程度伸びていたことやプラントの閉鎖、定修、トラブルなどにより、需給はほぼタイトとなり、昨年夏ごろには、アジアのPC市況は4000ドル/tに迫る勢いで過去最高値を記録した。しかし、足元では2000ドル/tを割るほどに落ち込んでいる。

 その主な要因としては、需給タイトな状況が続いていたことから、中国で複数の新規メーカーが参入し、PCの生産設備を新設したことで供給が過多になっていたところに、世界経済の減速と、米中貿易摩擦などによるPC最大市場の中国で需要が減少したことが挙げられる。さらに、

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