三井化学 バイオナフサでCNとバイオプラ加速、日本初

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2021年5月21日

 三井化学は20日、2050年のカーボンニュートラル(CN)の実現に向け、フィンランドにある世界有数のバイオマス燃料製造会社であるネステ社(Neste)および豊田通商とバイオマスナフサの調達に関する売買契約を締結したと発表した。

バイオナフサは、ネステ社のシンガポール製油所(写真、同社ウェブサイトから)やロッテルダム製油所などで生産されている
バイオナフサは、ネステ社のシンガポール製油所(写真、同社ウェブサイトから)やロッテルダム製油所などで生産されている

 今年10月以降をめどに大阪工場(大阪府高石市)のエチレンプラント(クラッカー)に、日本で初めて原料としてバイオマスナフサの投入を予定。エチレン、プロピレン、C4留分、ベンゼンといったバイオマス基礎原料を生産する。同時に、マスバランス(物質収支)方式によるバイオマスナフサを原料とした、既存品と同等品質のフェノールなどのバイオマス化学品や、ポリオレフィンをはじめとしたバイオマスプラスチックの製造とマーケティングを開始する。調達量は、来年3月までの今年度中に1万tを計画。価格は石油由来ナフサの2~3倍程度になる見込みだ。

 ネステ社は、リニューアブル・ディーゼル(発展型再生可能ディーゼル)では世界トップのシェアを誇るバイオマス燃料のサプライヤー。同社のバイオマスナフサは、植物油廃棄物や残渣油を原料に製造されており、石油由来の原料を使用しない100%バイオマス由来のナフサとなる。今回、バイオマスナフサを使用することで、原料からプラスチック製品が廃棄されるまでのライフサイクルでのCO2は、石油由来ナフサ使用時に比べて大幅に削減されることが期待される。

 一方、バイオマス認証については、三井化学と豊田通商は、バイオマス認証制度として欧州で広く採用されているISCC認証を取得する予定だ。同認証はEUのバイオマス燃料などの認証としてすでに広く認知されており、複雑な生産工程をもつサプライチェーンのバイオマス化を推進させるマスバランス方式の有効な認証制度。バイオマス原料の割合を認証済みの手法で最終製品に割り当てることで、顧客の意思により使用原料のバイオマス化を選択できる。

 三井化学は昨年、総合化学メーカーとしていち早く「2050年のCN」を宣言し、循環経済の実現に向け、化学品・プラスチックのリサイクルとバイオマス化の両輪を進めている。地球温暖化対策に貢献するバイオマス化は、CN実現に向けて重要な戦略課題と捉えており、素材・プロセスの開発とともに、ステークホルダーとの対話を通じてバイオマスの社会への実装を推進している。3社は今後連携を深めながら、日本での国産バイオマスプラの新市場創出を図っていく考えだ。

マスバランス方式によるバイオマス割り当てのイメージ
マスバランス方式によるバイオマス割り当てのイメージ

 

 

三井化学 銅合金フィルムがSIAA抗ウイルス材料認定

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2021年5月18日

 三井化学はこのほど、銅合金蒸着技術を活用した抗ウイルスフィルム「カッパーストッパー」(開発品)が、SIAA(抗菌製品技術協議会)認定試験機関の評価試験で、多様なウイルスに効果を発現することを確認し、併せて、SIAAの抗ウイルス材料認定を取得したと発表した。

「カッパーストッパー」フィルムの外観
「カッパーストッパー」フィルムの外観

 「カッパーストッパー」は、ポリプロピレンフィルムの片面に同社が独自開発した銅合金蒸着技術を施したコーティング材料。銅がもつ抗菌・抗ウイルス性を維持したまま、錆びやすく変色しやすい欠点を合金化することで解決したほか、フィルム化により、幅広い工業製品への応用を可能にした。

SIAAの抗ウイルス材料認定を取得
SIAAの抗ウイルス材料認定を取得

 三井化学は今回の評価試験の結果を受け、コロナ禍で拡大する抗ウイルスマーケットへの本格的な市場開発を開始。「カッパーストッパー」フィルムの用途拡大を推進することで、人々の生活の質(QOL)の向上に貢献していく考えだ。安定的に抗ウイルス性を必要とし、繰り返し使用する用途に適していることから、医療・介護・福祉・住宅・オフィス・学校・飲食店・工場などでの使用を想定している。

三井化学 市原工場で「ルーカント」新設備が営業運転

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2021年5月13日

 三井化学は12日、市原工場(千葉県市原市)内に炭化水素系合成油「ルーカント」の新プラント(年産2万t)を建設し、4月から営業運転を開始したと発表した。これにより、岩国大竹工場(山口県和木町)と市原工場の2拠点供給体制となり、世界の旺盛な需要に対応するとともに不測の事態の事業継続性を強化する。

市原工場で営業運転を開始した「ルーカント」 新プラント

 「ルーカント」は、同社が世界で初めて商品化した高性能炭化水素系合成油。粘度の温度依存性が小さく、剪断安定性・熱化学的安定性に優れているなどの特長をもつ。それらの特長から、極めて高品質が求められる自動車ドライブラインのギア油、工業用潤滑油やグリースなどの粘度調整剤として採用。主要な自動車メーカーや潤滑油メーカーに認証されており、低環境負荷ニーズの高まりの中、省燃費や長寿命に貢献するものとして世界的に需要の増大が見込まれている。

 三井化学は、潤滑油添加剤パッケージ最大手のルーブリゾールとの戦略提携を行っており、両社で潤滑油市場での「ルーカント」事業のさらなる拡大と成長を図る。また、三井化学独自の取り組みとして、エラストマー、エンプラ改質用途など、機能性液状ポリマーとしての積極的な市場・用途開発に取り組んでいく考えだ。

三井化学 EO・EO誘導品を値上げ、物流費など高騰で

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2021年5月10日

 三井化学は7日、エチレンオキサイド(EO)など3製品を今月15日納入分から値上げすると発表した。対象製品と改定幅は、EOが「17円/kg以上」、EO誘導品のエチレングリコール(EG)とエタノールアミン(EA)が「20円/kg以上」。いずれも2019年4月以来、2年ぶりの値上げとなる。

 対象製品については、物流業界全般と定修作業時の労働力不足、またそれらに起因する賃金上昇により、物流関連費用や設備修繕費などの高騰が続く。これらのコストアップは、従来の合理化といった自助努力のみでは吸収が困難であり、製品の安定生産・安定供給継続のためには、原料価格の変動分とは別に、価格改定せざるを得ないと判断した。

三井化学 共同開発の新規3Dインナーマスク販売開始

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2021年4月28日

 三井化学はこのほど、名古屋大学大学院工学研究科の堀克敏教授、同大学発ベンチャー・フレンドマイクローブ(フレンド社)の3者で新規3Dインナーマスク「タートル」を共同開発し、フレンド社が生産・販売を開始したと発表した。すでに東海地区に多数の店舗を展開する美容室グループの旗艦店では、美容師やスタッフへの採用も決定している。

インナーマスク『タートル』。中央部は交換できる不織布フィルター
インナーマスク「タートル」。中央部は交換できる不織布フィルター

 3者は昨年7月に、「タートル」の前身で、「マスク本体」と「不織布フィルター」からなる新規3Dマスク「θ(シータ)」を共同開発。「タートル」は、「シータ」を薄型にした進化形で、普段使いの布製やウレタン製のマスクと併せて使うインナータイプになる。

 使い捨てマスクのプラゴミ問題が顕在化する中、環境への配慮から、繰り返し使用する本体は生分解性のあるポリ乳酸(PLA)製とし、使い捨てフィルターの不織布についても従来品との比較で10分の1の削減が期待できる仕様とした。そのほかの主な特長として、本体が樹脂製のため洗浄など衛生管理が容易なこと、また3D設計により皮膚への接触が少ないことから、装着時の蒸れや化粧移りを抑え、口の周りの空間によりマスク会食時に使いやすいなどの利点が挙げられる。

インナーマスクとしての装着イメージ
インナーマスクとしての装着イメージ

 現在、国内のマスク需給バランスは改善し、マスクの2重使いやインナーマスクの装着も見られている。しかし、不織布製マスクに比べ、布マスクやウレタンマスク単体でのウイルス除去率は一般的には低いとされており、ウイルス感染予防の観点からその効果は限定的だ。

 今回、堀教授はマネキンを使用した独自の性能評価装置を作成、実験用ウイルスによる「タートル」の性能評価を実施した。ウレタンマスクの内側に同製品を装着することで、ウレタンマスク単体使用時のウイルス除去率が約24%だったのに対し、「タートル」との複合使用では90%近くの除去率を発揮。ウイルス除去効果が大幅に改善されることを確認した。

 3者は、今後も同製品の普及を通じ、ウイルス感染のリスクを下げ、広く人々の安全・健康に貢献していく考えだ。販売価格は30日分交換用不織布がセットで2750円(税込)。フレンド社のウェブサイト、アマゾンなどで販売を行っている。三井化学は、フィルター用の交換用不織布を提供する。

三井化学 日本IBMとBC技術でプラの追跡実用化へ

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2021年4月27日

 三井化学は26日、循環経済の実現に向けて課題となっているプラスチック素材のトレーサビリティ(追跡可能性)の実用化を目指すため、ブロックチェーン(BC)技術を活用した資源循環プラットフォーム構築に向け、日本IBMと協働を開始すると発表した。

両社は、循環経済の実現に向けて、プラスチック素材のトレーサビリティーシステム実用化を目指す
両社は、循環経済の実現に向けて、プラスチック素材のトレーサビリティーシステム実用化を目指す

 BC技術とは、全履歴を連続的に記録する「不可逆」なデータベース技術。全ての関係者がアクセス可能であり、データ改ざんが不可能であることから、その原材料、製品などが「いつ、どこで、だれの手を渡って来たのか」を追跡可能にする。

 三井化学のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進室を指揮する三瓶雅夫執行役員は、「当社は気候変動とプラ問題を重点的に取り組むべき重要な社会課題と捉えている。これらの課題解決には、資源を消費して廃棄する一方通行の経済から、資源を回収して再生・再利用する循環型経済への転換が必須だ」と強調する。三井化学が培ってきたモノマーやポリマーに関する豊富な知見やスキルをはじめ、現在開発を進めているリサイクルを含む環境対応技術やノウハウを生かし、BCに代表されるDX関連技術を積極的に取り入れることで、「素材トレーサビリティシステムである資源循環プラットフォームを構築し、循環経済の実現に寄与していく」(三瓶執行役員)考えだ。

 一方、日本IBMは、様々な企業のDXに取り組んできた豊富な知見やスキルを活用し、今回のBC技術を活用したデジタルプラットフォームの構築を検証する。BC技術により、中立性や公平性が担保され、高度なセキュリティを確保できるほか、スピーディーな構築や柔軟性を特長とするクラウドを活用し、既存システムと連携したハイブリッドクラウドの構築やAIの活用も検討していく。世界的にプラスチックの需要が拡大する一方で廃プラ問題が顕在化する中、これまで以上に資源循環型経済の実現が求められているが、リサイクル原料の使用では、含有物質の明確化などトレーサビリティの担保が課題となっている。

 両社が検討する資源循環プラットフォームでは、モノマー・ポリマーといった原材料から製品の製造・販売・使用、およびその後に回収から解体・破砕を経てリサイクル原料となり製品製造に再利用されるまでの、資源のライフサイクル全体を追跡していく。また、リサイクル原料の製造工程や検査工程、物性情報や品質情報なども併せて可視化することで円滑な流通支援を目指す。

三井化学 アンモニア系製品を値上げ、原料・物流費上昇で

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2021年4月27日

 三井化学は26日、アンモニア系製品を5月17日納期分から値上げすると発表した。対象製品と値上げ幅は、液体アンモニア(ローリー)が「16円/kg以上」、液体アンモニア(ボンベ)が「37円/kg以上」、アンモニア水(ローリー)が「6円/kg以上」、尿素が「15円/kg以上」、メラミンが「51円/kg以上」となっている。

 近年の物流費の上昇やプラント設備の老朽化に伴う修繕費などの維持費用、および昨今の原燃料価格の上昇などによるコスト増加が同社の事業運営に大きな負担となっている。こうした厳しい事業環境下、同社はあらゆるコストダウンを取り進めてきたが、すでに自助努力により吸収できる限界を超えていることから、今後の事業継続と安全でかつ安定的な供給の維持を図るためには、今回の価格改定を実施せざるを得ないと判断した。

三井化学 AI活用でIBMの「女性リーダー賞」受賞

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2021年4月26日

 三井化学はこのほど、IBMが表彰する2021年の「AIの未来を築く世界の女性リーダー賞」に、RC・品質保証部長の松江香織理事が選出されたと発表した。同賞は業界を問わず、AI(IBM Watson)を活用した変革や成長、イノベーションの促進に貢献した女性を表彰するもので、今年は世界18カ国から40人が選ばれた。 

RC・品質保証部長の松江香織理事
RC・品質保証部長の松江香織理事

 松江氏は、化学物質法適合性調査業務をアシストする新しいAIソリューションの開発を主導したことが高く評価された。開発したシステムは、法適合性調査に関わる各国の法律文書や化学物質の同義語、上位概念、専門用語などをIBM Watsonに学習させることで、質問文を入力するだけで各国の言語に翻訳し、必要な情報を素早く検索できるもの。昨年1月から精緻な法適合性調査の実現をアシストするシステムとして活用しており、今後は活用範囲をさらに拡大させていく考えだ。

 三井化学は今月、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進室を新設した。データとデジタル技術を活用しながら、一層の企業変革を加速していく。