NEDO 太陽光発電の主力電源化事業の開発テーマ採択

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2020年9月1日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、再生可能エネルギーの主力電源化に向け、太陽光発電の新市場創造や長期安定電源化のための技術開発や先進的な共通基盤技術の開発を目的とした「太陽光発電主力電源化推進技術開発」事業を開始し、44件の技術開発テーマを採択したと発表した。

 太陽光発電は、低炭素の国産エネルギー源として広く普及しているが、設置場所、安全・信頼性、活用後の廃棄・リサイクルなどに課題がある。同事業は、新たな素材や製造方法による設置環境の拡大などによる新市場の創造、太陽光発電設備の長期安定電源化の技術、そして先進的な共通基盤技術の3分野からなる。

 「新市場創造」は、地上や住宅屋根など低コスト好条件適地の減少に対し、重量制約のある屋根や建物壁面、自動車などの移動体への設置・導入を可能とする技術の開発。具体的にはフィルム型超軽量太陽電池の開発、建物外壁向けに経済性・耐久性・意匠性の改善、移動体搭載用の形状追従性、高効率、低コスト化だ。

 「長期安定化」は、発電設備の安全確保のためのガイドライン、信頼性評価、信頼性を回復技術と、用途後の設備のリサイクル技術、そして電源系統への影響緩和技術の開発だ。具体的には傾斜地、営農地、水上など各種設置環境の設備ガイドライン、小規模発電設備にも適用する信頼性評価・回復技術や、太陽電池モジュールの分離・マテリアルリサイクル、低コスト分解処理、有価物回収率向上技術、そして出力制御や発電量・需要予測の高度化、需給一体型システム、需給変動に対する調整などの技術開発を行う。

 「先進的共通基盤技術」は、前2分野を支える測定評価や日射量予測技術など。具体的には、未標準・規格化の新型太陽電池(ペロブスカイト、タンデムなど)の性能測定技術、基準太陽電池と校正技術の開発、そして発電量の短期予測のための日射量予測技術だ。

 NEDOは、太陽光発電の長期安定電源化や導入量拡大とともに、新たなセル、モジュール、システム技術に関連した産業競争力の強化を目指す。

東ソー CNF複合化CRの低コスト化がNEDO事業に

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2020年8月31日

 東ソーは28日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー(CNF)関連技術開発」について、「革新的CNF製造プロセス技術の開発」の実施予定先として採択されたと発表した。同社は共同提案先のバンドー化学と連携し、「伝動ベルトをターゲットとしたCNF複合化クロロプレンゴム(CR)の低コスト製造技術開発」に着手する。実施期間は2024年度までの5年間を予定。

 世界では石油の価格上昇や枯渇リスク、CO2排出量の増大に伴う温暖化問題に直面しており、持続可能な低炭素社会を実現していくためには、バイオマスなど様々な非石油由来原料への転換が求められている。植物素材であるCNFは、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上の強度をもつバイオマス由来の高性能素材。その実用化に向けた期待が増す一方で、市場拡大にはさらなる用途開拓やコストダウンなどの課題がある。

 同事業では、製造コストを大幅に低減させる製造プロセス技術の開発や、用途開発の促進、安全性評価などを行い、CNFを利用した製品社会実装・市場拡大を早期に実現することで、CO2の排出量を削減し、エネルギー転換・脱炭素化社会を目指す。

 東ソーは、1971年よりCR「スカイプレン」の製造・販売を開始。その製造・開発技術を生かし、顧客ニーズに合わせた製品開発や、環境配慮型製品の展開に取り組んでいる。CNF複合化による材料技術では、伝動ベルトなど応用製品の基本性能向上が見込まれ、コストダウンによる量産化が期待されている。

 

NEDO 人と共に進化するAI技術で労働生産性を向上

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2020年8月27日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、「人と共に進化する次世代人工知能(AI)に関する技術開発事業」を開始した。人がAIの推論過程や推論根拠から学び、AIが人の知見を使って推論精度を上げ、人とAIが共に進化するAIの開発を行う。将来の労働力不足に対する労働生産性の向上に、AIを活用した専門家の育成や労働者のスキル習得の効率化などが期待される。

 一方、医療診断、貸付審査、自動運転など社会的・経済的な影響が大きい分野では、AIの推論結果を理解できない、品質の評価・管理手法も未確立であるなど、AIの導入は限定的だ。また、AIの推論精度に必要な大量データに対する要求精度やタグ付けといった前処理なども、AI導入の障壁である。

 こうした中、①人と共に成長するAIの基盤技術、②AIの評価・管理手法、③構築・導入が容易なAIの開発、からなる研究開発事業を開始した。今年度からの5年計画で、今年度予算は約29億円。

 ①は推論過程や推論根拠を説明でき、人の知識を理解できるAIの開発で、人とAIが相互に理解・学習することにより共に進化し、幅広い分野へのAIの適用を目指す。

 ②は評価項目・指標・目的などの具体的な品質評価・管理ガイドラインの策定、推論結果の品質評価・管理手法の開発、膨大な検査データや統計的データの統合処理テストベッドの開発により品質マネジメントを確立し、デファクトスタンダード化を目指す。

 ③は画像や言語などの汎用学習済みモデルと応用分野毎の準汎用学習済みモデルを用意し、目的ごとに適宜組み合わせてシステムを作る。少量のデータで高精度モデルを構築でき、管理と利活用を容易にするプラットフォームを構築する。

 これらの技術開発によりAIシステムの導入を促進し、2030年に日本産業の労働生産性20%超の向上(今年度比)を目指す考えだ。

 

NEDOなど 高効率低負荷の水素専焼ガスタービン成功

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2020年8月26日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と川崎重工業、大林組はこのほど、「水素社会構築技術開発事業」で川崎重工が開発した「マイクロミックス燃焼」技術を使ったドライ低NOx水素専焼ガスタービンの技術実証試験に、世界で初めて成功した。

 ドライ燃焼方式は従来式よりも発電効率が高く、NOx排出量も低減できる。水素はガスタービン発電や燃料電池など、CO2を排出しない究極のクリーンエネルギーとして将来の中心的役割が期待されている。

 同事業は水素社会の実現に向け2017~18年度に神戸市や関西電力などの協力で「水噴射方式」の水素ガスタービンを実証試験し、世界で初めて神戸市ポートアイランド市街地への水素専焼の熱電併給を達成した。

 「水噴射方式」は局所的な高温燃焼によるNOx発生を抑える技術だが、水の蒸発により発電効率が低下。一方「ドライ燃焼方式」は発電効率が高くNOx排出量も少ないが、水素の高速燃焼による火炎逆流があり、燃焼の安定化が課題であった。

 今回、川崎重工は微小な水素火炎による燃焼技術「マイクロミックス燃焼」を使ったドライ低NOx水素専焼ガスタービンを開発。排熱回収ボイラを組み合わせたコジェネレーションシステムで、約1100kWの電力と約2800kWの熱エネルギー(蒸気・温水)を周辺の公共施設へ供給。今年度末まで、断続的な実証運転により水素発電の安定運用と発電効率、環境負荷低減効果などを検証する。

 今秋からは大林組により、燃料「水素」と地域の「熱」「電気」利用を総合管理し、経済・環境的に最適制御する統合型エネルギーマネジメントシステムを実証し、事業性評価を行う。また大林組は大阪大学、関西大学と共同で、液化水素の冷熱の活用を検討する。

 ガスタービン用の水素は、マイナス253℃(1気圧)の液化水素を蒸発器で気化させて得るが、その冷熱により蒸発器に着霜するため、除霜を行う運転停止が必要だった。プロパンガスなどの中間熱媒体で液化水素の冷熱を取り出すと着霜が回避でき、連続運転が可能となる。さらにこの冷熱でガスタービンの吸気を冷却すると、発電効率も上がる。こうした液化水素の冷熱の活用で、システム全体の効率化を図る。

 NEDOと川崎重工、大林組は、水素社会の実現に向け、地域コミュニティーでの効率的エネルギー利用につながるエネルギー供給システムの確立を目指し、本事業を着実に実施していく。

ドライ低NOx水素専焼ガスタービンの実証試験プラント
ドライ低NOx水素専焼ガスタービンの実証試験プラント

NEDO CO2固定化・有効利用技術、5テーマに着手

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2020年8月20日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、CO2を資源として捉え、炭酸塩やコンクリート製品・コンクリート構造物へ固定化し有効利用する「カーボンリサイクル技術」の技術開発5テーマに着手すると発表した。

 火力発電などから排出されるCO2の削減は気候変動対策に重要であり、CO2を資源とし回収・有効利用する「カーボンリサイクル技術」の開発が求められている。炭酸塩やコンクリート製品・コンクリート構造物へのCO2固定化は、使用量が多いためCO2の固定化ポテンシャルが高く、固定化後の生成物は安定な上、燃料や化学品へのCO2利用に必要な水素が不要なことから、カーボンリサイクル技術として期待される。

 こうした中NEDOは、CO2の炭酸塩やコンクリート類への固定化・有効利用の技術開発と、プロセス全体のCO2削減効果と経済性評価を行うため、5カ年事業で次の技術開発テーマに着手する。

 ①「化石燃料排ガスのCO2を微細ミスト技術により回収、CO2を原料とする炭酸塩生成技術の研究開発」(双日、トクヤマ、ナノミストテクノロジーズ)

 ②「海水および廃かん水を用いた有価物併産CO2固定化技術の研究開発」(早稲田大学、ササクラ、日揮グローバル)

 ③「マイクロ波によるCO2吸収焼結体の研究開発」(中国電力、広島大学、中国高圧コンクリート工業)

 ④「廃コンクリートなど産業廃棄物中のカルシウム等を用いた加速炭酸塩化プロセスの研究開発」(出光興産、宇部興産、日揮グローバル、日揮、成蹊大学、東北大学)

 ⑤「セメント系廃材を活用したCO2固定プロセス及び副産物の建設分野への利用技術の研究」(竹中工務店)

 事業総額は約40億円。早期の社会実装を目指す。

NEDO 石炭火力のCO2固体吸収法の実証研究を開始

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2020年8月5日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、はこのほど、CO2分離・回収コストの大幅低減が期待される固体吸収法について、実際の石炭火力発電所で燃焼排ガスを使用するパイロット規模の研究開発に着手すると発表した。川崎重工業と地球環境産業技術研究機構に委託し、石炭火力発電所での燃焼排ガスのCO2分離・回収の長期連続運転試験を行う。事業期間は2024年度までの5年間。

 CO2排出量の大幅削減には、分離・回収したCO2の地中貯留(CCS)や、原料として利用するカーボンリサイクルの推進が重要になる。経済産業省の「カーボンリサイクル技術ロードマップ」はCO2分離・回収の重要技術として固体吸収法を挙げ、今年の「革新的環境イノベーション戦略」で同手法による燃焼排ガスの研究開発の方針を示した。固体吸収法は化学吸収法(液体)と異なり、CO2の脱離に要するエネルギーは少なく、分離回収コストを半減(CO 2 1t当たり2000円台)できる可能性がある。

  NEDOは、2018年から固体吸収法の実用化研究を進め、ベンチスケール試験(日産数t規模)でCO2分離・回収エネルギー1.5GJ/tを達成(化学吸収法の約6割)。吸収方式はアミン担持多孔質材料の移動層方式。実燃焼排ガス使用のスケールアップ試験用に、石炭火力発電所に試験設備(数十t/日)を設置し、CO2分離・回収の長期連続運転試験を行う。同時に固体吸収材の性能向上、製造技術・シミュレーション技術の高度化も進め、スケールアップ試験に反映させる。2030年までに、固体吸収法の技術確立を目指す。

NEDOなど 従来比6倍速の銅コーティング加工機を開発

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2020年7月28日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、大阪大学、ヤマザキマザック、島津製作所と共同で高輝度青色半導体レーザーを用いた、高速・精密銅コーティングが可能なハイブリッド複合加工機を開発した。

 レーザーコーティングは従来のスパッタやメッキ、溶射と異なり、レーザーで金属粉末を溶接する技術。密着強度が高く耐久性に優れ、大気雰囲気下で処理できる。また、マルチビームの加工技術により、1本の粉末ビームに複数のレーザービームを照射し効率的に加熱、溶融、凝固させる。従来の近赤外線レーザーでは金や銅の加工は困難であったが、青色半導体レーザーは金属への吸収効率が高く、金や銅などの加工に適する。特に銅は、その高い熱・電気伝導性から高精度が必要な航空・宇宙・電気自動車産業への活用が期待される。また細菌の殺菌・抗菌、ウイルスの不活化作用から、感染リスク低減のための手すりやドアノブへの利用が始まっている。

 今回、日亜化学工業と村谷機械製作所の技術協力で開発した200W高輝度青色半導体レーザーを3台装着し、600W級マルチビーム加工ヘッドを開発。レーザー集光スポットのパワー密度が上がり、金属材料への銅のコーティング速度が従来の6倍以上に向上、多層コーティングも可能になった。1走査あたりのコーティング幅も従来比2.5倍の1mm程度まで増大できる。

 噴射した銅粉末を直接加熱するため母材表面の溶融を必要最小限とし、母材金属の混入が少なくゆがみの小さな精密コーティングが可能である。直線3軸/回転2軸の5軸同時制御加工ヘッドのハイブリッド複合加工機で、複雑形状の部品に高速・精密コーティングできる。現在、石川県工業試験場と大阪富士工業で銅コーティングの基礎データベースの構築と銅コーティング部材の開発を進めている。

 NEDOプロジェクトは青色半導体レーザーのさらなる高輝度化を進め、ヤマザキマザックは?級青色半導体レーザーマルチビーム加工ヘッド搭載、コーティング速度十倍以上のハイブリッド複合加工機の来年の製品化を目指している。

NEDOとシャープ EV用高効率太陽電池パネルを製作

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2020年7月27日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とシャープはこのほど、NEDOの革新的高性能太陽電池の開発推進事業で開発した高効率太陽電池モジュール(変換効率31%超)と同等のセルを使った、電気自動車(EV)用太陽電池パネルを製作した。1kW超の定格発電電力により、走行距離・時刻などの利用パターン次第では、充電回数がゼロになる試算だ。

1kW超の太陽電池パネルを搭載した電気自動車「e-NV200」
1kW超の太陽電池パネルを搭載した電気自動車「e-NV200」

 NEDOは、運輸分野のエネルギー・環境問題の解決を目指し、2016年から産学有識者からなる「太陽光発電システム搭載自動車検討委員会」で調査・検討。2018年の中間報告で「変換効率30%以上なら車載面積で1kWの発電が可能」「利用パターン次第では充電回数ゼロ」と試算した。

 一方、2014年策定の「太陽光発電開発戦略」下の発電コスト低減のための革新的な高性能太陽電池の開発推進事業で、シャープはⅢ‐V化合物3接合型太陽電池(インジウム・ガリウム・リン・ヒ素などからなる3つの化合物を接合)で世界最高水準の高効率太陽電池モジュール(変換効率31.17%)を開発した。

 シャープは日産自動車と協力し、同モジュールと同等のセルを使って厚さ約0.03mmのフィルム状太陽電池パネルを製作。車体の曲面形状に沿って効率よく搭載でき、定格発電電力約1.15kWを実現。公道走行用実証車(日産自動車のEV「e‐NV200」)で、航続距離や充電回数などを評価する。併せて、昨年からのトヨタ自動車による同パネル搭載プラグインハイブリッド(PHV)車の公道走行実証データも、IEA PVPS task17などの国際的調査活動に生かす。

 さらに新規事業として、車載用Ⅲ‐V化合物太陽電池の実用化に向け高効率化とコストダウンを推進し、太陽電池の新規市場創出とエネルギー・環境問題解決を目指す考えだ。

複数の太陽電池セルにより構成された太陽電池パネル (左からルーフ、フード、バックドア)
複数の太陽電池セルにより構成された太陽電池パネル(左からルーフ、フード、バックドア)

 

 

 

トクヤマなど CO2リサイクルの研究開発事業を開始

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2020年7月22日

 トクヤマはこのほど、双日とナノミストテクノロジーズ(徳島県鳴門市)と共同で行う「化石燃料排ガスのCO2を微細ミスト技術により回収、CO2を原料とする炭酸塩生成技術の研究開発」事業が採択されたと発表された。

 これは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のカーボンリサイクルの技術開発・普及を目的とした委託事業。2022年度までの約3カ年、経済産業省の「カーボンリサイクル技術ロードマップ」に基づき、技術課題「CO2の分離・回収の低コスト化および再利用」の実現を目指す。

 現在、炭酸塩(ソーダ灰)の原料として使っている石灰石焼成由来のCO2を、石炭火力発電所の燃焼排ガスから微細ミストで吸収・回収したCO2に置き換えることで、CO2排出を削減する。超音波で水溶液を粒径5㎛程度以下に微細ミスト化し表面積を増やし、CO2の吸収効率を上げて低コスト化を図る。目標はCO2 1t当たり1000~2000円台。

 トクヤマはCO2放散技術の開発とエンジニアリング業務、双日は幹事業務、事業性評価とLCA(ライフサイクルアセスメント)、ナノミストテクノロジーズは微細ミストによるCO2吸収技術の開発を担当。概念設計の策定とCO2吸収材の開発は3社共同で行う。

 トクヤマは、事業を通じて持続可能な社会の実現を目指し、SDGs(持続可能な開発目標)に取り組んでいる。同社にとって、自家発電所や生産活動からのCO2排出量削減は、地球温暖化防止のための重大課題の1つ。同事業を推進することで、社会課題の解決に向けて邁進する考えだ。

 

NEDO コロナ後の社会変化を分析、未来像をレポート

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2020年7月20日

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、コロナ禍後の「新たな社会様式」の実現に向けたイノベーションを後押しするため、TSC Foresight短信レポート「コロナ禍後の社会変化と期待されるイノベーション像」(全64ページ)を公開した。

 同レポートでは、コロナ禍がもたらした国内外の変化について、様々な分野で発信されている客観的な情報を整理・分析することで、今後の社会変化と期待されるイノベーション像を予測。「新しい社会様式」の実現を担う関係者や機関に向け、新しいイノベーションへの取り組みを検討する際の指標としてまとめた。

 レポートの前半では、現状把握と、変わりゆく新しい社会像や社会的価値観を6つテーマで分析。①デジタルシフト②政治体制や国際情勢変化③産業構造の変化④集中型から分散型への変化⑤人々の行動変化⑥環境問題への意識の変化―の現状や予測をもとに、医療、仕事・産業、教育・家庭、行政、都市のコロナ禍後に起こりうる変化を紹介している。

 後半は、今後期待されるイノベーション像を、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」と「持続可能な社会への転換」のテーマごとに解説。DXでは製造・生産現場、製造業サプライチェーンをはじめ、インフラやモビリティなど分野別のイノベーション像を示し、持続可能性では、コロナ禍が鮮明にした日本の弱点を浮き彫りにした上で、3Rやプラスチック材料、再生可能エネルギーなどへの強化策を提示した。

 これまでの常識の再確認に気づかされ、社会の在り方に転換が迫られる今、モノづくりの現場にも「新しい社会様式」が求められている。コロナ禍後の新しいイノベーション像は非常に広範にわたり、今や世界的な社会課題であることから、その実現には産官学が一体となって取り組み、高い技術力をもつ日本の叡智を結集することで、世界的なけん引役を担っていくことへの期待が大きい。同レポートは、専用サイト(https://www.nedo.go.jp/library/foresight.html)で公開中。