産総研 材料設計技術利用推進コンソーシアムの会員募集

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2022年1月19日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、今年4月に設立する「データ駆動型材料設計技術利用推進コンソーシアム」の会員募集を開始した。産総研のデータ駆動型材料開発技術を集約した「材料設計プラットフォーム」が利用できるとともに、関連する最新情報が提供される。

 従来の「経験と勘」に基づく仮説・検証という長時間・多大作業から脱却し、データに基づく革新的で高速な材料開発を可能とする基盤技術の構築を目指し、産総研と先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)は、NEDO「超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト(超超プロジェクト)」(2016~2021年度)を推進。

 材料の構造と特性との相関関係や法則をデータから帰納的に抽出し、新たな材料設計の指針とする材料開発手法で、ここで培われた技術・設備・データ・知財を集約して「材料設計プラットフォーム」を構築。同コンソーシアムはこれを利用するための窓口となる。超超プロジェクトで得られたデータに加え、データ駆動型材料設計に関する最新の情報も提供される。

 また会員間の秘匿化されたデータを共用する「AIST Materials Gate データプラットフォーム」も利用できる。これは目的に応じて「光機能性微粒子」「配線/半導体材料」「電子部品材料」「機能性高分子」「触媒」の5つの材料群で構成されている。

 今月26日には、「nano tech 2022 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(26~28日:東京ビッグサイト)の中で、「データ駆動型材料研究の将来展望」をテーマにパネルディスカッションを開催し、同コンソーシアムの設立と活用について紹介する。法人、団体、大学、公的機関を対象に広く会員を募集し、データ駆動型材料開発技術の普及を目指す。

産総研 酸化物系電解質材料で全固体LIBが室温作動

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2021年12月28日

産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、次世代リチウムイオン電池(LIB)である酸化物系全固体電池用の高容量正極と負極を開発した。高エネルギーで “産総研 酸化物系電解質材料で全固体LIBが室温作動” の続きを読む

産総研とJX金属 素材・技術連携研究ラボを設立

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2021年11月24日

 産業技術総合研究所(産総研)とJX金属はこのほど、「JX金属‐産総研 未来社会創造 素材・技術連携研究ラボ」を設立した。

JX金属と研究ラボ設立(左:JX金属の村山社長、産総研の石塚理事長)

 連携研究ラボでは、産総研の製造プロセス技術、素材特性の評価技術と、JX金属の非鉄金属に関する幅広い技術や知見によって、革新的な素材・技術の社会実装を促進するとともに、イノベーションを生み出す技術開発への取り組みを通じて、持続可能な未来社会の創造に貢献していく。

 近年、注目を集めている次世代無線通信は、持続可能な未来社会の実現には不可欠であり、そのために高機能な次世代デバイスの開発が求められている。デバイスに使う配線形成用の材料開発、製造プロセス技術開発、次世代の高速無線通信周波数帯での評価技術開発を進めることが重要になる。連携研究ラボでは、両者がもつ素材開発技術、製造プロセス技術を融合、発展させることにより、高機能な次世代デバイス向け材料を早期に社会に実装することを目指す。

 研究内容としては、次世代無線通信の基盤技術を確立するため、フレキシブル配線板の新規製造法の開発、銅箔/樹脂接合技術および銅箔、銅箔/樹脂接合材の高周波導電率の評価に取り組む。また、これにとどまらず、非鉄金属に関する様々な領域での素材や技術の開発を推進していく。

宇部興産など PEFC向け高性能触媒の合成に成功

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2021年11月16日

 宇部興産、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、産業技術総合研究所(産総研)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)は15日、共同で、固体高分子型燃料電池(PEFC)向けの高性能なコアシェル型触媒の合成に成功し、その高効率合成も実現したと発表した。

 PEFCは、高いエネルギー変換効率や長寿命、低温作動(室温~100℃)などの特長をもち、FCV(燃料電池自動車)の動力源や家庭用コージェネレーションシステムなどで利用されている。

 エネ変換効率をより向上させるためには、正極(カソード電極)での酸素還元反応(ORR)の活性を高める必要があり一般的には白金が採用されている。しかし白金は高価で資源量も少ないため、使用量を大幅に低減しながらもエネ変換効率を向上させる手法の確立が求められている。

 そこで近年は、触媒粒子の外表面(シェル)部分のみに選択的に白金を存在させ、粒子の内部(コア)部分を他の金属で置き換えた構造をもつコアシェル型触媒により、白金利用効率の向上を目指す研究が活発化。しかしコアシェル型触媒の合成法として普及している銅‐アンダーポテンシャル析出(Cu-UPD)法は工程が非常に複雑かつバッチ式であるため、生産性が低いことが課題となっていた。

 こうした背景の下、NEDOは「超超プロジェクト」で、計算・プロセス・計測の三位一体による機能性材料の高速開発に取り組んでおり、その一環として四者共同で、カソード触媒の白金使用量の大幅な削減を可能とするコアシェル型触媒を効率的に合成する技術開発を行ってきた。

 今回、1日当たり数十種の触媒を連続・自動合成することが可能なハイスループットフロー合成装置を使って、短時間で最適なコアシェル構造をもつ触媒合成条件を確立し、またプロセス条件を最適化して、従来比十倍以上の触媒の高効率合成プロセスを実現した。この成果によりPEFCで課題となっている高い白金コストを大幅に低減することで、燃料電池触媒のより一層の社会実装を促進するとともに、脱炭素社会の実現に貢献する。

産総研 大規模イベントでの感染予防対策を調査・速報

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2021年11月1日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)と名古屋グランパスエイトと連携し試合時の入場者間の平均距離とマスク着用率を調査した。政府、日本サッカー協会、Jリーグによる「ワクチン・検査パッケージ」に関する技術実証における、観客による感染予防対策の実施状況調査の第1弾で、10月6日の本試合で実施した。

 ソーシャルディスタンスの計測は、ワクチン接種証明・陰性証明チェックブースでの入場者間の平均距離をレーザーレーダーで計測。試合開始10分前の最も混雑した時間帯であっても、半径2m以内の平均人数は2人ほどで、密集は発生していなかった。

 試合中のマスク着用率は、カメラ撮影とAIの画像解析で評価。通常座席でのマスク着用率は平均で93%、ワクチン接種普及前と比べて大きな変化はなかった。また、ワクチン・検査パッケージ席(ワクチン接種証明・陰性証明チェックを通過した人の席)でのマスク着用率も93%で、通常座席と同程度だった。

 1試合のみの調査結果だが、ワクチン接種が進み、緊急事態宣言などが解除された状況下での試合でも、ワクチン接種済や事前検査で陰性が証明されている観客も含め、マスク着用率は従前に比べ大きな差はなかった。

 今後も調査を継続し、結果を取りまとめる。なお今回は速報のため、今後、数値などが修正される可能性がある。

産総研 海洋生分解性プラの標準化コンソーシアムを設立

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2021年10月25日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、産総研コンソーシアム「海洋生分解性プラスチック標準化コンソーシアム」をイノベーション推進本部・標準化推進センターに設立した。

 プラスチックごみによる海洋汚染問題に対し、官民連携した取り組みに向けた2019年策定の「海洋生分解性プラスチックの開発・導入普及ロードマップ」に示された新素材・代替素材の普及を、オールジャパンで促進することを目的とする。産業界が抱える技術課題やニーズを抽出し、産総研の技術・知見を活用した新材料・製品の社会実装に必要な標準化を推進し、持続可能な社会の実現と産業競争力の強化を図る。

 新技術の普及と市場拡大には技術を共通利用するための国際標準化が求められ、製造、バイオテクノロジー、環境影響評価など業界を超えた知見が必要となる。新しい産業分野での標準化と規格の普及のため、ニーズ・シーズの探索や情報共有、議論の場を提供する。

 発足当初は、産総研の生分解性プラスチックに関する合成・評価技術の普及と、今後の標準化ニーズや技術開発を主軸とした情報交換を図る。長期的には対象をサプライチェーンにも広げ、G20大阪サミットで共有された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の目標、2050年までに海洋流入ごみゼロの達成に向け、企業側が抱えるプラスチックに関連するSDGs課題を見据えた対応へ展開していく。

 今後、生分解性プラスチックなどの製造や評価法に係わる企業、標準化団体、大学・公的研究機関の研究者の参加募集と、「海洋生分解性プラスチック標準化コンソーシアム設立記念講演会」を開催する予定。なお募集サイトを、標準化推進センター公式ページ(https://unit.aist.go.jp/spc/)上に開設する。

産総研ほか 酵素機能の改良作業が計算科学で数百倍向上

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2021年10月21日

 産業技術総合研究所(産総研)と神戸天然物化学はこのほど、酵素反応を制御するアミノ酸部位を予測する計算手法(MSPER)を世界に先駆けて開発した。

 これにより、改変すべきアミノ酸部位の機能検証実験数は大幅に減り、目的化合物の生成率も大幅に向上した。医薬品、食品、繊維、プラスチックなどの化成品製造分野で、「酵素を利用したものづくり」は常温・常圧・水系溶媒など低環境負荷技術として注目される。

 酵素反応は、酵素と基質(原材料)が特定の複合体を形成することで化合物を生成する。しかし酵素や基質によっては他の複合体を作り副産物を生成するため、目的物の生成率は低下する。その解決には、酵素を構成する数百~数千個のアミノ酸の中から酵素機能に関与するアミノ酸部位を見つけて改変する必要があり、膨大な検証実験を要する。

 今回開発したMSPER法は、酵素・基質複合体をシミュレーション解析で再現し、それらの構造情報から副産物生成に関与するアミノ酸部位を予測する計算手法だ。産総研の分子動力学シミュレーションによる分子構造学的な酵素の機能向上・改変に関する研究を、神戸天然物化学の酵素シトクロムP450を中心とした物質生産技術に適用した。

 多数の複合体のデータから酵素を構成する各アミノ酸と基質の接触率を計算・比較し、副産物を生成する複合体で基質と接触するアミノ酸を特定。これを別のアミノ酸に変えて基質との結合を阻害し、副産物の生成を抑制する。MSPERにより、目的化合物の生成に影響が少なく副産物生成時に基質が触れるアミノ酸の接触率の順位付けをし、高い順に改変酵素を作製・評価すれば、効率的に改変酵素が得られる。

 今回、計算時間に数日~1週間程度要したが、最も時間とコストのかかる検証実験数は170分の1~1000分の1へ大幅に削減できた。また酵素P450と基質Sリモネンから2種類の香料原料を作る検証実験では、提案された6カ所のアミノ酸部位すべて目的化合物の生成率を向上させ、最大6.4倍に向上した。今後、他の酵素での有効性の検証、酵素反応の生産性向上などの高機能化に関する解析法を開発し、企業との共同研究により酵素を利用したものづくりに貢献していく考えだ。

産総研 接着接合部の接着強度分布の推定手法を開発

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2021年10月15日

 産業技術総合研究所(産総研)はこのほど、水や熱で強度低下した接着接合部の破断時における接着強度の分布を評価する手法を開発した。

 自動車や航空機などの輸送機器の軽量化には、異種材料を適材適所で組み合わせたマルチマテリアル構造が注目される。異種材料間の接合には工程温度が低く変形が少なく、剛性を確保できる構造用接着剤が有望だが、経時的な接合強度の低下が予測できず、適用は進んでいない。

 構造用接着剤は、主に化学反応で三次元高分子構造を形成・硬化し、材料同士を強固に接着する。しかし、長期的には水や熱などの影響で劣化し、接着強度が低下する。劣化の進行は一様ではなく、強度の低い部位が接着破断の起点になるため、最も弱くなった部位の特定が重要となる。今回、分子構造と接着強度に注目し、劣化した接着剤の赤外線吸収スペクトル(IRスペクトル)と引張試験による接着強度との相関性に基づく接着強度の推定手法を開発した。

 IRスペクトルは分子構造固有のパターンを示すため、経時劣化に伴う接着剤の分子構造の変化を明らかにできる。温水浸漬で劣化させた接着試験片を用いた試験で、IR測定による推定値と実測値とはよく一致したことから、この評価法の信頼性が確認できた。接着破断面の局所的IRスペクトル測定により、強度低下部位が特定できる。エポキシ接着剤破断面の接着強度の分布を推定したところ周囲の強度が低く、周辺部から水が侵入して強度低下が早く進行したことを示唆した。

 このように、強度低下部位の特定や破断原因を究明し、接着剤と接着接合部の改良につなげ、耐久性向上に関わる技術開発を加速することが期待される。

 今後は、別途開発した接着接合部の加速劣化試験と組み合わせて、接着接合部の耐久性の評価手法を確立する予定。接着接合の長期的な信頼性を向上させ、自動車などの輸送機器における構造部材の接合法としての実用化を図っていく。

産総研と日亜化学 全方向型標準LED光源の試作に成功

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2021年10月13日

 産業技術総合研究所(産総研)と日亜化学工業は、LEDを使用した全方向に可視波長全域の光を放射する標準光源の試作品を共同開発した。照明産業の持続的な発展への貢献と、照明光源の評価の高精度化が期待される。

 照明光源の明るさの指標である全光束は、標準光源との比較測定で決定される。標準光源には、主に白熱電球形の標準電球が使われるが、全方向光放射に適した形状のフィラメントやガラスバルブなどは熟練職人の手作りである上、LED照明の普及による白熱電球生産の縮小・停止の影響もあり、代替の標準光源が必要とされている。

 標準光源には光強度の安定性や再現性、可視波長全域をカバーするスペクトル、光を全方向に放射する配光性が求められるが、これら全てを高い次元で満足する代替光源はまだない。

 両者は産総研の「スペクトルの定量的精密測定・解析技術」と日亜化学工業の「高度なLED製造技術」を組み合わせ、可視波長全域の光を前面に放射する標準LEDを2016年に開発。そこで培われた光強度安定化技術とスペクトル最適設計技術に特殊な光学系を組み込むことで、可視波長全域の光を全方向に均等に放射する全方向形標準LEDの試作品の開発に成功した。

 複数のLED素子と蛍光体の組み合わせを最適化し、広い可視波長範囲と安定した光強度、十分な光量を得た。温度制御機構で発光部の温度を一定に保つことで、連続点灯、複数回繰り返し点滅、周囲の温度変化に対する光強度の変動は、既存の標準電球と同程度だ。また、光を後方に導くキャップ型の光学系を組み込み、標準電球のフィラメント形状に起因する細かな凸凹のない、滑らかで均等に全空間に広がる配光を得た。

 こうして全光束測定用の標準光源として理想的な配光特性を実現できた。市販の電球形LEDランプの全光束測定を想定し、それと同程度の大きさだ。今後は、全光束値と光源の大きさのバランスを見極めつつ、必要な全光束値を得るための点灯電流レベルに応じた放熱機構を最適化し、実用化を目指す。また全方向形標準LEDでの測定精度を上げるため、全光束や分光測定方法の高度化を進める考えだ。