《化学団体年頭所感》 日本プラスチック工業連盟 姥貝卓美会長

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2019年1月11日

 昨年6月にカナダで開催されたG7シャルルボア・サミットで、カナダから提案された「海洋プラスチック憲章」に米国とわが国が署名しなかったことが、国内外のマスコミで大きく取り上げられた。海洋プラスチックごみ問題が国内でも一段と大きな話題になるとともに、「これまでのプラスチック製品との付き合い方を見直そう」との動きも一部に生まれつつある。

 このような状況のもと、昨年8月には環境省の中央環境審議会循環型社会部会にプラスチック資源循環戦略小委員会が設置され、戦略の素案が示された。当連盟では、この小委員会での議論に加わる一方、当連盟の4カ年計画(2017~2020年度)に基づき、あるべきリサイクルの姿等を検討する新しい委員会「プラスチック資源循環委員会」を立上げた。

 環境省の素案に先立ち、連盟としてのプラスチック資源循環戦略の基本的な考え方を「プラスチック最適利用社会の実現に向けて、行政・国内外の関連業界等との連携のもとに」とのサブタイトルを付け、5つの基本方針を公表した。

 本年は、国の戦略を視野に入れながら、この基本方針に具体的な取り組みの肉付けをしていくために、会員や関係者の皆様のお力添えをお願いしたい。この基本方針の中で、海洋プラごみ問題に関しては、「プラスチック業界が率先してサプライチェーンを通じた海洋プラスチック問題の解決に取り組む」と謳っている。

 当連盟では、樹脂ペレット漏出防止などの従来の活動に加え、昨年から新たな取り組みとして「海洋プラスチック問題の解決に向けた宣言活動」をスタートさせた。現在40以上の会員企業・団体の代表者が宣言書に署名し、それぞれがトップダウンで活動を展開している。今年は、さらに多くの企業や団体に参加していただけるよう、努力していく。

 また、当連盟の業務の柱の一つであるプラスチック関係の国際標準化については、昨年は TC61(プラスチックの機械的性質、物理・化学的性質等)の規格に関する国際会議を12年ぶりに日本(さいたま市)で開催した。300名を超える各国からの参加者が、約60の分科会などで活発な議論を交わすことができた。

 当連盟では今後も、前述のプラスチック最適利用社会の実現に向け、さまざまな取り組みを積極的に進めていく。引き続きのご支援とご協力をお願い申し上げる。

新日鉄住金グループ オートモーティブワールドに出展

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2019年1月11日

 新日鉄住金は、東京ビッグサイトで開催される「第11回 オートモーティブワールド」(16~18日)に初出展する。

 オートモーティブワールドは、EV・HEV駆動システム、自動運転、カーエレクトロニクス、コネクティッド・カー、軽量化、部品加工など、自動車業界における重要な6テーマの最先端の技術展で構成され、出展社が1100社を超える世界最大級の展示会。

 同社は、「EV・HEV駆動システム技術展」にて、「使命。クルマの未来を、デザインする。」をメインコンセプトに、素材としての鉄の提供にとどまらない、次世代自動車の開発そのものへの提案を展示する。

 具体的には、無限の可能性を秘めた未来の素材である「鉄」を極め、鉄を主体としたマルチマテリアル化を追求、更にそれを引き出す設計・加工をも進化させ続け、未来のクルマに求められる総合的なソリューションを提案する。

 今回、ブースではクルマの各部品カテゴリー向けに製品・ソリューションを紹介するとともに、それらを集約した次世代自動車の構造コンセプト〝NSafe‐AutoConcept〟を初出展。また、グループ会社の日鉄ケミカル&マテリアル、日鉄住金テックスエンジ、日鉄住金テクノロジーなども、技術・製品を共同出展しており、新日鐵住金グループ一体でのソリューションを提案する。

 

ADEKA 低VOCの水溶性UV硬化材料を開発

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2019年1月11日

 ADEKAは10日、紫外線(UV)とLEDで硬化が可能な、人と環境に優しい樹脂材料「水溶性UV硬化材料」を開発したと発表した。

 同社の有機合成技術とUV硬化技術を結集し設計した「水に溶けやすい分子構造」を持ちながら、水系材料の課題であった耐水性などに優れる、全く新しい高機能材料。従来の材料の多くは有機溶媒に溶解させたり、水中に樹脂を分散させたりするが、同社が独⾃に設計した「水に溶けやすい分子構造」は水の溶解性が高く、有機溶媒を使用しないので、乾燥時の低VOC(揮発性有機化合物)化を実現した。

 これにより、作業者の健康へ悪影響を及ぼさず、大気汚染やシックハウス症候群など、暮らしにおけるリスクを最小限に抑えることができる。また、UV硬化後に高密度構造を形成することから酸素バリア性が高まり、例えばポリエチレンなどのプラスチックフィルム上にコーティングすることで、酸素透過性を10分の1に低下させることができ、内容物の酸化防止と保存性向上が期待できる。

 さらに、従来の水系材料は硬化膜の水分への耐性が低くなる傾向にあるが、新製品は構造・ 配合の設計を最適化することで、高い耐水性を実現した。その他、フォトレジスト材料や回路形成材料といった電子材料分野の、有機溶媒に弱いプラスチック基剤向けに活用できることや、水銀ランプによる硬化に加え、LEDランプの幅広い波長に対応していることも特徴だ。

 印刷インキやコーティング剤などに含まれる、有機溶剤によるVOCの発生が人体に悪影響を及ぼし、大気汚染の原因となるため、世界的に環境規制が強化されている。水系UV硬化材料など低VOC化へ向けた開発が行われているが、いまだに有機溶剤系が⼀般的なのが現状だ。

 同社では、印刷やコーティング向けはもとより、電子材料やディスプレイ向けをはじめとするあらゆる分野でのニーズに応える製品を開発し、人・環境への負荷低減に貢献していく考えだ。なお、新製品は昨年11月に開催された「第27回ポリマー材料フォーラム」(高分子学会主催)で発表し、高分子学会広報委員会パブリシティ賞を受賞している。

デンカ ノロウイルスワクチンでライセンス契約を締結

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2019年1月11日

 デンカは10日、北里大学北里生命科学研究所・感染制御科学府ウイルス感染制御学Ⅰの片山和彦教授と、「ノロウイルスワクチンシーズ」の成果物に関し同社が独占的に利用できるライセンス契約を締結したと発表した。

 同ワクチンシーズは、片山教授が研究開発を務めた日本医療研究開発機構(AMED)の「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」で開発された。

 同成果物は「ノロウイルスVLPを特異的に認識するモノクローナル抗体を作出するハイブリドーマ」と「ノロウイルスVLPを作出可能な組換えバキュロシードウイルス」。VLPはウイルスと同じ形状と抗原性を持つが、遺伝子を持たず感染の恐れがない中空のウイルス粒子のこと。

  ノロウイルスにはたくさんの遺伝子型があり、互いに抗原性が異なることから、ワクチン開発には、流行するノロウイルスの遺伝子型にあった抗原と抗体が必要だ。

 今回契約を締結したノロウイルスワクチンシーズには、それぞれの遺伝子型のVLPを特異的に検出するモノクローナル抗体が含まれていることから、混合比、混合したVLPの品質確認、ワクチンの検定など、混合ワクチンの品質管理も可能となり、将来的には流行に応じた迅速なワクチン開発が可能になることが期待できる。

 また、同社のグループ会社であるデンカ生研では、現在、「ノロウイルス抗原検出キット」を販売しており、同製品の性能向上にも寄与することが見込まれる。毎年、冬季に流行するノロウイルス感染症は、国民生活の質の維持向上や経済活動に大きな影響を及ぼしており、感染を防いだり、症状を緩和したりするワクチンの開発が望まれている。

 このような社会の要望に応えるため、現在、同社のドイツにある子会社アイコンジェネティクス社では、同社が保有する植物の遺伝子組み換え技術を使い、高分子タンパク質を産生する技術プラットフォームである「magnICON」をベースに、VLPを抗原としたノロウイルスワクチンの開発を行っている。

 デンカグループは今回の契約を活用し、社会課題の解決につながる製品開発を加速していく方針だ。

東ソー 米ベンチャーに出資しバイオサイエンス事業を強化

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2019年1月11日

 東ソーは10日、米国のバイオベンチャー企業「10 Biosciences(Semba)社」(ウィスコンシン州)の増資を引き受け、同社へ出資したと発表した。バイオサイエンス事業の強化・拡大の一環。これにより、東ソー・グループのSemba社への出資比率は33.3%(完全希薄化後ベース)になる。なお、この出資は同社100%出資の米国子会社Tosoh Bioscience 社(ペンシルベニア州)を通じて実施した。

 Semba社は2005年の設立。2009年に世界初の卓上タイプの連続クロマトグラフィー装置Octaveを上市した。最近ではバイオ医薬品の開発用連続クロマトグラフィー装置ProPDを市場投入し、製造用連続クロマトグラフィー装置ProGMPの製品化を進めている。

 東ソーは今回の出資により、Semba社との連携を強化し、液体クロマトグラフィー用分離剤(トヨパール)事業とのシナジー効果を狙う。さらに、今後も周辺分野へ展開することで、バイオ医薬品精製のトータル・ソリューション・プロバイダーを目指す。

 市場の成長著しいバイオ医薬品の製造では、精製工程でバッチ方式による生産が主流となっているが、需要変動に対する柔軟性や生産性に優れたプロセスの構築が課題となっている。その解決策として注目されている技術の一つが、従来方式と比べて高生産性で低コストといった特長を持つ連続クロマトグラフィー方式である。 また、医薬品製造の連続プロセス化を米国食品医薬品局(FDA)がメーカーに推奨していることから、今後、従来方式に代わり、主要な技術・市場に成長することが見込まれている。

 なお、連続クロマトグラフィーとは、複数のカラムを組み合わせ、試料・溶離液・洗浄液等の流れをバルブ操作で自動制御することにより、吸着・溶出・カラム洗浄などのプロセスを、並行して連続的に行う液体クロマトグラフィー手法のこと。 

 

《化学企業トップ年頭所感》 日鉄ケミカル&マテリアル 太田克彦社長

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2019年1月10日

 2019年の想定をしてみると、Key Wordは「節目の年」だと考えている。世界では政治経済の枠組みや制度に大きな変化が起き、国内でも天皇陛下ご退位と新元号施行、秋には消費税引き上げ、改正出入国管理法制定により外国人材の受け入れ拡大が始まる。技術の動向では、5Gの本格化に加え、自動車は輸送手段から移動手段となる方向に進んでいる。2019年のわれわれは、こうした変化が拡大する「節目の年」に身を置くことになるが、日鉄ケミカル&マテリアルはどのように対処すべきかを考えてみたい。

 重要なことは、われわれは荒海に漕ぎ出す一艘の船として「しっかりとした航海図を共有すること」だ。そのために、2020年中期経営計画の点検と補強は欠かせない仕事だ。点検と補強に当たっての基本方針は「足下を固めた上で地に足の着いた(着実な)利益成長を目指す」ということ。

 そのための施策として、第1にコスト・技術・設備(設備保全)の強化、第2に既存事業の体質強化、第3にコアとなる技術を基に「利益成長の道」の明示だ。3月までにコーポレート部門も加わって各事業部の計画について全社的な協議を行った上で、会社全体としてどの事業に人・設備・資金という経営資源を配分するのが適切かという方針を議論し、改定2020年中期経営計画として決定したい。

 新生、日鉄ケミカル&マテリアル社の使命は、①製鉄事業の貴重な副産物の高付加価値化(コールケミカル事業、化学品事業)②伸張する電子機能材料分野での利益成長(機能材料事業部門、エポキシ事業)③炭素繊維複合材の需要増に応える提案力強化(複合材料事業部門)の3つに集約される。

 われわれのミッションはこのように多岐にわたるが、それぞれが使命を果たすことで会社全体としてバランスの取れた事業構成と成長機会を持つことになる。社会や顧客の要請に応えることで、会社が成長するだけでなく社会の変革にも貢献することになる。ここにわれわれの存在意義があるのだ。

 旧化学と旧マテリアルズの営業連携に力を入れるとともに、技術の融合も出来るところから進めて行きたい。この点で重要なことは、研究開発の促進だ。顧客や社会のニーズに遅れることなく、当社のコア技術に基づく戦略的な研究開発を、責任感を持って進めていただきたい。

 最後になるが、安全、環境、防災、品質、ルール遵守は会社の存在と永続にとって、最優先事項だ。日々、新たな気持ちで危険予知に努めてほしい。全ての社員が参加意識を持てる企業カルチャーを目指し、新生、日鉄ケミカル&マテリアルの基礎を作っていこう。

《化学企業トップ年頭所感》 JNC 後藤泰行社長

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2019年1月10日

 今年は亥年だ。猪突猛進とよく言うが、JNCの皆さん全員が自らの目標に向かって真っすぐ向かっていただきたい。また、JNCも進むべき方向に真っすぐ進む企業でありたいと思う。

 私は元旦に近くの神社をお参りし、JNCグループの社業発展と各工場の安全運転祈願を行ってきた。2019年は当社にとって飛躍のためのターニングポイントの年となりますようにと、祈願している。

 世界経済を鳥瞰してみると2019年は懸念していたリスクが顕在化し、世界の経済成長減速が明らかになる可能性が高いのではないかと懸念している。景気を下振れさせるリスクとして、①米国との貿易摩擦②中東情勢③欧州情勢④為替リスクが挙げられる。

 このように世界経済は下振れの要因を多く含んでいると思われるが、こういった要因に大きく振りまわされることなく、2019年度予算、新規中期経営計画を皆さんの努力で作っていただき、為せば成るという強い想いで力強く実行していこう。

 

《化学企業トップ年頭所感》 日本触媒 五嶋祐治朗社長

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2019年1月10日

 昨年は、日本では甚大な自然災害、世界では米中の貿易摩擦の激化をはじめとした混乱など、不安な事柄の多い年だった。一方、当社では、ベルギーの新プラントの立ち上げや、ささきしょうこ選手の2年ぶりの優勝など明るい話題もあり、努力が報われる前向きな良い年となった。

 当社の主力事業の一つであるSAP事業に、危機感と強い志をもって始めたSAPサバイバルプロジェクトも2年が経過し、さまざまな活動の成果が徐々に出始め、確実に収益貢献してきている。また、昨年はベルギーでのAA/SAP新プラントが商業運転を開始し、さらにインドネシアでのAA新プラント建設も決定した。拡大する世界需要に応えると同時に、収益性を重視した事業拡大を進めている。

 一方では、成長事業・分野へのシフトを掲げ、3分野8領域をターゲットとして絞り込み、さまざまな施策に取り組んでいる。既存事業の製品群でも、需要拡大に応える設備増強や、新たな領域への用途展開も精力的に進めている。

 持続的な成長に向けて、人と組織の活性化、社会からのより一層の信頼獲得、グループ経営の強化を課題として掲げ、仕事革進委員会、サステナビリティ推進委員会を中心に活動を開始している。いずれも「皆が誇れる会社」を目指し、皆が生き生きと働き、その成果が社会からもしっかりと認められ続け、自らも成長し続けることを目的とするものだ。それは、皆さん一人ひとりが〝考動〟を起こすことから始まる。明日は今日よりもっと良くしていこうという気持ちで、あらゆることに臨んでほしい。

 後半中期経営計画の中に、「その最終年度2020年度には、次の10年の確実な成長を見通せる状態を目指す」ことを掲げている。そして、次の年2021年は、当社創立80周年を迎える。この80周年が次の90周年、100周年に確実に繋がるよう、後半中期経営計画の目標をしっかりと達成していこう。

 その過程の中で私たちが志として受け継いでいくべきものが、当社グループの企業理念「TechnoAmenity~私たちはテクノロジーをもって人と社会に豊かさと快適さを提供します~」だ。これは、ESGやSDGsの先駆けとなる理念であり、30年近く前から実践している社会にも誇れる理念だと思っている。収益だけでなく、事業活動を通じて社会へ貢献していくという考え方、今一度この志を再認識し、「新生日本触媒」の進むべき道をきちんと見定めていきたいと思う。