北里大学・花王 新型コロナに感染抑制能を持つ抗体を取得

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2020年5月25日

 北里大学大村智記念研究所、EME(Epsilon Molecular Engineering)、花王安全性科学研究所の研究グループはこのほど、新型コロナウイルスに対して感染抑制能(中和能)を持つVHH抗体の取得に成功したと発表した。新型コロナウイルス感染症の治療薬や診断薬の開発に繋がることが期待される。

 世界各地で新型コロナウイルス感染症拡大が大きな課題となる中、治療薬や検査法の開発が望まれている。これら課題を解決する手段の1つとして求められているのが、新型コロナウイルスと特異的に結合する抗体になる。こうした中、3者は協力し、新型コロナウイルスに結合するVHH抗体の作製に取り組んだ。

 VHH(Variable domain of Heavy chain of Heavy chain)とは、ラクダ科動物由来の抗体であり、高い安定性や微生物による低コスト生産が可能なことから注目が集まっている。

 今回の研究成果として、①花王はEMEが持つハイスループットVHH抗体スクリーニングを可能とするcDNAディスプレイ技術の提供を受け、ヒト培養細胞で発現させた新型コロナのS1たんぱく質を標的分子に用いたスクリーニングを実施し、候補となるVHH抗体の配列情報を取得、②花王は取得した配列情報から得られた候補遺伝子の人工合成を行い、微生物によるVHH抗体生産を行い、VHH抗体が標的分子と結合することを確認、③北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学Ⅰ研究室(片山和彦教授)では、候補VHH抗体の新型コロナ粒子への結合と、中和活性の有無を確認することで感染抑制能を評価。

 その結果、VHHを添加した場合に新型コロナの細胞への感染が抑制されていることを確認し、取得したVHH抗体は新型コロナに結合するだけでなく、感染抑制能を持つことが明らかになった。

 今回の研究成果は新型コロナウイルスの治療薬や検査薬の開発に繋がることが期待できる。今後、今回の成果を世界中で活用できる方法について検討し、発信していく考えだ。

 

ダウ 再生可能資源のストレッチフィルムを共同で供給

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2020年5月25日

 ダウはこのほど、ストレッチフィルムメーカーのDoxa Plast(ドクサプラスト)と共同で、よりサステナブルなソリューションの需要増大に応える、高性能バイオストレッチフィルムを商品化した。このフィルムには、カーボンフットプリント削減に貢献する再生可能原料が使用されている。

 ドクサプラストの新たなストレッチフィルムシリーズである「Reborn(リボーン)」は、再生可能原料であるダウの直鎖状低密度ポリエチレン「ELITE 5230GC R」エンハンスドポリエチレン樹脂を使用。この原料は、持続可能な方法で管理されているフィンランドの森林由来の製紙残留物から製造される。他の代替再生可能原料とは異なり、ヒトの食料と競合することなく、また、製造するのに土地を増やす必要がない。

 同フィルムは、スウェーデンにあるドクサプラストの工場で生産されており、サプライチェーンが短いためにカーボンフットプリント削減に役立っている。この新しいバイオストレッチフィルムシリーズは、機能性を損なうことなく厚みをダウンサイジングできるよう最適化。ドクサプラストは特許取得技術を用いて、パレットに積載した荷物の安定性を向上させるために高い性能を維持し、包装材を全体的に削減しつつも、4ミクロンまで厚さを抑えた薄いストレッチフィルムを提供する。

 ダウのバイオポリエチレンのポートフォリオは、紙パルプ製造の副産物であるトールオイル由来のバイオナフサを使って製造される。バイオ原料を出発点とする新しいサプライチェーンは、標準的な化石燃料由来ポリエチレン樹脂よりもカーボンフットプリントを大きく削減できる。また、ダウのポリエチレン樹脂製造は、マスバランスアプローチに基づいており、ISCC(国際持続可能性カーボン認証)を取得。

 マスバランスアプローチは、複雑な製造または生産システムでサステナブルな成分の供給源をサポートし、諸産業がさらに持続可能となることを後押しする。このアプローチにより、あらゆる段階がトレーサビリティの条件に合致することになる。

三井化学 廃プラ削減でUNEPとスタートアップを支援

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2020年5月25日

 三井化学は、国連環境計画(UNEP)が主催するスタートアップ支援プログラムに参画し、プラスチック廃棄物削減に貢献する、革新的なアジアのスタートアップ企業3社を選出した。同社グループは今後、この3社に対し、各社に1万ドルの助成金を提供するとともに、UNEPと共同し技術指導や運営支援などを行っていく。

廃プラ支援写真 UNEPが主催するスタートアップ支援プログラム
廃プラ支援写真 UNEPが主催するスタートアップ支援プログラム

 支援プログラム「アジア太平洋低炭素ライフスタイルチャレンジ」では、「プラスチック廃棄物削減」「低炭素モビリティ」「続可能エネルギー」、いずれかのカテゴリーを手掛けるスタートアップ企業を支援。アジア域から広く企業を募り、毎年10社程度を選定し、パートナー企業・団体とともに、選定企業へ助成金提供や、技術指導・企業運営のアドバイスなどの支援を実施している。

 今年は100社以上の応募があり、各カテゴリーから3社ずつ計9社が選ばれた。今回、三井化学が支援するのは「プラスチック廃棄物削減」分野の3社。

 ベトナムの「AYA Cup」は、大学やイベント会場などでリユース可能なカップの利用を支援するシステムの構築、中国の「REMAKEHUB」は、回収した廃棄漁網をサングラスフレームなどへリサイクル製品化、ブータンの「The Green Road」は、廃プラを道路のアスファルト代替として低コストの舗装を行う。

 三井化学は、2018年4月にESG推進室を設置。ESG要素を経営・事業戦略に積極的に取り込み、「環境と調和した共生社会」と「健康安心な長寿社会」の実現に向けてビジネスモデルの変革を進めている。プラスチックを中心とする製品・サービスを提供する化学企業として、気候変動とプラ問題を、真摯に取り組むべき重要な社会課題と位置づける。同社グループは、両問題への対応を一体の課題と捉え、循環経済を目指していく。

 

JXTG 大田次期社長「40年を目指し新中計で加速」

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2020年5月22日

JXTGエネルギーの大田勝幸社長
JXTGエネルギーの大田勝幸社長

 JXTGホールディングスとJXTGエネルギーはこのほど、社長交代人事を発表した。6月25日付で、JXTGエネルギーの大田勝幸社長が、「ENEOS(エネオス)ホールディングス」と「ENEOS」両社の社長に就任する。

 JXTGグループは、6月に運営体制と商号の変更を予定。ホールディングスとエネルギー事業会社を実質的に統合し1つの事業持株会社とすることで、新生「ENEOSグループ」体制の下、新たな運営形態に移行する。

 20日、オンライン形式による社長交代会見で、JXTGホールディングスの杉森務社長は、「大田氏は2018年にJXTGエネルギー社長に就任して以来、鋭い分析力と、明朗闊達で何事にも真摯な姿勢でリーダーシップを発揮し、巨大なエネルギー事業会社を1つにまとめ、構造改革に果敢に取り組んでいる」と、大田社長を評価。「その経営手腕は周囲が認めるところだ。

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ダイセル 「国連グローバル・コンパクト」参加企業に

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2020年5月22日

 ダイセルは21日、国際連合(国連)が提唱する「国連グローバル・コンパクト」に署名し、4月29日付で参加企業として登録されたと発表した。また同日付で、日本のローカルネットワークである「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入している。

 「国連グローバル・コンパクト」は、企業や団体が責任ある創造的なリーダーシップを発揮することで、社会の良き一員として行動し、持続可能な成長を実現するための世界的な枠組み作りに参加する自発的な取り組み。世界160カ国以上の1万4000を超える企業や団体(5月現在)が参加している。

 同社は昨年6月に「サステナブル経営推進室」を設置し、持続可能な社会に貢献する体制を強化。「人権」「労働」「環境」「腐敗防止」の四分野からなる「国連グローバル・コンパクトの10原則」を支持し、今後も持続可能な世界の実現に向けて活動していく考えだ。

石化協 森川会長「厳しい局面下でも安定供給が重要」

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2020年5月22日

 石油化学工業協会は21日、今年で2年間の任期満了を迎える森川宏平会長(昭和電工社長)の退任に向けた挨拶文を発表した。

 初めに、協会が取り組む3つの重要課題について振り返った。①「保安・安全の確保」では、経営層の強い関与を重要視し、保安に関するトップ懇談会、事業所長の保安に関する意見交換会を実施。安全文化の醸成では、保安推進会議・保安表彰式、保安研究会、産業安全塾などの開催により、情報や教訓の共有化、危険に対する感性の向上、人材育成支援などを進めた。

 スマート化に向けた取り組みでは、IoT、AIなどの最新技術について会員各社向け勉強会や官民協同テーマ検討などに注力。森川会長は「新技術は今後さらに導入が進むと思われ、保安の向上、操業の安定化に寄与することを期待している」とし、「会員各社のプラントにおいては、幸いにして、死傷者を伴う重大保安事故の発生は無く、今後もこのような状況の継続と軽微な事故件数の低減を望む」と強調した。

 ②「事業環境の基盤整備」では、わが国石化産業が国際競争に打ち勝ち、持続的に発展していくために、税制改正や規制改革の実現に取り組んだ。第3次石環検の答申を受け、昨年12月に「今後の定期修理の在り方に関する報告書」をまとめている。

 ③「グローバル化対応の推進」では、アジア石油化学産業会議(APIC)に協力参加。また、中国石油・化学工業連合会(CPCIF)、日化協との共催で日中化学産業会議を毎年開催した。「交流を通して、同国の石化産業への取り組みの真剣さと技術的進化を肌で感じた。経済成長のみならず環境に対する意識の大きな変貌を目の当たりにし驚かされた」と感想を述べた。

 最後に森川会長は、「米中貿易摩擦の激化、原油・中東情勢など国際情勢も不確実性を増している状況だ。わが国経済は、コロナ禍の影響により、厳しい局面に直面している。今後、石化製品の需要は、一部分野で堅調さが見られるが、国内自動車生産の本格的な減産が実施されるなど、工業用途向分野のさらなる低下が見込まれる。新型コロナウイルス対応の特別措置法に基づく『緊急事態宣言』が徐々に解除されるとともに、国内経済活動が再開していくことが期待されるが、依然、第2波リスクは残るなど、新型コロナウイルスとの共存が求められる時期がしばらく続くことが予想される」と懸念を示した。

 そして「このような状況にある中、安全で安定した国民生活を支えるためにも石化業界における製品の安定供給は引き続き極めて重要だ」と訴えた。

 なお、次期会長には、三菱ケミカルの和賀昌之社長が推薦され、7月2日に開催予定の定時総会で選出される予定となっている。

JSR 東大理物と包括連携、新技術・新材料の創出を図る

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2020年5月22日

 JSRは21日、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻(東大理物)と包括的連携に合意し、4月1日より、共同研究を開始したと発表した。東大理物は包括連携を通して、社会に深く浸透した様々な材料の機能の理解を深め、その探究を通して普遍的真理と新たな学問領域を見出だしていく。

 JSRはその成果として、アカデミアと産業界の融合による、新たな高機能材料を社会に導出する。また、包括連携にはフェローシップも含まれており、このような取り組みは東大理物130年以上、JSR60年以上の歴史の中で、互いに初の試みとなる。

 具体的な取り組みとして、①東京大学本郷キャンパス理学部1号館に協創オフィス「JSR・東京大学協創拠点CURIE」を設置。名称のCURIE(キュリー)は、物理学賞と化学賞、2度のノーベル賞を受賞したマリ・キュリー氏の名にちなみ、物理と化学の融合による大きな研究開発成果の創出を願い命名した。加えて、研究開発で重要な「好奇心(キュリオシティ)」、「知性(インテリジェンス)」および「感性(エモーション)」の意味も包含している。

 ②世界に羽ばたく人材育成のため、物理学専攻の博士課程学生を対象とした給付型フェローシップである、「JSRフェローシップ」を創設。今後ますます重要になる、理論、実験に限らず幅広い物理学を通して、学術界、産業界を発展させうる人材を支援することを目的としている。

 ③サイエンスと産業技術の融合による新技術・新材料の創出。JSRは製品の機能発現原理を深く理解し、サイエンスに基づく、物理と化学の融合により、非常に高い差別化性能を持つ製品開発を推進していく。さらに、東大理物は、この連携の中で多様な現象の探究と物理的視点に立った学理追求を行うことで、次世代の科学と応用の基盤となる成果を世界に発信していく。

 JSRの川橋信夫社長兼COO兼CTOは「当社製品のさらなる性能向上には、自然科学に基づいた原理原則を理解することの必要性を認識していた。東大理物は、素粒子から光、物性、宇宙、さらには、生物まで、あらゆる分野を網羅する、日本最大かつ世界でも最大規模の物理学研究の拠点であり、JSR製品の機能を飛躍的に向上させるサイエンスを共に構築できる最適なパートナーと考えている」とコメント。

 東京大学大学院理学系研究科物理学専攻長の常行真司教授は「包括連携を通じて、材料分野だけでなく、幅広い科学分野で成果を創出し、さらには、基礎研究だけでなく社会の課題解決にも意欲的な人材の育成と輩出を目指す」と述べている。

東ソー 新型コロナウイルス抗体検出試薬の開発に着手

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2020年5月22日

 東ソーは21日、同社の全自動化学発光酵素免疫測定装置「AIA‐CL」シリーズ用の「新型コロナウイルス(SARS‐CoV‐2)に対するウイルス抗体検出用検査試薬」の開発を開始したと発表した。

 免疫測定検査試薬の特徴であるモノテスト&凍結乾燥技術をベースとした、迅速・高感度なオールインワン検査試薬の開発を推進。全自動装置である「AIA‐CL」シリーズと組み合わせることで、簡便かつハイスループット(高生産性)な測定環境を提供することを目指す。

 同社は、独自のモノテストカップ方式の全自動免疫測定(イムノアッセイ)検査システムを展開し、60を超える検査項目の測定試薬を開発してきた。これまで培ってきた技術と知見を生かし、早期の完成を目指す。

 また、遺伝子検査法の1つで、RNAを増幅・検出するTRC法を用いた新型コロナウイルス検査キットの開発も、体外診断用医薬品としての上市を目指して精力的に取り組んでいる。新型コロナウイルスに起因する世界的な公衆衛生上の問題対策の一助を担うため、関係各所に協力を仰ぎ、早期の社会実装化を目指す考え。

 なお、今回の件は、日本医療研究開発機構(AMED)の令和2年度ウイルス等感染症対策技術開発事業「新型コロナウイルス抗体検出を目的としたハイスループットな全自動免疫測定方法の開発及び同測定方法の社会実装に向けた研究」のもとに実施される。

 研究課題は、横浜市立大学学術院医学群微生物学の梁明秀教授を中心とする研究グループの研究成果である抗ウイルス抗体検出方法を基に、東ソーと横浜市立大学、関東化学が協働で実施する。

 

宇部興産 中計の進捗、初年度は環境悪化で未達に

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2020年5月21日

 泉原社長「コロナ収束後に向け、成長戦略を推進」

 宇部興産は20日、中期経営計画「Vision UBE 2025‐Prime Phase‐」(2019~2021年度)の進捗状況について電話会議による会見を行った。泉原雅人社長は、前年度を振り返り、「年度後半から中国経済の減速の影響を受け、自動車産業をはじめ製造業全体が不振に陥り減収減益となった」と総括した。今年度については、「新型コロナのマイナスインパクトは9月をピークに迎え、年度末にかけて回復してくる」と想定。コロナ影響によって売上高で

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住友化学、クラレ、旭化成建材の3社 日化協技術賞を受賞

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2020年5月21日

 日本化学工業協会はこのほど、優れた化学技術の開発や工業化によって化学産業ならびに経済社会の発展に寄与した事業者を表彰する「日化協技術賞」を発表。

 総合賞に住友化学の「低環境負荷・併産品フリーのクメン法プロピレンオキサイド(PO)製造プロセスの開発と工業化」、技術特別賞にクラレの「プラスチックシンチレーションファイバ(PSF)の開発と工業化」、環境技術賞に旭化成建材の「高性能発泡プラスチック断熱材「ネオマフォーム」「ネオマゼウス」の開発」を選定した。

 住友化学のPO製造技術は、クメンを循環利用し、副生物が実質的に水のみでPOだけを生産する世界で初めて工業化されたクメン法PO単産プロセス。独自開発のエポキシ化触媒と組み合わせることで、非常に高いPO収率と分離精製の省エネ化を達成し、優れた運転安定性を実現できるという特長が評価され、受賞に至った。

 クラレのPSFは、独自製法で開発したプラスチック製光ファイバー。コア(内側)は蛍光剤入りのポリスチレン樹脂、クラッド(外側)はメタクリル系樹脂の多重構造で、放射線が当たると発光する性質を持つ。高い発光量、透明性、優れた線径精度は世界中の研究者に認められ、放射線検出用素材のデファクトスタンダードとなっている。今回、PSFの技術開発と製品性能、世界的な研究機関への安定供給実績、民生用途への拡大などが評価された。

 旭化成建材の高性能発泡プラスチック断熱材は、フロン系ガス不使用や断熱性を長時間維持するといった課題を克服した製品。旭化成建材は、フェノール樹脂組成の抜本見直しを行い、フェノール樹脂発泡体の脆さ改善と強度の大幅向上を達成。さらに独自の発泡ガス組成や添加剤などの最適化により、革新的なフェノールフォーム発泡成形技術の開発に成功した。断熱材の開発が、環境負荷低減に顕著な効果を持ち、わが国の化学技術の進歩と産業の発展に大きく寄与するものとして評価された。