NEDOはこのほど、早稲田大学、日本ペイントホールディングスと共同で、長期貯蔵でも沈降しない高い安定性を持つ磁気粘弾性流体(MR流体)を開発した。
MR流体は、鉄などの磁性粒子をオイルなどの分散媒体に分散させた流体で、外部から磁場を加えることによって粘度が変化する特性を持つことから、車両のブレーキや制震機、ロボットのアクチュエーターなど機械制御への応用が期待されている。しかし、従来のMR流体は、分散媒体中の磁性粒子が沈降しやすいため、長期間使用すると、装置の損傷や動作が不安定になるといった課題があった。
今回開発したMR流体は、磁性粒子の沈降を抑制するための側鎖を持つポリオキシレン脂肪酸アミド誘導体を分散媒体に適用するとともに、直径20~300㎚のナノ粒子を分散媒体に添加することで、半年の静置状態でも分離せず、外部からの磁場に対して高い応力を発揮することに成功。今回の成果により、MR流体を長期間にわたって利用することが可能となり、ロボットを始めとする様々な機械制御分野へ応用展開が期待される。
今後、3者は、開発したMR流体を使った、ロボット用柔軟アクチュエーターの開発を引き続き共同で進める。また、日本ペイントホールディングスは、これまで塗料分野で培ってきた顔料などの微粒子の分散方法や安定化技術の知見を生かし、産業機械向けに最適化させた新たなMR流体の商品化に向けた開発を進め、さらなる応用分野の開拓を進める考えだ。